「おい・・・おい!!いつまで寝てんだよ!このウスのろ!!!」
「ん・・・ここは・・・・・・っ!!!あっ・・・あなた・・・・!!」
「さらなる試練 2」
頭の奥のほうがガンガンとうずくのを必死に押さえ込み、顔を上げると
は驚きに息を呑んだ。
魔女から渡された、記憶を取り戻す薬をのんだは意識を失ったのだ。
やっとのことで起き上がり、周りを見渡すとさきほどいた魔女の家とはガラリと風景が違う。
そして、目の前に立ちはだかった人物ーと全く同じ顔に同じ髪・・・・
「はっ!やっと起きたのかよ!いい気なもんだねぇ」
「あなた・・・たしかあの時・・・」
「あぁそうさ!」
目の前に立つと全く同じ顔の人物が、声のトーンを落としてのローブの襟首を掴み上げた。
「忘れもしねえ!!弱いくせにっいっちょまえに陰陽技で空の彼方に吹き飛ばされたお前の分身さ!」
襟首を掴んだまま、目の前の自分はギラギラとを睨みつけた。
驚きと反発するような表情で睨みつけてくるに、「フンッ」と鼻で笑うとの襟首から手を放した。
「あたしのことを覚えているってことは・・・記憶が戻ったようだね」
目の前の自分はを眺めながら腕を組んだ。
はまた、何か攻撃してくるのではないかと目の前の自分をキッと睨みつけている。
それを察したのか、目の前に立つ自分とまったく同じ姿かたちの人物は
やれやれと溜息をついて、懐に手を入れた。
思わず身構える。
だが、目の前の自分が取り出したのは手のひらサイズの手鏡のようなものだった。
「さて・・・何から話すか・・・・・・・お前、自分の力に違和感を感じたことは?」
先ほどまで、嘲る目つきでをみていたが急に真剣な表情になったので、
は驚きながら、目の前の自分の言ったことに耳を傾けた。
「違和感・・・・」
「そう、お前があの学校に入る前と、入ってからしばらくしてからの自分の力にね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば・・・・・」
は眉を顰めながら思い出すようにぽつりぽつりと口を開いた。
「・・・うん・・・いつからだろう?・・・ホグワーツに入ってから・・しばらくして・・
いつもなら何ともなかった術式がすごいしんどくなって・・・・」
「あれぐらいじゃねえ?お前があの男といい争いして、ハリーって奴のために術式やった時」
そう、手鏡をくるくる回しながら言う自分にはハッとした表情を浮かべた。
「そう・・・そうだよ!そう・・・あの時・・・対抗試合に選ばれるはずのないハリーが選ばれて・・・
それで・・一体誰がハリーの名前を入れたか・・調べた時・・・・・」
は深く奥底にしまった箱を開くように、確かめるように思い出した。
「でも・・その術式は失敗してしまって・・・私意識を失って・・・・・・
それで・・・・・セブルスと仲直りしたのv」
「ノロケはいい、阿呆」
テヘvと頬を赤く染めるに、ケッと呆れると同じ顔。
「むう」と膨れるを無視して、目の前のは一歩に踏み出した。
自分と同じ顔が目の前まで近づき、は不思議な感じを覚える。
まるで鏡をみているような感覚・・・
「そう、そして意識を取り戻したお前の力は今までの半分になってしまった」
そう、きぱんと言い切った目の前に自分には目を丸くした。
「どうして、そこまで知っているの?」
「どうもこうも、あたしは元々お前と一つだったからさ」
「・・・・・・・ねえ?頭おかしくなった?大丈夫?」
「てめえ・・・・・」
心配そうに額に手をあててくるに、怒りのマークを浮かべる目の前の自分。
の手を振り払って、目の前の自分は話を続けた。
「あたしだって、こんな弱い奴と一つだったのかと考えると虫唾が走るってーの!
いいか!嫌だけどこれは真実だ、黙って聞いとけ!
あの時、あたしたちが行った術式はとても難易度が高かった。ただでさえ不安定な状態に
おそらくハリーの名前を入れた奴だろう、そいつが術式のことを嗅ぎ付け邪魔をした。
そして術式は失敗に終わりあたしたちは意識を失った。」
真剣に話す目の前の自分に、も黙って頷く。
「邪魔がはいったおかげで慣れない不安定だった術式は見事失敗、
意識を失っただけでは済まされなかったんだ。お前のプラス・・有能的な面・・このあたしと
マイナス、弱い面のお前が分裂。有能なあたしはお前の精神の奥深くに閉じ込められてしまったのさ」
「ちょっと待ってよ!」
相槌を付く間もないくらいに話す自分の肩に両手を置いて、は叫んだ。
「なんで私がマイナス?弱いというか穏やかでしょう?
それに!あなたの場合凶暴的じゃなくて?」
「いいじゃん、べっつに」
サラッと言い放つ姿には口を開けたまま固まってしまった。
ハッとしたように首を振ると、小さく頬を膨らませる。
「・・・むう・・・・・でも、私も力が弱まったことは知ってた・・・
でも・・本当にあなたが私と元々一つだったのなら・・どうして・・・・あの時、私を殺そうとしたの!!」
は呪いにかかり、自分の精神世界へ行った時のことを思い出して声を上げた。
あの時、目の前にいるこの人物は確かにを殺そうとしたのだ。
その瞬間、目の前の人物はフイとそっぽを向いてしまった。
なにか気に入らないような表情で・・・・
「あいつ・・・・・・あたし達が別れた途端・・お前にさらに優しくなったんだ・・・・」
今までの威勢は見る影もないほど、悲しそうな表情で呟く姿にも表情を曇らせた。
「あいつ・・・・?・・・もしかして・・・セブルスのこと?」
そう顔を覗きこむに、少し顔を赤くしてを睨みつけるもう一人の・・・・
「うるさい!!」
そう声を上げると怒り狂ったようにに背中を向けた。
「あんたは嬉しかっただろうね!!
今まで散々バケモノ扱いされてきて人として受け入れてくれなくて、
でも・・・あの学校に入って友達もできた。毎日がとても楽しくて・・・
そして、生まれて初めて本気に人を好きになることを知った。
なのに・・・あたしはお前から切り離されて・・・それでもあたしはずっと見ていたんだ・・・
でも・・・あいつは・・・・こんな凶暴で醜いあたしなんか・・・知らずに・・
優しいお前だけをみていたんだ・・・・・」
かすかに背中が震えているのを感じで、は胸が締め付けられるようだった。
もともとは一人の人物だったと。
だけど、一人はとても凶暴な女の子でもうひとりは優しさに溢れた女の子。
精神の世界に閉じ込められた女の子は一人淋しく、もうひとりの自分の中で
もうひとりの自分をずっと見つめていたのだ。
自分の感情が出せないままに・・
「・・・・・・・んだよっ」
「泣き虫」
「っせえ!」
はそっともう一人の自分を抱きしめた。
もう一人の自分は悪態を突きながらも、そっとの腕を掴む。
2人そのままでどのくらい時がたったのであろうか、がそっと口を開いた。
「ねえ・・・元にもどる方法はないの?」
「あ?」
もう一人のは目を赤くしながら、顔を顰めてに振り返った。
はにっこりと笑って目の前の自分の手をとる。
「もともと同じ私ならもう一度一つに戻りましょう?。2人がセブルス好きなのは当然よv」
「ね?」と微笑むに目の前のは戸惑った表情を浮かべた。
「もし・・・戻ったとしても・・・以前のように同じ性格でいられるかわからないよ?
あいつ・・・・セッ・・セブルスに嫌われてしまうかもしれないよ?」
悲しそうなの目に優しいの目が映り込む。
「その時はその時vあなたのしつこさと私の優しさでまたアタックしようv」
「しつこくねえよ」
目を腫らしながらはぎこちなく笑う姿にもニッコリと笑った。
「戻りたいな」
「うんv一緒にみんなの所に戻ろうv」
「さてv話も解決したのは良いんだけど・・ねえ・・・」
「何?」
「この状況・・どうすればいいのかなあ?」
は辺りを見渡しながら呟いた。
いつの間にか二人の周りには見たこともない無数の生き物によって囲まれていた。
背中合わせなり、周りを睨みつける。
形をとどめているのかさえも分からない未知の生き物・・
触覚らしい突起からは怪しい液体が染み出ていて・・・・
「記憶を取りもどすあの婆さんの薬はあたしたちが分かれたのまで
一つにする効力まであったんだな・・・・この生き物はそれを妨害するウイルスってやつ?」
赤くなった目を少し辛そうに瞬きしながら、もう一人のが呟く。
「じゃあ・・・こいつらをすべて倒したら元に戻れるの?」
「おそらくね」
しばらく沈黙が続いた後、2人の視線が交差した。
「じゃあ。頑張ろうかv」
「あぁ、お前が死んだらあたしが変わってあいつを慰めてやるよ」
「うわ〜絶対負けない〜!!」
頬を膨らませるに、クスリと笑うともう一人のはサッと構えた。
「死ぬなよ、片割れ」
「あなたもね」
そして2人は同時に印を組み、ウイルスの群れに駆けて行った。
「・・・・・・・幻聴か?」
「あー?何がー?」
レポートの山から顔を上げてスネイプは辺りを見渡した。
暖炉を覗き込む姿にミカエルは不思議そうに首をかしげる。
「何も聞こえなかったぜ?セブルス」
「・・・・気のせいか・・・・・」
そう呟きながらもスネイプはドアを開け、誰もいない廊下を見つめていた。
「の声が聞えたような気がしたんだ・・・」
ドアを閉め、深い溜息を零す姿にミカエルもつられて溜息を零す。
「明日だな・・・・卒業式」
「あぁ・・・・」
スネイプの部屋はなんとも言い難い、重い空気が流れていた。
ようやく連載更新です・・・って本当に何やってんだろう自分・・・
「もうすぐ終わります!」とか言いながらずらずらと・・・
でも、本当にあともう少しですね〜
それにしてもサイトの更新遅れすぎで申し訳ありません・・・(誰も待ってないから!!)