・はグリフィンドールの生徒で、同室のハーマイオニーとは大の仲良しである。
勝ちん気なハーマイオニーに対してははおっとりとのほほんとした性格。
栗色の緩やかなカーブを描いた髪がスラリと伸びた背丈に大人を雰囲気を漂わせるハーマイオニーに、
背中までまっすぐに伸びた漆黒のきらびやかな髪。焦げ茶色の丸めの瞳にハーマイオニーよりも頭一つ分小さい。
どこをとっても正反対な二人だけど、二人は大の仲良し。
互いの恋人のことを語ったり、マグルの雑誌を読みながらロンドン最新のファッションにうっとりしたり。
とハーマイオニーはグリフィンドールの最終学年生徒である。
+アンティーク+
「、今度ここに行きましょうよ!」
「えと、ロンドンに新しい喫茶店?」
穏やかな朝食の時間。
二人並んで座りながらさきほど届いたマグルの雑誌を開き読んでいると、声を半オクターブ高くしたハーマイオニーが
雑誌の一角を指し示した。
フォークを持つ手を止め少し身を乗り出すようにハーマイオニーが指し示した場所に目を凝らせば、
「ロンドンニュースポット特集記事」の一角、小さい枠の中に喫茶店オープンという赤い文字と店内であろう写真が目に入った。
アンティークな店内にはどっしりとしたアンティーク家具に小物たちが並べられていている。
その隣の紹介文に視線を移せば、何十種類の紅茶に数種類の手作りケーキ。
この記事だけでコクリとそそられる。
ハーマイオニーと行くのもいいけど、ぜひとも・・
「愛する彼と行くのもいいんじゃない?」
「ぇえっ!?」
はびくりと顔をあげてハーマイオニーを見た。
意味あり気な視線を送ってくるハーマイオニーにボンッと顔が紅潮するじんじんと頬が熱い。
「やだっ、何いきなりい言うのよ!ハッハーマイオニーだって彼と行きたいんじゃない?」
「なっ!そんなことないわよ!だってロンったら全然ムードがないんだもの!」
「悪かったなムードがなくて」
「二人とも何の雑誌を見ているんだい?」
向かいの席でむっつりとしたロンが勢いよくソーセージにフォークを指しながら呟いた。
その隣でニヤリとロンを見やりながらハリーが二人に身を乗り出す。
「何ふてくされているのよ!本当のことじゃない!」と恒例の口論が始まるがとハリーは
二人を放っておくことにし、ハリーに話の記事を見せた。
「なるほど、確かにロンだったらムードよりもケーキ全種類制覇とかやりそうだね。
・・で?は一緒に行くの?」
「えっえ;」
慌てふためくの様子にますますニヤリとハリーは笑った。
悔しいけど、とその相手がこの写真のテーブル席についたらとても絵になるだろう。
「もうっハリーまで!あっそろそろ移動しないと授業に遅れちゃう!」
まだニヤニヤと見つめてくるハリーに、耐えきれなくなったようにはハリーから雑誌をひったくると
顔を真っ赤にして鞄にしまいこんだ。
移動中もハーマイオニーとロンはまだねちねちと言い争いをしていて、その後ろからとばっちりがこないように微妙な間をおいて
とハリーがついていく。
は気づかれないようにふっとため息をつくと、先ほどのアンティーク喫茶のことを思い出した。
ハーマイオニーとハリーには真っ赤になりながらもなんとか話題を反らしたが、実のところ彼と行ってみたい。
だけど、一緒に行ってくれるかなぁ
とても気難しい人なのだ、の彼は。
よほどの理由がなければせっかくの長期休暇を、ましてマグルの世界になど来たがらないだろう・・
「んーなんかだるい・・・」
彼の頑なな否定の姿を想像したせいだろうか、
なんだか体の芯深くに重りがぶら下がっている気分に、はフルフルと首を横に振ると
ピンッと顔をあげて鞄を持ち直した。
「本日は各自で調合する。いいか、自分の力で完成させたまえ」
今日も威圧感丸出しの魔法薬学。威圧感の元凶といっても過言ではないスネイプは
小さくも唸るように教室を見渡すと調合開始の合図を告げた。
たくさんの大鍋からは細く煙が昇っている。時折小さな爆発音やもくもくと立ち込めている生徒のところへ赴いては、
ネチネチと嫌味をいいながら容赦なく減点していく。
それがほとんどグリフィンドールの生徒なので、ロンはスネイプに聞こえないように舌打ちをして、ちらりとを見やった。
「、なんとかしてくれよ・・」
「・・・無理だよう・・・」
「だろうな」
「ウィーズリー。調合はできたのかね」
不意に冷たい声が振ってきてロンはビクッと肩を震わせて振り返った。
さっきまで教室の端の方にいたはずのスネイプが、意地悪そうな笑みを浮かべてロンの真後ろに立っていたのだ。
「できたのかと聞いている」
「まだです」
「ならば無駄口を叩くな。さて、ミス・はどうかね?」
「あ・・はい。できました」
ギラリとロンを見据えると、スネイプはスッとへ視線を移した。
ぴくっと肩を震わせ少し慌てて頷いてみせれば、サッとの隣に立ち勺での大鍋の
薬をそっと掬い上げる。勺から掬い上げられた液体は息を見張るほどの色鮮やかなマーブル色をしていた。
マリンブルーとオレンジ色が溶け合い、レモン色やエメラルドグリーンへと変色していく様は
まるで万華鏡を回しながら覗いている満ち溢れた気分にさせる。しかし見た目とは裏腹にとても危険な
薬なのだ、今日の調合課題は。
スネイプは満足そうな溜息を一つこぼすと、勺を戻しそっとの頭を撫でた。
ちらりとが見上げれば、一瞬だけ口端で笑って見せるとすぐに踵を返し、また爆発を起こした生徒の方へと
足を進めていった。
「今日の調合を完成させたのはミス・だけか・・なんと情けない」
授業の終わり。全員が器具を片付けたところでスネイプは呆れたように溜息混じりに呟いた。
しかし、その呟きは広い教室に十分伝わりこの授業だけで鍋を爆発させ、薬品をこぼし、薬瓶を割りまくった
ネビルはガタガタと青ざめて震えた。その時、ムッとした表情でハーマイオニーが手を上げた。
何か意見でもするのであろうか、この授業だけでグリフィンドールからかなりの点数を引かれてしまった。
これ以上の減点は御免だと言わんばかりに周りの生徒達はハラハラとハーマイオニーを見つめる。
スネイプは目を細めてハーマイオニーを見据えると、思い出したように「あぁ」と苦々しく声を吐いた。
「そうだった・・・たしか、グレンジャーも完成させることができたのだったな。忘れていた」
結局、魔法薬の授業では点数挽回はできぬままに終業のチャイムが鳴り響いた。
こんなところに長居は無用と言わんばかりに、足早に教室を後にする生徒達。
「なによ!!あの言い方!!「完成させることができた」?「できた」ですって?!
こっちはちゃんと復讐して、手順をきっちりインプットして挑んだのよ!それなのにあの言い方!!」
「ハッハーマイオニー・・落ち着いて〜」
怒り任せにズンズンと歩くハーマイオニーの後ろをワタワタと小走りについていく。
「はいいわよね〜」と意味ありげな笑みを浮かべて振り返ってくるハーマイオニーに
カーッとの頬が熱くなった。
「もう!ハーマイオニーったら!!」
「ふふーv私はこれから特別専攻の「古代遺跡とその守番」のクラスなの。
は「東洋薬学」でしょ?ランチでね!」
むうっと顔を赤くしながら頬を膨らませるに、クスリと笑ってみせるとハーマイオニーはサッサと
次の教室へと歩いていった。ハーマイオニーが廊下の角を曲って姿が見えなくなると、
も「んしょ」とカバンを持ち直して次の授業の教室へ踵を返す。
クラッ
「あれれ・・」
肩に食い込むほど重い鞄のせいだろうか?そんなに勢いよく踵を返したわけでもないのに、
クラリと軽い眩暈を覚えて、顔を顰めて立ち止まる。
なんか頭の奥がジンジンする・・。
「なんだろ・・ちょっとだるいかも・・」
「どうしたのかね?」
片手で顔を覆っていると、背後で聞きなれた深みのある低い声が降ってきた。
そろりと振り返れば、後片付けを終えて職員室にでも向かうのだろうか?
スネイプが怪訝そうな表情でを見下ろしていた。けれどもその表情からは心配の色を濃くした
気配も漂っている。
「具合でも悪いのかね??」
「ううん、大丈夫だよ」
スネイプがそっとの頭を撫で顔を覗き込めば、は小さく首を振ってにっこりと笑ってみせた。
「ちょっと立ちくらみしただけ」と答えれば、「そうか」と目を細める。
「さ、早く次の教室に行きなさい」
「はい」
はにっこりとスネイプに笑ってみせると、ペコリと頭をさげて次の教室へと足を進めた。
さきほどのはただの立ちくらみだろう。それに彼が心配じみた表情で名前を読んでくれたおかげで
ほんの少し元気が出たし何も問題ないだろう。
けれどもはどんどん体が気だるくなっていく感じに、小さな不安を消すことはできなかった。
「?どうしたの?なんか顔色悪いよ?」
「え?そう?」
「うん、めちゃくちゃ顔色悪い。スネイプにキスでもされた?」
「ロン!!」
昼食の時間、まったく食事のすすまないに隣に座っていたハーマイオニーが不安そうにの顔を覗き込んだ。
え?っとはじけたように顔を上げたに、ロンも同意して頷く。余計な茶々をいれハーマイオニーに
窘められているのを横目に、向かい席に座っているハリーも心配そうにを見やった。
「食事もすすんでないじゃないか。どこか具合でも悪いの?」
「うーん・・・なんとなく体がだるい感じ。でも大丈夫だよ!!」
「そう・・・・・でも無理しないでね」
「うん。さて、そろそろ移動しよ・・・・か・・・・な」
「!!」
フォークを置いて鞄を持ち上げた瞬間崩れるようにして倒れたに、ハリーが声を荒げた。
ハーマイオニーとロンもハッとして振り返り、慌ててハーマイオニーがを抱き起こす。
「ちょっどうしたの?!・・・・熱っ・・・・・?!すごい熱じゃないの!?」
「どうした」
周りの生徒達も慌ててを支える騒がしさを教員席から聞きつけたのであろう、
スネイプが足早に歩いてきた。
ハーマイオニーの腕の中でぐったりとしているを見つけると、一瞬目を見開いてを抱き上げる。
「医務室へ連れて行く」
さっと人垣が割れ、スネイプはを軽々と抱き上げたまま大広間から出て行った。
「風邪」
「はひ」
「何故、もっと早くに言わない」
「はひ」
「放っておいたらもっと悪化だ」
「はひ・・ごめんなさい・・」
医務室のベッドで横になったは毛布を鼻のところまで掛け、情けない目でスネイプを恐る恐る見た。
生憎マダム・プンフリーは不在だったので、スネイプが薬の調合をしてくれたのだ。
ベッドの傍らに腕を組みながら立つスネイプからは、苛立った気配が十分に感じ取れる。
どんどん小さくなっていく声にスネイプはハアと深い溜息をつくと、そっとベッドの端に腰を下ろした。
その表情からは険しさは取り払われており、それとは正反対の感情である優しい表情がを見下ろす。
毛布から顔を出したに小さく笑うと、そっと熱でほんのり赤く染まった頬を撫でた。
「無理はしないでほしい」
「うん・・・」
「最近卒業論文やらで忙しかったのだろう・・だが体の自己管理は怠らぬように」
「ごめんなさい」
「体を壊していたら、と二人でロンドンの喫茶店に行けぬであろう?」
「うん・・・・??へ?」
スネイプの言葉一つ一つがとても温かくては、猫のように目を細めた。
だが、スネイプがあのアンティーク喫茶店のことを口にした途端、妙な間が二人の間に流れた。
は首を傾げてじっとスネイプを見つめた。どうしてあの喫茶店のことをしているのだろう?
あれはハーマイオニーとハリー、それにロンしか知らないはず・・
不思議な表情で首を傾げているの姿に「ああ」とスネイプは頷くと、
楽しげな笑みを浮かべての額に自分の額を合わせた。目の前に迫ってきたスネイプの顔に
の顔が熱にうなされている以上に赤くなる。
「のことは何でもお見通しだ」
「・・・はあ」
「行ってくれるの?」と躊躇気味に言葉を紡げば、目の前に迫っていたスネイプが優しく笑った。
触れるだけの口付けをすると、ポンポンと軽くあやすようにの頭を撫でる。
「だが、まずは体を治してからだ」
「はひっ」
午後からずっと付きっ切りでの看病をするスネイプの姿に、ハーマイオニーはうっとりとした溜息をつき
半ば蔑んだ目でロンを見やった。そんなハーマイオニーに「何だよ」ロンがぶっきらぼうに返事するのを見て
ハリーは「まだまだだね」と小さく笑ったなどとスネイプは知る由もなく。
それからしばらくして、あのアンティーク喫茶店のマスターが
「なんともお似合いでこれまたこの店にマッチしたカップルが、静かに、でも楽しそうにお茶の時間を楽しんで行った」
と開店からの常連の老人に誇らしげに話していたとか・・
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キリ番21555番ゲッターあやや様に捧げますスネイプ教授夢。
具合が悪いのに黙ってて悪化させて倒れたヒロインに、やさしく看病ということで!
あまり看病してません;どこから喫茶店湧いて出た!!
妙に優しい教授です;しかも「何でもお見通しだ」ですって教授!!
アップが大変遅くなって本当に申しわけありませんでした。
このドリームはあやや様のみお持ち帰りできます。