「あぁ!愛しのリリ〜♪」
「うるぁあ!くたばれぇ!」
ドス!
「えへへ・・今日もかっこいいなぁ〜」
「俺?俺か?!なあ俺だろ?!」
「何吠えているのさ。沈めるよ?」
「むぐっ・・・喉つまっ・・水〜」
+片思い+
今日も相変わらず賑やかなグリフィンドール寮席。
この騒ぎに誰一人驚かないのは毎朝同じことを目にしているから。
にやけ笑顔で伸びているジェームズを一瞥すると、リリーは隣でうっとりと
明後日の方向を眺めているの頭をぐわっし!と掴んだ。
「ぁあら?私が朝から苦労しているって言うのに、心ときめかしているなんて、いい度胸じゃなーいv」
「ふにゅうぅ・・だってぇ〜」
ぁあん?と鈍い音とともに額をつき合わせれば、くらくら〜と目を回しながらふらつく。
そんなの傾く上体をもう方隣からシリウスが支えた。
「いいじゃねぇか。は俺に見惚れていたんだからよ」
「埋めるよシリウス。はこの僕に夢中なんだから。ね?」
きょとんと首を傾げて?マークを飛ばしているを抱きしめると同時に、
シリウスの向かい席から、にこやかな笑みと氷点下クラスの冷気が漂ってきた。
手にしていたフォークをぐにょーんと折り曲げたリーマスがシリウスをにっこりと睨みつけている。
「うっせぇなーは俺に激惚れなんだよ」
「ちょっシリウスー;」
「いいやこの僕だね」
「リーマス?」
「やかましい黙らすよ、犬共」
睨み合う二人の横では、凄まじい殺気をぶちまけていたリリーがボキボキと指を鳴らしていた。
そのギン!と開かれた両の目にシリウスとルーピンは冷や汗たらたらと一気に固まる。
「「ごめん;;;」」
「よろしい。おとなしく食べな」
シリウスからを引き寄せると、二人は少し離れたところに移動して腰をおろした。
「・・・・ふん。やっと離れたか」
スリザリン寮席から一人の少年が、すさまじい形相でシリウスを睨みつけていたなど、
シリウスは知る由もなかったが、少年の近くにいた後輩がびくびくと縮みあがり、朝食どころでは
なかったのだということも少年も知る由はなかった。
「で?愛しの君にはアタックしたの?」
シリウス達から十分離れたところに腰をおろしたリリーとは、サラダを皿に盛り付け、パンを手にとった。
のたのたとバターを塗っているを横目に、リリーが呑気に聞けば、ぼふん!と音が聞こえてきそうに顔を赤くさせる。
「そっそんな・・こここ告白だなんて;」
「・・・・まったくさー。あんたの片思いも博物館ものね!何年たってると思うのよ」
「・・・5年・・一週間と3日・・・」
ぼそぼそと消え入りそうな声で呟くに盛大なため息を吐き出す。
「化石並。早く落としてしまいな。向こうもそれを望んでるわよ」
「・・・・・?ちょっ・・・・まっ、やだ!!ひょっとして彼知ってるの?」
「イエース」
「バレバレ?!」
「イエース」
「どうしよう・・恥ずかしい・・」
これ以上は赤くならないのでは?と思うほどに顔を真っ赤にさせ、シュンと俯くに
リリーは再び呆れ気味にため息をついた。
「もう後はないわよ?今度のホグズミード行きが勝負ね。
あそこには薬草を扱っている店もあるから、そこに行かない?と誘うのよ。」
「う・・・・うん。やってみる」
そう頷いてみるもののの手元は完全に固まってしまった。
彼に思いを寄せてから早5年。遠くから見つめているだけでも嬉しかった。心が満たされた。
私は薬草学が得意で、あの人は魔法薬が得意。
薬草などの共通性から幾度となく言葉を交わしたことはあるけれど、その度に私の心臓は張り裂けんばかりだった。
「うまく言えるかな・・・」
怖じ気づくにチャンスが訪れたのは魔法薬の授業だった。
「本日はペアで調合を行う。そうね、グリフィンドール、スリザリンのペアね!」
魔法薬教授の声に教室中がピシリと固まった。
グリフィンドールとスリザリンといえば犬猿の仲。互いに睨みあい呪うかのように渋々とペアになる。
「よっし!俺スネイプの野郎と組んで奴に薬をぶちまけてやる!」
の後ろに陣取っていたシリウスが意気揚々と立ち上がった。
「へっ笑い者にしてや・・ぐふ」
ハラハラと不安そうにスネイプを見つめていたの耳に、シリウスの呻き声が掠め振り返れば、
シリウスは白目を向いてぷしゅ〜と机に伏し倒れていた。
の隣でリリーがシリウスの頭を押さえつけている。
「リッ・・リリー?」
「、チャンスよ」
「え?」
グリグリとシリウスの頭をさらに机に押しつけながら、リリーは不敵に笑った。
「奴を落とすチャンス!一緒に組むのよ!」
「えっそんな!無理よぉ!」
「問答無用!行ってこーい」
「ひゃあ!」
顔を真っ赤にして首を振るが無理矢理立たされ背中を押されてしまった。
トン
「あわわ・・ごめんなさい!」
「・・・あぁ、か。」
前につんのめるように押し出されたは軽く生徒の背中にぶつかってしまった。
慌てて謝れば、さらに硬直する。そこにはの片思いの人が・・・
「うん。ならあのポッター共のようにふざけないな。一緒にやろう」
「・・・/////」
「?」
「え・・あ・・・えと・・・うん!!よろしくね!スネイプ君!」
の片思いの彼(・・といってもの想いを知っている模様)、セブルス・スネイプは
背中に走る軽い衝撃に一瞬顔を顰め肩越しに振り返るものの、それが小柄な黒髪の少女であることに気づき、
少しだけ表情を和らげてしっかりとへと振り返った。
何か言いたげなの表情に、ピンときて共同調合のパートナーをと進言すれば、
は一瞬驚いたように目を見開いた後、ふにゃあと微笑む。
大鍋を囲むように並んで羊皮紙に目を通す。最初はセブルスの隣、しかもローブの袖が振れ合う距離に
ドギマギしていたも、羊皮紙を覗き込んでいるうちに徐々に真剣な表情になっていく。
「複合剤は分担した方が効率がいいな。私はこの保留剤の調合をするから
はこちらの複合剤の調合を頼む」
「うん!」
互いに睨みあって、いかに相手に不覚を負わせるか意気込んでいるペアの中、
セブルスとは頷きあうと、テキパキと調合に取り掛かった。
「ふふ・・・いいムードじゃなーい。
ちょっと!!あんた!!しっかり完成させなさいよ!!」
「なんで僕一人でやらなきゃいけないんだよ!」
「ぁあら?私に楯突こうってーの?」
「う・・・」
ここのペアは睨み合うというより、獅子寮の女王に使われてます。
お気の毒・・・。
「あの・・スネイプ君、この複剤に入れるヤブトカゲの胆汁なんだけど・・・」
「どうした?」
「作業手順には「大人のヤブトカゲ」とあるけど、支給されたのはまだちょっと若すぎないかな?」
今日のペア調合は各寮のペアと、全て自分のたちの判断で作業するものだ。
教師は一切口に出さず、手も出さない。そう、すべて自分たちの判断で行わなければならないのだ。
セブルスはの発言に、乳鉢で固い実を潰す手を止めての手にしているトカゲを覗き込んだ。
の言うとおりこの調合で使うにはまだ若すぎる。
「んー」と軽く唸った後、セブルスは羊皮紙に目を移ししばらく考え込んでいた。
「それじゃあ、あとはこの促進剤を足してやろう」
「あっ、そうだね」
「よかった・・気づいて」
セブルスはフッ優しい表情でを見やると、もにっこりとセブルスに微笑んだ。
「まったく!!完成させたのはミスター・スネイプとミス・のペアだけ?
しかも調合すら行えていないペアはどういうことかしら?ミスター・ブラック?」
終業のベルが鳴る10分前、魔法薬学教授は盛大に溜息を付きながらシリウスを睨んだ。
へっへっへーと馬鹿笑いするシリウスを、ペアを組んだ男子生徒が苦々しげに睨みつけている、
その頬には何かいぼらしいものができていた。
「まったく!!
しかし、ミスター・スネイプとミス・のペアの薬はまさに完璧です!!
よくヤブトカゲが十分に成長していないと見抜きましたね。あれは私が仕組んだものだったのよ。
しかも分担しての作業も効率がよいものです。よって二人には得点をスリザリン、グリフィンドールに
20点ずつあげるわ」
「わぁっ!!ありがとうございます!!」
はあまりの嬉しさに、セブルスの腕に抱きついた。セブルスは一瞬驚きに目を見開いたが、
にこにこと嬉しそうな表情に、優しく微笑んだ。
「・・・・あんにゃろう・・・・・」
各寮にかなり高得点の点数が入った事により、教室中が興奮してセブルスとに目を留めていなかったが、
シリウスだけはつまらなそうに、セブルスを睨みつけていた。
「あの!!スネイプ君!!」
終業のベルが鳴り地下牢の教室を後にする生徒達、足早に教室を出て行くセブルスの耳に
のおどおどした声が掠めた。何気なく振り返ると、先ほどの調合では全く見せなかった
真っ赤な顔でスネイプを見上げている。
「何だ?何かまだ掃除忘れがあった?」
「ううん、違うの!!あの・・あのね、今度のホグズミード行きのことなんだけど・・」
「あぁ・・ホグズミードか・・私はあまり好きではないんだ・・」
「!?・・・・そう・・・」
「騒がしいところは苦手で」と苦笑いし暗がかった声に、はシュンと項垂れた。
他にどうやって想いを伝える手段があるのだろう・・必死に探してみるが見つからない。
もう後はないわよ?今度のホグズミード行きが勝負ね!
脳裏にリリーの声が木霊している。
(だめもとよ!!)
はバッと頭を上げて、わたわたとせブルスを見つめた。
「あのっ・・・私の行きつけの薬草のお店があるの!!そこはあまり生徒は来ない所でねっ
ホグズミードのはずれにあるの。
で・・スネイプ君魔法薬得意だしっ私は薬草学好きだしっ、あっあとはそこはハッ・・ハーブカフェも併設していて
よかったらお茶でもって・・・思ってたの・・・それで・・」
「おらあ!スネイプ〜!俺様特製「カエルに変える薬」を食らいやがれ!!」
「また貴様かブラック・・・」
「!?だめぇっ!!」
「なっ?!」
の声を遮って、地下牢の教室からニヤニヤとシリウスが走り出てきた。
何か液体瓶を持っている。シリウスの後ろからジェームズとピーターも何か楽しそうに出てきた。
その後ろでリーマスが呆れ気味溜息をついている。
ブン!と力任せにこちらへと瓶の中身を投げつけてくるシリウスを一瞥をしながら、
セブルスはさも面倒くさそうに懐から杖を取り出して、宙を舞う液体へと狙いを定めた。
だが、その瞬間がセブルスの体を押したのだ。あまりの突然で不意なことによろけてしまう。
そしてその液体はへと降り注いだ。
「!?!?やべえ!!」
「ちょっと!!シリウス何やっているんだよ!!」
「おいおい!!かわいい女の子に何てことするんだ!」
「わー・・・・酷いなシリウスー」
「!!!」
「・・・・いやー!!!」
は小さなアマガエルになっていた。
呆然と見下ろしてくるセブルスの視線がとても辛くて、は思わずそこから飛び去ろうとする。
けれどもピョンと跳ねた瞬間に
ポス
セブルスの手に収まっていた。
「やだぁ!!放して?!!見ないでぇ!!」
こんな姿になって、好きな人の自分を見る顔を見てはいたたまれなくなり
必死にセブルスの手からもがき出ようとするが、セブルス優しくを抱き寄せた。
一瞬にしておとなしくなるを優しく撫でると、キッとシリウスを見据えた。
「貴様、覚えておけよ」
「、出て来い。隠れていては戻すにも戻せない」
それからセブルスはそのまま次の教室に向かわず、医務室へと足を向けた。
保健医の手早い対応に、すぐにも薬ができ、あとはに飲ませるだけとなったのに、
は薬棚の下に潜り込んで頑として出てこようとしない。
「」
「置いていって!!後で飲むから!?」
「たわけ、今この薬はゴブレットに注がれているんだ。今のの姿は
あまりにも小さすぎる。ゴブレットの中で溺死したいか」
「・・・・やだぁ;・・・・・」
「なら出て来い、この薬全部飲まないといけない。徐々に戻る薬だ。
始めのうちはスポイトで飲ませなきゃいけないんだ。飲ましてやるから出て来い」
「・・・・やー・・・マダムに飲ませてもらうぅ!」
「・・・・マダムは今用事で出て行ったぞ。私しかいない。それとも他の奴に頼むか」
「う・・・・」
「まったく・・・カエルにされたからといって隠れることはないだろう」
深い溜息をつき椅子に腰を下ろし、ゴブレットをサイドテーブルに置いて棚の下を見つめた。
「だって・・・だって・・・・」
声が震えている、泣いているのだろうか
「だって・・・大好きなスネイプ君にこんな姿・・・・やだよぉ・・・おかしいでしょ?
大好きな人にこんな姿なんて!!」
「//////・・・・・。お前何言っているか把握できているか?」
「できてるもん!!・・・・・・はっ・・・・やー!?!?」
一瞬の沈黙の後、はガーンと打ちのめされたように真っ青になった。
どうしよう!どうしよう!!言っちゃった!言っちゃったよぉ!!
「やあ!今の忘れて!!聞かなかった振りして!!」
「無理だな」
カツンとセブルスが立ちあがった。棚のほうへと歩いてくる。
ビクビクとの体が強張った。もう絶対・・・人間に戻れてもスネイプの前に出れない!?
「アクシオ」
「うわぁっ!」
セブルスが唱えた呪文とともに、の体フワリと浮いて棚の下から出された。
ぐわりとそこから引き出される感覚に思わずギュッと目を閉じる。
「さて」
頭上の方からセブルスの声が振ってきて、おそるおそる目を開けてみれば、
はスネイプの手の平の上に収まっていた。
「・・やー!!」
「煩い黙れ大人しくしろ」
「やあやあ!放してぇ!!」
「ったく、やかましい」
逃げるにもしっかりとセブルスに押さえつけられていて身動きできない。
情けない顔つきでセブルスを軽く睨み上げれば、不敵な笑みが見下ろしてくる。
「私の大事なを早く元に戻したいのだ、大人しくしろ」
「・・・??・・・・え////」
ピククッと体が強張る、目をぱちくりしているの目の前に、
スポイトがそっとおろされた。
「あぁ!どうしよう!?!?大丈夫かな?!」
「んーさっきセブルスが医務室連れて行ってたし大丈夫じゃない?」
「にしても女の子をカエルするなんて・・」
「かわいそう・・」
グリフィンドール寮談話室。
落ち着きない足取りでうろちょろするシリウスをシーマスが顰め面をして睨みつけた。
パタン
寮の扉が開かれる音が耳を掠めて、4人は一斉に扉に目を向けた。
「!!?・・・・・て・・エヴァンスかよ」
「悪かったわね、犬。さあて・・・」
薄らと微笑むリリーにシリウスは背中に冷たいものが走った。
「ぶっ殺す!!犬ぅ!!!
になんてことしやがったぁ!!埋める!沈める!!」
「ぎゃー!?!?」
「やれやれ・・自業自得だね。」
「うう〜vリリー素敵さぁ!!」
数日後、わくわくとホグズミートに向かう生徒達の中に
恥ずかしながら手をつなぎあい、寄り添っている新しいカップルを
遠くからリリーがにっこりと見守っていた。
「あ〜リリーvv」
「あー・・・うっさい」
ゴスッ
こちらの二人がラブラブになるのは、もう少したってからv
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21100番ゲッター・坂下美咲様に捧げます、学生セブルス夢!
設定はお任せということで、セブルス君に片思いのヒロインだけど、じつは両思いだったという
お話にさせていただきました。
あまり学生時代の夢というものが慣れなくて;こんな形になりましたが;へへ;
途中何気にラブアクっぽい表現がありますが、「イエース」はぜひあの口調を
想像して読んでいただけたら幸いですv
UPが大変遅くなって本当に申し訳ありませんでした!
このドリームは坂下美咲様のみお持ち帰りできます。