3ヶ月・・・そう確かに3ヶ月だったのね?


叔父さんに、そして親分さんに頭を地面がめり込むんじゃないかって思うほど、
頭を下げられて仕方なく了承したアルバイト。




約束は3ヶ月間だから!!後生だから!!



必死の姿に・・だから私は引き受けたのに・・
イタリアに来てもうすぐ一年が経とうとしています。




















+ホークアイプリンセスと7人の騎士たち+










[皆様長らくのご搭乗お疲れ様でした。当機はまもなくイタリア・ナポリ空港に到着します。
テーブルをおしまいいただき・・]


ふうっと溜め息を一つ零して、イヤホンを外す。
ついさっきまで流れていたクラッシックはジジッと数秒のノイズにかき消された後、着陸を知らせるアナウンスに切り替った。
なんとなく気だるい体を起こし窓を覗き込めば、遙か下界に異国の街並みがちらりと見え。



「イタリアか・・」



パタムとテーブルを閉じると、膝上に置いたままの書類に気づき、改めて目を走らせる。

それはこれから3ヶ月私が働く仕事場の資料。
1ページ目にはこれから働くところのエンブレムが記されていて。
いくら私が極道慣れしてるからって、マフィアでアルバイトだなんて・・。

突然だが私は叔父と暮らしている。
幼い頃両親を亡くし、日頃から親しかった叔父が私を引き取ってくれたのだ。
叔父はとても私を可愛がってくれた。中学・高校のお弁当を毎朝休むことなく
手の込んだものを持たせてくれるほどで。
私もそんな叔父をいつしか本当の父親のように思っていた。

そしてそんな叔父はヤクザである。私はこんな呼び方なんだかあまり好きじゃ
ないんだけど、ヤクザの幹部をしている。

海山一家といえば、国内のその道の人なら一度は聞いたことがあるだろう程
名前が通っている一家だ。
叔父はその海山一家の親分の右腕的存在。
なんでも小さい頃からの仲らしく、私もよく親分さんのお家に行って可愛がってもらった。
叔父はヤクザだけど、私はヤクザとはあまり縁のない生活をしてきた。
もちろん一家の人たちとはよく会ったり話したりするけど、それだけであって、
学校を卒業して就職する時も海山一家とは無縁のインテリアメーカーに就職。
叔父から独立して、小さいけどアパートで一人暮らしをしている。
無縁といいつつ、国内で3本の指に入るほどの一家の親分の右腕が叔父となれば
それ相応に危険は付き物だったりもして、
まあ・・・そのおかげでちょっと一般女性に比べたら特異な特技と、丈夫な体を持ってますが・・・・

それだけで・・・・





なんでイタリアンマフィアのメイド??







「頼むよ!ちゃぁぁん!!ボンゴレは海山一家とはふっるーい仲なのよ!?
ボンゴレ壊滅の危機かも!!とツナ君に泣きつかれたら手貸してあげたいじゃん??!」



「あぁ;うん;はい;・・あの・・頭上げてください海山親分;」


「でねぇ!!話を聞いたら幹部付きのメイドさんがいなくてホントっ
もう大変なんだって!!これ一大事だよ?!海山一家でいったら本部の家族50人を
賄っている食事係の徳さんが辞めちゃったって感じだよ?!」



「あ、すっごいわかりますそれ」


まさに肝っ玉母さん!といった徳さんが辞めちゃったら、この海山一家は
壊滅すると思う。そのくらい徳さんの存在は大きいもんね。


でもね・・・


「なんで私なんですか?」


「うん。メイドさんはしょっちゅう来るらしいんだけど、皆一週間ともたないんだって」



ちょっと待って?ちょっとタンマ?


それって・・とても過酷ということですか??




「あああああの;親分さん?それはどーいう・・」


「そこでねぇ!!ちゃんにぜひボンゴレのお手伝いをしてもらいたいわけなのだよぉぉ!」


「え・・あ、だからな何で皆一週・・「叔父ちゃんからもお願いだぁぁぁ!!!」




三ヶ月!!三ヶ月でいいから!!!

ボンゴレもその間にちゃんとメイド雇うって約束してくれたから!!!

あ、大丈夫叔父ちゃんが、ちゃーんと会社の方に連絡しておいたら

会社の人も海外のインテリアを勉強するチャンスだと特別研修扱いにしてくれたからさ!





「「頼むよ!ちゃああああん!!」」







そして私はイタリアの地を踏みました。


なぜメイドさん達が一週間もたたないうちに辞めてしまうのか
結局理由はわからなかったけど、幹部付きのメイドということはきっと情報をばらしたとかそんなところだと思う。
こういった裏の世界は至るところにスパイがいるものだし、ボンゴレといったら
イタリアではもちろん日本でも有名なマフィアだ。
きっと常にスパイや襲撃やら日常茶飯事なのだろう・・・。

って私、そんなとこで働いて大丈夫かな?;




でも、私は知らなかった。
交流の深いボンゴレの危機!と叔父と親分さんは言っていたけれど、
本当の目的は別にあって、それが・・・
















私を日本から遠ざけるためだなんて













この時は知る由もなかったんだ
































・・さんですね」


「お迎えにきったぴょん!」




荷物を受け取り、迎えを寄越すと指定されたロビーに辿りつくと同時に、
背後から二人の声がかかった。
ゆっくりと振り返れば、黒いスーツの青年が二人・・
一人はニット帽子を目深に被り、スクエアフレームの眼鏡をかけた如何にも神経質な青年と
ツンツンと思いっきり後ろ髪を遊ばせ、前髪部分はカラフルなヘアピンをクロスさせて留めている
ちょっと怖そうな青年。けれどその顔はどこか少年っぽさが残り、鼻上に大きな傷が走っていた。
ゆっくりと瞬きをすると体ごと振り返り、青年二人を見上げる。


「えっと・・ボンゴレの・・柿本千種様と城島犬様ですか?」


伺うように、前をニット帽子の青年に後をヘアピンの青年に向ければ
二人は驚いたように顔を見合わせた。



様!柿ピー!様って呼ばれたぴょん!犬様らって犬様」

「五月蝿い、犬。・・・・僕たちの名前を?」


きゃうきゃうとニッコリ笑うヘアピンの青年に、ニット帽子の青年が小さく
息をついてへと視線を向ければ、こくんとは小さく頷いてみせる。


「はい、ボンゴレ様より連絡がありまして、空港にお二人が迎えにきてくださると」

「でも名前ちゃんと合ってた・・」

「!そうだぴょん!もしかしたらオイラが柿本千種って名前だったかもしれないのに?!」

「うわ、ウゼー・・」


ヘアピン青年の言葉に、ニット帽子の青年は微かに顔を顰めて、
探るようにを見やった。
確かに名前くらいはあらかじめ連絡されていたかもしれないが、
顔写真まで入れていたとは思えなかった。
書類を郵送途中で盗まれるということも有り得るからなおさらのこと。
柿本千種の探るような視線にはフワリと笑い、思わず千種は
軽く目を見開いた。




「名前って不思議なもので、本人が意識してなくてもその人を表すんですよ」


そういってさらに微笑むに、千種と犬は不思議そうに顔を見合わせた。







































「え、は海山ファミリーには入ってないのー?」

「犬。軽々しく呼び捨てにしない」

「えー、らってその方が呼びやすいらもん。ねっは呼び捨てされるの嫌?いいよねー?」

「それ押し付け」


千種が運転する車の後部座席に座るに、助手席から犬が身を乗り出し振り返ってきた。
千種の窘める口調に、犬はキラキラとした顔をに向けて、ちょこんと首を傾げる。



あ・・なんだかすごいかわいいかも


「私はかまいませんが・・あ、もしかしたらボンゴレではメイドと口を聞いては
いけないとか決まりがあるのでは・・・」



「それはないよ、それに僕ら幹部じゃないし」

淡々とした口調で千種はウインカーを出す。

幹部じゃない

ということは、幹部やボスに軽々しく口を聞いてはならないということか。
はそれをすぐに頭にインプットした。
右折してすこし傾く車体に、「とっと」と助手席の頭部分を抱きかかえ体制を
整えると犬もうんうんと大きく頷く。


「そうそうっ!俺と柿ピーとクロームは幹部じゃないんら。
俺達は骸さんの部下で骸さんの命令でしか動かないんだ。
ボスや爆弾魔、野球バカなんかの命令はぜってー聞いてやんないもん。」



「クローム?・・骸さん?」


「うん、骸さん!!ボンゴレの幹部ら!」


「僕らはあくまで幹部である骸様の手先としてボンゴレに身を置いているだけ。
骸様がここにいるから僕らがいる。ただそれだけだ。」



「なんだか・・複雑ですね」


「まあね、でもアヒルんとこもそうだぴょん!草壁っちもアヒルの命令でしか動かないんら」


「雲雀ね雲雀。またボコボコにされるよ犬」





なんだかすごいところで働くことになっちゃったかなぁ・・
海山一家では幹部付きの部下だなんていなかったし、皆家族って感じだったから、
これは相当大変かも・・。
いくらメイドがいないからって、全員辞めたわけじゃないだろうし、
そこらへんは先輩にしっかり聞いて、覚えなきゃね。



そう人差し指を当てて考えていると、バックミラー越しに千種がチラリとを眺めた。



「話・・戻すけど。君は海山ファミリーじゃないんだね」


「え?あ・・たしかに叔父はその道の人間ですし、何か行事があれば
手伝いなどには行きますけど。普段は一家にかかわりのない会社で働いてます」


「そう・・」

「へへっじゃあ骸さんは安心だねv」

「だね」


「????」




気づけば車は賑やかな街並みをはずれ、並木道を走っていた。
やがて木々の間から城のようなものが見え、車は重厚な門を構えた屋敷の前で停止した。



「さて」



エンジンをきった千種が静かに口を開き、犬と同時に咲夜へと振り返った











「「無事に辿り着いてね」」




「はい?」



















やっちまった十年後。捏造だらけです;

2007年11月20日執筆