「おやつがたらふく食べたいのぉ」
日が傾き始めたティータイムの一時。
ダンブルドアは使いこまれ、そして念入りに磨きあげられた自分の机に肘をついて、ため息混じりに呟いた。
吐かれたため息とは裏腹に、その表情はなにかとても楽しいことを考えるようにキラキラと輝いて。
その表情を目の前で見つめながら、茶の席に呼ばれたマクゴナガルは何か嫌な予感を覚えながらもあえて、
なにも答えず静かに茶を喉に通した。
+ヴァレンタイン+
「の国のヴァレンタインは、女の子が好きな男の子にチョコレートをあげるんですって!」
今日も賑やかな大広間での朝食。グリフィンドールの席で同級生のラベンダーが夢見るように、
そして興奮したように声を躍らせた。
その隣では必死にベーコンを口に運ぶ小柄な黒髪の少女。
は日本から来た魔法使いの卵だ。最終学年の7年生だというのに
とても小柄で同い年の生徒達よりもはるかに年下に見える生徒。
ポケッとした性格に周りを気にすることなくマイペースに事を運ぶ生徒。
まるで上質の絹糸のような黒い髪を肩につかない程度に切り揃え、くるんとしたかわいらしい瞳・・
「ねっ!今年誰かにあげるの?」
「うんっこのベーコンおいしいねぇ!」
「ちがーう!」
探るような笑顔でラベンダーが顔を覗きこんできて、フォークを持っている手を軽く上げてにっこりと笑って見せれば、
びしっとラベンダーがの額を軽くはたいた。
「まーったくこの子は!聞いてなかったの?ヴァレンタインよ!ヴァ・レ・ン・タ・イ・ン!
あげるんでしょ!チョコレート!男に!」
「え?・・うーん。でもイギリスのヴァレンタインは男の人が女性に尽くす日でしょ?」
「ん。まあねぇ」
きょとんと首を傾げて見つめてくるに、ラベンダーは苛立ち気に頭をかいた。
確かにの故郷である日本と、ここイギリスのヴァレンタイン事情は180違うといっても過言ではない。
けれどもから聞いた日本のヴァレンタイン事情はラベンダーを大いに魅了した。
それにが誰にチョコレートを送るのかも大いに気になる・・・。
そう・・は全く自覚していない。自分がどれほどに人気があるかと。
ホグワーツでは珍しい東洋出身の生徒ということもあるかもしれないが、そのかわいらしい仕草や笑み、
寮関係なく誰にでも温かく接する姿勢に、多くの生徒がに夢中なのだ。
それは男子だけではなく女子や教師、そしてゴーストまでにも人気なのだ。
はホグワーツのマスコット的存在なのである。
「ほっほ〜そうかそうか♪」
突然二人の背後で陽気な声が聞こえ、とラベンダーはびっくりして振り返った。
そこにはラベンダーとの間にしゃがみ込み、二人が座っている長イスに両肘をついている
ダンブルドアがニコニコと微笑んでいた。
「ダッダンブルドア校長先生!いつからそこに?」
声を裏返しながら、目を丸くするラベンダーを落ち着かせながら、ダンブルドアはにっこりと二人に微笑みかける。
「うむ。がベーコンを喉に詰まらせたところからかの♪」
そう楽しげににウインクしてみせれば、は顔を真っ赤にさせて「へへへ」と頭をかいた。
「さて、二人ともたいへん興味深い事を話しいてたのぉ。二人は誰かにチョコレートをあげるのかの?」
楽しい朝食の一時を終え、皆授業へと足早に教室へと向かう。
校内が静まり帰り、ダンブルドアは自慢の長く白い顎髭を撫でながらにっこりと微笑んでいた。
その日の夕方から、ホグワーツは落ち着かないように騒がしかった。
それは全ての講義が終了した夕方、大広間に張り出されたポスターによって。
"2月14日はヴァレンタインvこの日の夕方からホグワーツおやつ大会を催す。
また、この日は男女、教師問わずヴァレンタインを楽しむこと。 "
このポスターを見たとラベンダーは、驚いたように顔を見合わせてにっこりと微笑んだ。
この企画を立ち上げたのは紛れもなく、朝食の席で話しかけてきてダンブルドアだ。
今年のヴァレンタインは、の故郷である日本とここイギリスのヴァレンタインがミックスされ、
男女生徒、寮を問わなかったことはもちろん、教師までもが新しいスタイルのホグワーツヴァレンタインに期待を膨らませていた。
「、あげるの?」
グリフィンドール談話室、はハーマイオニー・ラベンダー・ジニー、同級生らと暖炉の前に座ってヴァレンタインの話で盛り上がっていた。
から日本のヴァレンタイン事情を聞いた皆は、贈り物をチョコレート関連のものに決めたらしい。
ジニーとラベンダーがやはりマグル式の調理法が相手にも伝わると、お菓子の本を開いている時に、
ハーマイオニーが2人が本に夢中であることを確認しながら小声でに耳打ちした。
それと同時に暖炉の火のように紅潮するの顔。
バッと目を瞬きしながらハーマイオニーを見つめれば、ほんの少し含み笑いしたハーマイオニーがの顔を覗きこんでくる。
「あ・・ハ・・ハーマイオニー・・?」
「大丈夫よっ。誰にも言ってないわv」
「あ・・・ありがとぉ・・」
ホッと溜息をつきつつ、落ち着かない様子のにハーマイオニーはクスリと笑った。
が贈り物をしようとしている相手はハーマイオニーだけしか知らない。
けれどもそれはの秘密の片思いで・・
頬を赤く染めながらも自身なさそうにお菓子の本を広げるに、ハーマイオニーはポンポンとの頭を軽く叩いた。
「6年と4ヶ月13日、2時間と3分の片思い!まぁv当たって砕けろねv」
「う・・うん・・///」
それからヴァレンタインまで誰もが落ち着かないようにソワソワしていた。
目当ての人物に渡すために作戦を練り上げている女子生徒。
目当ての人物にいかにして花やプレゼントを渡そうかとプランを立てる男子生徒。
目当ての人物からもらえるだろうかと必死にアプローチをする生徒。
お菓子の交換の約束をしあう、生徒。
また、その日、夜に催されるお菓子コンテストに力を入れているのはいまや、フレッド・ジョージの双子の後を継ぐ
ハリーとロンの悪戯コンビを筆頭にした生徒。
誰もが、この日を心から待ちわびていた。
「ー!!!僕にチョコレートは!」
「僕にもー!!」
「はいv」
待ちに待ったヴァレンタインの当日。この日は急遽学校が休みになり、
朝からチョコレートを中心としたお菓子が生徒・教師の間で渡されていた。
も日ごろから世話になっている教師や、友だちのために腕を振るったチョコを配り歩く。
ハリー・ロンから始まり、ネビルにシェーマスと同級生や後輩のコリンとその弟。
そして一緒にどんなお菓子を作るかと相談しあったハーマイオニーやラベンダー達にも・・。
とてとてと大きな籠を抱えながら配り歩く姿は、まるで子どもの初めてのお使いのようで、
道行く生徒、しかもほとんど後輩に頭を撫でられる始末。そう子ども扱いされても怒らないところが
またの人気を博しているといえよう。
「ー僕にはないのかい?」
すでに両手一杯にチョコや菓子を抱えたルーピンがニコニコとの元に歩み寄ってきた。
まだほしいのかと周りにいた生徒達は思ったが、は「はいv」とルーピンにチョコを手渡す。
にっこりと微笑みながらチョコレートを配り歩くの姿に、ハーマイオニーは小さく苦笑いをした。
ハーマイオニーだけが知っている、のローブのポケットに隠された小さな贈り物。
「ったら・・いつ渡すのよ・・・」
楽しい日ほど時間は早く過ぎてしまうもので、気づけば当たりはすでに真っ暗になり、
夕食の時間を迎えようとしていた。今日は特別な夕食だ。ヴァレンタインを記念してのお菓子大会。
魔法を用いてお菓子を作り、それを皆の前に披露するというもので、各寮ごとの対抗試合となっていた。
寮対抗試合と聞いて、意気込んだのは生徒ではなく寮監の教師達だったが・・・
寮監が数人の生徒を推薦して、その生徒達と案を出し作品を作り上げるというシステムのお菓子大会。
形態内容は自由で、もちろん必ずどこかに魔法を用いるということ。
審査はお菓子が食べたいと意気込んでいたダンブルドア校長と寮監ではない教師・そして生徒達だ。
お菓子に備え、今日の夕食は軽めに済ませて皆落ち着かない様子でお菓子大会の開催を心待っていた。
「皆の者!待たせたの!これよりホグワーツお菓子大会の開催じゃ!!」
待っていました!と言わんばかりな拍手と大歓声とともに、大広間の扉が開いて寮監と推薦された生徒達が入場してきた。
最初に入場してきたのはスリザリン。引率は言わずと知れたスネイプ。お菓子大会など興味ないスネイプだが、
寮対抗、しかも優勝した寮には100点が加算されるとくれば目の色を変えて生徒達を選び始めた。
「グリフィンドールに勝つチャンス!!」と闘志をむき出しに、スネイプに続くスリザリン生もどこか意気込みを感じる。
スリザリンに続いて入ってきたのは、八ッフルパフ。
肝っ玉母さんのようなスプラウト先生はお菓子大会に合わせて、いつもとは違うカラフルな帽子を被っている。
それに続く生徒達も、スプラウト先生と同じような帽子を被っていたが、どこか不服そうな表情だった。
そして続いて入場したのはレイブンクロー。レイブンクローを率いていたのはなんとルーピンだった。
この日レイブンクローの寮監が不在のため、たまたま2週間前から遊びに来ていたルーピンが指揮することに。
すでに片手に持っている板チョコレートを頬張りながら、歩いてくる様はまるで優勝はもらったといわんばかりな表情。
そんなルーピンに続く生徒達もどこか自信ありげに胸を張っていた。
「お!やっと我らグリフィンドールのお出ましだ!!」
拍手をしながら入場してくる生徒達を眺めていたコリンが、歓声と共に声を上げた。
コリンの言葉を合図にグリフィンドールから大歓声が起こる。
もたまらず拍手の音を大きくした。
最後に入場してきたのはグリフィンドール。普段は厳格そうに口をキュッと閉めている顔に
優しそうな笑みをたたえながらマクゴナガルが入ってきた。そしてそれに続く生徒達。
いつもは悪戯ばかりしてマクゴナガルに怒られているハリーとロン、そして2人の悪友のシェーマスが
このお菓子大会の選手として選ばれていた。
三人は大歓声を送るグリフィンドール寮の席に手を振りながらアピールしている。
寮監と選手がステージの上に上がるとダンブルドアが小さく手を上げた。
それと同時に水を打ったように静まり返る大広間。ダンブルドアはこほんと咳を一つすると
小さく笑って大広間を見渡した。
「さてさて。今夜は待ちに待ったお菓子大会じゃ!!寮監の先生と生徒達のコラボレーションに期待するぞいv
審査はわしと寮監ではない先生方、そして生徒達じゃvどんなお菓子がどのようにして飛び出してくるか楽しみじゃのv」
そういつになくウキウキ気分なダンブルドアの言葉に、大広間に笑いが響いた。
多くの生徒、そして教師達が見守る中寮監と選ばれた生徒達はやや緊張気味に位置についた。
ステージ中央に置かれた箱から、各寮監がくじを引いて順番を決める。
トップバッターはハッフルパフだ。
スプラウト先生が陽気に歌を歌いながら、ステージを歩き回り、生徒達がなにやら楽器のようなものを取り出した。
笛やタイコ、ギターよりも小ぶりな弦楽器など。心が弾みそうなリズムに思わずダンブルドアも手拍子をする。
スプラウト先生の歌に合わせて楽器を鳴らすとたちまち、大広間がまるで南国のような青空が天井をおおった。
思わずもれる大広間の歓声に、スプラウト先生はにっこりと笑うと、楽器を演奏している生徒達にウインクをする。
それを合図に音楽が一層大きくなり、一人の生徒がバアンッとドラのようなものを鳴らせば真っ青の青空から
虹色の光がキラキラと降り注いできた。
「うわぁ!虹!!すごーい!きれーvv」
も思わず手を叩いて見惚れていた。
寒々しいホグワーツが一瞬で南国に。虹色の光はカラフルなキャンディーやゼリーなどを大広間に降り注いだ。
皆嬉しそうに手に取り、口へと運ぶ。
「うわっvパイナップル味!」
「これはバナナ味よ!!こっちは・・ライチ!」
降り注がれたお菓子も南国らしい果物の味で、さらに生徒達の表情を緩めさせた。
やがて、スプラウト先生と演奏が終わると同時に、ゆっくりと虹色のシャワーが青空と共に消えていった。
恭しくお辞儀をするスプラウト先生と生徒達に大歓声と拍手の嵐が巻き起こる。
目の前の席で、一生懸命お菓子を口に運ぶネビルには「まだあるのよ?」と苦笑いをする。
続くは、スリザリン。ハッフルパフの余韻がなかなか冷めなかった大広間だが、スネイプがステージに上がり冷たい目で睨みつけると
一瞬にしてざわめきはかき消された。その様子に満足したのだろうかスネイプは小さく鼻で笑うと、顎をしゃくって生徒に合図をした。
生徒達が前に出てくるのを確認すると、スネイプは後ろへと下がり腕を組んで生徒達を見守る。
どうやら先陣のハッフルパフのようにスネイプも歌うなどということはないらしい。
ラベンダーが「そうよねーあの暗い先生が陽気に歌うとは思えなーい」と呟くと、はクスリと笑った。
「小さじ1杯の砂糖で幻想をお見せしよう・・・・・」
静まり返った大広間にスネイプの低い、深みのある声が響き渡った。
先ほどまで南国色だった大広間は、スネイプの呟いた言葉で一瞬にして闇へと変わる。
隣の寮席の女子が突然の闇に小さな悲鳴を上げた。
仄かにステージが明るくなり、目を細めてみやれば前に並んだ生徒達は、古びた鈴や筒、壺を手にしてた。
まるで、古代遺跡での儀式が始まるように思える。一人の生徒が壺から小さじ1杯の白い光る粉を撒き散らした。
その光は引力の法則したがって地面に落ちることなくフワリと浮くと、キラキラと輝きを発しながら大広間の天井をゆっくりと飛び回る。
スネイプの声が続く。
「東より、一吹きの風が肌を掠める時、小さじ1杯の光が無限の草原となりかわる・・・」
スネイプの言葉はまるで朗読のようで、大広間は水打ったようにスネイプの声に聞き惚れていた。
スネイプの続ける言葉に、天井を飛び交っていた光が弾けて四方に飛び散る。
ほんの一瞬の闇が支配する大広間。そして次の瞬間、
「うわあ〜!」
突如として現われた光の草原に、大広間から感動の溜息が起こった。
風は吹いてないのに、本当に吹いたいるかのように光の穂はゆったりと揺れていて、
揺れては舞い振ってくる光の雫に、が手をかざしてみればフワリと柔らかい感触が小さな手のひらに乗った。
ラベンダー達がうっとりと見守る中、そっと指にとり口運べばサーッと口の中に甘い香りが広がる。
「おいしい・・」
そう頬をほのかにピンク色に染めて、目を細める姿に周りの生徒達も光の雫に手をかざす。
スネイプの紡ぐ詩にのせて、生徒達が鈴を鳴らし、筒を振る。
その度に大広間の天井は色とりどりの変化を見せた。
草原、穏やかな雲。そして場面が変わるたびに舞いおりる甘いお菓子。
やがて、天井には壮大な光のオーロラが出現して大歓声が起こった。
ゆったりと揺れながら、色を変えるオーロラ。
そして雪のように舞い降りる花びらのようなチョコレート。
「光のプラネタリウムみたい・・・」
そう夢見るように呟くに、ハーマイオニーもにっこりと頷いた。
キラキラとお菓子を降らせる光のプラネタリウム、スネイプの詩は光の宇宙の案内人といったところか。
それほどまでにスネイプの声は耳に心地良かったのだ。
「されど、これもまた一時の夢」
スネイプの詩が終わりを告げると、ゆっくりとオーロラも消えていった。
徐々に大広間が明るくなると、お辞儀をする生徒達を置いてスネイプは興味なさげにさっさとステージを降りていった。
大広間はなんとも神秘的な空気が漂い、感動の溜息と拍手が起こった。
スリザリンの素敵なプラネタリウムが終わった所でしばし休憩となった。
夢心地な空気が大広間に漂い、誰もがこっそりと出て行ったなど気づかなかった。
「はふぅ〜綺麗だったなぁv」
雪が津々と降り積もる裏庭を眺めながら、廊下の壁に背中を預ける。
真っ暗な空から舞い降りてくる雪は、さきほどのスリザリンのプラネタリウムを思い出させて。
けれども今見ている空はどこか淋しく、冷たく感じた。ここが外だから?
ハーッと息を吐くと、うっすらと白い煙が立ちこめた。
「本当に、綺麗だったぁ・・・」
そう頷くように呟くと、はうっすらと微笑んだ。
なぜ、大広間を出てきたのかわからなかった。ただ無性に一人なりたくなったのだ。
どうしてなのだろう?
「ミス・?」
「ふえ?」
一人だと思っていたところに突然自分の名前を呼ぶ声がして、は思わず変な声を上げて顔を上げた。
少し離れたところに怪訝そうな表情を浮かべたスネイプが、ジッとを見つめていた。
「スネイプ先生・・・」
小さく呟くに、スネイプはまだ怪訝そうな表情での元へと歩み寄ってくる。それはどこか急いでいるようにも思えて。
の目の前に立ち、見下ろせば儚げに微笑み見あげてくると目が合った。
「とても綺麗でしたvまるで光のプラネタリウムのようで!」
そうフワリと笑うに、スネイプはピクリと片眉を上げた。
これはスネイプの癖だった。そしてその後に嫌味を言うのもいつものこと。
けれども、紡がれた言葉はいつもとは違っていた。
「そうか。それはよかった」
少しスネイプも笑った気がした。気がしただけ。
だってはスネイプの笑ったところなんて見たことなかったのだから。
ほんの少し目を見開いてスネイプを見あげれば、ほんの少し表情を歪めたスネイプと目が合った。
「こんなところで何をしている。中に入りなさい」
そう大広間へ促そうとするスネイプにはフルフルと首を振った。
「もう少しだけここにいたいんです」と笑うに、「こんなに冷えるところにか」と顔を顰める。
へへへと笑うと、軽い足取りで裏庭へと躍り出た。
嬉しそうにクルクルと踊り回るの姿に、思わず見とれてしまう。
気づいているのだろうか?さきほど見せたオーロラの真意を・・・
「私、ずっと前からオーロラ見たいと思っていたんです。」
が息を弾ませながら独り言のように呟いた。吐息が白く染まり、スッと闇と溶けていく。
「だからとても嬉しくて」そうにっこりとスネイプに笑って見せれば、スネイプもゆっくりと裏庭へ出てきた。
「知っている」
そう呟く言葉に、は不思議そうに首を傾げてスネイプを見あげた。
そこにはいつも見る不機嫌な表情や、嫌味をいう時の意地悪そうな笑みはなかった。
「先生?」
穏やかな表情に、温かい眼差しに、冷えきった心がジワリと温まっていくように感じる。
小さく笑うと、スネイプは小柄なと視線を合わせるようにそっと屈みこんだ。
の凍えた手を取り、そっと引き寄せれば抵抗することなく自分の胸の中にが収まり。
「先生?」鈴を転がしたような声がもう一度耳を掠めた。マントで包み込むように優しく抱きしめれば
ピクリと一瞬の体が強張る。
「知っていた。君がオーロラが好きなことも、プラネタリウムが好きなことも」
「先生?」
「君に一番見てほしかったのだよ・・ミス・・・・・いや」
そっとの顔を覗き込めば、驚いたような表情のとカチリと目が合う。
その瞳は潤んでいるように思えて、薄く笑った。
「ずっと君のことを見ていていた。迷惑だということはわかっている。
ただ今日は特別な日だからな・・陰険教師の戯言だと思って聞き流してくれ」
そう呟くと、スネイプはそっとを解放した。
「戻りなさい」そう優しく諭すと背を向けて大広間へと歩きだす。
クイ
小さな違和感を感じで振り返れば、が俯きながらスネイプのマントを掴んでいた。
体が少し震えていてる。寒いのか?それとも泣きたくなるほどに嫌だったか・・・
サクと軽い音を立てて、がスネイプへと歩み寄った。
何を言われるのか・・そう不安を抱きつつも、じっとを見つめる。
「ミス・・・」
マントをきゅうっと握り締め、そっと抱きついてくるに思わずスネイプは目を見開いた。
腹の辺りに頭をぐりぐり押し付けながら、呟くの頭をそっと撫でれば、
まだ瞳を潤ませたが見上げてくる。
「戯言と思わず、本音と受け止めてもいいですか?」
はそうはにかみながら、そっとポケットから小さな白い包みをスネイプに差し出した。
その包みを受け取りながらスネイプはハッとする。
今日はヴァレンタイン。それはスネイプももちろん知っている。
だからが見たがっていたオーロラを取り込むなどの演出を施したのだ。
そして、今日が生徒や教師達にチョコを渡していたことも。だがそれは皆同じ包み
オレンジ色の袋に入ったものだった。
今自分の手の中にある包みは雪のように白い包み紙。
「我輩も・・自惚れでないと思っていいかね?」
しんしんと降り続く雪に包まれながら、そっと寄り添い合う2人を廊下からそっとハーマイオニーが見つめて微笑んでいた。
この後続けられた大広間のヴァレンタインパーティにとスネイプの姿はなく、
けれども気づくものはハーマイオニー以外誰一人といなかった。
この後、寸劇を披露したルーピン率いるレインブンクロー、ハリーらグリフィンドールのマジックショーで
盛り上がり、優勝杯がハッフルパフに輝いたこともとスネイプには知る由もなく。
26000番ゲッター水音様に捧げます。逆ハー、スネイプ教授夢!
あまり逆ハーってません(殴)
おやつ大会ということで!また書き出したのもヴァレンタイン時期とうことで
ヴァレンタインなおやつ大会になってしまいました;誰がヴォレンタインを希望した!!
おやつ大会・・どのような大会にしようか迷って、逆ハーよりもおやつ大会話が多くなってしまいました;
スネイプ教授に朗読をしてほしかったのです;誰が自分の希望を入れろと。
そしてUPが大変遅くなり本当に申しわけありませんでした!!
このドリームは水音様のみ、お持ち帰りできます。