「ごめんね・・・・君を巻き込んでしまって・・・君だけ・・でも・・・逃げるんだ・・・」


「ドラコ!・・しっかりして!!?」





「ここに隠れていたか」




「!!?」

「ちっ・・父上!!」




































「血族か主か(前編)」












「校長!!なぜいけないのですか!!どうか許可を!!!」

「ならん。セブルスよ」


校長室にスネイプの焦りと怒りが混じった声が響き渡る。
をホグワーツから連れ去ったドラコ・マルフォイ・・・
その後ろには父親のルシウス・マルフォイ・・・・・そしてヴォルデモートが潜んでいるのだ。
が自分の手から離れたこの時をヴォルデモートが逃すはずがない。
おそらくルシウスの手元には捕らわれているはず・・・急がなければ・・・
だが、校長室から飛び出て行こうとしたスネイプをダンブルドアが厳しい口調で制した。
スネイプは驚きに目を見開き、どうしてかとダンブルドアに詰め寄る。


「校長!!ルシウス・マルフォイは奴の・・」

「分かっておる」

「ならなぜ!!」



ダンブルドアは深く溜息をつくと、スッと立ち上がり何か思案しているように室内をウロウロと歩き始めた。
その様子をスネイプはイライラしながら見つめる。
目の前にいるこの人物はどうして、を助けにいってはいけないと言うのか・・
はヴォルデモートに目を付けられているのはダンブルドアだって百も承知のはず・・


「ドラコ・マルフォイ」

「?」

ダンブルドアは静かに口を開いた。
なぜ、ドラコの名前が出てくるのだと首を傾げるスネイプ。


「たしかに・・を連れ去ったのはドラコ・マルフォイのようですが・・それが?」

「うむ・・さきほどもいったが・・を連れ去ったのはドラコ・マルフォイの意志とは全く違う行為
ではないかとな・・・この意味が解かるかな?セブルス。」


ダンブルドアは静かにでもその目は険しく、スネイプを見つめた。
スネイプは必死に脳の中の集積回路を必死に手繰り寄せる。そして、震えながら口を開いた。


「まさか・・ドラコ・マルフォイは・・服従の呪文にかけられていると・・・・?」

「その可能性があるな。実はなセブルス」

そういって、ダンブルドアは机の上から一束の羊皮紙を手に取り、パラパラとめくる。


「ドラコ・マルフォイ。この子についていろいろ調べておったのじゃよ。父親は紛れもなく、デス・イーターじゃ。
その息子はどうなのかとな・・」


「それで・・彼は?」


「それがな・・ドラコ・マルフォイは・・・・・・・・・」



































「あ・・貴方は誰?」


は目の前に立つ、冷たい瞳をした男を震えながら見つめた。
男はクスリと笑うと、そっとの黒い綺麗な髪を指に絡ませた。


「似合っていらっしゃる・・・・・」

「え?え?・・・・あ・・・」


最初この人は何を言っているのだろうと首を傾げたが、やがて自分が着ている衣服が
ホグワーツの制服でないことに気づいた。は水色のワンピースを着せられていたのだ。
ふんわりと広がるスカート・・ウエストは同系色のベルトリボンで結び後ろには大きな蝶のように緩やかなリボンが作られていて・・
は自分の着ている衣服に驚きながら、自分の髪を弄ぶ目の前の男をおそるおそる見つめる。
目が合うと、男は目を細めて微笑みそっとの髪にキスを落とした。

「会うのはこれで二度目となりますな・・・レディ・

「え?二度目?私は貴方に会ったことは・・」

は目の前の男に会ったことはなかった・・それに一度でも見かけたなら
忘れないはず・・・それだけ目の前にいる男はあまりに美しく、高貴な空気を醸しだしていた。
男はまたクスリと笑うと、ベッドに腰をおろした。

「ほう・・・貴女様は私を覚えていらっしゃらない・・・・私は悲しゅうございます」

「すいませんっ・・・で・・でも・・・貴方ほど綺麗な方・・・」

「ふふ・・嬉しい・・・貴方様に綺麗と言葉をいただけて・・・・・・・・・まぁ・・・覚えていないのも無理はありませんな。
私はあの時顔を隠していた・・・光栄にも貴方様のローブにキスをさせていただいた・・・」

「・・・・?」

は不思議そうに首を傾げた。この人はどうしてこう自分に敬語を使うのだろう・・・
どう見たって、敬語を使うのは自分の方だ。男はまだ首を傾げているに目を細めて笑う。


「そう・・・あの日・・・運命の日に。我が主が戻られた日に・・・・・
私の名はルシウス・マルフォイ・・」


そう再び、の髪にキスを落とす。
は目覚めたばかりの意識を必死に集中させ、この男の言葉をゆっくりと解いていった。
みるみるとの顔が青くなり、ルシウスと名乗った男から後ずさりをする・・・


「デ・・デスイーター・・・」


ルシウスは一瞬眉を潜め、へと身を乗り出した。


「確かに。だが私にはルシウス・マルフォイという名前がございます。レディ・

だが、そんなルシウスの言葉はの耳に入らなかった。
はカタカタと震え、ルシウスを恐怖の眼差しで見つめていた。

(思い出した・・・たしかあの時・・・ヴォルデモートのところに飛ばされたあの日・・
何人ものデスイーターがローブにキスをした・・そうよ・・その中の一人・・がルシウス・マルフォイと・・名乗った・・・)


「わ・・・私を・・・ヴォルデモートの所に・・・・連れて行くの?」


は声を震わせながら、それでもそれを悟られまいと必死にルシウスを睨みつけた。
ルシウスは小さく笑うと、後ずさりをするの手を掴む。


「さぁ?どういたしましょうか・・・お望みならば今すぐにでもあの方の元へ連れて差し上げますが?」


楽しんでいるとしか思えない表情とその声にはただ震えるばかりだった。
そんなの姿にルシウスは喉の奥で笑うと、を抱き上げベッドの横に立たせた。


「フフ・・あの方がここに来るまで2日ある・・それまでこの館の中をご案内しましょう・・・」

「やだ・・・・」

「なんでしょう?」

手を掴まれたまま、はルシウスから離れようとする・・だけど手を掴まれていてかなわない・・・
震えながらもキッと睨み上げてくるにルシウスは冷たい目で見下ろした。
穏やかだった微笑から、冷たく嘲る笑みに変わる。


「私はあいつになんか会わないっ・・・逃げ出してやるわ・・」

「ふん。できると思っているのか」

「逃げ出してやる!!」


ルシウスの冷たい目に少し恐怖を感じながらも、はキッとルシウスを睨みつけた。
だがルシウスは口端を上げ嘲笑すると、パチンと指を鳴らした。
音ともに部屋の扉が開き、一人の少年が入ってきた。
その少年の姿には目を見開く。


「ド・・ドラコ!!」


だが、ドラコはホグワーツの廊下の時と同じ無表情でドアの前に立っているだけ。
その様子には不安そうな顔をする。


「ドラコ?」


「あれはこの私の息子。息子・・いや・・おもちゃだよ・・・・何も文句を言わない・逆らわない絶対的な玩具。」


ルシウスの言葉にはバッとルシウスの手を振り払った。


「おもちゃですって!?・・・・!?息子?まさか貴方・・ドラコの・・・お父さん?
!!なんでドラコがおもちゃなのよ!!」


は声を張り上げてルシウスを睨んだ。だが、ルシウスはそんなに額に手をあて声をあげ笑った。
その笑い方がの怒りを倍増させる。

「何がおかしいの!?」

「くくく・・・これが笑わずにいられるか!?息子だと?私はアレを息子だと思ったことは一度もない」

「!?なんて酷いことを・・」

「アレの意志は今私によって制御されている。意志があるというものは実に不愉快だな。
玩具のくせに私に口答えをする・・だからこうして意志を取り払った・・・」

そういってルシウスはドラコの髪を掴みあげた。
ドラコは無表情にただ立っているだけ。
怒りをむき出しにするを一瞥してルシウスはローブを羽織った。


「だが、玩具でも使い道はあるものでね・・・レディ・
もし貴女様が逃げ出そうとしようなら、これの命はないと思ってください・・・
貴女様の身の回りの世話はこれに任せることにしよう・・・レディ・?変な考えを起こさぬよう・・・・・」


そういうとルシウスは姿くらましをして消えていった。




















「ね・・・ドラコ?私がわかる?」


「貴女様はヴォルデモート様の奥様でございます。私のご主人様・・・」


そういってドラコはベッドの端に腰をかけている、のスカートの裾にそっとキスをした。
は小さく溜息をつくと、ドラコの顔を覗きこんだ。
綺麗だったアイスブルーの瞳は灰色に曇り、どこを見ているのかさえもわからない・・・・


「違うよ?ドラコ・・私はあなたのお友だちのだよ?」


そう言ってドラコの肩に手を置くが、ドラコは首を振りの手を制した。


「何を仰います、様。貴女様は私のご主人様でございます。友だちなどではありませぬ。」


そういってドラコはに膝まついた。
は悲しそうにドラコを見つめるが、その視線は交わることはない・・・・


様・・御用をお申しつけくださいませ」






いつも自信に満ち溢れ、傲慢そうな態度は見る影もなかった・・
ハリー達を目の前にした時のドラコは腹立たしい姿ではあったけど、
きっとそれはハリーをライバル視していたからだろう・・・。
それににはいつも優しい笑顔を見せてくれたし、ハーマイオニーが邪魔する時も多々あったが
楽しい話をよくしてくれた・・・
そんなドラコは今・・同級生であるに膝まつき、用を申しつけるようにと口を開いてくる・・・
はとても胸が締め付けられるようだった・・・ドラコを玩具扱いするルシウスに怒りがこみ上げてくる。
そして、すべてを狂わせたヴォルデモートにも・・・

と、の脳裏にあることがよぎった・・・・・

(そうだ・・・・)

はしばらく考え込んでいたが、やがて決心したかのように
顔を上げると、にっこりとドラコに微笑んだ。

「じゃvドラコ?この館を案内して?いいでしょう?その後は一緒に遊んで?」

「畏まりました」


ドラコは小さく頭を下げると、の手を取って廊下へと出た。


「では・・案内いたします・・様」

「うんvでもここで命令!!ドラコ?私に敬語は禁止よ!もちろん様付けもダメ」

「し・・しかし・・・」

「あら?ご主人様の命令が聞けないの?」

「・・・・・・・・・わ・・・・わかりました・・様・・・」

「むっ」

「あ・・・・・・・」

「よろしい!じゃv案内してv」


はにっこりと微笑んでドラコの手を握り返した。
無表情だったドラコの顔が少しばかり動揺を見せた。

命令として、友だちのように振るまわせば・・もしかしたら自分を思い出すかもしれない・・・
そう考えたのだ・・ヴォルデモートがここにくるまで2日・・・
それまでドラコの記憶を思い出させ、2人でここから逃げ出さなくては・・・・



はしっかりとドラコの手を握り締めた。