「小さなありがとう」
冬の寒さが和らいできたある日。
いつもは次の授業へと足早に移動する生徒達で賑わう廊下。
楽しく談笑しながら、真剣な表情で参考書を開きながら・・・・
けれども今日はしんと静まり返っている。それは今日が日曜日で全ての講義が休講だから。
ほとんどの生徒がホグズミードへと出かけ、開放された大広間ではちらほらと私服姿の生徒達が談笑しているだけ。
そんな穏やかな日。
とパンジーの2人は普段入ることの出来ない調理室にいた。
目的は一つ!!
「ドラコに何かをお菓子を作りたい!!」
と意気込むパンジーはお菓子作りの得意なに手伝ってと抱きついてきたのだ。
特別な行事や理由はないけれど、大好きな人に手作りのお菓子を食べてもらいたい!!
そう、顔を真っ赤にさせているパンジーにはにっこりと頷いた。
寮監のスネイプ先生から、調理室使用許可をもらった2人は嬉々として調理室へ向かった。
屋敷しもべ達が物珍しそうに見守る中、ボウルに粉をふるい、一つずつ卵を割り落としていく。
丹念にかき混ぜたら、そっと型へ流し込んでオーブンに・・・・
焼きあがる頃には調理室いっぱいに甘い香りが漂う。
ふわふわと形のいい出来具合に、2人は顔を見合わせてにっこりと微笑んだ。
かわいいバスケットにいれて、リボンをかけて。
マドレーヌ菓子をしっかりと抱えてパンジーが出て行くのを、にこりと送り出すと、
は余っているマドレーヌに目をやった。
「へへ・・・作りすぎちゃったね;」
の目の前にはマドレーヌの山。
パンジーはドラコに、もある人のためにと作ったのだが、どうもかなり作りすぎたようだ。
隣で不思議そうにマドレーヌを見つめている屋敷しもべ達をみてくすりと笑うと、
は必要な分だけバスケットに入れて、調理室を後にした。
扉を閉める前にそっと振り返って・・・・
「お邪魔したお礼v皆の分だよv」
足早に歩くの耳に、屋敷しもべ達の歓喜の声が耳に響いた。
せっかく良く晴れた日だというのに、スリザリン寮監であるスネイプは冷たく薄暗い地下牢の自室で
読書に耽っていた。スネイプの自室はスリザリン寮よりやや奥にあり、ここにはスリザリン生もあまり訪れない所だった。
だから、戸をノックする音もほとんど聞えない。誰にも邪魔されずに読書に耽れる。
とても有意義な時間をスネイプはいつも手にしていた。
そんな今日も厚いを本にかじりついて・・・
コンコンコン
滅多に鳴ることのない、ノックの音にスネイプは怪訝そうに顔を上げた。
その眉間には深く皺が刻まれている。
せっかくの有意義な休日を邪魔するのはいったいどこの輩だろうか。
もし、授業のことで聞きにきた生徒なら、
「授業を聞いてなかったのか」と散々嫌味を言ってやろう・・
スネイプは読みふけっていた本が、山場を迎えていたところだった。
楽しい所を邪魔されたというわけで、チリチリと苛立ちが起こる。
「入れ」
そう、さも不機嫌そうに口を開けば、重そうな音を立てて扉が開いた。
「あっあの!!〜っス・・・スリっザ・・リンの・・・っ」
入ってきたのは良く知っている・・・自分の、スリザリンの生徒だった。
重そうな音を立てる扉は、本当に重く、今入ってきた小柄な生徒にはかなり大変な動作のようだ。
う〜と顔を顰めて扉を開けつつも、必死に自分の名を名乗ろうとする生徒に思わず笑みが零れる。
でもそれは、生徒の行動がおもしろいだけではなくて・・
扉に潰されそうになりながら、必死で入ってこようとしている生徒のところまで足早に向かうと、
易々と扉を支えて、生徒を中へ促す。
「あう〜・・ありがとうございましたー。」
「ミス・。どうしたのかね?」
ふーと目を細めて溜息をつくに苦笑いしながら、先ほどの苛立ちをすっかりと消えてしまった
スネイプが優しく問いかけた。
ここに訪れる生徒は少ない。それが自寮の生徒でもだ。
けれども、目の前のこの生徒だけは違っていた。
スネイプの怪訝そうな問いに、はニッコリと微笑むと先ほど焼いたマドレーヌの籠をスネイプに見せる。
「いつもお世話になっているスネイプ先生に、お菓子を作ってきたんです!」
この生徒はたびたび、自室へと訪れる。
あるときは授業のこと、あるときは進路のことで・・・・
いつも笑顔を絶やさず、希望に満ちた活き活きとした瞳。
なぜこの生徒がスリザリンになったのかと、いまだに首を傾げるほどだ。
「ほお・・・・マドレーヌというものだな」
「はいv」
のキラキラした笑顔に、優しく微笑むとスネイプはが手にしている籠を覗き込んだ。
「食べてくださいv」とさらに微笑む、に紅茶でもどうだね?と踵を返して棚から紅茶缶を取り出す。
ソファに座っているようにとへと振り返ると、は何か困ったように「ん〜」と顔を顰めていた。
怪訝そうにどうしたのかと問えば、はまだ「ん〜」と首を傾げてくる。
「紅茶は嫌いだったかね?」
今まで何度か紅茶を勧めてきたことがあったが、いつも嬉しそうに頷いていたはずだ・・・
もしかして、嫌いだったのか?そうしたら今まで無理にすすめていたような気がして、ほんの少し胸が痛んだ。
けれどもはブンブンと首を振る。
「いっいいえ!!大好きです!!スネイプ先生の淹れてくださる紅茶は絶品です!」
そう真っ赤にさせて声を張り上げ、小さく「ただ・・」と呟く。
「今日。とても良いお天気なんですよぉ」
「うむ。たしかに今日は久しぶりに良く晴れたな」
「そうなんです!!だからお外でお茶しませんか?!」
「・・・・外・・・でかね?」
「はいv」
まるで春の太陽のように、じんわりと温かい笑みを浮かべるにつられて思わず笑みが零れる。
たまには外で茶をするのもいいかもしれないなと、スネイプは棚から水筒を取り出した。
「わv先生、水筒持ってらしたのですか!」
「ん?・・あぁ・・たまに外で本を読むこともあるのでな」
水筒に紅茶を注ぎながら、に笑ってみせればほんの少しの頬がピンク色に染まった。
キュッと水筒の蓋を閉めれば、準備は整って。
「さて出かけるかね」と問えば、は嬉しそうに目を細めて扉へと軽い足音を立てる。
けれども、扉の前で困ったように口を尖らせた。
「扉・・・開けられない;」
そんなに軽く吹き出すと、易々と扉を開けてに道を作ってやる。
いつもお世話になっているお礼にと、焼いてき菓子のバスケットを軽く揺らすの頬を、
春の風がフワリと掠めたある日の出来事・・・。
久しぶりに書けたドリーム・・・えとまさにスランプってますよなドリーム?
春で、お世話になっている先生にお菓子を焼いて、外でお茶!!(まんまだ。)
たまにはぁ、生徒らしいドリームを書いてみたかったのです。
でもってフリードリームだったりします。(いらないから)
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