19琉嘉さんへのキリリク







「スケッチ」


























ある晴れた昼下がり、スネイプは専用の薬草温室から城へ向かっていた。
が、天気もいいことだしと、彼には珍しく湖の湖畔へと足を伸ばしてみることにした。
生徒は授業中、自分はちょうどクラスがなく大変静かで、とてもすがすがしい。

「ちっ我輩だけではないのか・・」

スネイプは進行方向の先を見て不機嫌に舌打ちをした。
スネイプの目の先には一人の女生徒が湖畔の小高い丘の上に腰をかけている。

「・・・あれは・・」

その生徒へと足を進めながら、知らず知らずのうちにスネイプの顔から不機嫌の表情は和らいでいた。




「ミス・。何をしているのかね?」

「あっスネイプ先生。こんにちは」


名前を呼ばれて、少し驚いて顔を上げた少女は、
スネイプが目の敵にしている寮の・・赤と黄のネクタイをしている。
だが、何故か彼女に対しては嫌悪の気持ちがいつも浮かんでこない。



日本から来た魔女で、スネイプと同じ・・ショートだが黒い髪に黒い瞳。
でも彼女に漂う空気はとてもゆったりとしたもので・・・



「何をしているのかね?」


授業の時とは違う優しい声で問掛ける。
はやんわりと微笑み、手にしていたスケッチブックを軽く持ち上げた。


「湖畔のスケッチをしているんです、スネイプ先生」


の微笑みに少し心動かされながらも、スネイプは眉間に少し皺をよせた。


「スケッチでは風景は動かないではないか。カメラの方が良いのでは?」


それでもは微笑んだまま、小さく首を振った。


「確かに動きませんが、その瞬間を・・今しか吹いてない風を、風景の色を自分自身で表現したいんですよ。
動かない絵にどれだけ脈動感を表現できるか・・」


そう話しながらもは鉛筆を走らせる。
スネイプはしゃがみ、のスケッチを覗き込んだ。

まるでその絵は生きているかのように活き活きとしていて、今にそこからすがすがしい風が吹いてきそうで・・


「素晴らしいな・・」

「え?」

「いや・・」

驚いて顔を上げるにほんのり頬を赤く染めながら、スネイプはふいっと横を向いた。
サーっと心地よい風が頬をかすめる。やんわりと鼻をかすめる土の匂いが不思議と心を落ち着かせた。

「隣いいかね?」

「はいっどうぞv」

スネイプはの隣に腰を下ろすと、その心地よい風を肌で感じながら、目を閉じた。
それから2人は何を話すわけでもなく、静かに時を過ごした。












「そういえば、先生もスケッチされるのでしょう?」

「我輩が?・・・いや?」


突然、が口を開いたのでスネイプは少し驚いて目を見開いた。
自分はスケッチなどに興味はないし、したこともない。
この生徒はいったいどういう了見で聞いてきたのか・・・
そう口を開こうとするよりも早く、再びが口を開く。
その手は滑らかに画用紙の上を踊り、その綺麗な目は景色を映し出して。


「薬草のスケッチですよ。いつだか、授業で皆が実験の最中に先生机に向かって薬草をスケッチしていたじゃないですか」

スネイプは「あぁ・・・」と曖昧に返事をしながらその時のことを思い出していた。
たしか、上の方に提出する書類のひとつに薬草をスケッチを添えることが度々あったな・・・
そうぼんやり考えながら、ふと小さい笑みを浮かべた。

「君は貴重な実験中、余所見をしていたのかね?」

いつも授業で出す声色とは全く違う、優しい口調でを覗き込む。
は顔を赤くしてスネイプを見た。

「あわわ・・・墓穴掘っちゃいました・・・」

慌てるがとても可愛らしくて思わず目を細める。

「まあいい・・・・確かに、薬草を描きとることはあるな・・だが、君のように
景色をスケッチ・・ということはない。」

「そうですか〜でも薬草も立派なスケッチですよ〜?」

「そうか?」

「そうですv」



そしてまた穏やかに時が流れた。


だいぶ日が傾き、頬を掠める風が少しチクチクと痛みはじめた頃・・・


「・・・・・・うん・・・・できた・・・・・」

「・・・・ほう・・・なかなか・・・・・・・・・・・」

「へへーありがとうございますvさて、そろそろ戻りますね!!」

はサッと立ち上がり、スネイプにお辞儀をすると城へと踵を返していった。
だが、ふと足を止め・・・

「先生!私毎週いつもここでスケッチしているんです。
もしよかったら・・先生もスケッチしましょう?」

「!?な・・・」

「もっちろん強制じゃないですよ〜vv」

そうニッコリ微笑むとはまた城へと歩いていった。































それから一週間が過ぎた。


湖畔の小高い丘で、とスネイプは2人並んでスケッチをしていた。
は景色を、スネイプは丘に咲いている花を・・・
ふたり特に会話をすることことはなかったが、二人を取り巻く空気はとても穏やかで
心地よいものだった。

そして、その翌週も、またその一週間後も2人は一緒にスケッチに出かけた。




2人が一緒にスケッチを始めて数ヶ月が過ぎた頃。
並んで城へと帰る途中、がふと口を開いた。

「先生!今度の休みにピクニックに行きましょうよv」

「・・・・・ピクニック・・・かね?・・・・」

スネイプは驚いたような・・怪訝そうな表情を浮かべた。
はにっこりと笑って、スネイプを見上げる。

「はいvピクニックです!お弁当持ってスケッチに行きましょう!」

「嫌ですか?」と少し悲しそうな表情で聞いてくるがとても可愛らしくて
思わず笑みがこぼれてしまう。スネイプは優しい笑みを浮かべて

「いや・・ぜひ行かせてもらおう」


パアッとの表情が明るくなり、それでは今度の休みに行きましょうね!と
笑うと小走りに城へ走って行った。
の後ろ姿を見送りながら、スネイプは今度の休みが
とても待ち遠しい気分になって・・・



そしてあっという間に時はすぎるもので、
ピクニックの日−

ホグワーツから少し離れた小高い丘へ2人は出かけた。
の手には彼女お手製の昼食が入ったバスケット。
スネイプの手には2人分のスケッチブック。
空はすがすがしいほど晴れ渡っていて、まさにピクニック日和で−
やがて2人は丘のてっぺんまでくると、そこに荷物をおろした。
ホグワーツを一望できる風景にしばし見とれて、湖がキラキラと太陽の光を反射して
心地よい眩しさを感じる。
思い切り背伸びをして、すがすがしい空気を吸い込むとスケッチブックを取り出した。


「さて・・今日は何を描くのかね?」

スネイプは少しいたずらっぽい笑みを浮かべてパラパラとスケッチブックを開く
眺めながら口を開いた。は「んー」と少し考えていたが、
何か思いついたようにニッコリと笑った。

「今日はそうでうすねぇ・・・これからも大事にしていきたい風景を・・
というのはどうでしょうか!」

「・・・大事にしていきたい・・・か・・うむ」

スネイプは頷くと、自分のスケッチブックを取り出した。
は丘のてっぺんに腰を下ろし、眼下に広がるホグワーツ城をスケッチし始めた。
スネイプはから少し離れたところに腰を下ろし、スケッチブックを開く。

穏やかな日差しが2人をじんわりと包んで、小鳥のさえずりが心を洗ってくれるようで・・
ゆっくりと時間は過ぎていった。
太陽が昼食の高さに昇った頃・・・


「うん・・・・こんなもんかなぁ・・・?」

「できたのかね?」

「はいv」

「我輩も描けた・・・」

「そうですかvじゃあお昼にしましょうよ!!」


はサッと立ち上がって、ローブについた草を軽くはたいた。
バスケットの中にはお手製のサンドイッチ。
2人仲良くならんで腰を下ろし、ホグワーツ城を眺めながらサンドイッチを口にする。

「うまいな」

「へへーありがとうございますぅv」


スネイプに誉められてほんのりと顔を赤くする。
のお手製アップルパイで昼食を終えた頃−

「先生はどんな景色をか描かれたのですかv
私はですねぇ、ホグワーツ!!卒業しても大事にしていきたいですよ・・」


そう、スネイプに自分のスケッチブックを見せた。
受け取りながら、スネイプが絶賛の溜息をつく。

「素晴らしい。本当に大事にしているのだな・・・」

「へへ・・・」

スケッチブックには緑と湖に囲まれたホグワーツ城が活き活きと、
そして壮厳に描かれていて、動く写真に劣らぬほど生命力にあふれている・・・。


「先生は何を描かれたのですか?」

スネイプは少し意地悪く笑って見せた。

「さあ・・・?」

「む〜!見せてくださいよ!!」

軽く頬を膨らませるに苦笑いをしながら、スケッチブックをに渡す。
はニコニコと微笑みながらスケッチブックを開いた。



























「・・・・・・・・・・・・先生・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あぁ・・これから我輩が大事にしていきたいと思っている景色だ・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「迷惑か・・・・・・」


「ううん!嬉しい・・・・・・ありがとぉ・・・・先生・・・・・」












はそっとスケッチブックを抱きしめ、スネイプの肩にもたれかかった。
の肩にそっとスネイプの手がのせられる。







サーと優しい風が丘を駆け巡る

小鳥のさえずりが心を洗ってくれる











「先生、またピクニックに来ようね?」

「もちろんだ」
























が抱きしめているスケッチブックには、彼女の横顔が描かれていた−






















7130番ゲッター琉嘉様に捧げる教授夢!
スネイプ教授とスケッチに行こうという設定ですね。
なにやら琉嘉様は美術部だそうで、画力ナッシングな管理人には
未知の世界でございますが・・(汗)
散歩で菖蒲園に行ってスケッチしている人を見てこんな感じかなと・・・・
そしてたぶん教授も薬草や実験につかう材料をスケッチしているのでは?
と勝手に想像してこんなドリームになってしまいました・・・;
珍しくのんびりなドリームですね・・
アップ遅れて申し訳ありませんでした!!


このドリームは琉嘉様のみお持ち帰りできます。