「てめぇ、本当は十代目の命を狙ってたんじゃねーだろうな!」
「ははっそれはないって隼人、なんたって海山一家推薦の子だぜ?なあ?」
「でも、他の人は別にしても隼人さんや武さんまで気づかないだなんて・・ちょっと信じられませんよ」
「だよなあ!」
「まあ、それは気になるのなーv」
「う・・あの・・」
「ん?何、ちゃんv」
私の右隣には銀髪のお兄さんが睨みつけていて、
左隣では短髪の爽やかなお兄さんがニコニコと見つめていて
真後ろからは牛柄シャツのイケメンさんが覗き込んでいて
目の前にはソファから身を乗り出すように私をニコニコと見上げているボンゴレ・ボス。
近っ近いよぉぉぉぉぉ!!!
「あの・・なんだかすっごい息苦しくないですか;」
なんだか気が昂ぶっている銀髪さんの息が、息がっ首筋にかかるほど近っ。
短髪爽やかさんのキラキラが眩しすぎるほど近ぁっ
覗き込んでくるイケメン君の髪が首筋にかかるほど近いのぉぉ!
そして目の前にはドン ボンゴーレ・・のキラキラした笑み!!
親分ー!叔父さん!!海山でごっついおいちゃんオアシス慣れしている私でも
この状況はすっごい辛いっ。だってボンゴレの幹部って皆ホスト級に顔がいいんだよ!
そんな集団の視線を集めてる自分の取った行動恨むよぉぉ!!
たたた助けてっ。ヘルプ!!ヘルぺスミー!(ヘルプミーな)
ボンゴレボスが座るソファの後ろでは腕を組んでいる雲雀様に、スーツパンツに手を突っ込んでいるリボーン様が
ジッと
ジッと
ジーッと
私を見ています。
なんですか、私に石になれと仰りたいんですか。
もう化石にっアンモナイトにっなりたいです。いっそのことチーズ蒸しパンになりたい!!
非常にいたたまれずに、ボンゴレ様に口開けば・・
「うん、気のせいv。大丈夫空調は入ってるから」
空調ちがーーーーーう!!
私が言いたいのはこの人為的なっ作為的なこの空気の悪さ!!
お願いですから離れてください周りのお三方!!とボンゴレ様!神様!!仏様!
あぁ・・これはひょっとしてひょっとしたら・・
「あああの;私はテストに不合格・・メイド不採用ということでしょうか」
まさかテストあるなんて思いもしなかったけど・・あれかな、やっぱ無断でボンゴレ様の
部屋に入ったのがいけなかったのかな。
あぁ・・これ日本にトンボ帰り・・叔父さんと親分になんて言えばいいんだろう・・
するとボンゴレ様はさらににっこりと笑った。
「ん?不合格も何も鼻から働いてもらうつもりだから心配しなくていいよ」
「そっそうですか!!。よかった・・不採用だったら海山親分に申し訳たたなくなるところでした・・」
そう小さく安堵の溜め息を零す彼女に思わず俺は目を丸くした。
この状況で不合格を心配したのは自分ではなく、彼女をここによこした海山一家のこと。
思わず笑みが零れる。
「君を歓迎するよちゃん、これからよろしくね」
にっこりと笑えば、
「はいっ3ヶ月と短い間ですがよろしくお願いします!」
「「「「「「は?」」」」」
「え?」
「3ヶ月って・・何?」
「え・・3ヶ月の臨時メイドと聞いたんですけど」
とにかく緊急でメイドが欲しいから頼む、その間に正規のメイドを雇うと
親分から聞いていたのですが?
そう答えればボンゴレ様は周りにいる方々と顔を見合わせて一言
「君で決定なんだけど?」
「え?なっ何言ってるんですか!。私は3ヵ月のつもりで会社も特別休暇にしてもらって・・」
「クフフ、いいじゃないですかさん。そんな会社辞めてここに就職すれば何も問題ありませんよ。
ついでに僕の所に永久就職し・ま・せ・ん・か♪」
いつの間にか復活(リ・ボーン)した六道様がフワリと私の肩を抱き寄せた。
さり気なくシッシッと銀髪さんを手で追い払いながら。銀髪さんは「てめぇ!」と憤慨していたけれど
六道様は気に止めることなく、悪戯っぽい笑みを浮かべ、語尾を何かの歌のフレーズに乗せて
ちょんと私の鼻頭をつついた。
あ、ちょっとこの方青春ドラマとか好きそうだなーと思ってたら、何やら六道様の背後で黒い気配がっ
「おいそこのサンバナッポー黙らせろ」
「おやおや綱吉、ジェラスィーですか?男の嫉妬はみっともゴッガフッ」
「これでいいですか十代目」
「ナイスな回し蹴りありがとう隼人」
シュウゥと煙を立てながら倒れる六道様をケッと見下ろすと、隼人と呼ばれた銀髪さんは
ズリズリと六道様の長い後ろ髪を持って引き摺り、部屋の隅にペイッと放置した。
ゴンと壁に激突したような音がしたのは気のせいということにしておこう、うん気のせいよ!
銀髪さんが戻ってきたところで、ボンゴレ様は改めて素敵な笑みを私に向ける。
うん、今わかりましたわかっちゃいました。その笑みの下にはドス黒いものが潜んでいるんですね。
「話がずいぶん食い違っているみたいだね。準備費や航空費諸々+αで1千万
海山親分に振り込んであるんだけど?」
「いっせ・・!!あ・・あのっちょっ親分に電話してもいいですか?!」
何その多額の金額!!
慌てて携帯を取り出す私にボンゴレ様はにっこりと微笑む。その笑みが怖いよ!
「いいよvここの電話使いなよ」
「ありがとうございます!」
皆さんの視線を感じながらダイヤルを押す。うぅ・・居た堪れない。
出たのはよく見知っている一家の人で、彼は素早く親分の繋いでくれた。
その時、ボンゴレ様がスピーカーボタンをさり気なく押して、皆さんに親分との
会話を聞かれる羽目になったけど、今の私はそんなこと気留める余裕もないほどに
焦っていた。
『やほーv』
「親分さん!!ちょっ・・どういういことですか!!3ヵ月の間だけって言ったじゃないですか」
『うんvあれ嘘ねv』
「は?」
『大丈夫!!会社の方にはちゃんとちゃんの筆跡を真似して辞表出しておいたし、
イタリア永住権とか諸々の手続きはもうこっちで手配済みだから安心してねーv
あ、今度ちゃんの衣服とか送るからvってどうせなら向こうで全部揃えちゃってもいいかv』
「・・・・・・」
『それよりイタリアはどう?慣れそう?あ、今度さ何か送ってよー。何がいいかなー』
「・・・・親分さん」
『んーなにー??』
「てめぇ、覚えてろよ?」
『ひぃっ・・・あ・・え・・ちゃーん!!これには』
カチャン
静かに受話器が置かれて、ちゃんは俯いた。
うん、静かに置いて大正解だねv乱暴に置いたらまず恭弥とリボーンが黙ってないからね。
深く俯いているから様子はわからないけれど、微かに震えているところからすると、
相当怒っているのかな。
どういう経緯で海山親分はちゃんを騙したのかはしれないけど、
俺と親分の話では・・
「順応で忠実で裏切らず、自分の身は自分で守れて尚且つ長続きするメイドを探しているんだけど」
「それならぴったりな子がいるよ!」
だけど条件があるんだ
ニコニコした親分の目に一瞬だが、鋭利な刃物を思わせる光が灯る。
だけどそれはすぐに温厚な笑みにかき消されて。
「ツナ君の条件はすべて持ち合わせてる子だ。
その子は私に取っていや海山一家に取って家宝といっても過言じゃない。
だから・・・・」
例え解雇することがあっても、彼女をイタリアから出さないでほしい。
ボンゴレに置いててほしい。雑用でも掃除係でもいい
決して彼女から目を離さぬように
その言葉に俺はおもわず、ピクと微かに眉を潜めた。
まるで彼女が狙われていると言うような口ぶり。
じっと海山親分を見つめるが親分は何も言わぬままジッと俺を見つめているだけで。
干渉するな
鋭い目が語っていた。
まあ、海山側の企みはどうであれ、こっちはとにかく早急にメイドが欲しい。
食事当番制なんだけど、隼人と武以外食えたもんじゃないんだ。
とくに恭弥と骸。あれは食べ物というより兵器。
しかも作った張本人は外に食べに行くという達の悪さ。
恭弥は材料にちゃんと食材を使っているみたいだけど(それでも出来は核兵器並)
骸にいたってはこの間、ラザニアらしきものにかんしゃく玉が入っていたからね。
あいつ、まだ俺を狙ってんだよ。ほんとウゼー。
前回の子は骸が輪廻の海だかなんだかに放り投げちゃって、
その前の子は恭弥に雲雀デスコード登録証果実を出しちゃって咬み殺され
これまた前の子は隼人の試しダイナマイトに巻き込まれて殉死
またまた前の子は骸の三叉槍の餌食
また前の子は山本のあの爽やかな笑顔で黒い暴言を受けまくってストレスで入院
恭弥に大量の書類を押し付けられて逃亡したのもいたし
食材をちょろまかしたのはランボとリボーンが制裁
いつだかの子は了平の極限に耐えきれず逃亡
あれはなんたらファミリーのスパイでリボーンが始末
あの子はランボに散々言い寄られてこれまた逃亡
あー確か俺の財布から五十万盗んで逃げ出した奴がいたっけ?
勢いで零地点で炭屑にしちゃったっけ?。
あの子は恭弥に散々こき使われ逆切れし、ヒバードを盾にして回避しようとしたけど、逆効果でトンファーで滅多打ち。
そういえば骸と雲雀が共同でメイドを抹消したこともあったけ?懐かしいね。
とにかくうちのメイドは長続きしない。
なんでだろうね普通に接してるはずなのに、メイド運が悪いとしか思えない。
メイドの面接する時間も惜しいほど忙しいというのに。
どんなことがあってもボンゴレから離すな?
ククッ好都合じゃないか。その子絶対逃がさないよ。
親分の目論みと俺の目論みが符合して固い握手したんだっけ?
この子には知らされてないということは、俺も口出すなということだろう。
どのみち帰すつもりないけどね
あ、顔をあげた。
と思ったら
パンッ
自分の両頬を威勢良く両手で叩く。
痛くない?頬赤くなってるよ?
ちゃんはキュッと拳を握ると、ぶつぶつと何か呟き始めた。
あ、ネジ外れちゃった感?
すると不意に顔を上げて
「こうなったら成るように成れよ、女は度胸!!!」
そして俺を見て一言。
「以前のメイドさんがどうあれ、私は甘やかしたりしませんからね!!」
うん、いい笑顔だ。それに軽く宣戦布告?
いいじゃない、今までのメイドにはないタイプだね。
まあ、そのくらいの勢いでやってくれないと俺達とは釣り合わないだろうし。
そんな彼女に俺は・・いや
隼人も
武も
ランボも
恭弥も
リボーンも
ニヤリと笑って頷いた。
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「で、お前どうやってここまでたどり着いたんだ?」
ちゃんがお土産にと持って来てくれた緑茶と
(久しぶりの日本茶、しかも淹れ方のうまさに武と恭弥がしきりに頷いていた)
饅頭に
(これまたうまくて獄寺とランボが大喜び)
手を伸ばしながら、リボーンはまだ疑惑の視線を投げかけていた。
あ、それは俺も気になるな。
どうやらテストに出ていた隼人達も、ここにいた恭弥と骸も(復活しやがって悠々と茶を啜っていやがる)
気になるようで、皆の視線がちゃんに注がれる。
急須を持ったまま、ちゃんがきょとんと首を傾げた。
「え・・・どうやって・・・て普通に歩いてですけど」
「お前・・俺をおちょくってんのか?」
チャキリとリボーンの懐から黒光りする鉄の塊がチラリと見え、ビクッと体を強張らせるちゃん。
いくら海山一家が武器をあまり持たないから一家だからって、銃一つで青くなるなんてね。
まあ、そんな仕草もかわいいからいいか。リボーンも本気じゃなさそうだし。
「ほっ本当ですって!!建物にも玄関から入りましたし、窓や調度品一つも壊してません!!
わっ私、武道やってないし戦えないけど海山一家幹部の姪ということで、何度か誘拐されそうになって
それじゃ一家に迷惑かけるから、捕まらないように捕まっても逃げ出せるように
気配を察し殺して誰にも気づかれずに移動できる特訓をしただけなんです!!!」
まだ銃をチラつかせるリボーンに、ちゃんは一気にまくしたてた。
そんなに銃慣れしていないのもどうかと思うけど?
マフィアっつったら銃は基本なんだし?
けど、そのおかげで謎が解けたみたいだ
「はあぁ!気配を殺すってお前、そうしたらそこだけ気配がなくなって余計不自然になるだろ?」
隼人が声を上げる。
そうだ、いくら気配を殺すとはいえ殺した空間だけがまるで真空状態になり、余計に
不自然な空間が生まれる。一介のマフィアになら感じられないだろうが、
俺達のような戦い慣れしている者からすれば、安易に自分の居場所を示しているも同然。
だけど、隼人達の意見ではそんな不自然な空気は感じられず、いつも屋敷内に漂っている
空気が流れていて、侵入者がいるような気配はなかったという。
隼人の言葉に納得したようにちゃんは小さく頷いた。
「はい、普通はそうですね。ですが私を捕まえようとしていた人達のほとんどが
何かしら武道をやっている方が多く、無駄に気配を消してもダメなことに気づいて
場所に応じた気配の消し方・・いえ、場所の空気に溶け込む特訓をしたんです」
「「「「「「「まじでか」」」」」」」
「はあ」
そんなこと俺達にはまず無理だろう。
「じゃっ、じゃあ監視カメラに映らなかったというのは?」
驚きを隠せないランボが身を乗り出す
「えぇと・・いくら場所に溶け込んでも姿が見えては元も子もありませんので
素早く歩く特訓を・・・」
とちゃんが言った瞬間、ちゃんが消えた。
部屋にいた皆が息を飲んだのがわかる。「どこに!」と口開こうとした瞬間、
部屋の奥・・・俺のデスクの方から声がきこえた。
「したんです」
「「「「「「「!?」」」」」」」
そこには窓のカーテンの裾が捲れているのを直しているちゃん。
まさか!!
だってさっき彼女がいたのは入り口付近のソファの傍だよ?!
それが一瞬で部屋の奥に?!部屋といってもこの部屋は俺の部屋で
一番広い部屋だ。ソファから俺のデスク見るとき目を凝らさなければ椅子に座る俺の表情が
わからないほど・・・それを・・。
「もちろん、普段はこんなことしませんが」
会社でやったら大問題ですもの
と笑うちゃんが妙に頼もしい存在に思えた。
海山親分、あんたは良いメイドを送ってくれたよ。自分の身は自分で守れるメイド。
戦えこそはしないがこれで十分だ。
ここまでの能力を持っていたら別にイタリアに留まらせておく必要はないと思うけどまあいい。
彼女はボンゴレの・・いや俺のもの。
「うん、ボンゴレに相応しいメイドだね」
ソファから立ち上がり、ゆっくりと彼女へと足を向ける。
心の底から優しい笑みを浮かべれば、少し頬を赤くしたちゃんが「ありがとうございます」と
恥ずかしそうに笑った。うん、やっぱかわいいねv
「「「「「「「す」」」」」」」
「あ?」
「「「「「「すげぇ!」」」」」
「お前最高だな!!俺獄寺隼人な!!お前なら十代目のメイドにぴったりだぜ!」
「俺は山本武っつーんだ、あ、武でいいぜ?今度デートな?」
「じゃあ俺はランボと呼んでください。飴はお好きですか?俺は君が好きです」
「リボーンだ。なんなら俺の愛人にしてやる」
「クハッ、何のたまいているんです。さあ、愛しい!君の主人六道骸の腕の中にっゲフッ」
「引っ込んでなよ脳内常夏が。雲雀恭弥・・・君なら恭って呼んでいいよ。ついでに氏を雲雀にしなよ」
うん、この俺を差し置いていい度胸だなお前ら
しかも隼人以外ストレートに誘って口説いてねぇ?
グローブをはめて微かに炎を出してやれば、一瞬引き攣った野郎共。
けれどもすぐさま不敵な笑みを浮かべて、口には出さず目で挑発してきやがった
皆同じ意見だ
(ボスといえどもこればかりは譲らねぇ)
だってさ。おもしろい・・俺も譲らねぇよ?
ツカツカツカとちゃんに早足で歩み寄ると、優しく両手を肩に置く。
きょとんと首を傾げるその仕草がものすっごいかわいい!!
俺の言わんとしていることがわかったのか、回りの野郎共も嬉々とした表情で咲夜を見つめる。
「とりあえずね?ちゃんv」
「は・・はい?」
「「「「「「「夕飯は和食でお願いします」」」」」」」
ここ一ヶ月三食パスタでもう食い飽きたどころじゃないんだよ
実はヒロインも微黒説
そして骸さんの何かの歌のフレーズはもちろん彼の曲v
私だったらきっとブハッと吹いて笑い出す。
執筆12月3日