「セブ〜!おっはよーvv」
バフッ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう・・・」
「蛍桜〜ほたるざくら〜」
スネイプはすこし怪訝そうに、目を開いた。
布団をかぶったスネイプの上にがのしかかったのだ。
パフパフと布団を叩いて「起きてv起きてv」とせがむ。
その仕草がなんともいえず可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。
「お昼になるよ〜?」
「もう、そんな時間か?寝すぎたな・・」
スネイプは少し驚いて、体を起こした。
体を起こすと、のかわいい顔が目の前に迫る。
にっこりと「おはようv」と微笑むにつられてスネイプも笑顔をこぼした。
着替えを済ますと、皆があつまる座敷の部屋へ顔を出す。
そこにはの祖父とハヤトしかいなかった。
「おー?遅いお目覚めでセブルス!」
「(むかっ)・・・まあな。・・ルーピン共は?」
「まだ皆寝てるよv」
「・・そうか・・」
夏休みも残りわずかになり、明日皆帰ることになっている。
昨晩は皆で縁側に出て、盛大に花火大会を行った。
シリウスとミカエルが特に張り切り、また夜遅くまで騒いだ。
は守番の世話に出て行き、スネイプはハヤトとの祖父と
たわいもない話をして静かな時を過ごす。
しばらくしてハヤトも隣村へと出かけ、スネイプはの祖父と2人になった。
笑顔を見せていたの祖父が、小さく溜息をつく。
「・・・今年の夏は賑やかだったな・・・」
「・・すいませんな・・大人数で押しかけてしまって・・・」
「いやいやいや!!いい夏じゃったよ!まもなく新学期。を頼みましたぞ?セブルス君!!」
「はい、もちろんです」
そう、真っ直ぐ祖父を見つめるスネイプの眼差しに、の祖父はにっこりと頷いた。
(あの子を一生かけて守ってやってくれ・・セブルス・・・・)
「さて、そろそろ他の客人も起こそうかな。今日は夏休み最後の一大イベントがあるんだ!!」
「一大・・イベントですか・・?」
そう少し眉間に皺をよせ、首を傾げるスネイプにの祖父はにっこりと頷いた。
「蛍?」
「うんv」
日が沈んでから一行はぞろぞろと、家の敷地内にある小さな小川へ向かった。
川沿いに腰を下ろし、スネイプはに「蛍とは何かね?」と問う。
は少し驚いた表情を見せたが、ハリー達もルーピンもシリウスも皆首を傾げていた。
ハーマイオニーだけが本で読んだことがあると呟いたが、詳しくは・・と皆と同様首を傾げる。
とハヤトは顔を見合わせてにっこりと笑う。
「じゃあ、もう少しのお楽しみということでv」
新月の真っ黒な闇、鈴虫の音が透き通るように響き渡る。
守番の子鬼が手にしている、提灯の炎だけが幻想的に揺れる。
木々の葉が擦れあう音が不思議と心を落ち着かせた。
「きますね」
そう子鬼が呟くと、フッと提灯の炎を吹き消した。
一瞬のうちに辺りが真っ暗になり、ハーマイオニーが小さな悲鳴をあげナツキの腕にしがみつく。
スネイプ達はこれから何が起こるの全く予想できずに辺りを見回す。
ポッ
ポッ
ポッ
真っ暗な闇に小さな光がちらほらと浮びあがってきた。
驚きに息を呑むスネイプ達。
「これは・・・・!!」
はそっとスネイプの手に自分の手を滑り込ませて、やんわりと手をつなぐ。
「うんvこれがね蛍。夜光虫だよv」
「キレイ・・・・・・」
ハーマイオニーが溜息混じりに呟いた。
ふと空を見上げたロンが息を呑む。
「見ろよ・・・上・・・・」
「うわぁ・・・」
ロンにつられてハリーも空を見上げた。
まるで蛍のひとつひとつが星のように輝いている。
小川にも優しい光があふれている。
いつの間にか辺りは蛍によって、幻想的な世界が作り出されていた。
「蛍はね」
スネイプと手をつなぎながら、は呟くように口を開いた。
「とてもとても短い命なの。明日には死んでしまうんだよ?」
「・・・・儚いものだな・・・」
悲しそうに蛍で埋め尽くされた空を見上げるの頬を優しく撫でる。
はくすぐったそうに目を細めて微笑み、そっと蛍を手の中に閉じ込めた。
の手の中で蛍が煌々と輝く。
「うん・・・精一杯輝いて・・消えていくの・・・・」
そっと手を開き、蛍を空へ放つ。
空へと飛んでいく蛍の光の筋がうっすらと尾を引き消えていった。
「私も輝けたらいいのに・・・」
「私は今、精一杯生きているのかな・・・」苦笑いをするにスネイプの表情が一瞬曇る。
チラッと横目でを見やると、悲しそうな目で飛び交う蛍をみつめていて・・・・
つんつん
スネイプは誰かに背中をつつかれ、顔だけ振り返った。
ルーピンがにっこりと微笑み、をちょいちょいと指差している。
(ほらほら、かわいい恋人が悲しそうな目をしているよ?)
スネイプはルーピンを睨みつけて、そっとの肩に腕をまわす。
何も言葉を発しない、だけど肩に置かれたスネイプの手が少しばかりの肩を掴んだ。
それだけで、はひどく落ち着いた気分になりそっとスネイプの手に自分の手を重ねる。
「桜のようだな・・・・」
「え?」
ポツリと呟いたスネイプをは不思議そうに見あげた。
スネイプは目を細めながら、蛍が飛び交う空を見上げている。
「桜?」
「この季節に?」と首を傾げるにスネイプは小さく頷く。
「いつぞや、薬草を仕入れるために中国へ行ったのだが・・・日本にも少しだけ来てね・・。
季節はちょうど春だった・・桜という花が咲き誇っていて、風が吹くたびに舞う花が
とても美しかった記憶がある。この蛍はその桜を連想させる・・・・」
そう、手をかざすスネイプの指先に蛍がスっととまった。
も蛍の空を見上げた。
ほのかに輝く金色の色がとても心地良くて・・・
「蛍桜・・・かぁ・・・・うんv」
にっこりと微笑み、スネイプの肩にコツンと体を委ねる。
吸い込まれそうな闇に浮んだ無数の蛍。
鈴虫たちの穏やかな演奏をバックに優雅に飛び交う蛍たち。
明日には消えてしまう儚い蛍・・・だけどこの美しさは何をのにも替えがたい。
夏にみられた夜桜。
とても儚い、一晩限りの桜。
だけどその瞬間は永遠に見るものの心に生き続ける。
小さくだけれども力強く・・・夏の夜を幻想的に飾りつけた
蛍桜
彼らの心に生き続けていくことでしょう。
時代は再び暗黒に飲み込まれようとしている。
彼らはその闇を彷徨う蛍達。
闇に負けない光を秘めた力強い蛍達。
強く、儚い、心に多くの傷を持った、希望の蛍達。
時代の歯車はすでに回り始めている。
逃れられない、逃げもしない
ただ、己を信じて前に立ちはだかる闇にぶつかるのみ
希望の蛍達・・仲間たちと供に
彼らの幸せに満ちた夏が静かに終わりを告げた。
夏休み編終了です!!!
今回の蛍は先日掲示板に書き込みしてくださったさゆり様の
記事から連想させていただきました!!
きっと水があまりきれいでないイギリスに蛍はいないだろうなと
勝手に決めつけ(なんて奴だ)蛍を・・・
そして蛍を彼らに置き換えてこれからの時代をを反映してみました。
うまく再現できているか・・微妙・・・(死)