ドリーム小説
+大切な我が子だから+
穏やかに晴れた昼下がり、そよそよと流れてくる風に髪をなびかせながら、はのんびりと廊下を歩いていた。
だけれどもその表情は晴れなくてー
紅茶を入れることに対してはスネイプは何も言わなくなり、黙って飲んでくれる。
だけれども、そのほかの掃除や後かたづけなどは一切やらせてもらえないのだ。
「お前はおとなしく座っていなさい」
そう優しい口調では言ってくれるが、には重く伸しかかる言葉だった。
あまりにも耐えきれなくなり、スネイプが隣の部屋に入っていくとこっそりと自室から抜け出したのだ。
一人で出歩くなとといわれているが、今はスネイプと同じ空間にいるのがとても苦痛だった。
一人で出歩くのは初めてだが、道はすでに覚えている。
は沈み顔でぼんやりと石畳の廊下を眺めていた。
「?」
ふと後ろから自分を呼ぶ声がして振り返れば、先日スネイプの呼び方について教えてくれた少年が立っていた。
その隣にはやはりそのときにいた赤毛の背の高い男の子。
そしてふわふわの髪をした女の子がにっこりとに微笑んだ。
「あ・・この前の・・」
「わー、覚えていてくれたんだね!・・・・どうしたの?」
「それでね、お手伝いしたいのだけど、教授は何もやらせてくれないの・・」
、ハリー、ロンそしてハーマイオニーは青々と生い茂った裏庭の芝生に腰をおろし、
は曇った表情で三人に打ち明けた。
「とても優しい人なの。だけど私はもう動けない人形じゃない・・
何にもしなくていいなら私・・存在する価値なんてないよぉ」
どんどんと沈んでいく呟きにハリー達は顔を見合わせた。
ロンの顔は「あいつ優しいかよ!」と言いたげだが、ハーマイオニーは鋭く
ロンを睨み黙らせると、そっとの肩を叩く。
「元気を出して?」
「教授・・本当は私のこととても邪魔なんだわっ」
「どうしよう!」そう半ば叫びながら、は両手で顔を覆った。
もし彼女が生身の人間ならば、溢れんばかりの涙を流していただろう・・・
元来人形であるは、涙は出ない。けれども涙が出ない分、苦しそうな表情は
涙を流す以上にハリー達の胸をチクリと痛みを運ばせた。
「違う・・と思うわ。?」
「・・・え?」
そっとの頭をハーマイオニーが優しく撫で囁き、僅かに顔を上げる。
そんなの表情ににっこりと微笑みながら、ハーマイオニーはちゃんとの顔を上げさせた。
「邪魔だったら、スネイプ教授の場合それはもう逃げ出したくなるくらいの労働を強いるはずね!」
「あー、確かにそうだねー」
「だな。俺とハリーなんかいつもあいつに処罰とかいって、重労働強いられているしな」
拳を握りながらに力説するハーマイオニーに、ハリーとロンは盛大に頷いた。
キョトンと目を丸くして、固まっているを無視してハーマイオニーは続ける。
「ここはね、。魔法界なの。
あなたが今まで過ごしてきた世界とは少し違っていてね、
本や小物一つでも命を落としかねないこともあるのよ。それにここホグワーツは立ち入り禁止区域が
あったり、いろいろ罠が仕掛けられていたりしているの。
スネイプ教授がを外に一人で出さないのはそのためよ?きっと。
それに、スネイプ教授は優秀な魔法使い。有能であればあるほど危険の物を扱うの。
、あなた今まで何を掃除しようとしていたの?」
「え?・・・えと・・・・・いつも大きな鍋に火をつけていた暖炉に、そのお鍋。
あとは、こうプカプカとよくわからない物が入った瓶が並べられていた棚に、
鎖がかけられていた本棚とか、骸骨のマークが入った瓶のシェルフでしょ?
・・・・あとは・・・・」
「あー・・もういいわ。」
1本1本思い出すように指を折り曲げながら答えるに、
ハーマイオニーは徐々に頭を抱え、ハリーとロンはみるみると青ざめていった。
そんな三人の様子に、も自分が掃除しようとしていたものが
もしかしたらとんでもないものだったのではと、うっすらと気づく。
「ね・・・それって、とても危険な物だったの?」
「・・・・えぇ、そうね。とてもデンジャラスな代物ね」
「、スネイプの部屋じゃなくてマクゴナガル先生の部屋に住んだ方が安全かもよ?」
「つか、スネイプの部屋ってそんなものだらけなのかよ!」
の肩をポンポンと叩きながら、三人は口々に答えた。
そんな三人をまじまじと見つめているうちに、は気まずそうに口を両手で覆った。
「なんてこと・・私そんな危険な物とは知らないで。
教授にばかり不満をもらしてて・・あぁ!なんてとんでないことを!!」
「?落ち着いて」
「ううん!!だって!!私のことを心配してくれてのことでしょう?
それなのに私、勝手に出てきちゃって。早く戻って教授に謝らなきゃ!!」
サッと立ち上がると、三人にありがとう!と頭を下げてくるりと踵を返した。
「ひゃっ」
「へー。動いても所詮人形は人形なんだな。おい見てみろよこの関節!」
踵を返した瞬間、何かにぶつかりは何かすごい力で掴まれた。
ハッとして掴まれた方を見れば、体格の良い男子生徒に両腕を掴まれている。
それから、冷やかな声がして前を見れば陽の光に美しく輝くプラチナブロンドの髪に
嘲け笑っているアイスブルーの瞳。とても綺麗な顔立ちのなのに、その少年が浮かべている笑みは
とても不気味なものだった。
「い・・痛いよ!!」
「ふうん。人形でも痛覚があるのか。それにしてもよくできた人形だな。
ノクターンで売りさばけば高く売れるな」
「い・・嫌!!放してぇ!!」
「マルフォイ!!何しているんだ、を放せ!!」
騒ぎを聞きつけたハリー達が走ってきて、クラッブに押さえつけられているを
見つけると、ロンがカッと目を見開いてクラッブに殴りかかった。
ロンの拳はストレートのクラッブの頬をめがけて飛び、クラッブは派手に吹っ飛んだ。
その反動で尻餅をついてしまったを、ハーマイオニーが慌てて助け起こす。
「大丈夫?!どこも怪我してない?!」
「う・・うん」
「はっ人形無勢が怪我をするわけないだろ?」
「っこの!なんてことを言うんだ!!」
「何をしている」
ロンの拳が再び宙を描き、まさにドラコへとめがけた瞬間、
彼らの耳に冷たく低い声が響いた。その声にロンはサーッと青ざめ、ドラコはにやりと笑う。
青ざめた表情でロンが振り返れば、そこにはやはりの人物。
「何をしているのかと問うている」
いつも以上に不機嫌そうな表情を押し出し、スネイプはぎらりとロンを睨みつけた。
パクパクと口を動かすものの、声がでない。
それを嘲笑うかのように、ドラコが口を開いた。
「僕達、と話をしていたんです。そうしたら突然ウィーズリーが殴りかかってきて、
クラッブを殴ったんです」
そうさも痛がっているクラッブの肩を撫でながら、まるで悲劇のヒーローのように
ドラコは眉間に皺を寄せてスネイプを見た。
ロンはドラコの言い草に「嘘をつけ!」と食って掛かったが、スネイプが睨みつけてきたので、
振り上げようとした拳を必死にこらえた。
「殴りかかるとはけしからん。グリフィンドールから10点減点する」
「そんな!!」
「違うんです!!スネイプ教授!!」
落胆の声を上げるロンを庇うように、がスネイプの前へ走り出た。
ギュッとスネイプの腕にしがみつく様に掴むと、事のいきさつを口開く。
「ロンは悪くないんです!!私を・・」
「黙れ!!元はといえば貴様がフラフラと出歩いたせいだろうが!!」
「!!?っ・・」
スネイプの凄まじい剣幕に、はびくりと肩を震わせギュッと目を閉じた。
今までこんなに怒ったスネイプは見たこともなかった、ただただ怒りをあらわにした
目で睨まれは深く項垂れた。
「ごめんなさい・・・・」
「はっ、謝ればすぐ済むと?貴様には叩き教え込まなければならないことは山とあるようだな。
戻るぞ。お前たちも戻りなさい」
苦々しくを睨みつけながら、サッとハリーやドラコ達を見据えて顎でしゃくった。
のことは気の毒だが、これ以上の口出しは逆効果だろう・・半ばハリーとロンに
引きずられながらハーマイオニーはグリフィンドールへと踵を返した。
ドラコ達は嘲笑いながらハリー達とを見据えると、スネイプに軽く会釈をし、
悠々と地下牢へと足を進めて行った。
「あの、人形。今夜中には薪になるぞ!」
「入れ」
「はい・・・」
見慣れた地下のスネイプの自室。
だけども、こんなに冷たくそして怖く感じたのは初めてだ。
冷たく抑揚のない声で促され、おずおずと中に入る。とても恐ろしくてスネイプの顔が見れなかった。
部屋の中にはいるもドアの前で立ち止まって立ち尽くしているに深く溜息を付くと、
ガッとの頭を掴み、そのままガシガシと強めに掻き撫でる。
そのスネイプの仕草にびくりと驚く。こうやって頭を撫でる時は彼が怒っていない証拠。
おそるおそる、盗み見るようにスネイプを見上げれば、カチリと目が合った。
慌てて俯くに小さく笑うと、の背中を軽く押してソファへと座るように促す。
「安心しなさい。お前を薪にせん」
「!聞こえていたんですか?」
「あれだけ声を張り上げれば誰でも聞こえる」
先ほどのドラコの吐いた言葉は深くに突き刺さっていた。
本当に薪にされるかもしれない・・。そう怯えてもいた。
口調は優しいが、まだスネイプの顔が見れずに深く俯いているの姿に
スネイプは深く息を吐き出した。
隣の部屋から戻ったスネイプは、すぐにがいないことに気づいた。
それもそのはずだ、ドアが開け放たれていればどんなに鈍感な者でさえも気づく。
それにスネイプはに対しては過剰といえるほど神経を集中させていたのだから、
すぐ気づくのは当然のことだろう。
慌ててを探しに行くも、はすぐに見つかった。
裏庭でハリー達と何か話をしていた。すぐに連れ戻しても良かったのだが
の表情が冴えない事に気づき、見つからないように柱の影に隠れハリー達の会話に意識を集中させた。
の表情が冴えないのは、スネイプには心当たりがあった。そしてやはりその読みは当たっていて。
彼女が毎日掃除をしようとするたびに止めていたこと。
当然だ、が掃除しようとしていたものは毒草を煮込んだ大鍋に、それらが飛び散った暖炉。
強力な毒薬だけをしまいこんだシェルフ。そして呪いが込められた禁書。
どれもスネイプの研究には欠かせないもので、それを使うスネイプでさえも慎重に扱っている物なのだ。
それを何の知識も持たない者に掃除などさせられるはずがない。
(この娘ならなおさらだ!)
危険性のないものなら黙って掃除をさせたのだが、なぜかこの娘が掃除しようとするものは
わざとか?と思うほどに危険なものばかりだったのだ。
けれども、の辛そうにハリー達に話す表情に、きちんと説明してやればと後悔をする。
先ほどはのことを怒鳴りつけたが、元はといえば己の説明不足に一番の非があったのでは?
彼女は人間のまして魔法使いの世界などほとんど知らない。
それを説明なしに頭から否定したのでは、が落ち込むのも無理はない。
沈んだ表情のまま俯いているの頭を今度は優しく撫でてやれば、薄紫の瞳が恐る恐ると
スネイプを見つめた。
「怒ってなどいない。お前に何も教えなかった我輩のせいだ」
「ううん!私が・・・勝手に出てきちゃったから・・・出歩くなっていわれてたのに」
上げられた瞳がまた伏せられそうになり、少し慌てたように顔を上げさせれば
申し訳なさそうに顔を顰めた表情。
「自分の意思で・・・か」
「え?」
「・・・・・よし。」
「はっはい!」
「・・・・・・・・・・で、ハリー!奴からなんだって?!」
翌日。
朝食の席で、ロンは混乱しながら、手紙を読んでいるハリーに詰め寄った。ロンが混乱するのは無理ない。
なんせ、ハリーが読んでいる手紙の送り主はあのスネイプなのだ。
表情変えずに手紙を読むハリーにロンが急かすように問い詰める。そんなロンを押さえながらも
ハーマイオニーも気になる様子で。
「あっ、ハリー!ロンにハーマイオニー!おはよう!!」
緊張した空気が流れている三人に明るい声が降ってきた。
ハッとして振り向けば、そこにはが一人で立っていた。
いつもスネイプの後ろについている彼女が一人でいることに、大広間にいた生徒達も
驚きの表情でを見つめている。
「!」
ロンが嬉しそうに頬を赤らめて立ち上がった。
「昨日はごめんな!って一人できたの?」
「ううん!私の方こそ皆に迷惑かけてごめんね!!
そうなんだ、スネイプ教授がね危険の修行のうちといって今日から皆と勉強するんだよv」
「まじで!やったーって・・ことは君スリザリン?」
「いーや、はグリフィンドール所属になるよ」
の言葉に嬉しそうに笑うロン、だけどスネイプと行動していたは
もしかしてスリザリン所属になるのではと、表情を暗くするが、
すかさずハリーが否定の口を挟んだ。「なんで知ってるんだよ!」と聞けばハリーは
にこやかにスネイプからの手紙をヒラヒラさせて、ロンへ手渡した。
食い入るようにして読むロンの横でハーマイオニーやネビルたちも横から手紙を読む。
Potter
本日からはグリフィンドール寮の生徒となる。
昨晩、特別に組み分けを行った結果だ。
彼女に魔法界、人間の世界のことを教えてあげなさい。
PS.いいか彼女を苦しめることを少しでもしてみろ。
ただでは済まさんからな。
S.Snape
「命令口調と、釘を刺すところはさすがにスリザリン寮監ね」
「だな」
クスリと笑うハーマイオニーにロンは少し青くなりながら頷いた。
けれどもそれははわからなかった。なぜなら、ロンが手紙を読み終えたと同時に
グリフィンドールの席から大歓声が起こり、を取り囲んだのだ。
ジニーに引き寄せられてテーブル席に腰を下ろすと、はそっと教員席を伺った。
スネイプと目が合うと、彼は無表情で頷いてみせ紅茶へと口を付けている。
そんなスネイプの姿にはにっこりと笑うと、しきりに話をしてくる生徒達ににっこりと微笑んだ。
その微笑みに男女、寮問わず昇天しそうになったらしい・・・・
そんな大広間の様子を眺めていたダンブルドアはにこやかに微笑み、スネイプは一瞬口を
ひくつかせたなどは知る由もなかった。
なにやら、スリザリン席の隅っこの方で赤い手紙がドラコに向かって怒鳴っていたが、
にはどんな内容だったのかさえも知ることはなかった。
あとではハーマイオニーに聞けば、なにやら匿名のしかもご丁寧に声色まで変えて
「ボンボンだの、無能だの。お前が薪になってしまえ」と散々罵っていたらしい・・
その手紙の内容に、おもいっきり心当たりがあっただが、白い顔をさらに真っ白に
固まっているドラコを見てほんの少しだけ同情した。
いいか彼女を苦しめることを少しでもしてみろ。
ただでは済まさんからな。
の新しい生活が始まった。
「え!でも部屋はあいつの部屋なの!?」
「うんv晩御飯・・私は食べることはできないけど、晩御飯の時間が終わったら
スネイプ教授と一緒に部屋に帰るの!」
「って・・・さ、危険だらけのスネイプの部屋で大丈夫?」
「うんv触っちゃいけないものには、教授お手製の”触っちゃダメ”シールが貼ってあるのよ!
まあるい黄色のシールでねv教授のめって顔なのv」
「「「・・・・・・親ばか・・・・」」」
な・・なにはともあれ!の新しい生活が始まったのである。
久々の更新ですね;
タイトルが我が子?ヒロインが教授の子供なの!?
子だと思うのきっと次回からかな?(すすめろや)