「血族か主か(中)」
「?今日は何するの?」
がここに連れてこられて1日が過ぎた。
ドラコの話によればここはマルフォイ家の別荘だとういう。
ヴォルデモートがここに来るのは明日。
淋しそうに窓の外を眺めるの元にドラコが姿現しをしてきた。
は慌てたようにニッコリとドラコに微笑む。
「、今とても淋しそうな顔をしてた・・・なにがそんなに淋しいの?」
ドラコはそっと頭を撫でた。
が友だちのように振舞わせたおかげで、一日のうちにドラコはに少しであるが
表情の変化を見せた。
は何でもないよ?と首を振るがドラコはいまだ灰色がかった瞳でジッとを見つめた。
「話して??」
そんな少し不安そうに覗き込んでくる、ドラコに少し涙があふれ出そうになる。
はそっとドラコのローブに顔を埋めた。
「戻りたい・・・ホグワーツに戻りたい・・・ドラコと私が生活している・・
皆が待っているホグワーツに・・・」
だが、ドラコは何も発しようとはしなかった。
が何かを言えばドラコはちゃんと答えていたが、
このことになると固く口を閉ざすのだ。
「・・何か言ってよぉ・・・・ドラコ・・・早く元に戻ってよ・・・・」
「僕はいつもと変わらない、」
「違うよ!」
はバッとドラコの顔を覗きこんだ。
灰色の目が驚きに小さく震えた。
はドラコの両肩を掴み、必死に訴える。
「違う!いつもの貴方はそんな・・人に仕えることなんてしない!
いつもの自信はどうしたの?強引な態度も!!ねえ!!ドラコ!!」
「めて・・ください・・・・ご主人様」
「違うでしょ?私はドラコのご主人様じゃないわ!?私はドラコの友だ―」
「やめろおぉっ!!」
ドラコはバッとの手を振り払い、両耳を塞いだ。
苦しそうに頭を振り、ガクンと膝が崩れる。
は慌ててドラコを慰めようとするが、ドラコはを拒絶するように突き飛ばした。
苦痛に顔を歪め、うめき声をあげるドラコ。
は青ざめながら、ドラコを見つめた。
(どうしたらいいの・・・このままじゃドラコが壊れてしまう・・・)
もう一度ドラコへ駆け寄ろうとしただが、後ろから肩をつかまれそれは叶わなかった。
「やれやれ・・・・レディ・・・・・・困りますな」
おそるおそる振り返ると、そこには冷たい笑みを浮かべるルシウスが立っていた。
ルシウスは小さく溜息をつくと、杖を取り出しドラコへと向けた。
ルシウスが唱える呪文と同時に、ドラコはガクリと床へ倒れる。
慌てて駆け寄ろうとするの腕をルシウスが掴み上げた。
「!!放して!!」
「心配は無用ですよ・・・うるさいから気絶させただけです」
「うるさいからですって!?貴方はドラコのお父さんでしょう!!?
なんでもっとドラコのこと心配してあげないの!!?」
キッと睨み上げてくるを一瞥して、ルシウスはを抱き上げるとそっとベッドにおろした。
「前にも言ったはずですよ・・・あれを息子と思ったことはないと」
「なんて酷いことを・・・」
「レデイ・・・貴方はなにか勘違いをなされているようですな」
「??」
ルシウスは喉の奥で笑うと、の黒い髪にキスを落とした。
「親子・・血族・・・・ただただ血が繋がっているだけでございます。私が求めているのは様・・
口ごたえをしない・従順な子供・・・・だがアレは見事な失敗作。何かにつけて歯向かい、従おうとしない。
そして我が主が戻られても・・アレは私に背こうとした。」
「鬼・・・」
「なんですかな?」
「貴方は鬼よ!!血の繋がったドラコよりヴォルデモートを選ぶの!?
ドラコを見てよ!!いいように操られて苦しんでいるわ!!・・っぐぅ!!」
そう怒鳴るの細い首をルシウスが掴んだ。
ギリギリと力が込められてくる。冷たい表情が怒りに満ちた形相に変わり
を睨みつけていた。
あれ・・・・・・・・・・・僕・・・・・・・どうしたんだろう
頭が痛い・・・割れそうだ・・・
たしか・・この前・・・父上が学校にきて・・・呼ばれて・・・・
それから・・・・・
・・・・・・思い出せない・・・・・・・・
??
誰かが言い争いをしている?
一人は父上だ・・・もう一人は・・・誰だろう・・・・・
(っつぅ・・・くるし・・・・・・放してっ・・・ドラコ・・・目を覚まして・・元に戻って・・・)
誰だろう?とても懐かしい声・・・・・・・
元に戻る?
僕は僕なのに?
あぁ・・・頭が割れそうだ・・・・
「ふん、貴様に何が分かる!!我が主が戻られたというのにアレはデスイーターになろうとしなかった!
とんだ臆病者なのだよ!!そのうえ私にも辞めるように口を出した・・愚かなことよ」
「違う・・と思う・・・」
「何だと?」
「ドラコは・・・とても優しいもん・・・父親である貴方に・・・間違ったことをしてほしくなかった・・んだと思う・・・」
「黙れ!!」
恐ろしい嫌悪の表情をむき出しにしたルシウスは、を放り投げるように首から手を放した。
首を押さえ咳き込むをギラリと睨みつける。
「アレが私のことを考えて物を言うものか。何も知らんくせに分かった口をきくな!!
いくら我が主の奥方でも、容赦せんぞ・・・少し痛い目に合わなければ分からないようですな」
ルシウスは杖先をに向けた。
の表情が強張る。
「クルーシ・・・・!!がっ!!」
呪文を唱え終わらないうちに、ルシウスの顔が酷く歪んだ。
大きな破裂音とともにガクリと床に膝をつくルシウス。
「ルシウス・・・・貴様、俺様の妻に磔の呪文を使う気か?え?」
「!!?・・・あ・・・・・あ・・・・・・」
「ご主人様!!??」
開け放たれた扉にはを夢の中で追い詰める人物が・・
ヴォルデモートが立っていた。
凍りつきそうな赤い目を不機嫌そうに細め、床に手をつくルシウスを睨みつける。
ルシウスは先ほどまでみせてた強気な態度は見る影もなく、ただ震えながら主に膝まついていた。
ヴォルデモートは冷たくルシウスを一瞥すると、ベッドへと歩み寄る。
ベッドの上では、恐怖に満ちた表情でヴォルデモートから目が逸らせずにいた。
「久しぶりだな・・・なんということこだ・・・首に痣ができてしまっているではないか」
ベッドにギシと音を立てながらヴォルデモートが腰をおろした。
その音に恐怖が増す。
は動くことが出来ずにいた。ヴォルデモートの顔が近くに迫る。
「さぞ淋しかっただろう・・・だがもう何も心配することはない」
そういってヴォルデモートはを自分のローブの中へと引き寄せた。
ビクッとが強張り、必死に抵抗を始める。
「や・・・放して!」
けれども簡単に押さえつけられてしまう。
ルシウスはいまだ恐怖に顔を青くさせたまま、膝まついていた。
絡みつくような視線を浴びさせ、ヴォルデモートはを抱きしめたまま口を開く。
「貴様のせいで我が愛しの妻がこんなにも震えている・・・・さて・・・この始末はどうつけるルシウス・・・」
「も・・・申し訳ありません!!で・・ですが・・」
「俺様に口答えをする気か」
「い・・いえ・・」
「ふん。早く来てみればこんな事態とはな・・・・・待たせたな」
そうルシウスからへと視線を移し、不敵な笑みを浮かべる。
は恐怖に駆られながらも、負けじとヴォルデモートを睨みつけた。
「だ・・だれが!!」
「・・・・・・・・・さて、ルシウス。貴様の息子だが・・・」
「!!?も・・申しわけありません!!度重なる失態を・・・・」
「・・・ドラコ・・・・」
ヴォルデモートに抱きしめられたまま、はゆらりと立ち上がったドラコを見つめた。
灰色の瞳に無表情な顔・・・ドラコは虚ろな空気をまとい
ヴォルデモートに膝まついた。
「ほお・・・ルシウス。息子の方が物分りが良さそうだな・・・」
ヴォルデモートは嘲るようにルシウスに冷たい視線を浴びさせた。
ルシウスはヴォルデモートの見えないところで歯を食いしばる。
ヴォルデモートは「フン」と笑うと、の顎を掴み上げた。
恐怖に顔を引き攣らせるの顔にヴォルデモートの顔が近づいてくる。
「やだ・・・いや!放して!!!」
必死にて抵抗をするが、ヴォルデモートに簡単に押さえつけられてしまう。
不敵な笑みを浮かべて、の暴れる腕を押さえつけるヴォルデモート。
「いや!放せ!!!ドラコ!!元に戻って!!!お願いよぉ!!!」
「無駄だよ・・・・・服従の呪文はちょっとやそっとじゃ解けん」
「ドラコ!!!ドラコ!!」
「ふぅ・・・まったく仕方のない子だ・・・おい、しばらくはずせ」
ヴォルデモートはやれやれと溜息をつくと、ルシウスに冷たい視線を浴びさせた。
ルシウスは「は」と頭を下げ、部屋から出て行こうとする。
「ドラコ。お前も出んか」
ルシウスは苦々しく、ずっと立ち尽くしているドラコに言い放った。
だけど、ドラコはピクリとも動こうとしない。
「ドラコ!」
ヴォルデモートは黙ってドラコを睨みつけた。
も不安そうにドラコを見つめている。ルシウスはイライラしたようにドラコの髪をつかんだ。
「貴様!!いい加減に・・・・!?!」
ルシウスの目が驚きに目を見開いた。
呪文で服従されているはずのドラコがルシウスの手を振り払ったのである。
「ドラコ!貴様!!!」
「を放して下さい。ヴォルデモート様」
「何?」
ヴォルデモートは眉をピクリと上げ、をそっとベッドに残しドラコの前に立ちはだかった。
冷たい視線をドラコに突き刺すヴォルデモート。ルシウスは慌てたようにヴォルデモートの膝まついた。
「も・・申し訳ございません!!お許しください!!」
「さがれ、ルシウス。こいつには俺様直々に服従呪文をかけてやろう」
「やれるものならやってみろ」
「ほう・・貴様・・歯向かう気か」
そうヴォルデモートはドラコに杖を向けようとした。がそれよりも早くドラコはヴォルデモートの手を
蹴り上げ、ベッドにいるに駆け寄った。
「こやつ!」
ルシウスは杖を取り出し、ドラコへと振りおろした。
赤い閃光がドラコの背中を貫く。
「っぐうっ!!?」
「ドラコ!?」
自分へと倒れてくるドラコを必死に支える。
手を押さえつけたヴォルデモートが、杖をこちらに向けたルシウスが凄まじい形相でドラコを睨みつけていた。
このままではドラコが殺されてしまう!!
ルシウスがゆっくりとこちらに足を踏み出した。
「なんという恥さらしが・・玩具の分際で・・」
「近寄らないで!!」
はしっかりとドラコを抱き寄せ、ルシウスを睨みつけた。
は隠し持っていた、小さい筒を取り出す。
ヴォルデモートの目が一瞬見開く。
小さい筒を力いっぱい床に投げつけると、筒から紫色の煙が立ち込めた。
「!!っく!煙幕!!!」
煙が薄らいでいく・・ベッドにはとドラコの姿はなかった。
「っつ!!おい!早く捕まえろ!!まだこの屋敷内にいるはずだ!」
「は・・はっ」
ルシウスは慌てて部屋から出ていった。
「っっつ・・う・・・」
「ドラコ!大丈夫!!??」
屋敷内の大階段下の暗い物置に逃げ込み、は傷ついたドラコをそっと横にさせた。
灰色だった瞳がアイスブルーに戻っている。
記憶をとりもどしたのだろうか・・・
「ずっと・・の声が・・聞こえていたんだ・・でも思い出せなくて・・っごほ」
ルシウスから受けた魔法で、背中があらわになり、赤く染まっている。
は慌てて、そこに手をかざし小さく呪文を唱えた。
すっとの手をドラコが優しく掴む。消え入るそうな声がの耳を掠めた。
「ごめんね・・・・君を巻き込んでしまって・・・君だけ・・でも・・・逃げるんだ・・・」
「ドラコ!・・しっかりして!!?」
口から血を噴出すドラコに必死に呪文を唱えた。
見る見るうちに血が止まっていく。だけれどもドラコの体力は元に戻らない。
あまりにも血が流れてしまい、ぐったりとするドラコ。
は不安そうにドラコの髪を撫でた。
「謝るのは私の方・・私がヴォルデモートに目を付けられたばかっりに・・
私一人逃げるなんて嫌だよ?一緒に・・ホグワーツに戻ろう?ドラコ?」
「・・・・ありがとう・・・・・・・・」
ドラコは弱々しくでもとても穏やかに微笑んだ。
「ここに隠れていたか」
「!!?」
「ちっ・・父上!!」
そこには嫌悪の表情をむき出しにしたルシウスが立っていた。
前編・後編と分けるつもりが・・・長くなってしまいました(あっほう)
教授が!!教授が出てこないし!!!ダメじゃん自分!!
次で「血族か主か」締めくくり!なんか普通に先が読めましたね。はは・・あはははは・・