「黒い人!」























逃げきれると思っているのか

逆らうことのできぬ運命の元生れ落ちたのだ


逃れることはできん、その命土に還る時も・・・・・


お前は一生・・そしてその身が滅びようとも






鎖に繋がれた奴隷同然




























「っうわあっ!!!はあっ・・・はあ・・・・・・・ゆ・・・・夢・・・・」




は汗まみれになった青白い顔で、胸を撫で下ろした。
呼吸を整え、顔に張り付いた髪をはらう。



闇だけが存在する空間に赤い目が浮んで、を執拗に追い詰める。
逃げても逃げても目の前に広がるのは闇のみ。赤い目は逃げ惑う
面白そうに眺めてどんどんと追いかけてくる。




「夢・・・・。だけど・・・夢じゃ・・・ない」



そう・・現実も赤い目の持ち主、ヴォルデモートに追われている。
その生まれたさだめゆえ、逃げ切れることは一生できない・・・
はギッと歯を食いしばり、毛布を握り締めた。
ふと、のベッドをを覆っているカーテンが軽い音を立てて開いた。






「目が覚めたかね」

「あ・・・・」




はカーテンを開けて、ベッドサイドに立つ人物を少し驚いたように見あげた。
たしか・・・あの森から急に景色が変わって・・・・一番最初に視界に入った人・・・・
あの時は自分は意識が朦朧としてよく見ていなかったが、今こうしてみるとその男は病気でもしているのでは?
と思うほど気色が悪く、少し癖がかった黒髪を肩につくかつかないあたりまで伸ばしてた。
そして全身黒い服に黒いマントはなんともいえぬ威圧感を放っていて。
は少し怖気づきながら、その男を見上げた。


「あの・・・私・・・ここは・・?」


男は一瞬、眉をピクと動かすと手にしていたゴブレッドをの手に持たせた。


「ここはホグワーツだ」

「え・・・・ホグワーツ?ここってホグワーツなの?」


の驚いた表情に、男は眉間に皺を寄せる。


「分かっていてここに来たのではないのかね?」

「いえ・・・・・・・・・あの・・これは?」

は顔を俯かせながら首を振ったが、男が自分に持たせたゴブレッドを見つめて口を開いた。


「薬だ。飲みなさい」

「・・・はあ・・・・・・・・・・・」












「・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・飲め」











ゴブレッドをジッと見つめながら一向に飲もうとしないに、男は苛立っているように腕を組んだ。
は少し青ざめながらゴブレッドを見つめて口を開く。 




「10円玉とニガウリを混ぜたような色・・・・・・」

「どんな例えだ。いいから飲め」

「え・・知っているんですか?10円玉」

「飲め」 


男はを軽く睨みながら見下ろして、さっさと飲めと唸った。
だけど、手にしているゴブレッドの薬はなんともいえない匂いを発していて・・・






「・・・・・・・まっずそ・・・・・」




「(ピキ・・)ほお?よかろう。使用した材料は・・・・・」



「うわっ!!やだ!!飲む!!飲みますから言わないで!!!」 


材料の説明をし始めた男に慌てては首を振り、一気にゴブレッドをあおった。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぅ・・・やっぱりまっずい・・・・」


は顔を顰めながら手で口を覆った。口に広がる苦味と喉に張り付くような辛さ・・
ゴブレッドを受け取りながら、男は鼻で小さく笑う。




「ふん、もうしばらく寝ていたまえ。じきにダンブルドアが様子見にくるであろう」


「は・・はひ・・・・・にしても本当まっず・・・これ作った人の気がしれないよ」





「(ピキ)ほう?君は我輩がせっかく作って差し上げた薬を愚弄する気かね」



ゴブレッドと片付けにベッドから離れかけていた、男の足が止まり顔を引き攣らせながらに振り返った。
は不思議そうに首を傾げたが・・・


「あ・・・これ作ったのは貴方だったんですか;」

「・・・・っち。まあいい。寝ていたまえ」



男は再び踵を返して、部屋の奥に入っていった。
男の姿が見えなくなると、はフッとあたりを見渡す・・・・


「医務室か・・・懐かしいな・・・ホグワーツかぁ・・・・」


あの時、母親が殺された瞬間体中を駆け巡った熱いもの・・
何がどうなってここに着いたのかはわからなかった・・・
無理やり思い出そうとすると頭の芯がズキリと痛む。は顔を顰めてごそごそと毛布の中に潜り込んだ。
医務室の奥では男が片づけをしているのか、カチャカチャと音が聞える。


「わたし・・・・生き延びたんだ・・・・母さんを置き去りにして・・」


はギュッと唇を噛み締めて、枕に顔を埋めた。
途端に溢れ出てくる大粒の涙。止めなきゃ・・そう堪えてみるがまるで底が抜けたバケツに水を汲むように
零れ落ちて止まるこを知らない。


「ちっき・・・しょ・・・・・・ぉ・・・・・」

















「さて・・・と・・まずい薬は多少効いたかね?・・・・っ!!」


男は嫌味じみた言葉を紡ぎながらのべッドへと戻ってきたが、声を殺して枕に顔を埋めて泣く
の姿に声を失ってしまった。小刻みに震える肩が、必死に声を洩らすまいと強がっているようで・・・


全身血まみれになって、目の前に現われたこの少女・・・
いったい何が起きたのだろうか?ダンブルドアは何も言おうとしない。
この時期に・・もしかしてヴォルデモート絡みなのであろうか?



男はそっとに歩みより、の頭を撫でた。



「??・・・・・・何すか・・・」


「いや・・べつに・・・・」


「・・・・・・・・私・・・・・一人になっちゃた・・皆・・殺されたの・・・」



やはりそうか・・




「ヴォルデモート・・・・・・・かね?」



そう呟く男には驚いたように顔を上げた。ジッと見つめてくる少女の視線が少しばかり
居心地悪くて思わず視線を逸らす。


「驚いた・・・・名前で呼ぶなんて・・・」


「?・・・あぁ・・・名前を呼ぶことまで恐れていたら何もできなくなる」


「・・・へへ・・そうだね・・・・・・そう・・・・だよね」






そう、俯くに男はどう言葉を続けたらいいのか困った。
・・とその時医務室のドアが開き、険しい表情のダンブルドアが入ってきた。
だが、の姿を一目見た瞬間その表情がキラキラと輝いた。



「ぉお!や目が覚めたか!?よかったよかった・・・」


そう少し涙目になりながらダンブルドアはの頭を撫でる。
は体の痛みに顔を引き攣りながらも、弱々しく微笑んだ。




「お久しぶりです・・ダンブルドアおじい・・・じゃない・・校長先生・・・」


「ふぉふぉふぉふぉvvいいんじゃよ〜vv呼びやすいように呼ぶがよいvvさて・・災難じゃったのお・・」


そう、少し険しくなったダンブルドアにも表情を曇らせた。
男はこの少女とダンブルドアが知り合いだったことに驚きが隠せず、一歩下がったところで2人を見つめている。


「さて・・・傷が癒えぬところに酷なことじゃが・・早急に対策を組まなくてはならん・・・・」

「はい・・・」

「うむ・・・セブルス」


ふいに名を呼ばれて男は最初分からずに瞬きをした。


「あ・・・は・・はい」



「悪いのじゃが、しばらく席をはずしてもらえんかのお・・・」


ダンブルドアの言葉に男は固まってしまった。
この少女が目が覚めるまで、看病してほしいと頼まれて看病したのだ。
見も知らぬ少女の・・・多少なりとも自分にも少女に起きたことを聞く権利があるはずだ。

そうムッとしたようにダンブルドアを睨み返すが、半月眼鏡奥のダンブルドアの瞳は真剣だった。


「・・・・わかりました。では自室にいますので・・・・」


男は不機嫌そうに返事をすると、扉へと踵を返した。
出て行こうとする男には慌てて声をかける。



「あ・・・・・あの!!!えと・・・・・黒い人!!



















ピキ












男は顔をヒクつかせて振り返った。




「黒い人?・・・・・ほお?・・・・・」



ダンブルドアは手で口を押さえて笑いを必死に堪えている。
その仕草がなんとも腹立たしい・・
ダンブルドアを横目で睨みつけながら男はを見据えた。


「君は人を例えで呼ぶのかね?我輩にはセブルス・スネイプという名があるのだが?」


「あ、そう。まあいいや」


「!!なっ!!」

そうシラッと聞き流すの姿にスネイプは声を失った。そしてその表情は凄まじい形相・・・



「えと・・スネイプさん・・薬ありがとうございました」


はそういって頭を下げた。
そんなの行動に一瞬固まるスネイプ・・まあ・・礼を言われて悪い気はしない。
とそう丁寧に頭を下げる仕草に少しばかり心動かされてしまったり・・・


「あ・・・あぁ・・当然の義務を果たしたまでだか」

「にしてもあれまっずすぎ!!すこしは怪我人労わってよ〜」

「・・・っ知るか!!」


スネイプは一瞬呆気にとられた表情を浮かべたが、キッと眉間に皺を寄せて吐き捨てると
早足で医務室から出て行った。




「あれ・・私何か変なこと言ったかな?」


は不思議そうに首を傾げて、ダンブルドアを見あげた。
ダンブルドアはふぉふぉふぉと笑うと、先ほどスネイプが出て行った扉を指差す。


「彼は優秀なホグワーツの教師じゃ。少々性格に難があるが・・・・・まあ・・なんだ・・
君と話せる部分もあるであろう」

少しダンブルドアの表情が曇ったような気がしたが気のせいだろうか。
だがダンブルドアはすぐに険しい表情になり、を真っ直ぐに見つめた。


「聞かせてくれ、何があったのじゃ」












連載始まった瞬間からダークでしたが・・・(ヒヤリ)
これも最後はハッピーで終わらせたいっていうかハッピーで終わらせます。
今回のヒロインはちょっとばかしぶっ飛んでます。
さあて・・どこまでいくかな・・(待てよ)