「いーやーだぁー!!」

































+恋のコングを鳴らして?+










今日ものんびりとした空気が流れるホグワーツ。
穏やかな暖かい太陽の下で、裏庭で本を開く生徒や楽しそうに語らいあう生徒達。
今日の講義はすべて昼で終了となり、昼食を終えた大広間は生徒と教師達の楽しい語り場となる。
先日ひょっこり現れたルーピンは臨時の代講師として、再びホグワーツに訪れていた。
だが、在籍している教師の中で休んでいる者は誰一人といない。それに人手不足ということもなく、
ルーピンの来訪はあまりにも不自然なものであったが、誰もそのことは気にせずに生徒の大半がルーピンのホグワーツ来訪を心から喜んだ。
以前ホグワーツで教鞭をとっていたルーピン。彼の授業はわかりやすく、そして楽しいと大好評で、
授業がないときも生徒達とよく談笑していたのだ。
スリザリン生だけはルーピンの来訪を快く思っていなかったが、嫌味を言ってくれるであろうスネイプは何も言わず、
むしろその逆で何か二人で話し込んでいる時が多く、何も言えなかった。

昼食を終えた大広間の生徒達は自然とルーピンを取り囲んでいた。
「先生は今までどこにいたの?」などの質問から、先日ホグズミードの菓子店で
ルーピンの大好物であるチョコの新商品がたくさん出たなど、大いに盛り上がっていた。
ハリー、ロン、ハーマイオニー達もルーピンの話しに真剣に耳を傾けていて。

























「にゃあ〜!?;」







突然大広間の扉が開いて、半分泣きながらが飛び込んできた。
慌ててバタンと扉を閉めると、ルーピンのいる輪へと駆け寄ってくる。






「どうしたの?




半泣き状態のに驚いたハーマイオニーがを引き寄せて頭を撫でた。
は嫌だと感じている子供扱いに目もくれずキョロキョロとあたりを見渡す。



「ごめっルーピン先生匿って!?」



そうお願いっと手を合わせると、ルーピンの返事を待たずにルーピンの座っているテーブルの下に潜り込んだ。
ルーピンも生徒達も不思議な顔をするがの表情がただごとでないと察知して、がテーブルの下に隠れるとサッとその周りを取り囲んだ。
「何かあったのかい?」ルーピンがそう口を開きかけた瞬間、




バン!




乱暴に大広間のドアを開けながらスネイプが勢いよく飛び込んできた。
何かを探すようにあたりを見回す仕草に、ルーピンははスネイプから逃げているのだと直感する。


「やあっどうしたんだい?セブルス」


そうにっこりと手を振るルーピンの下でビクッとが体を強ばらせた。スネイプはあたりを見渡しながらルーピンの方へ歩みよってくる。

を探しているのだが、ここに来たかね」

そう深い溜息とともに呟くスネイプに周りにいた生徒達は、をさらに隠そうとテーブルにぴったりとついて、スネイプを睨みつけた。
ルーピンはんーと少し考えていたがにっこりと笑って首を振る。


「いや、は来てないよ?何かあったの?」


うんざりしたようにため息をつくとスネイプは懐から小さな小瓶を取り出した。
それは試験管ほどの大きさの小瓶で、淡いブルーの液体が揺れていた。
小瓶を軽く揺らしながらスネイプは呆れ気味に溜息を吐く。

「ようやく薬が完成したというのに、苦いといって飲まんのだ。まったく・・・早く戻りたいと騒いでおいて」

「はは・・でも君の作る薬は苦いよね」


そう薄く笑うルーピンを軽く睨みつけるともう一度深いため息をついて、小瓶を懐に戻した。
「見つけたら捕獲してくれ」と踵を返すスネイプに頷くと、ルーピンはふと考え込んで…


「セブルス、捜しものはこれかな?」

「にゃっ;」

数歩歩いていたスネイプが怪訝そうに振り返ると、にっこり笑顔を浮かべたルーピンがの両脇に手をかけて軽々と持ち上げてみせた。
罰の悪そうににへらと笑うに意地の悪い笑みを浮かべれば、ビクッとが強ばる。

「ほぉう?そこにいたのかね」

懐に手をいれながらじりじりと歩み寄ってくるスネイプに冷たいモノが体中を駆け巡った。

「うぅ、ルーピン先生の裏切り者ぉ」


そう悔し気に睨みつければにっこりと微笑み返す。

「だって早く君の元に戻った姿見てみたいからねぇ」


ツンと薬品の香りが鼻を掠めハッと前をみやれば、目の前にスネイプが立ちはだかっていた。
勝ち誇った笑みをたたえながら小瓶を振って見せる。


「戻りたいのであろうが」


「うぅ・・戻りたい」


「なら飲め」



ルーピンや生徒達に促されて渋々と受け取るも、はポンとかわいい音をたてて蓋を開けた。
ふわりと甘そうな香りがたちこめ、は少し驚いたようにスネイプを見上げた。
過去2回、スネイプが作った薬を飲んだことがある。とはいえ2回目は半無理矢理飲まされたのだが。
2回とも飲んだ薬は見ため・香りからしていかにも苦そうでそしてやはり予想を裏切ることなく苦くて・・・
だが今回の薬は透き通ったブルーに甘い香り・・もしかして今回スネイプは自分に合わせてくれたのだろうか・・
きょとん自分を見上げてくるに溜息をつきながら早く飲めとスネイプが催促する。
ハーマイオニーが気を利かせて、の着ているローブに魔法をかけて大人サイズへと施してくれた。
キュッと小瓶を握りしめそっと口をつける…



バン!



「セブルス!会いに来たわぁv」



突然大広間の扉が大きな音をあげて開け放たれ、一人の女性が踊るように飛び込んできた。
その声にそしてスネイプとルーピンは硬直した。まばゆいほどの金髪をなびかせ入ってきたのはキャシーナだった。
大広間から入ってくるとはスネイプの陰に隠れて見えない。キャシーナは真っ赤に塗り固めた爪に髪を絡ませながら、
どこか勝ちほこったような笑みを浮かべてスネイプへと歩み寄ってきた。



「この間の邪魔なおチビはいないわね。ねぇ、セブルス。今日こそは…」



「誰がチビだコラ」


「あらいたの、おチビ」



キャシーナの言葉を遮ったのはスネイプではなくだった。
スネイプへと歩み寄ることにより、視界に映し出されたを冷たい目で睨みつける。
も小瓶をぎゅっと握りしめたままキャシーナを睨みつけた。
ハリーやハーマイオニー達は見たことない女性の登場に驚き、またその美貌に頬を染めかけたが、
ただならぬとの睨み合いに表情を強ばらせた。
互いに睨み合ったまま微動だにしない二人にスネイプは少し焦ったように口を開く。

ッここは大広間だ。変な真似はしてくれるなよ」


「あら?セブルス。私がこんなチビガキに負けるというの?片腹痛いわ」




(いや、負けるから言っておるのだ;)



そう顔を顰めながらしかめてキャシーナを見やり、スネイプは固まった。



「いたっ」



が苦痛の悲鳴をあげた。キャシーナがの髪を掴んでいた。
これ以上の憎しみはないといった表情を色濃く浮かべて、「こんなガキに」と吐き捨てる。
痛みに目をギュッとつぶっているを見下ろしながら、嫌な笑みが浮かべる。スネイプが止めさせようと手を延ばしかけた瞬間・・



ぱしんっ



がキャシーナの手を叩き払った。その表情は五歳のものとは思えないほど冷たく、そして怒りに満ちあふれていて。




「髪に触るな、けがわらしい」


その言葉に、その刺し抜くような視線にキャシーナの体が強ばった。けれどもすぐに嫌な笑みを浮かべる。
ぐっと髪を引っ張り、掴む力をこめた。


「あんたみたいなガキっ!セブルスが相手にすると思ってるの!?子供は子供らしくしてなさいなっ」

「シャルミース!やめろ!」


スネイプの怒り染みた声が大広間に響き渡った。ハリー達も不安そうにでもどうしていいのかわからないといったような
表情で2人を見つめている。
は髪を掴まれたまま、キュッと何か耐えるように口を引き締めた。
キャシーナを腕を捻り上げ、から手を放させたスネイプは、不安げにの顔を覗きこんだ。
泣いてしまうか・・だが、は何事もなかったように手にしていた小瓶に口をつけた。
甘い香りが喉の奥へと駆け巡る。












「けふっ」


飲み終え小さなしゃっくりをすると、ぶかぶかだったローブが徐々に体にフィットしていった。
ジニーが見せてくれた手鏡をのぞきこむと、そこには元の姿へと戻ったが鏡を覗きこんでいた。
戻った感覚を感じ取るとニッコリと笑ってスタッ立ち上がる。



「スネイプ教授。ありがとうございました!やっと元の姿にもどれましたv」


久々に見る20歳のの笑顔が、妙に大人びていてスネイプは思わず頬を染めた。
「あ・・あぁ・・よかったな」そう返せば、またニコリとが微笑む。
そして、キャシーナへと振り返り・・・・・






「だーれが豆チビハイパーガキだって?ぁあ?」





腕をゆっくり組んで、睨みつけた。
元の姿に戻ったは、それほど背は小さくない。けれどもそれは東洋人から見た場合で・・
西洋人のキャシーナから見れば小柄に等しい・・はキャシーナよりも頭一つ分背が小さかった。
けれども輝かんばかりの長く黒い髪に宝石のような瞳、そして滑らかな肌・・
子どもの頃よりまったく違ったように見えた。
キャシーナは信じられないといった驚きの表情でしばらくを頭から足の先まで眺めてたが、
やがて小さく鼻を鳴らして、真っ赤な爪で自慢のブロンドの髪を絡ませる。


「あら?元に戻っても小さいのねえvセブルス?こんな子がいいのかしら・・・」


そう意味ありげに誘惑するような目で、スネイプを見やれば、酷く顔を歪ませたスネイプがキャシーナを睨みつけた。
周りを囲んでいた生徒達は、が元に戻った歓声も上げられぬまま不安そうにキャシーナとを見守っている。



(スネイプはどっちを選ぶんだ?!子猫か!女豹か!!)




不安そうではなかった。
明らかに興味津々!、これは学校のネタになる!!といった嬉々とした表情だ。
この雰囲気に遠くから見ていた生徒達も集まりだす。



「やっぱりとスネイプ付き合ってたの?」

「げー・・まじかよ・・俺、少し狙ってたのに・・」

「でもあの女の人・・けっこう強そうよ?」

「この際2人から振られればいいんだよな・・スネイプの奴が」(酷)


ヒソヒソと話している生徒達の声は・キャシーナ・スネイプの三人には届いていなかった。
のんびりと座りながら眺めているルーピンが、にっこりと微笑む。

「へえ・・・あんな子だったんだね・・はv」


その笑みはどこか黒いものが浮んでいたが、誰も気づく者はいなかった。
スネイプはキャシーナを睨みつけたまま、キャシーナの前を通り過ぎての前へと歩みたった。
「失礼」と小さく呟くと、確かめるようにの頬や手に触れて無言で頷く。
その仕草にキャシーナは気に入らない!と不満げな表情でスネイプを睨みつけた。

「完璧に戻っているな」

「へへ・・vありがとぉ・・・」

少し照れながらは頭をかいてにへらと笑って見せる。
元に戻っても子どもらしさが残る表情に思わずスネイプもつられて微笑んだ。
は一瞬躊躇して、ぎこちなくそっとスネイプへと顔を近づけた。


っ////」


「///へへ・・お礼v・・・ごめ;嫌だったすか?」


頬に感じる温かい感触に、驚きに目を見開いてを見つめれば、ほのかに頬を染めたがはにかみながら笑う。
けれどもすぐさま困った顔をして、手を合わせて「ごめんなしゃい」と謝った。
いや、謝る必要はなかったのだが、日本人であるにとってキスをする習慣はないに等しい。
けれども、スネイプに対して最上級のお礼がしたかったのだ。とっさに考えた浮んだのは彼への感謝のキス。
固まり、呆けたように見つめてくるスネィプには不安そうに頭をかいた。


[あちゃー;やっぱり嫌がられちゃったかな?]


んなはずはない。

スネイプは思ってもみなかった、そして心のどこかで望んでいたのかもしれない、お礼にに動揺が隠せなかったのだ。
大広間にどよめきが広がり、どこか殺気立ったような気配スネイプにつき刺さっていたが、
動揺しているスネイプには感じる取ることができなかった。



「ふぉっふぉっふぉっvいいのうv若いモンはv」


丁度、大広間へと入ってきたダンブルドアが嬉しそうに目を細めていた。






















「うわーvvやっぱり元の姿は最高っすね!」


夕食を終えた消灯時間までの時間。自室でゆっくりと寛ぎながら、
は元に戻った自分の手や足先を眺めながらにっこりと微笑んだ。
がスネイプにお礼のキスをした時、スネイプをはじめ、周りにいた者達まで固まってしまった。


「うーん:やっぱりキスでのお礼はご法度なのかも〜:」


今度から気をつけようvと自分に言い聞かせながら、湯のみを手に取る。
結局、キャシーナはキス騒動のあと憤慨したように出て行った。スネイプの顔も見ずに。
けれども、あの女がスネイプにキスしたら・・
そう考えるとはむうっと頬を膨らませた。

「やー!絶対いやー!」

ブンブンと横に首を振って、そんな想像をかき消すと、ハタッと瞬きをした。


「あれ?なんでイヤなんだろう?あの女だから?それとも・・・教授だから?」



湯のみをコトリとベッドサイドへ置くと、はベッドへともぐりこんだ。
ふと小さく残った疑問は消えることなく、心の隅っこに小さく残ってしまったままに。





「いいな〜セブルスはv」

「何がだ」


冷たい地下のスネイプの自室。ソファにもたれながらゆっくりと紅茶を飲むスネイプの前で、
ルーピンがニコニコと微笑んでいる。怪訝そうに見やれば、さらにニッコリと微笑むルーピン。
眉を顰め、睨みつけてもその爽やかそうな笑みはずっとスネイプに注がれたまま。
これは無視をするしかないかと、もう一口紅茶を喉元へと流し込む。



からキスされてv」


「ごぼっ!ごほっ・・ばっ!!きっ貴様いきなり何をっ!」


「いーなー」



もう一歩遅かったら完璧にむせ返っていただろう。なんとか堪えきると焦ったようにルーピンを睨みつけた。
そんなスネイプの様子に驚くことなく、にっこりと笑って見せる。


「好きなの?」


「何の話だ」


だよ。好きなのかい?」


「貴様に関係ない」


「・・・・・セブルスが僕たちの作った落とし穴にはまった時・・」


「っつ!!やめろ!」


「好きなのかい?v」


「・・・・・・・・・・・」


「セーブールースーv?」



さらりと脅しをかけてくるルーピンを嫌そうに睨みつけてみるものの、ルーピンはにっこりと笑顔を浮かべたまま
問いかけてくる。深い溜息をつくとスネイプはカチャリと小さな音を立てて、紅茶カップをおいた。


「わからぬ」


「・・・・なんだってー?v」


呟くように返された言葉に、ルーピンはにっこりと笑ったまま、耳に手をあてて「もう一度v」と微笑んだ。
けれどもスネイプの答えは変わらない。もういちど「わからぬ」と答えれば。かすかにルーピンの表情が変わった。


「ふざけてるのかな?」


「なわけあるかっ阿呆が。わからぬのだ・・たしかに彼女といると有意義な時を過ごせられる・・
けれども、この感情が何なのかわからぬ。それに・・・」





を見ていると見え隠れする懐かしい人・・・・




「重症ーvセブルスー」

「は?」

「まあ、せいぜい頑張ることだねv」

「まっまてルーピン。貴様何か履き違えてないか?」


手をヒラヒラとさせながら帰ろうとするルーピンに、慌てて声をかければにっこりと振り返る。
おやすみーと一言告げると、サッと出て行ってしまった。
その表情はとても


黒い笑みを浮かべていた。


明日、新たに恋のゴングが鳴り響くことを、この時スネイプは知る由もなかった。