+初恋+














「ねえ…」
「なんだ。」
「初恋、いつでした?」




いきなりそんなことを聞かれて、斎藤は飲んでいた茶を吹きそうになった。




「何を唐突に…」
「うーん、ちょっと…」




ちゃぶ台にひじを突いて、意味ありげに覗いてくる。




「お前は、何かと誤解するから、教えん。」




今までも、樹罹沙の早とちりのせいで、散々ひどい目にあってきた斎藤は、広げた新聞に視線を戻す。




「誤解だなんて…聞いてみたかっただけなのに…」
「人に聞く前に、自分のを先に言え。」




斎藤も人の子。
好いた女の初恋がどんなものだったのか、興味はある。




「えー。」




なにやら子供っぽくもじもじする樹罹沙を、斎藤は怪訝な顔で見る。




「言いたくないなら、言わんでもいい。」
「だって…十一才の時なんですもん…」
「十一才の時って、お前が新撰組に入ったころじゃないか。」
「はあ。」




樹罹沙は、うつむいてますますもじもじする。




「入隊試験のときに、試合ったひとに…」
「え、あの、おまえが叩きのめした平隊士?」




斎藤の返事を聞いて、樹罹沙は唖然とした顔になり、がっくりと肩を落とした。




「…もう、いいです…」




落胆した顔で席を立とうとする樹罹沙の腕を、斎藤はつかみ、引き寄せる。
ひざの上に乗せて、逃げられないように抱いてしまう。




「もー、放してくださいよぉ。」




捕まえられた猫のように、自分の腕の中でじたばた暴れる樹罹沙の顎を捉えて、口付ける。
巧みな口付けに翻弄されて、樹罹沙は暴れる気力を失っていく。




斎藤の唇が離れると、ゆっくりと潤んだ目を開けた。




斎藤の琥珀色の瞳が、樹罹沙を見つめる。
そのまま、首筋に顔をうずめると、耳元でささやいた。




「それじゃ、俺が最初で最後だな。」
「え。」
「お前に、この次はない。」




いうと、斎藤はにやりと笑った。






<了>





ひたすら通っていますサイト様のフリードリーム。
白々しくとぼける斉藤さんに、ひたすらデスクばんばん叩いてました(危険)
大事にさせていただきます!