「あーかったるぅ・・結局朝までかかっちゃったなぁ・・」
澄み切った清々しい朝の青空に、体いっぱい新鮮な空気を吸い込んで盛大な伸びをひとつ!
と、いつもの自分ならそうしていたところだけれど、
今の私はそんな気力さえも惜しく眩し気に空を見やった。
徹夜明けの目にはこの清々しい青空は辛くて仕方ない。
しぱしぱと目を慣らすように瞬きを数回して、情けないくらいの大欠伸をすると
私はのっそりと家路へと足を踏み出した。
+元祖風紀員長来る!+
どんっ
小さな十字架を右へと折れたその時だった。一人の少年とぶつかったのは。
いつもなら難なく交わしたことだろう、けれどそんな朝飯前のことさえも回避できないくらいに私は疲れていたのか、
ぶつかった反動で尻餅をついてしまった。
「っつぅ・・・」
とっさに受け身を取ったから無様にこけることはなかったけど、「いたたたた」と声がしてパッと顔を上げる。
ぶつかった少年も倒れたらしく頭を抱えていた。
後頭部を打ったかも?病院に連れて行った方がいいかもしれないなと少し慌て立ち上がる。
「ごめんね君。頭打ったの?」
「え?あ・・いえっ大丈夫です!あのすいませんっ急いでて・・」
上体を起こした少年に手を差し伸べると、
びっくりしたように顔をあげ、次の瞬間にはひどく慌てたように顔を真っ赤にさせて私の手を取った。
「十代目ー!」
「ツナ大丈夫か?」
少年が走ってきた方から二人の少年が駆けてくる。
その二人が着ている制服も目の前の少年が着ている制服も見覚えのあるもので
おもわず「あら懐かしい」と微かに口端をあげた。
「獄寺君、山本・・」
少年は罰が悪そうに頭をかいた。
駆け寄ってきた二人をちらりと見やる。
一人は外国人かな?銀色の髪に青瞳、反抗的な視線を私に突き刺していて。なんつーか・・
あんま怖くない、うん。
もう一人はいかにもスポーツ少年といった子で、どこにもいそうな子?かな。
「テメェ・・この方にわざとぶつかったんじゃねーだろうな」
銀髪の子が下顎を燻らせて睨み付けてきた。
だからそんなことしたって怖くないって、少年。
「ちょっ獄寺君!俺がちゃんと前見てなかったからいけなかっんだよ
・・あのお姉さんも怪我してないですか」
ぶつかった子が慌てて、銀髪の子を止める。
銀髪君の腕を押さえながらその子は恐る恐る私を見上げた。
「ん、大丈夫だよ」と笑ってみせればその子は安心したようで。
「ところで・・・今八時だけど」
「はあっ遅刻ぅぅ!あのっすいません僕達学校がっ」
「うん、学校頑張ってね」
「はいっ本当にすいませんでした!」
走り去る三人の背中ににっこりと笑みが零れた。
「うん、元気な子達。いいことだ。・・ん?」
家へと足を踏み出そうと体の向きを変えると、ふと足元で何かが視界に入り目線を落とす。
「生徒手帳?」
見覚えのあるそれは校章がはいった赤茶色のもの。それを取り上げ裏返しにすると、
そこには先ほどぶつかった少年の顔写真と名前・クラスが書かれた学生証明書が入っていて。
「沢田綱吉・・君ね」
そう呟くとその手帳をコートのポケットにしまい、家とは逆方向に踵を返す。
「ってことはあの銀髪くんがスモーキンボムで、爽やか少年が時雨蒼燕後継者か
・・これからが楽しみな若きボンコレファミリーってとこですか」
これからおもしろいことが起きるかも。
そう考えながら私は並森中学へとのんびりと歩き出した。
「はー終わったー!お腹空いたあ!」
「早く飯食いましょう十代目!」
「今日は天気もいいし、屋上で食おうぜ!」
四時間目が終わり盛大な伸びをするツナに、コンビニの袋を持った獄寺と弁当を持った山本が寄ってくる。
三人で昨晩のテレビ番組の話で盛り上がりながら屋上へと向かう。
屋上のドアを開けると少し肌寒い風が隙間から入ってきた。
「チャオっす」
「うぉっリボーン!・・って京子ちゃんのお兄さん!・・に・・ヒヒヒヒヒバリさん??!!!」
「おうっ!飯食おうぜ!」
「・・ねぇ咬み殺していい?」
「んだとテメー!」
屋上のドアを開ききると同時にツナの耳を掠めたのは、リボーンの声。
ハッとして見やれば、ニッといつもの何を考えているかわからない笑みを浮かべていて。
リボーンが神出鬼没なのは今に始まったことではないので、ツナももう慣れっこだ。
しかし、今日は普段見慣れない顔ぶれに驚きの色が隠せない。
笹川了平がいるのは・・・まあ、珍しいにしても声をかければ喜んで来るだろう。
人好きのする満面の笑みを浮かべながら、「早く食おうぜ!」とツナ達を手招きする。
意外なのはフェンスに寄りかかり、腕を組んでいる雲雀の方だ。
雲雀は群れるのが嫌いと自他共に認める性格で、群れを見つければすぐさま隠し持ったトンファーを持ち出し、
攻撃してくるのだ。
そんな男が風紀委員の委員長だなんで疑わしいことであるが、誰もそんなことを口出せない。
口に出したら最後、三途の川を音速で渡りきれることだろう。
ツナ達を視界に入れた瞬間に出た雲雀の言葉に、獄寺が唸る。
また乱闘か・・と、げんなりするツナだったが・・。
「守護者に話しておくことがあってな。それに、ランチしながら皆で交流を深めるのもファミリーにとって
重要不可欠なことだぞ」
リボーンがそういうと、山本は「そうかそうか!」と一人納得して(たぶん半分は理解していない)
笹川の横に腰を下ろす。
「話しておくこと?」
そういえば・・ここにいる皆ボンゴレリングの所持者なんだ・・。
そう改めて思いながら、ツナはまだ雲雀に威嚇している獄寺を引っ張り山本の隣に
腰を下ろす。
それを満足気に見やるとリボーンは、いまだフェンスに寄りかかっている雲雀へと視線を向けるが、
フイと逸らされ。だが、リボーンは特に気にした様子もなく「さあ、ランチにするぞ」と腰を下ろした。
「リング戦でお前たちが勝ちとったリングはどういうものか、お前たちはもうわかってるよな?」
食後のコーヒーを味わいながら口開くリボーンにツナ達はコクリと頷く。
「実はお前たちと同じように、もう一人守護者がいるだ」
それは
大地の守護者
大地の守護者を探し出すこと
それがお前達リングを持つ者達に課せられた最初の使命だ
「大地の・・・」
「守護者?」
ツナと獄寺が不思議そうに呟く。笹川と山本も同じような表情をしていたが
雲雀だけはとくに反応示すことなくジッとリボーンを見つめていた。
そんな彼らにコクリと頷くと、キュッと帽子の鍔をつまむ。
リボーンはさらに語る。
ツナがもつ大空と対になる存在、それが大地だ。
そして獄寺・山本・雲雀・笹川・・あとここにはいない骸とダメ牛が持つリングは
大地に恵みや恐れを与える。
そしてその大地は人を表す意味も持っている。
考えてみろ、お前達が持つリングは人にどう映るのか。
嵐は畏怖を
雨は恵みと潤いを
雲は安らぎと希望を
太陽は信仰と温厚を
霧は不安を
雷は恐怖を
自然の脅威をありのままの姿で受け止める存在、それが大地。
「人の意味を持つ大地の守護者・・じゃあっその人もリングを?」
最初は一人呟き、後半をリボーンに向けてツナは口開く。
他の者は口にはしないものの、同じような表情で。
もし、その大地の守護者とやらがリングを持っていて、この間のようにまた
争奪戦を行うことになるのかもしれない。そんな不安が過ぎったのだ。
自分達が勝利を納めたリング争奪戦、その過酷さは今思い出すだけでも
節々が軋みあげるようで、ツナは思わず身震いをする。あの過酷な戦いを再び
繰り返すのか・・
だが、彼らの予想とは違う朗らかな表情でリボーンは「いや」と首を振る。
「大地の守護者は不思議なものでな、ボンゴレリングが持ち主に納まったときに
そのリング同士が共鳴して大地の守護者を選び出すんだ。
だから、俺も九代目も家光も誰が守護者に選ばれたのかまったくわからないんだ」
指輪を持つわけでもなく、とくに目印があるわけでもない。
「それじゃあ、もしかしたら日本じゃなくて
イタリアとか外国で選ばれたりすることもあるってこと?!」
「有り得る話だな」
「ちょっそれってかなり無謀じゃん!!」
サラッと頷くリボーンにツナは思わず声を荒げた。
でもそれは獄寺や山本達も同じだったらしい。
「そうですよリボーンさん!対象範囲が全世界だなんて;」
「はははっ全世界で鬼ごっこみたいな?」
「うむっそれは極限にそそられるな!!」
「バカかお前ら!!脳みそまで筋肉のスポーツバカが!!」
「でも、そいつは日本に・・しかもかなり近い所にいる。そうだろ?赤ん坊」
「「「「え・・・・」」」」
「流石は雲雀だな。鋭い洞察力は半端ねえな」
今までひたすら沈黙を保っていた雲雀がおもむろに口を開き、
紡がれた言葉にツナ達はきょとんと雲雀を見つめた。
「何間抜け顔陳列してるのさ」と四人にしげしげと見つめられたのが気に障ったらしく
キュッと雲雀の目が細められるが、それを制するようにリボーンが口を開く。
「何処の誰が、年は、性別は、どこの生まれのものか・・細かいことは何一つわからねぇんだ。
だけど、ボンゴレだって指くわえて待っているだけだなんて性に合わねえ・・・
だからお前達の持つリングにある細工をした」
リングの所持者が決定した時、そのリングから小さな光が弾かれそれがボンゴレが独自に
開発した洋皮紙に落ち、大地の守護者がいる場所をなぞるように。
「もしかしてその場所って・・・・」
ツナは思い当たったように呟く。ニッとリボーンが笑う。
「あぁ。ここ、並盛をリングは示した。」
大地の守護者は並盛にいる。
−2-A、沢田綱吉。至急職員室に来なさい。繰り返します・・−
一瞬訪れる沈黙に、間がいい!!と思わず突っ込みたくなるほどなタイミングで
校内放送を知らせるチャイムが流れ、一同は一旦気持ちをスピーカーへと向けた。
ジジッと機会特有のノイズがすると、聞き慣れた声が聞こえてくる。
そうだこの声は担任の教師・・・あー僕を呼んでいるのかーとツナはのほほんと聞いていた。
「え、僕?!」
ハッとして繰り返される内容に耳を傾けるが、間違いなく自分を呼んでいるようだ。
「えっ何?!僕なんかした?!」
「十代目を呼び出すなんて風上にもおけねぇな!てめぇから来いってんだ!」
「あっはっは、獄寺そりゃヒデーよ」
至急ということは今すぐ行ったほうがいい。
ツナはバッと立ち上がるとチラリとリボーンを見やった。
「ごめんリボーン・・・」
「かまわねぇぞ。話はこれだけだしな、今日は守護者がいるということだけを
まず教えるつもりだったんだ」
「そうなんだ・・じゃあ、僕行くね?!」
「十代目!俺も行きます!!」
「俺も行こうかな」
バタバタと屋上から校舎へと走っていくツナ達を見送ると、リボーンはクルリと
視線を笹川と雲雀に向けた。
「急ぐことはない、リングを持つ者の最初の使命が大地の守護者を探すこと
ただそれだけなんだからな」
「大地の守護者か!!どんな奴なのか極限に気になるぞ!!なあっ雲雀!!」
「どうでもいいよ。それに僕がこれを持っているのはあの男とまた闘うためだしね」
チャラッとYシャツの下からチェーンに付けられたリングを取り出す。
それを興味なさ気に見やると、フェンスから体を離しドアへと足を向け雲雀は校舎内へと消えていった。
「し・・失礼しまーす」
「お、沢田綱吉ー!朝方ぶり!」
静かにドアを開け、おそるおそる職員室に入ると明るい声が響いた。
「あ・・朝のお姉さん」
その声に肩をびくつかせ、声の主を探す。
と、こちらに近づいてくる人物にツナはあっと声を上げた。
はニコニコと近づくと「はい」とツナの手を取ってポンと手帳を乗せる。
「・・生徒手帳?」
「そう、ぶつかった時に落としたんだと思うよ」
「沢田、ちゃんとお礼言いなさい。わざわざ学校まで届けてくれたんだぞ」
いつの間にか担任も近くに来ていて、半分溜息混じりに笑う。
「あっはいっ」とちゃんと礼をいえば、気にしないでと笑い返され。
「すぐここに来るはずだったんだけど、朝モックしてのんびりしてたらこんな時間に
なっちゃって・・遅れてごめんね!!」と逆に謝られる。
どう返せばいいのかとツナが戸惑っていると、担任はへと視線を向けた。
「しかし久し振りだなー!」
「ははっ並中に来るの高1の冬休み以来ですもんね」
「????」
「こいつはここの卒業生なんだよ沢田。・・・ん・待てよ・・お前学校はどうした」
高校生だろうと顔を顰める担任には一瞬きょとんとするも、小さく吹き出し手をヒラヒラさせる。
「なーに言ってるんですか先生!とっくの昔に卒業してますよ」
「そうだったか?!いやあ、俺にとってはいつまでも生徒だからな」
そう笑い合う二人に、ツナも自然と笑みが零れた。
すると急に思い出したかのように担任はそうだ!と声を上げツナを見やった。
「沢田!に学校案内してやりなさい」
午後の授業は自習だから、さぼりにはならんぞ?
「へーさんは生徒会役員だったんですか。」
「そうそう、当時の委員会って生徒会が主体だったのね。各委員会の委員長が生徒会もやるの。
まあ委員会も少なかったしねー。当時の生徒会ったらいろいろ凄くてね!
あれ?今は生徒会って飾りだけで事実上は風紀委員会が権力握ってるって聞いたんだけど?」
違うっけ?とこちらを見てくるに、ツナとちゃっかり案内に同行している
獄寺そして山本はヒクリと口をひくつかせた。
「え・・;あ・・うー・・・はい;風紀委員会凄いですよいろんな意味で」
なんたって学校どころか病院も警察も・・町全体牛耳ってますから!!
なんて、言えなかったが。
そうツナ達は顔に冷や汗を浮かべ笑った。
脳内に薄笑いを浮かべトンファーを構える風紀委員長様を浮かべながら。
そんなツナ達の様子に気づいていないのか、は「懐かしいなあ」と校内を見渡す。
と、ある一点を見つめると楽しげに声あげた
「あはっまだ残ってたんだあれ!」
「え?何がですか」
首を傾げるツナ達ににっこり笑うと天井の隅っこを指差す。
「ほらっあそこ。靴跡が付いているでしょ?
校内改装の時に天井も塗り替えたんだけど、その時に不良君達が暴動を起こしてねぇ。
それ鎮圧した時の私の足跡なのあれ」
いやー天井乾いてなくて校長に怒られたよー
とカラカラ笑う。
天井に足跡?!暴動鎮圧?!
ツナ達に衝撃が走る
「ああああのー;生徒会でのさんのポジション・・委員会はどこだったんですか?」
「へ?・・・・あー風紀?」
元祖風紀委員長様きたー!
「え・・あ、あの鎮圧ってまさかトンファーでとか・・」
声を震わせるツナに咲夜はきょとんと首を傾げる。
「違うよー」
「そっそうですよねぇ!」
いくら昔の生徒会が凄かったからって、元祖風紀委員長だからって!
まさか今の風紀のようなことをしていたというわけではないだろう。
胸を撫でおろしかけたツナだったが・・
「トンファーは生徒会長が使ってたね。私は針千本」
「「「生徒会長がですか!つーかあなたは針!!」」」
あまりにも自然に、「今日の晩御飯あれがいいなー」的にサラリと凄まじくサラリと返された言葉に
ツナ・獄寺・山本は珍しく三人同時にハモった。
途中、山本の肩に飛び乗ってきたリボーンが物珍しげにを眺める。
三人のぴったりな息に咲夜はケタケタと笑い「うん、針」と廊下を進んでいった。
「並盛秩序の根元を見た気がする・・」
「そうっすね・・きっとその生徒会が諸悪の根源ッスよ」
「生徒会っていうよりギャングだなv」
体育館へと続く渡廊下に出た瞬間、不意には立ち止まった。
どこか堅い表情に思わずツナは息を飲む。
「・・さん?」
「どうしたんすか?」
獄寺と山本も不思議そうにを見ていたが、の表情は堅いまま。
「血の匂いがする」
「え?あ・・ちょっ待って!」
スタスタと早足に歩き出すにツナ達は慌てて後を追った。
辿り着いた場所は体育館裏。そこには壮絶な光景が広がっていた。
そこはまさに死体(生きてると思いたい)の山。
そしてその頂に立つ一人の少年。
「君、手加減という言葉を知ってる?」
「・・・ヒバっ・・・ちょっダメです!さん!!離れてください!!」
「誰?この学校の人間じゃないでしょ?」
「ひっ・・ヒバリさん!違うんです!!さんは・・」
そう、そこに立っていたのは、並盛最強にして最凶の風紀委員長の雲雀。
こちらに背を向けていたため、肩越しに振り返ったその表情はとても鋭く、ツナはおもわず足が竦んだ。
獄寺君も山本も雲雀のことを良く知ってるせいか、二人とも少し冷や汗をかいている。
だが、は怯えた様子もなく、コートのポケットに両手を入れながら眺めるように
目の前の少年を雲雀を見つめていた。
ザッと音をたてて雲雀がへと足を踏み出す。それに気づいたツナが慌てて口を挟もうとするが、
雲雀の方が早かった。
「部外者が堂々と僕の学校うろつかないでくれる?」
チャキと金属音が走る。トンファーだ
「咬み殺す」
「さん逃げてぇ!」
「逃がさないよ!」
ツナの叫び声にニヤリと雲雀の顔が不敵に歪む。
へとトンファーを振り上げる。
「逃げないよ、坊や」
「!」
「「「なっ」」」
パシッ
一瞬目の錯覚かと思った。
まさかあの雲雀の攻撃を・・・トンファーの持ち手を握る雲雀の手ごと押さえつけるなんて・・
それはツナ達だけではなく、雲雀本人も驚いたようだった。
ふとは雲雀が羽織っている学ランの腕についている腕章に目を走らせる。
風紀委員
トンファー
咬み殺す
「あぁ、君が雲雀恭弥君ね」
「!・・そうだけど?」
「それが何?」呟きながら体制を変え、さらにトンファーを打ち込むが打たれたのは空気だけ、
はヒラリとよけると、ぽりぽりと人差し指で頬をかいた。
「部が悪いや、帰るわ」
「「「え?」」」
「はいそうですか・・って帰すと思ってるの?」
ツナ達の間抜けな声に雲雀が素早く動く。トンファーを回転させてへと突っ込んで行く。
青ざめるツナ、獄寺そして山本だが、はケロッとした表情で突進してくる雲雀を見やった。
キィィン
一瞬何が起きたのか、ツナ達は強張った表情のまま、目の前の光景に呆然としていた。
ツナ達が悟ったのは雲雀のトンファーで傷つけられたの姿。
だが、現実には違った光景があった。
「な・・に・・?」
地面にうずくまるのは、カランと乾いた音をたててトンファーを落とした雲雀の姿。
傷つけられたという風ではない。
だが、雲雀は指一本すら動かすのがもどかしい状況にあった。
無様に地面に手をつく雲雀を深々と溜息を吐き出しながら見やる。
その手には細く長い針があった。
「何・・した・・のっ」
苦し気に顔を上げる雲雀に「わぁ」と驚いたように声をあげる。
「あら、全神経痺れさせたのに顔を上げられるなんて・・流石は雲雀君ね。
あーあー無理に動かさない筋いかれるよ?」
そう言いながらトンファーへと手を伸ばそうとする雲雀へとしゃがみ込み、その手をそっと制す。
ムッとした顔をする雲雀に小さく笑うと、ポンポンと子供をあやすように雲雀の頭を撫でた。
驚きに目を見開く雲雀だが、驚いたのは雲雀だけではない。
(あのヒバリさんの頭を撫でたー!)
ツナは全身から汗が噴出すような感覚に襲われる。
「な・・・ちょっ」
撫でられている雲雀本人はそれ以上に驚きだ。
まさか・・まさかっ風紀委員長として学校ではもちろん、街でさえも恐れられている自分がっ
こんな自分よりもはるかに弱そうな女に無様に地面に伏せられた挙げ句、頭を撫でられるなんて!?
その手をおもいっきり払ってやりたい!けれども体がいうことが効かない
それに・・・
恭弥、貴方は雲雀家宗家の跡取りとして・・・
恭弥さん、なんですかこれは!!こんなことでは跡取りとして当主に顔見せできませんよ!!
こんなことで倒れるとは何事だ!!早く立たぬか!!
何これ・・・
何なの
何
この暖かい手
何
この心地よさ
知らないこんな感覚 何なの
「?おーい雲雀くーん?」
「っつ・・元に戻しなよ」
「うわ、偉そっ。まあ、あと五分もすれば動かせるからさ、大人しくしてな」
じゃあね、風紀委員長君
そうちょんと人差し指を雲雀の額に当てるとサッと立ち上がり踵を返す。
呆然としているツナ達にじゃあ雲雀君のことよろしくね!と声をかけると、のんびりと
来賓用玄関口へと足を向けた。
「あ、二時から予約入ってたんだ。早く戻らなきゃな〜」
腕時計を見やって、やばっとちょろりと舌を出す。
「大戸のじっさん、時間に厳しいもんなー」
そうわしゃわしゃと頭をかくと、のんびりとした足取りで校門へと歩き出す。
まだしっかりと覚えている、校歌を口ずさみながら。
「緑たなびく 並盛のー」
ダーイナクショーナク ナーミガイイーvvv
「・・・鳥ィ!!私の歌邪魔すんなぁ!!!」
なんだあの鳥?。
(2007年11月5日執筆)
まだちょっと書き慣れてない感;