夏休みに帰郷する生徒達を乗せたホグワーツ特急が遠ざかって行くのを、
スネイプは虚ろな目で、そして諦めるような表情で見つめていた。











+判決の時+







深い溜息を吐き、足元のトランクを持つ。
もしかしたら、愛しい者の手がつながれていたかもしれないもう片方の手をぼんやりと見やると、
静かに踵を返した。わが家へと。

夏休みに入る一ヶ月前にの裁判が行われた。
なぜが裁判にかけらなければならないのかと、押し黙るダンブルドアにスネイプは詰め寄った。
ダンブルドアは深いため息ともに重く口を開く。

「決まっていたのじゃよ、セブルス。もし、次にあの子が再びヴォルデモートに
操られた時、魔法省は彼女の存在を明らかにし裁判にかけると。
これ以上被害を出さないためにな。そしてのためでもあるのだ。」

被告人席と引き出されたは、引きずるほどのローブにすっぽりとフードを深く被っていた。
これはヴォルデモートの子供が、男なのか女なのか、わからないようにするためであった。
そして彼女の発言は一切を禁止され、は首を横に振る、縦に降るの2選択しかなかった。
両脇にディメンターが付き添いは石の椅子へと座らされた。
魔法省の役人がの生い立ちから今まで彼女の身に起きたことを演説する。
時折、傍観者席から息を呑む声や悲鳴ににか声が起こったが、スネイプはなにも聞き取ることはなかった。
ただ、ただただたじっと姿を隠されたを見つめていた。
背を伸ばし、まっすぐに裁判官を見つめているであろうその姿はまるで、
覚悟ができていたのであろうとスネイプの心を痛ませた。
ぎっと握るスネイプの拳を見つめながら、隣に座るダンブルドアはそっと小さく囁いた。


「セブルスよ、辛いのなら退席した方が良い」

「大丈夫です」



は覚悟を決めていた。
ならば自分は最後まで彼女を見届けたい。スネイプは小さく首を振ると再びを見つめた。
時間をかけながら、裁判は静かに進んだ。
彼女の運命に共感する者、渋い表情をする者、
アズカバン送りでいにしろ、それ相応の罪を科すべきだと唸る者。
裁判は長く長く続いた。


そして下された判決。




スネイプは裁判が終わり、が退席したあともしばらくそこから動くことはできなかった。


































有罪。





























けれども本人の意志とは反する罪にアズカバンへの出獄は却下された。
しかし、彼女がヴォルデモートの血を受け継いでいる限り、惨劇は再び起こるであろうと裁判官は静かに語った。









「よって被告を強力な魔法により、被告の持つ力を封印、また記憶を忘却することを命じる。異議は?」






誰もが沈黙を守った。
そしてその数日後、刑は執行された。



後日ホグワーツを訪れたムーディの話によると、彼女の持つ力は強大な魔法により封印され、
今ではスクイブ同様であること、記憶も消し去られ自分は孤児であるという記憶を植え付けたということを
スネイプたちにそっと伝えた。何かききたそうなスネイプにムーディはすまなそうに首を振る。






「残念だが、彼女の所在は口外禁止となっている」





のついてはその呪われた過去以外、一切公表されることはなかった。
彼女のことを知る数少ない人間でもあるハリーやロン、ハーマイオニーそしてシリウス達もに会いたがったが、
ムーディは首を振るだけだった。
渋い顔をして踵を返しかけたムーディだが、ふと立ち止まって静かに呟いた。振り返らずに。




「あの子の状態が落ち着き、魔法界に支障がなければきっとどこかで会えるだろう」






































魔法省の一室に最近新しくできた部屋がある。それはの部屋だった。
記憶を消されたは一切の所持品を処分された。
昔の写真で記憶が戻ってしまう可能性もあるかもしれないからだ。
すっきりしすぎた部屋に、小さい花束ひっそりと飾られている。
ベッドにちょこんと足を抱えては座っていた。小さい窓からは夕焼けの赤い空が覗く。
じんわりと部屋を朱色に染め上げる光景には小さく微笑んだ。



「わーvきれー」



腰まで伸びた美しい髪は黒い髪は短く切られ、そっと窓を開ければ涼しいそよ風がそっと頬を撫でる。
心地よい風に思わず目を細めてにっこりと笑みがこぼれた。
この部屋は数日だけの部屋・・・今日からは・・






コンコンコン







軽いノックの音が耳に響き、かちゃりとドアが開かれた。
振り帰ったの顔に満面の笑顔が浮かぶ。




「お父さん!」



「用意はできたか?さあっ今日からおまえの家に帰るぞ」



「はい!お父さんvこれからよろしくお願いします!」









少女はトランクを持つと、新しい父親にかわいい笑顔を向けた。