「お久しぶりです。斎藤さ・・んってぉおい!
































思いを馳せるほどに思いを募らせるほどに。




























+太夫+












私ピンチ!
すっごいウルトラ級ピンチ!
キメラの大群に遭遇した時よりも大ピンチー!?










「何いきなり発情してんの!どけっ今すぐ退け!!そして重いっ!!



「二年も待たせるお前が悪い。おとなしく抱かれろ」



「っておとなしくしている人なんていなーい!!!いいからどけー!!!」




豪華な太夫姿に身を包んだは斎藤に押し倒され圧し掛かられていた。
むきーっ!と逃れようとするも、着慣れない重苦しい着物に馬乗りになってくる斎藤。
上手く逃れられずに、困った顔のを見下ろしながら斉藤はほくそ笑んだ。
「ここはそういうところだろう?」
そう口角をあげ、不敵な笑みを浮かべて覗きこめば、の全身を焦りという二文字が
駆け巡った。

 薄暗い室内にぼんやりと浮かぶ行灯の灯火。

ユラユラと、時折炎を波立たせては斉藤の顔や室内を妖艶に照らし出す。
見慣れた景色が、斎藤が、まったく違うものに見え。
頼りない行灯の明かりは妙に今の光景を助長しているようで、
はフワフワと感じる浮遊感を追い払うように、ぶんぶんと頭を振るが
圧し掛かってくる挑発は退くことを知らない。
琥珀に射抜かれ、は体中に電気が走ったように体を強ばらせた。
「なあ?山百合の姫太夫」
湿った声と吐息が耳に染み込み、体の力が吸い取られそうになるのを堪え、
きゅうっときつく目を閉じた。





なんでっ!
なんでこうなるのよおーーーーーー?!




そう、ことの起こりはと近衛が近藤と土方に挨拶しにきたところから始まったのだった。




















 原田と永倉、そして沖田が退室したのを見届けると、土方はスッとを見つめた。
感情の取れぬその表情に、はきょとんとするも、土方の視線はを放すことはなく、
はそれに耐え切れずに身じろいで助けを求めるように近藤へと視線を向けた。
近藤の表情もまたじっとを捉えており、の隣に腰を下ろしていた近衛と土崎も
不思議そうに顔を見合わせる。

「あ・・あのう」

いくら待てども口を開かぬ近藤と土方におそるおそる口を開けば、
二人は無言で頷き合うとずずいとの目の前ににじり寄り、そのあどけない顔を
覗き込んだ。目と鼻の先に近藤と土方の顔が迫り、びくりとの体が跳ねる。
2人のその突然の行動に、近衛と土埼も驚いたように顔を見合わせた。
の肩に土崎の手がそっと添えられる。




君」



近藤の強張った声に、はますますきょとんとする。












「「遊郭で働いてくれないか?」」













「「「・・・・・・・」」」














申し合わせたように重なった近藤と土方の声に、3人はしばしの間固まった。
しばらくして一番最初に覚醒したが「ん〜」と額に手を置き低く唸る。



「いや、金銭的にも大変かもしれませんけどね?
私らの時代ではそれを売春と呼んでましてね?法律に触れるどころか
重罪で何十年務所生活を強いられんですよ?
たしかにこちらの皆さんには大変お世話になりましたけど、身を売ってまで恩返しをしろだなんて、
ちょーっとといいますかだーいぶ酷いんじゃありません?」


妙に落ち着きはらった半眼で淡々と述べるに、
近藤と土方は顔を見合わせると、ぶんぶんと首を振ってみせた。



「そうじゃないよ、君。なにも君を売り飛ばそうとか
そういうこということじゃあない。」




近藤の話はこうだ。
伊藤甲子太郎の所へ潜伏してる斎藤から情報を受け取るために、
連絡場所に遊郭を選んだところまではいいのだが、連絡係として潜入させる手筈だった
山崎が先日の任務で負傷したという。命に別状はないが、
些か任務に着かせるのは少々心許ない。
連絡の日は刻々と近づいている上に、他に斎藤との連絡手段はなく、困っていたところのの来訪。
これはまさにっと近藤と土方は目を輝かせてへと身を乗り出したとういわけである。

二人の真剣なそして、緊迫した表情にも真剣に頷く。





「むう・・そういうことでしたら、お引き受けします」


「だめだ」




力強く頷くに、近藤と土方が安堵の表情を浮かべたその時だった。
その剣先にも似た鋭い言葉に、キンと室内が凍りつく。
が少々驚いて声の主へと振り返れば、そこには任務へ赴く時と同じ口を一文字に
結んだ土崎が真っ直ぐに土方と近藤を見据えていた。
土崎の隣に腰を下ろしていた近衛も驚いたように土崎を見つめた。
「歳樹・・」と咎めるかのような近衛の声色を片手で制すると、反抗的に見つめてくる土方へと
さらに鋭い視線を向ける。


「俺は断固として反対だ。にそんな危ない任務は任せられねえ」


「土崎君。大丈夫だよ情報を伝達してもらうだけだし、何より斉藤がいるから・・」


「それが危ないと言っているんです!」


困った笑みを浮かべながら口を開く近藤にぴしゃりと土崎が睨んだ。
その態度に近衛も「おい」と土崎をつつくが、土崎は拳をワナワナと握り締め
土方と近藤を見据えている。



「あの簾とを二人きりにでもしてみろっの身が危ういどころじゃあない!
問答無用で押し倒され強姦され、挙句の果てには孕まされた上にゴミ屑の如く捨てられ
傷心のは世を哀れんで自害し・・しかし悪魔触覚はのうのうとゴスッ


「人を勝手に殺すな!!ってなんなのよその簾って!」


どんどんヒートしていく土崎にのストレートアッパーが炸裂し、
べしゃりと土崎が畳に撃沈した。
が、すぐさま土崎は再生しを睨みつける。



「上司を殴るな蹴るな!!あのフケ顔に決まっているだろうが!
俺は許さんぞ、斉藤がお前を目の前にして涼しい顔でいられるわけがないっ!
俺はお前の身の危険を心配してるんだぞ」


「蹴ってないもんっ!遊郭っていったって伝達目的なんだからっ
太夫姿になるわけじゃないし、遊郭の仕事をするわけじゃないでしょ?」



「あ。一応、連絡期間は遊郭の太夫としていてもらう手筈になっているんだが」



納得しかけた土崎にが小さく溜息をついたその横で、土方が思い出したように
呟いた。「むー」と土方に顰めっ面を向けるの前で土崎が再びボルテージが上がる。
「やべ;」と土方もの視線の意図に気づいたのか、ちらりと土崎を見やったが、
もう遅い。



ダメだダメだダメだ!!ずえーったい行かせんぞ!!


「大丈夫だよ、私だってこれでも剣や柔術の腕は一流のつもりだもん」


「相手はあの斉藤だぞ!!お前なんか赤子同然だっ!」


「副長;斉藤さんをなんだと思っているの?;」


「陰険細目毒舌悪魔っ!!」



「;斉藤さんと何かあったんデスカ;」


「とにかく俺は許さんからな!!」



































と、土崎の凄まじい形相を思い出しながら、心の奥底から土崎に謝るであった。
あの後さらに白熱する土崎に近藤と近衛が背後から手刀と鞘当を食らわし、倉へ閉じ込めた後
一同は連絡のための準備を淡々と進めたのである。





あぁ・・副長、
自分の腕を過信しすぎてました
たしかに斉藤さんは平静ではなかったです・・・・・




そう、遠い目をしながらは薄く笑った。
でもでも、ここで諦めたら女が廃る!!
はキュッと口を引き締めると、一瞬抜きかけた力を再び込めた。



「・・・だからっといって、おとなしくしてるかー!!!!どけー!!!


「ちっ抵抗しなくなったと思ったらまだ諦めないのか」


「当たり前でしょっ!!それにっ本来の目的はどうしたのよ!!」


「お前を抱いてこの二年の空白を埋める目的以外何がある」


「違ーうっ!!連絡っ連絡っ!!」


「あぁ。そんなのは後でいい」


「よかあないー!!」




余裕の笑みで首筋に顔を埋めてくる斉藤に、はいよいよ本気でやばいと
焦る。
思いっきり暴れたため衿が肌蹴ていることに気づき、慌てて押さえようとするも
斉藤の方が早かった。すばやくの手を封じ込めると、ちろっと鎖骨部分を舐め上げ、
そのままゆっくりと胸元へと唇を移動しはじめる。
手を封じ込められたら、あとは足でなんとか食い止めるしかないが、着慣れない着物で足を上げることができない。
く〜っと悩むの顔を楽しげに覗きこむと、左手を裾の割れ目へと伸ばした。
太腿に触れる斉藤の温かい手の感触に、は一気に紅潮し「ぴいっ」と声をあげる。




やばいやばいやばいっ!!




の脳が危険信号が素早く点滅している。
このままじゃ本当に抱かれちゃうっ!!
は意を決したように口を結ぶと、キッと圧し掛かっている斉藤を
睨み上げた。






「斉藤さんごめん!!」



「は?・・・・っ!?































「放せー!!!が食われる!!犯される!
あの簾野郎絶対許さねえ!!斬り捨てるだけじゃ済まねえっ臓器という臓器を
抉り出して犬の餌にしてやる!!」


「落ち着けって、土崎さんよ。」



一方、が斉藤に押し倒されてヒーヒー言っている頃、屯所では土崎が
倉からの大脱走を図り、倉にあった刀やら槍やらを弁慶よろしく担ぎながら
目を据わらせ、いざっ嶋原へ向かわんとしていた。
それを土方が愉快そうに羽交い絞めして食い止めているのを、近藤と近衛は
冷や冷やしながら見守っている。



「これが落ち着いていられるか!斉藤だぞ!!あの斉藤だぞ!!」


「そうだなあー、できた子供も簾髪だったら父親似ってとこかあ」


「!?・・・・子供っ・・・・おのれぇ・・斉藤!!!皮剥いでやるぅっ!」


ケロッと火に油を注ぐ土方の発言に、土崎の目が燃え上がった。
それを楽しげに羽交い絞めながら「ははは」と笑う土方に近藤と近衛は
顔を見合わせて深い溜息を吐き出す。




「バラガキ共め・・・」




土崎の咆哮と、土方の笑い声がいつまでも屯所に響いていた。






































「さ・・・斉藤さ〜ん・・・大丈夫?」


「・・・・っ・・・・・・」



体を海老のように丸めて、不様に畳へと転がっている斉藤の横で、
大変申し訳なさそうにちんまりと座っている
着物の乱れをすっかり直すと、は不安げに斉藤の顔を覗きこんだ。

がとった最後の抵抗は、不覚にも斉藤に手を割りいれられ、肌蹴た着物の裾で
自由になった足を思いっきり斉藤の腹をとめがけ蹴り上げることだった。
しかし、の渾身の膝蹴りが命中したのは腹ではなく、男なら誰でも怯むであろう場所。
つまりは急所であった。剣の腕がたつ斉藤といえどもれっきとした成人男子、もちろん例外ではなく
渾身の一撃に見事玉砕したのである。



「冷やし手ぬぐい持ってくる?」

「・・いいっ・・・」

「それとも温めた手ぬぐいがいい?」

「殺す気か・・・」

「んと・・・んと」

「・・っ・・黙ってろ」

「はい;」



薄っすらと涙を蓄えながらの凄まじい睨みに、はシュンと項垂れた。
我を忘れ発情してきた斉藤にも非があるが、さすがに金的を蹴り上げたのはまずいだろう。
狙ったものではなかったにしても、渾身の力を込めたのだ。
はまだ蹲っている斉藤へとそっと手を伸ばすと、別れた時よりもたくましくなった
斉藤の少しこけた頬をスッと撫でた。
にとってはたったの一ヶ月。しかし斉藤からすれば二年の月日が過ぎている。
出会った当初はまだどこかやんちゃさを感じさせる空気があったが、
今は硬質で鋭利な刃を連想させる。
頬を撫でてくるに、斉藤はそっとの手をとった。
まだ不安げに見つめてくるに薄く笑ってみせる。



「おかえり」


「うん・・・ただいま」




その後なんとか回復した斉藤と再会の言葉を交わすと、二人はさっきとは打って変わって、
表情を変え連絡を伝えそして受け取った。
それからしばらく、は密会が伊東達に悟られないようにするために、本格的に遊郭へ身を置き
生活そのものを太夫として送った。
他の客をとらないように、斎藤がこれない日は事情を知っている山崎や永倉達が足を
運ぶことになっていたが、そんな心配はないほど斎藤は毎日のようにの元へと通った。
そしてそれがまた伊東達への目晦ましにもなっていおり、狙い通り
斎藤は女にだらしがない奴という概念を植えつけることにも成功した。
何度か斎藤がの気が高まり、何度か身の危険を覚えずにはいられなかったが、
その度には全力で抵抗し、なんとか操を守っていた。



「お前・・・まだ16なのか」

「うん、だって向こうではひと月しかたってないし、体の調整で
こちらにいた期間に過ぎた時間はゼロにされるし」


斎藤の横にちょこんと腰を下ろしながら勺をするが少しでも首を動かすと
頭に差し込まれた簪が軽い音を立てる。
それさえも心地良いものだと軽い浮遊感を覚えながら、斉藤はじっくりとを眺めた。
が屯所で過ごした間は常に作務衣か袴姿だった。
女ということを隠していたわけではない、その方が動きやすいしなにより女人禁制の
新撰組に女着物で歩き回っていたらなにか組内の士気に影響するだろうと
いうことからだった。
だから、の女としての本来の着飾った姿を見るのは初めてであり、またそれが
今まで見てきたどの太夫よりも一線を引く美しさに、斎藤は目を逸らすことができずにいた。
まして、その姿を組の誰よりも自分が最初に見ているという優越感が斎藤の心を浮き立たせ。
あまりにも見つめてくるので、はちょっと困ったように小さく笑うと「恥ずかしいよう」と
小さく呟く。


「もう何度も見てるじゃない」


「お前の美しさは何度でも見たいものだがな」


「わー・・なんだか鳥肌たってきた」


「人が本心を言っていれば、やはり一度抱いてやろうか」


「う;ごめんなさい;」



ククッと喉の奥で低く笑いながら、へと身を乗り出せば
ぴしりと体を強張らせる。そんなに掠める程度の口付けをするとそっと
その柔らかい頬を撫で上げた。
斎藤の心地よい温かい手に、思わず小さく笑みが零れる。
そんなの反応に優越感を覚えながら、胸に引っかかっている思いを
晒け出す。




「しばらくこちらにいるんだろう?」


二年も待たされたのだ。
斎藤としては二度と手放したくないところなのだが、そんなことができないのは
百も承知だ。それならば少しでも一緒にいたいと思うのは罪ではないと思う。
は「ん・・」と寂しげに俯くと、手にしていた徳利をそっと盆に置いた。
コトリと陶器と木が触れる深みある音が、静まり返った室内に響く。
その音に妙に胸騒ぎを覚え、「おい」と返答を急くようにの顔を覗きこむ。


「わからない・・・正直、今そんな状況なの」


本来ならば、斉木を粛清した時点で達のこの時代での任務は終了、
すぐに自分達の時代に戻り、再びキメラ殲滅の任務に就くはずであった。
しかし、斉木に気を取られすぎていたため、新たにキメラの流入し達は
まだ斎藤がいるこの時代に留まらなければならなくなったのである。
ぽつりぽつりと呟くの横顔を見つめながら、にとっては一ヶ月
しかたってない月日で、が三番隊隊長の顔をしていることに気づいた。
たった一ヶ月。そんな短い期間で達のすむ世界は様がわりしていることに
斎藤は一瞬言葉を失った。
しかし、注意深く見れば、いくら美しく化粧を施していてもその表情や
歩く仕草でわかる。
がはじめてこちらにきた当初に見せていた症状・・・。
疲労が出ているのだろう。
斎藤は黙ったままを抱き寄せると、そのまま畳へと寝転んだ。
目を丸くしているに小さく笑うと、軽く額を弾く。




「また何もない夜はキメラ殲滅に出ているのだろう?
本当に自分の身を省みない奴だなお前は」


「うぅ;」



罰が悪そうに顔を顰めるにまた小さく笑うと、さらにを抱きしめ静かに目を閉じる。
斎藤の胸の鼓動を聞いているうちに、もまた瞼が重くなるのを感じ
静かに意識を手放した。







それから数日が過ぎた頃、毎日のように足を運んでいた斎藤という上客が
ぱったりと来なくなり、一人の太夫が身請けされ遊郭から姿を消した。
屯所で会おうと別れると、は町娘の姿のまま屯所へと足を進める。
屯所へと着いたを待っていたのは、新たな、そしてキメラとの最終決戦を
告げる任務だった。

















毎回毎回更新遅いねvははv(牙突三段突)