ちゃんへv
遠い所から来てくれて本当にありがとう!
いきなりで悪いんだけど、ちょっとテストさせてもらうね。
無事奥の城の僕の部屋に辿り着いてねv
美味しい紅茶とケーキ用意して待ってるから
君のボスよりv






「なんですかこれなんですかこれなんですかこれ!」



は門に貼ってある張紙を指差しながら、バッ千種と犬へと振り返った。
そこには無表情&あっけらかんとした顔で親指を立てている二人。



「「グッドラーック」」


「その親指、折ってもいいですか」


























「あ・・なんだかすっごい帰りたくなってきた」


荷物は運んでおくという二人に半ば押し付けるように渡すと、は重厚な鉄門を押し開いた。
ギィッと重厚な音が緊張する体をさらに高めて。
目の前にそびえる巨大な屋敷、そしてその後ろには古い城。まるで中世に迷い込んだのかと錯覚してしまいそうだ。
そもそもなんでテストなのだろう・・ボンゴレの方から海山一家に頼み込んだのでなかったのだろうか・・
そう不振に思いながらカツと石畳みの道を一歩踏み出したところで、はふと違和感を覚えた。



静かすぎる・・なのに何この視線の多さ



殺気は感じられない。が、ジッと探るような視線には「う〜」と思わず唸った。




(外に10人?手前のお屋敷の窓から8人・・
お城の方はわからないけどそっちにも10人くらいはいると思った方がいいかな?
そして至る所に監視カメラ・・メイドといえどもマフィア機関に関わる以上ある程度の力がないとダメってことなのかな)



だからなのかもしれない、海山親分が私を選んだのは。



小さい息をつくと、おろしていた髪をササッとひとまとめにしてお城を見やる。



「さて行きますか!」



















が門のところで思案している間。
監視カメラを通して彼女をジッと観察している者達がいた。



「わーっvかわいい子だね!やっぱ海山親分に聞いてよかったよ。
でもリボーン、メイドにこんな試験ちょっとキツいんじゃない?」


「何言ってるんだツナ。今時のメイドは戦えてなんぼだぞ。清楚なワンピースを翻しながら戦う姿を想像してみろ。・・・悦」


「おい、鼻血出てるぞサドかてきょ」


「クフフ、なかなか僕好みの子ですね。やはり僕が出るべきでした」

「ねぇ。綱吉すっごい暇なんだけど。ちょっと出てこようかな」


おい止まれ?何武器完全装備してんの?
骸と恭弥なんかが出ていったら彼女簡単に死んじゃうからね?
武・隼人・ランボが適任って何度も言わせるな?
そもそも新たにメイドを雇う羽目になった原因が君達二人だってわかってんの?」





給料より慰謝料の方が上回ってんだけど?




そうソファに腰おろしていた青年がにっこりと視線を向けてやれば、
骸、そして恭弥と呼ばれた青年は心外だとばかりに首を振りまた鼻で笑った。


「何を言ってるんですか綱吉。前回のメイドは僕が帰ってきたというのに、お風呂の用意をしていなかった。
しかも用意させたらさせたで入浴剤が入ってなかったんです。
その前の子は辛口麻婆豆腐を出したんです。僕は甘口派なのにですよ!
そんなことされたら、輪廻の海に蹴り落としたくもなるでしょう!」


「そもそもメイドの分際で僕の睡眠を邪魔するなんて言語道断」

「あれは恭弥、会議があったにも関わらず起きな「それにだよ?」スルーしやがったよ」

「この僕にあの南国果実・・「パ」「イ」「ナ」「ポー」のつく忌々しい果物をだす愚か者がどこにいる。
ふざけてるよね、許せないよね、咬み殺すしかないよね」



「うん、とりあえずお前らまとめて火炙りにしてやりたいよ。
そんな何様俺様我儘街道まっしぐらの君達のせいで何人メイドが辞めたと思ってるの?
少しは隼人や武を見習ってくんない?はい耳塞がなーい」



がたどり着くはずのボスの部屋の温度がガクンと下がった。
黒革張りのソファに優雅に腰を下ろしながら、ハニーブラウンの髪色をした
青年がにっこりと笑いながら、なにやらグローブらしきものをはめていて、
それを見た二人の青年の口が僅かに引き攣る。



「だって綱吉!辛口麻婆豆腐ですよ!!」

「パイナポーだよあのバカの触覚だよ?」

「それに!!・・・・・ちょっと待ってください、今のは聞き捨てなりませんね雲雀恭弥。誰が触覚です?」

「ワォ。バカの自覚はあるんだね。いっそのこと触覚ごとその髪を咬み散らしてあげようか」

「君こそなんです?睡眠を邪魔されたからってメイドに武器を向けるなんて、
女性には優しくすべきです」

「入浴剤ごときで騒ぐ奴に言われたくないね」

「何をバカなことを!入浴剤がなければ入浴だなんて言えません!!
薔薇の香りにラベンダー!!ミルクたっぷりの湯船の感動を雲雀恭弥!!
君は知らないのですか!!」

「必要ないね、風呂なんて入れればいい」

「なんて愚かな!!愚かすぎる雲雀恭弥!!!いいですかよく聞きなさい。
そもそも入浴剤の歴史は古く、紀元前・・」







ドゴォォ!!





「うるっせーよ常夏頭にアヒルが」


「「すいません」」


ソファ前のマホガニーのローテーブルが煙を立てて真っ二つに割れていた。
割った犯人は拳をテーブルに突きつけた体制のまま爽やかな笑みを、だがその背後にはドス黒いものを撒き散らしながら青年に向けていて。
ヒクリと固まる二人に綱吉と呼ばれたハニーブラウン髪の青年はさらににっこりと微笑みかけた。


「ほら、骸も恭弥も座りなよ。大人しくなぁ


「「喜んで!」」


綱吉が座るソファの真向かい、同じ黒革のソファに飛び乗るようにして並んで腰を降ろした骸、
そして恭弥と呼ばれた青年を溜め息混じりに見やると、
黒スーツに帽子を目深に被った青年−リボーンは再び監視画像へと視線を走らせ固まった。




「おい、あの女はどうした」


「え、ちゃん?まだロータリーなんじゃないの?あそこには確かランボが・・!?」


グローブを外しながら、監視画像を眺める綱吉も固まった。
外にはまだ茂みの影、息を潜めているランボや、このメイドテストに駆り出されたファミリー達。
まだ何も起こってないようだ。
だが、何も起こってないことが大問題だ。




「おかしくない?あの子が門に入って30分は経っているのに、なぜランボはまだ隠れているんだ?」


画面に食いいるようにツナは声を上げた、リボーン達も気になるように画面へと身を乗り出す。
いくつもある画面を見渡しながら、リボーンはフンと小さく鼻で笑った。


「上手く見つからないように忍びこんだってとこか・・だが手前の屋敷には隼人がいるからなそう甘くはねーぞ」


「おかしいですね、どのカメラにも彼女の姿が見えませんよ」


「それに騒がしくないね」



「・・・・・・・・ちょっと隼人に電話してみようか」













(十代目?)


「隼人、彼女は来た?」


(いえ、まだですね・・まだ外なんじゃないんですか?)









首を振りながら携帯を切ると、再び画面へと視線を向ける。
庭・屋敷内・廊下・・どの画面にも彼女の姿がない。



「まさか・・帰ってしまわれたとか?」


ポツリと呟かれた骸の言葉に、「いや」とリボーンがすかさず口を開く。


「それはねぇ。やっと探しあてたメイドだ、逃してたまるかと門という門は即オートロック、
塀にはン万ボルトの電流を流しているから逃げようとした途端あの世行きだぞ」


さらりと零れた言葉に、一瞬ツナ・骸・恭弥の表情が固まった。



「お前はまた何物騒なことやらかしてんだリボーン!!」


「だってぇ、早くメイドに来てほしかったんだもん。見てよ僕のワイシャツ、皺だらけぇ」


「かわいくねーよ、ってお前もワイシャツくらい自分でアイロンかけろよな」


「んだよ、うっせーな綱吉のくせに。」


「あ?」


「クハッ。ワイシャツごときで情けないですねアルコバレーノ!!
僕を見て御覧なさい!!シャツに皺一つありませんよ?!」


「Tシャツだからね。革コートにTシャツはありだけど、Tシャツにネクタイはないよね。センス疑うよね」


「五月蝿いですよ雲雀恭弥。横から口を挟まないでください。
前髪切りすぎた七五三が


「ワオ、尻尾の鶏冠頭に言われるなんて心外だね六道骸。新種の鶏かい?」


「おい、お前らいい加減に」


「「黙れよ、缶詰にしてやろうか」」


「・・へぇ?」


室内が一気に氷河期を迎えたようだった。
四人は同時にニヤリと笑うと、各々の武器を構えた。




「みっ皆様!ただ今お茶をお淹れしますので落ち着いてください!!」


「うんv危ないから下がっててねv・・ちゃんんん?!」


ギュッと拳を握りながら一歩踏み出したツナだったかが、次の瞬間驚きのあまり
叫び声を上げ勢い良く振り返った。
そこには先ほど門のところのカメラに映っていた女性。
メイドにと雇ったの姿。思いっきり固まるツナにきょとんと
首を傾げる。


「??如何なされましたか?ボンゴレ様」

あまりにも驚いているのか、なかなか口が開かないツナに
これまた驚きが隠せない骸が珍しく声を上ずらせる。


「ちょっ待ってください!貴女いつこの部屋に?!」


「え・・ボンゴレ様がローテーブルを割ったところからでしょうか六道様」


「かなり前じゃん!」


の言葉に瞬間的に復帰したツナが声を上げる。
少し落ち着いてきたツナ達だったか、一人さらに固まる者がいた。









六道様 六道様 六道様 六道様 ご主人様v






「クフォオオvv」

「だっ大丈夫ですか?!」



突然骸が鼻血を吹いて倒れた。びっくりして駆け寄るに、
恭弥は涼しい顔で骸を見下す。



「ふん、やっと死んでくれたね六道骸。花は添えてやらないよ」

「まだ息しておられます雲雀様」






雲雀様 雲雀様 雲雀様 雲雀様 あなたvv









「・・・・ふっ。いいね♪」





「ってそんな長い間この部屋にいたの?!どこに?!」

「え、ドアの前にずっとおりましたが」

「気配しなかったぞ」

「監視カメラにも写らなかったし、誰にも会わずに?ワォ、マジックかい?」

「恭弥、笑えないから」


困惑と疑惑の視線がに注がれる。
はきょとんとして首を傾げた。





「え・・だってこのテストはカメラや人に悟られずにボンゴレ様の部屋に辿り着くことですよね?」



「「「いや違う」」」


「ぇえっ;」










骸さん悶絶中。


執筆・11月28日