+月光+




















ハロウィーンパーティが盛大に終わりを告げ、生徒たちは名残惜しそうに自分の寮へと戻って行く。
マグル学教師のは笑顔で生徒達におやすみと手を振り。
東洋、日本からきているこの教師、年は二十代半ばというのにその容姿は東洋人特有のためか6〜7年生と思えるほど。
小柄で腰まで伸びた黒い髪に形の良い、かわいらしい瞳。その黒い瞳は極上の黒曜石のようで・・・・・


「さて私も戻ろうっと」



生徒がだいぶ引けてきたのでも燭台を手に大広間を後にした。
先ほどまでカボチャのランターンで幻想的に彩られた廊下にすでにランターンの姿はなく、いつもと変わらぬ静かな空間に戻っていた。
暗く、そしてあまりの静けさに少しばかり恐怖心が湧き起こる。蝋燭の灯りだけをたよりにゆっくりと慎重に歩く。
突然、目を凝らしながら見ていた景色が急に青白く光を放った。ちょうどの自室がある塔へと続く渡り廊下に出たところだ。
不思議そうに夜空を仰げば、そこには闇にくっきりと浮かんだ満月。


「わぁ・・・」


満月の美しさには、燭台の灯りを吹き消して渡り廊下から裏庭へと出た。
ひんやりと冷たい風がの頬をかすめる。
満月は暗い闇の空で美しく光を放っていた。は時がたつのも忘れ満月を仰ぎ見ていた。















普段から不機嫌そうな表情に眉間に皺を寄せ、さらに不機嫌そうにスネイプは燭台を手に校内を見回りしていた。
騒がしい仮装パーティなどごめんこうむるスネイプは、夕食をすませるとすぐさま自室にこもり読書にふけっていたのだ。
そしてパーティが終わるとともに見回りへと自室を出る。パーティの余韻でバカなことをしでかす生徒がいたら即、減点をして処罰に。
だがこの日は珍しくうろついている生徒はなく、ほっとしたようなでも残念な気になりながらスネイプは裏庭へと出た。

「あれは・・」

裏庭に出たスネイプの足がふと歩調を緩めた。
彼の視線の先には月明かりを浴びて気持ちよさそうに緩やかに踊る少女の姿が。
はじめは生徒だと思っていたスネイプだが近づいていくうちにそれは同僚の教師だと気づいた。
月の光を浴びながら踊る姿はまるで妖精のようで。白っぽいローブに月の光が吸い込まれて彼女そのものから
光を発しているのではと錯覚を覚えるほど。スネイプは気づいていなかった。先ほどまで険しい表情だったのが、
の姿を見て優しい表情になっていることに。










「くしっ」


は少し肩を震わせて小さいくしゃみをした。仮装はしていなかったとはいえ今日はパーティ用の
白い薄いローブを着ていて、かなり寒い。肩を震わせて息を吐けばたちまち白へと変色する。




「何をしているのかね。」


誰もいるはずのないこの裏庭に低い深みのある声が響き、は小さい悲鳴を上げて肩をびくりとさせた。



「あ・・スネイプ教授・・」


「・・・・我輩は物の怪か」


の驚き方に、スネイプは少し眉間に皺を寄せて溜息をついた。
「へへ・・すいません」とニッコリ微笑むを軽く一瞥して、の隣に立つ。
目を細めて溜息混じりにスネイプが呟いた。



「満月か」

「はいv」


も満月の夜空を見上げる。
星が一つも見えない漆黒の夜に、ぽっかりと浮んだ白い満月。
感動の溜息を零すだが、スネイプの口から零れた溜息は正反対のものだった。




「・・・あまり好かんな」


「ぇえ?そうなんですか?・・・綺麗なのに・・・・」


「あぁ」




「好かない」と言いながらも、満月を仰ぎ見るスネイプの表情は穏やかなことに気づき、
はしばしその横顔に見とれていた。
月明かりに映し出されたスネイプの横顔は憂いを帯びた美しさを漂わせていた。
少し癖がかった髪に、意外と長めの睫。彼から漂ってくる薬品の匂いと穏やかな気配。
けれども、その瞳はまるで満月と何か重ねているかの如く、鋭く睨みつけているようで。



「吸血鬼みたいですね」


「は?」



突然ポツリと呟いたに、スネイプは怪訝そうにを見やった。


「我輩がかね?ミス・

少しばかり心外といったようにゆっくりと腕を組む
はクスリと笑ってスネイプのマントをそっと掴んだ。



「はいvスネイプ教授の黒いお召し物にこの黒いマント。先ほどからスネイプ教授の横顔をみてたら・・
まるで吸血鬼のようかな・・なんて・・」


そうまたにっこりとスネイプに微笑む姿に、スネイプは一瞬に見惚れてしまった。
スネイプとは違う艶のある黒い髪が、淡い光を放つ。自分を見上げてくるその瞳の中に
映し出された自分に(一理はあるか)とぼんやり納得した。



「くしゅっ」


は二度目のクシャミをした。
スネイプは溜息をついてマントを脱ぎにかけようとするが
それをが制す。


「大丈夫ですv」


「そんな薄着では風邪を引く。気にせずかけろ」


だが、は首を振ってスネイプの手を制す。
怪訝そうなスネイプには頬を染めて呟いた。


「だって・・・教授のそのマントがなかったら吸血鬼にみえないもの・・」


何をいいだすかと思えば・・・スネイプは溜息をついたが、のその表情に
これは頑としてもマントを受け取らないと察し、再び自分へとかけなおした。



「我輩は仮装をしているのではないのだがね」

「へへ・・でも立派な吸血鬼ですねv」

「ふん・・・・・・・・・・・・・・・・ミス・


何か思いついたように口端をあげの顔を覗き込めば、少しは顔を強張らせた。
この表情のスネイプといえば、生徒達を減点する時・・そして相手を馬鹿にするときだ。
同じ教師に減点をするとは考えられない・・となれば彼から零れる言葉は嫌味の言葉。
だが、スネイプからは嫌味の言葉どころか、それは行動となってあらわれた。


「きゃ・・・・え・・・え・・・・・?////////スネイプ教授?」


は顔を真っ赤にさせて、動こうとするがそれはスネイプにしっかりと抱きしめられて叶わなかった。
はスネイプに抱きしめられながらすっぽりと彼のマントの中に収まっていたのだ。
顔だけ振り返れば少し上には意地悪そうに微笑んでいるスネイプのか顔が・・
間近で顔を見たことがないうえに、綺麗に整ったその顔立ちが自分の近くに迫りは思わずぎゅっと
目を瞑った。



「それでは吸血鬼らしく、獲物に噛み付くかね?」


耳元で囁かれたヴァリトンにはの体がピクリと跳ねた。
トマトのように真っ赤な顔でブンブンと首を振る。




「う・・・嘘ですって!!/////ごめんなさい〜!!」


そう必死にマントから抜け出ようとするが、がっしりとスネイプに抱きしめられ身動きが取れない。
耳元に喉の奥で笑うスネイプの声が聞える。は必死だった。
無理もない。密かに思いを寄せている相手に抱きしめられ、耳元で囁かれては正常に受け答えができるはずもなく。
これ以上抱きしめられていたら、自分は何をしでかすか分からない。
校則にはなってないにしろ、教師同士の恋愛など・・生徒の模範であるべき教師が恋愛など・・・許されるはずがない・・・
それに・・

(スネイプ教授だって・・迷惑だよ・・・)

そう・・これはの一方的な想い・・スネイプは自分のことなど・・



(だかーら!お願い!!私の意識が飛んじゃう前に放してぇ〜!!)



そう心の中で叫び、グイグイとスネイプの腕を解こうとする。
だけどもそれはさらに引き寄せられる結果となってしまった。に追い討ちをかけるように再び
耳に囁かれる。


「長年狙っていた獲物だ。もう逃がさん・・・・・・


溜息混じりに紡がれた言葉と、軽く耳たぶに掠めるような口付けには体を強張らせた。
おそるおそるスネイプの顔を見上げれば、先ほどの意地の悪い笑みではなく、優しい笑みを湛えたスネイプの顔があった。
腕を振り解くことを止めたので、そっと抱きしめる腕を緩めばはスネイプのマントの中でスネイプへと向き直った。



「あの・・今のって・・・その/////」


顔を真っ赤にさせて視線を泳がすの口唇を軽く塞ぐ。
の体がまた強張ったが、そっとスネイプの背中に腕が回されたのを感じて
スネイプもそっとの背中に腕をまわす。



「・・・い・・いいんですかね・・・」


「何がかね」


「私・・子供っぽいし・・あとは・・その・・いろいろと・・」



「問題あるまい」



スネイプはそう呟くともう一度口唇に触れた。
そして思い出したように、の顔を覗きこむ。
不思議そうに首を傾げるにニヤリと口端を上げて見せれば、ピクッとの表情が強張った。



「な・・なんですか・??////」



「吸血鬼ならばそれらしく振舞うのが礼儀であろう??」


「??・・・・・・・!!ぴぃ//////」


スネイプはの顔を少し横に傾けさせると、その首筋に軽く噛み付き、小さい口付けを落とした。








子供達が寝静まった。ハロウィ―ンの夜。
月光が支配する闇夜で、吸血鬼に捕らわれた妖精は嬉しそうに微笑んだ。






いまだにハロウィ−ン気分です・・って更新遅れすぎです。すいません・・
リクエスト企画夢。第二段は大人のハロウィ−ンを意識して書いてみました。



不発です。ただ単にスネイプ教授が少しばかし吸血鬼っぽく振舞ってほしかっただけだったり・・
がふがふごふ・・

このドリームのリクエスト語句は

純貴八夜 様→「月明かり」
ゲドルグ様→「妖精」
皇月 輝夜様→「吸血鬼」
来栖 星香様→「月光」
さゆり 様→「かぼちゃ」蝋燭
雪姫 様→「黒」
佐伯 しあ様→「同僚」

の方々にリクエストしていただいた語句を使わせていただきました。

月明かりに照らされながら、吸血鬼が獲物(ヒロイン)の首筋に噛み付く!!
実際は吸血鬼ではないのでそれは口付けで!!
となんかこう幻想的でいいな〜と・・・
と1段と二段はもう・・ムードにこだわってますね・・はは・・
早く残り二作をUPいたします!!(ヒー)

このドリームはハロウィーン企画にリクエストしてくださった

純貴八夜 様・琉嘉 様・ゲドルグ様・ミワコ様・風紀 伝 様・皇月 輝夜様
来栖 星香様・さゆり 様・あきら様・坂下美咲 様・雪姫 様・佐伯 しあ様

の皆様のみお持ち帰りができます。