「!!無事だったか!!」
「・・・・・・・・・・・貴方・・・・・誰?」
「魔女」
は大陸の山奥に隠れ棲んでいる、年をとった魔女に保護されていた。
魔女の話によると、ある晩、月の光を含んだ薬草を採取するために森に出かけていると
突然大きな音がしたという。何事かと音がした所にいくと、が倒れていたのだ。
「そんで家で介抱したんだぁ。だがなぁ、この娘っ子意識は取り戻したものの記憶がなぁ・・・・・・」
魔女の隣にちょこんと腰を掛け、ハヤトとスネイプを不思議そうに見つめるの頭を魔女は優しく撫でた。
は意識を取り戻したものの、自分の名前、どこから来たのかなどすべて忘れていたのだ。
はこの2年間、フィリスという名で過ごしていたという。
スネイプの脳裏に、ルシウスの手紙がちらつく。
おそらく強力な術の解除に耐えきれず、の記憶が消されてしまったのだ。
スネイプは深い溜息をついて、額に手をついた。
クン・・・・
袖が引っ張られる感じがして、顔を上げるとが不安そうにスネイプの顔を覗きこんでいた。
「どこか痛いの?」
どこも変わらない声、可愛い顔・・・・とても懐かしいのに・・・
はスネイプのことさえも忘れていたのだ。
「本当に・・・忘れてしまったのかね?」
「ごめんなさい・・何も覚えていないの・・」
そう・・・悲しそうに俯くをスネイプは力強く抱きしめた。
痛みに顔を歪めるだが、スネイプは放そうとしない。
嘘だといってほしい
自分の名前を呼んで微笑んで
「嘘であろう?そうだ・・・この前と同じであろう?本当は覚えているのであろう、忘れているふりをしているのだろう・・・」
「っ・・い・・痛いよ!・・お願い・・・放してください・・・・」
「・・我輩の名を呼んでくれ・・・・」
「い・・・痛い・・・」
「!!」
「よせっ!セブルス!!!」
の両肩を掴むスネイプをハヤトが制した。
スネイプが力を緩めた隙にはサッと離れ、魔女の後ろに隠れてしまった。
スネイプを怖がって。
ハッと我に返り、を見つめるスネイプ。
だが、はスネイプを怖がって、震えながら後ずさりをする。
「あ・・す・・すまない・・・っ」
スネイプは口に手をあて、魔女の家からバッと出て行ってしまった。
ハヤトはスネイプが出て行った扉を見つめて、魔女へと向き直った。
「すいません・・・。取り乱して・・・。その子は間違いなく私の娘です。保護してくださり本当にありがとうございました。」
そう頭を下げるハヤトに魔女はニッコリと微笑んだ。
「いんやいんや。いいってことさvこの子は大変良くしてくれた。無事、家族が見つかってよかったよ。ただ・・・・」
「?ただ?」
魔女はの頭を撫でながら、少し寂しそうに微笑んだ。
「できればもう少し、預からせてもらいたいんだがねぇ・・・・・・・」
「それは・・どういう・・・・」
魔女の家の外の切り株にスネイプは腰をかけ、頭を抱えていた。
「くそっ!せっかく会えたのに・・・2年も・・・・」
2年間、探し続けてようやく見つかったのにはスネイプのことを本当に忘れてしまっていた。
スネイプがつけていた、の首飾りにもは何も変化を見せなかった。
ルシウスは反動で受けた副作用は治すのが難しいと指摘している。
「の記憶は戻せないのか・・・・」
キイと扉が開く音がして振り返ると、がビクビクしながらスネイプを見つめて立っていた。
「あ・・・・あの・・・その・・・・」
そう慌てるに寂びそうに笑って立ち上がり、の頭をそっと撫でた。
「さっきはすまなかった・・・許してくれ・・」
「ううん・・・私もごめんなさい・・きっと記憶をなくす前は貴方のことも知っていたのよね・・」
そう優しく微笑んで、はそっとスネイプが座っていた切り株に腰をおろした。
二年前より少し大人びた表情・・だけど、いまだかわいさは残っていて・・・・・
また強く抱き締めたい衝動になるのを必死に押さえ込み、に寂しそうに笑ってみせた。
「・・・その・・本当にハヤトと我輩を覚えていないのかね?」
優しい口調で問掛ける。
は顔を曇らせ俯いてしまった。スネイプは慌てての頭を撫でる。
「君のせいじゃない、時間をかけて思い出してほしい」うつ向きながらこくりと頷くにはにかみ、一瞬躊躇して抱きよせた。
さきほどとは違う、優しく暖かく。
はひどく落ち着く気がして、そっとスネイプに腕を回した。
そんな様子を魔女とハヤトは家の中から見ていて。
魔女が言うには記憶を失ってはいたが魔法や東洋の術を簡単に操っていたという。
「全てを忘れているわけではない、必ず記憶は戻るじゃろうて。」
そういって魔女は杖を取り出して、空になったハヤトのティーカップに紅茶を注いだ。
ハヤトは魔女の言葉に胸を撫で下ろしながらもいまだ表情が晴れない。
「あの・・を預かりたいとは・・」
紅茶をすすりながら魔女はちらりとハヤトをみた。
その瞳はとても鋭く、厳しく・・・・かちゃんと乾いた音が鳴って魔女は小さく咳をした。
「おまえさんは信じるか分からんが、私は少しばかり相手の力や周りを囲む気を読み取ることが出来る。
あの子をここに運んだ時もそれを感じ取った・・・
そしてあの子の力の大きさゆえ・・・・・・とてつもない膨大な闇に呑まれようとしている・・・違うかい?」
魔女は真剣な眼差しでハヤトを見つめた。
ハヤトは驚きに見開き、一瞬躊躇して恐る恐る口を開いた。
がヴォルデモートの妻として、狙われていると・・・・・・
ヴォルデモートと聞いて一瞬言葉を失った魔女だが、すぐ穏やかな表情になりハヤトの言葉に耳を貸す。
ことのひと通りを話すと、ハヤトは額に手をついてしまった・・・・
「私の娘がヴォルデモートに目をつけられるなんて・・・」
魔女はそんなハヤトの姿をじっと見つめていた。
家の中にはポットの蒸気音だけが響く・・・
どれくらいたったのだろう、小さく魔女が溜息をついて立ち上がり奥の棚から小さな小瓶を取り出してきた。
ハヤトは不思議そうな表情で魔女と小瓶を交互に見た。
「この薬は私があの子のために二年かけて作り上げた薬だ。これであの子の記憶は元に戻るだろう。それでは交渉といくかの」
「こ・・・交渉?」