ずっとずっと憧れているの。
友達は皆、無理だって笑っていたけれど。
でも、いつか。
きっと・・・
+ピノッキオシンデレラ+
開けた山の空き地に、私は無防備にだらんと両足を投げ出していた。
よかったぁ・・ちゃんと足を閉じていて。
女の子が足を広げて座っているなんて!とてつもなく恥だわっ!
科学繊維の黒い腰まである髪は滑らかでとても自慢だったにっ!
え〜ん、蜘蛛が巣作り初めてるよぉ〜、や〜気色悪いぃ!
気づけば白い肌も汚れてきてるしっ!うぅ〜体を拭いて綺麗なお洋服に着替えたい!
少女はじっと遠くを見つめ、動かぬ体にじれったさを感じながら嘆いた。
自分には大きな夢があるのにこんなところで朽ち果ててしまうのだろうか。
そんなの絶対に嫌よぉ!?
「やれやれ、マグルにも困ったものだのぉ」
「全くですな」
あれ、誰かが上ってきた〜。うわっうわっ。人間が来たのは初めて!お行儀良くしなきゃっ。
少女は動かぬ表情に満面の笑みを浮かべて、近づいてくる人の気配の方へと意識を集中させた。
ダンブルドアとスネイプは、ホグワーツ近くの山にマグルの物と思われるガラクタが捨て置いてあるという、
付近の住民の連絡に、数人の魔法省の人間とその山へと訪れた。
じりじりと照りつける強い日差し、額にうっすらと汗を浮かべながらその現場へとようやくたどり着く。
「っち。マグルが・・」
スネイプの苛立ち帯びた舌打ちに、ダンブルドアは呆れたような微笑む。
「ほほーvvこれはこれは・・まるで宝の山じゃのおうvv」
「校長!」
「冗談じゃv。それでは魔法省の方々。よろすく頼みますぞ?」
目の前には予想以上の大きなガラクタが散乱していた。
役人が調べている間、ダンブルドアとスネイプは数歩下がったところで調査が終わるのを待つ。
不法投棄されたマグルの物にどんな危険があるかわからない。
役人が丹念に調べ、オーケーを出すまでは指先すら触れることも許されないのだ。
大小大きさの違うカラフルな箱に、みぞの鏡ほど大きなふつうの鏡。
横断幕のような布におもちゃの剣。人間大の数体の人形・・・
とても異様な光景に、スネイプの眉間の皺は深くなっていく。
どれほど時間がたったのだろうか、役人達は汗を拭いながら二人の元へと戻ってきた。
「サーカスというマグルの娯楽遊技団が捨てていった遊具ですね。なにも危険制はありません。
しかし、こんなにもあると処理しきれませんなぁ・・・
っと、お二人とも何か気に入ったのがあればお持ち帰ってくださいよ!」
そう、にっこり笑う役人に、スネイプは苦虫を潰したように役人を睨みつけ、
おそるおそる隣のダンブルドアを見つめた。
そこには待ってましたといわんばかりな微笑みを浮かべているダンブルドアが・・・
「校長・・・」
「ん?なんじゃセブルス。さぁさ、どんな物があるかのぉ。
何か校長室に飾れるものがほしいのじゃが・・」
ちょいちょいと軽く手招きするダンブルドアに、さも疲れたように盛大なため息を付きながら歩み寄る。
全く・・マグルの物など、どこがいいのだ
そう舌打ちを打ちつつも、興味なさ気にガラクタを見やった。
何人かの人間が上ってきて、皆疲れたように私たちを見渡したの。
ものすごく年がいってそうなおじいさんと、頭の先からつま先まで真っ黒で・・
ちょっと怖そうな男が離れたところにいて、数人の人間が私たちを丹念に調べあげた。
あ!その子肩がはずれているの!乱暴にしないで!
ってちょっとお!恥じらい深い乙女のスカートめくるなんてなんて失礼なの!?
やがて失礼極まりない人間達は離れていた二人のところへと戻っていった。
なんか「問題ない」って聞こえたけど、人のスカートめくるあんたの方が大問題よ!
あらっおじいさんと黒ずくめの人がこっちに来たわ?
おじいちゃんは嬉しそうにマジックボックスを軽く叩いていて、
男の方はつまらなそうに私たち人形の方へと・・あれ私の前にきたよ?
ひぇぇぇ〜;なんか見おろしている様がすごい怖いよぉ〜!や〜!助けてぇ!ってしゃがみこんだぁ!?
スネイプは人形が置かれている方と近づいた。
とても精巧な作りで一見生身の人間と見間違えるほど、けれどもそれら人形はいたるところが壊れていた。
手足がもがれているもの、右胴体がそがれているもの。
おそらく魔法を使っても修復できないだろうと、スネイプはため息をこぼした。
ふと、その中の1体の人形に自然と目がいった。損傷が目立つ人形の中で唯一損傷が少ない人形。
それは、黒い長い髪に紫色のガラス目が埋めこまれた人形だった。
濃紺のワンピースに白いエプロンと、メイドのような服装の人形。とてもクラシカルな服装なのにも
関わらず、人形の表情はまるで希望に満ち溢れた少女のようで。
おそらく、この人形たちは壊れて捨てられたのだろう・・・
だが、この人形はどこも損傷をしてないように思える。いったいどこを損傷をしているのだろうかと
スネイプはそっと人形の上体を持ち上げ、丹念に調べ上げた。
きゃっ!!気難しそうな男が私の前に屈みこんだの。
怪訝そうに私と他の子達を見比べているなーと思ったら、いきなり私抱き上げられちゃった。
なんか・・腕や首筋を調べてる?・・・むう〜くすぐったい〜〜〜vv
いたっ!!
そこっ痛いの!!
男は私の足首にそっと触れた。そこね、ひびが入っちゃったの。
サーカスの団員が誤って私を倒しちゃってね、その時に。
な・・なんか・・・男の人の表情がさらに怖くなっているんですけど・・;
だーかーらー!!怖いーってー!!
「ちっ・・・たったこれだけの損傷で修理もせずに捨て置いたのか!!」
?・・・・・・・。うん・・そうなんだ。
団長さんね、面倒くさそうに私をみて修理代より新しく買った方が安いからって。
私 廃棄用トラックに乗せられたの。
男は、静かに私を元の位置に戻してそっと頭を撫でてくれた。
なんか・・とても淋しげな表情・・同情してくれてるの?ありがとう・・。
私ね、何の変哲もない大量生産された操り人形なの。でもね、ずっと人間に憧れていたの。
お行儀良くしてればきっといつか人間になれると思うんだv
ねえ・・・どう思う・・?
人形の表情は変わらぬのに、なぜかその人形は嘆いているように思えた。
たった、足首だけの損傷で捨て置かれたのがとても悲しそうで。
"莫迦な・・・これは人形だ。感情があるなど"
己の思った考えに小さく苦笑いをすると、スネイプはそっと人形の頬をなぞった。
「ホグワーツに来るかね?」
へ?今なんていったの?ホグワーツ?それは貴方のお家?
来るって、連れて行ってくれるの?
男は私の頬をそっとなでると、おじいちゃんを呼んだ。
人間に私の涙は見えないはずなのに・・泣いていたのが分かったのかな?
白いお髭のおじいちゃんが私を見下ろすと、にっこりと笑って私へと屈みこんだ。
何か二人で話しいる。
「かわいい子じゃのおv」
へへvありがとうおじいちゃん。
やがて、二人は相槌を打つと、男がそっと私を抱き上げた。
きゃーきゃーお姫様抱っこ!!とて顔色悪そうな人だけど思っていたより力がるんだね。
ダンブルドアを呼び、スネイプはこの人形は損傷が少ないのに捨て置かれている、
それをこのまま放置しておくのは気が引けるとダンブルドアに申し出た。
いつも、周りに気を止めることがない男の申し出にダンブルドアは驚くも、
その人形をみやり、小さく頷く。他の人形はどうみても修復は無理そうだが
足首にひびが入っただけの、この人形があまりにも不憫に思えた。
そこで、修理をして校長室において置こうと持ち返ることにした。
抱き上げた人形が一瞬笑った気がしたように見えたが、スネイプは気のせいだろうと
ダンブルドアとともに山を下りた。
「幸せになるんだよ」
「頑張って」
捨て置かれた人形達が、抱きかかえられた人形にエールを送るが
それに笑顔で答えたのは人間に憧れている幸運の人形だけだった。
始まりましたー。当サイト初「物ヒロイン」ドリーム連載ー!!
前々から書きたいと思っていた。人形もの。
これからヒロインはどう、教授と絡んでいくのでしょうv
お楽しみですv当初は「賢者の石編」から「アズカバンの囚人編」までの原作に沿っての
連載予定でしたが、急遽オリジナルに・・。