「夏休み」
ホグワーツ魔術学校は只今夏休みを迎えていた。
生徒達は皆、それぞれ家族の元に戻り新しく迎える新学期に控え
勤勉に励んだり、己の得意分野の向上を目指したり・・・・
それは生徒のみならず、ホグーワーツで教鞭を握る教師も同じことで・・・
魔法薬学教授のセブルス・スネイプもまた己の研究に没頭する夏休みを送っていた。
とある魔法族が住まう町。その町外れにスネイプの家はあった。
大きくも小さくもない程よい感じの家、家を囲む庭にはおそらく彼が育てたのであろう
薬草が所狭しに生息している。
「あれ?スネイプ先生ーーーー?」
よく晴れた昼下がり、スネイプは庭に出て薬草を採取していた。
後ろの方から自分の名を呼ぶ声がして、スネイプは穏やかだった表情を一気に不機嫌な表情に変化させた。
(「先生」と呼ぶのは・・・生徒だ・・・・。唯一学校から開放される至福な休暇に生徒に会うなど・・・・)
そう舌打ちをするとスネイプは、眉間に皺を寄せて振り返った。
だが、それは一瞬のうちに驚きの表情へと変わる。
「ミス・?」
スネイプの家と路地を隔てる、フェンス越しにかわいらしい少女がこちらに手を振っていた。
長い黒い髪を風になびかせ、白いワンピースが美しく浮かび上がる。
彼女の名前は・。
ホグワーツ生で次期7年生。日本から来た魔法使いで所属の寮はスリザリン。もちろん彼女のことは知っている。
自分はスリザリンの寮監だ。その美しい容姿はもちろん、その声、頭の良さ・・・・・
だがスリザリンには似つかわしくない明るく・あっけらかんとした性格・・・
所属寮関係なく誰にも優しく同じように接し、笑顔を絶やさない。
そんな彼女はスリザリンのみならず他寮の生徒からも好かれている。
そして・・・じつは・・・・彼女の寮監でもあるこの自分も・・・・
・に惹かれていた・・・・。
「ミス・・・・どうしてイギリスに?君の故郷は日本だろう・・・・」
驚きの表情を隠せないスネイプににっこりと笑う。
その笑顔がスネイプの心を捕らえて放さない・・・。
「えーっと、家の仕事でこっちに・・ほら私の家、透視や祀り事で生計立てているでしょう?
父の手伝いでこっちに来たんですよ〜vんで、早めに仕事が終わったから、散歩してたのv
あ・・でね!先生!私の帽子、風に飛ばされちゃったの。取ってもらえますか?」
はお願い!というように手を合わせて、スネイプの庭の木にひかっかている麦わら帽子を指差した。
スネィプは「あ・・あぁ」と頷いて、麦わら帽子を取りのもとへ来た。
「ありがとうございますv」とはにっこりと笑い、麦わら帽子を受け取るとちょこんと被る。
そのかわいらしい姿にスネイプは頬が熱くなるのを感じた。
は不思議そうに庭を見渡し、スネイプを見つめる。
「ひょっとして・・・ここ先生のお家だったり?」
「あぁ」
スネイプはに見惚れていることを悟られないように咳払いを一つした。
は興味津々な表情で、スネイプの家の庭を見渡した。
「うわ〜v薬草がたくさ〜んvvあの・・拝見してもいいですか?」
ちょっと不安そうに見あげてくるに、スネイプは苦笑いをして、
を庭へと促した。は嬉しそうに庭に咲き乱れる薬草を一つ一つ丁寧に見つめる。
スネイプはそんなの姿を眺めながら「あぁ」と思い出した・・・
「そうか・・君は魔法薬学や薬草学が得意だったな・・」
「へへーー得意ですvでも先生には負けますねぇ・・v」
そうニッコリと微笑みを向けてくるにスネイプは少し余裕の笑みを見せる。
「当たり前だ。教師が生徒に負けてたまるかね」
「うぅ・・そうきましたか・・・でも先生の授業大好きですv解かりやすいしv」
そういっては黄色の花をつけた薬草をそっと撫でた。
スネイプは驚きのあまり声を失ってしまった。
大好き
もちろん授業に対してだろう・・だがぞれが自分自身に向けられているようで・・・
(何馬鹿なことを・・・が我輩のことを思うはずがない)
スネイプは自嘲しながら小さく首を振ると、採取した薬草を入れた籠を手に取り
に「お茶でもどうかね?」と声をかけた。
「えっえっ!いいの?!」
「?何をそんなに驚いている・・;」
「だってだって先生のお家だよ!先生の超!プライベート空間だよ?」
「・・・・・・・いるのかいらんのか」
「いただきますv」
そういって、はスネイプの後に続いて家へと入っていった。
「わあv・・・・・・・・・・普通・・・・のお家ですね・・・・・・・・」
「何を期待していたのだ;君は;」
「え・・こう・・・ほら・・・ねぇ?」
怪訝そうに問うとは、アハと空笑いをして頭をかいた。
大方、学校の魔法薬学教室の暗さをスネイプの部屋と重ねていたのであろう。
「・・・・・・・・・・スリザリン1点減点・・・・・」
「ぇえ・・」
「今学校休みなのにぃ・・・・」と頬を膨らませるに苦笑いをして、庭が一望できるテラスへとを促した。
程よい夏の日差しがテラスに差しこむ。庭に咲き乱れた薬草が美しく光っていて・・・
テーブルにつきながら庭いっぱいに広がる光景に釘付けになるに優しく微笑み、
紅茶の用意をしにキッチンへと足を運んだ。
火にかけられたポットがクツクツと音を立てはじめる。テラスの方からの鼻歌が聞えてきた。
そっとテラスに目をやれば、こちらに背を向けるかたちでテーブルについているが足をプラプラさせながら
庭を眺めている。そんな後姿がとてもかわいらしくて思わず笑みがこぼれてしまう。
やがて、家の中に紅茶の香りが立ち込めた。
の鼻にも紅茶の香りが掠める。カチャカチャと音がしてスネイプがテラスに紅茶を運んできた。
スネイプもテーブルにつき2人のお茶会が始まった。
「はふぅvおいしいです〜v」
紅茶を一口喉へ通したが頬を染めて微笑んだ。
スネイプは紅茶如きでこれほどまで喜ぶかと首を傾げたが、あまりにも可愛いの仕草に
優しく微笑む。
「そうか・・それはよかった。いちお・・我輩がブレンドしたものだ」
「ぇえv先生のオリジナルなの!?うわーうわー!!!嬉しいv先生の紅茶を飲めるなんてv」
パアっとの表情が明るくなり、思わずスネイプは固まってしまった・・・
可愛い過ぎる・・・・
は「私って幸せ者〜v」といいながら茶菓子のクッキーを口に運んだ。
一瞬の動きが止まり、スネイプへと視線を移す。
「む・・これローズマリークッキーだ・・ひょっとしてこれも先生が?」
「あ・・・あぁ・・・まあな・・・」
少し照れながら、スネイプはそれを隠すように紅茶を口に運んだ。
「みゅ〜vおいしいよ〜v先生!!先生って器用なんだねv」
「紅茶のブレンドも菓子も、薬と同じだよ・・葉や粉を測り調合する・・簡単だ」
「うーん・・お願い・・・薬と同じにしないでくだしゃい〜(泣)」
「学期末の実験調合ムカデやらカエルの卵使ったんだからぁ〜」と少し泣きそうな顔をして
紅茶へと口をつけるにスネイプは声を出して笑った。
は「そこ笑うところじゃない〜!」と頬を膨らましたが。
そんな楽しい会話はあっという間に時を駆け巡るもので、ダイニングから5時を知らせる音が鳴り響いた。
は驚いて腕時計を見る。
「うっそぉ・・もうこんな時間?って先生ごめんなさい!長い時間お邪魔しちゃって・・」
申し訳なさそうにスネイプに頭を下げるをスネイプは優しく制した。
「いや・・我輩も楽しかったよ。偶然とはいえ君に会えて嬉しかった」
「へへ・・・先生にそういってもうらえると嬉しいですvではそろそろホテル帰りますねv」
父さんとはホテルで待ち合わせしているんですよvと帰り支度をする。
本当はもっと彼女とお茶をしていたいスネイプだが、強引に引き止めて彼女に嫌われたくない・・
少し先まで見送ろうと口を開くと、は嬉しそうにありがとうございますと微笑んだ。
「あーあー本当に残念v」
「?何がだね?」
口を尖らせて隣を歩くにスネイプは首を傾げた。
「授業の教え方は丁寧で、作る紅茶やお菓子はとてもおいしくて、先生魅力的でとってもかっこいいのに!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで彼女がいないの?」
「ごほっ」
思いもしないの発言にスネイプは思わず咳をした。
「な・・何を言うんだ君は!?」
「えー?だっていないでしょう?いなさそうだもん。絶対!!」
「・・・・・・・・・・・悪かったな・・・・その通りだ」
「先生そろそろ考えた方がいいですよ?先生ほどのいい男がもったいない!!」
「余計な世話だ」
好意を寄せている相手にそう言われてしまい、スネイプは心が深く沈む感じがした。
心が乱れているのを象徴するように、歩調が早まる。
は生徒、自分は教師。
確かに自分はのことが大好きだ・・いやそれ以上の感情を抱いているといっても過言ではない。
だが・・は自分のことを優しい教師としか見てくれない。
もちろんそれが自然なことであろうであるが・・
スネイプは不機嫌そうに歩調を早めた。
は慌てて小走りについていく。
「先生!ちょっと早いって!!!」
「早く帰らねばお父上が心配されるであろう」
「ひょっとして・・今ので怒ってマス?」
「気にするな。今に始まったことではない。たびたび言われることだ。」
「ふーん」
「ふーん?」スネイプはますます眉間に皺を寄せた。
この娘は我輩が自分をどう思っているのか・・ちっともわかっていないのか!?
スネイプはいつでもの傍にいた。
授業の実験中よくの元に周り細かくアドバイスをし、食事の時は必ずの傍を通り
彼女に声かけて自分の席につく。廊下ですれ違う時も同じ事で・・・
口には出さないものの、へのアプローチはさり気なくしてきたつもりだ。
勘の鋭い者ならとっくに気づいてもおかしくない。
だが、は超抜けているのかまったく意に返そうとせず・・・
にっこりと答えるだけだった。
ここまでくればもう直接口で伝えるしかないのか・・・
だが、スネイプはそれができずにいた。もしも彼女が自分を拒絶したら・・・
そう考えると胸が締め付けられるように痛かった・・それに自分が監督を務める寮生・・・・
お互い気まずさに苦しむのも目に見えている。
「ねー先生?」
「何かね?」
小走りになりながらついてくるに振り返ろうとせず、スネイプは前に視線を向けたまま答えた。
「ちょっ・・先生・・待っててばぁ・・・もう〜先生私服だから・・マントないしー!!!
マント着てたら捕まえやすいのにぃ・・・って待ってよぉ・・・・・・」
「君は人のマントを掴んで相手を止めるのかね」
「だって!この場合それが手っ取り早いもんv」
「・・・・・・・・・・・・・・・・(怒)」
「先生?」
「聞いておる」
スネイプは少しだけ歩調を緩めて歩いた。
それはにも伝わったらしく、ちょこんとスネイプの隣を歩き出す。
そっとスネイプの手にの手が滑り込んできた。
驚いてを見下ろすと、にっこりと笑いかけてくる。
「だったらアタックしてもいいですかv?」
「?何をかね・・?」
何をいっているのかわからずスネイプは少し首を傾げた。
はチョイチョイと手招きして、スネイプの耳に何かを話そうとする。
怪訝そうにへと身をかがんでやると・・・・・・
「!?///////ミ・・・ミス・ッ・・・・」
「へっへーvもうここでいいですvそれじゃあ新学期にv」
はにっこりと微笑むとサッとスネイプに背を向けて、町の中へと走っていった。
後には呆然と顔を赤く染めたスネイプが立っていた。
彼が踵を返して家に向かったのはそれから数分後のことだった・・・
「フッ・・・ミス・・・・新学期を楽しみにしてるぞ・・・・」
スネイプの表情はとても穏やかだった。
あの時、身を自分に合わせてくれたスネイプの頬にはそっと小さい口付けをした。
そして耳に小さく囁く。
「それじゃ私が先生の心盗んじゃいますねv新学期から覚悟してくださいよv」
新学期まであと1ケ月。
スネイプは新しい学校生活が早く始まらないかと心躍っていた。
暑中見舞い申し上げます!
といってもこちら(千葉)はぜんぜん暑くありませんが・・
ということで!
きりきり帝国掲示板に書き込みしてくださる皆様に捧げる教授夢!!
突如として思い立ったサマーギフト押し付け企画(笑)
何を基準に、またいつそんな企画をやるか定かではありませんが、
また、機会があったらやってみたいと思っていたりv
今回は当サイト掲示板に書き込みしてくださっている方で
メールアドレスが確認できる方に送信させていただきました。
このドリームは
さゆり様・坂下美咲様・shiho様・琉嘉様・sakura様・あやや様
のみお持ち帰りできますv