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「ここがの家か・・・」
「陰陽大社」
ハヤトから夏休みに日本へ遊びに来いと誘われ、またに会いたくスネイプは日本へ来た。
本来なら、フルーパウダーなり姿現しなりで来たいところなのだが、
「どうせなら思う存分旅行気分で来い!!」
とハヤトが飛行機・電車のチケットを手配してくれたので、スネイプは
「まぁ・・滅多に乗れるものではないか」
と、マグル交通機関での家に辿り着いたのだ。
飛行場から多くの人で賑わった大きな駅までバスに乗り、電車というものに乗り数時間。数回乗り換えた後、
ようやく指定された駅に降り立った。さすがに疲労が薄っすらと浮き出てくる。
だが目の前に広がる景色にそんな疲れは一瞬にして吹き飛んだ。
そこは駅員すらいないとても小さな駅。
見渡す限り深緑の草原が続く・・どことなくの精神世界の風景を彷彿させた。
どこまでも続く草原の向こうにそびえる幾重にも連なった山々。
草原の中を一本の道が山へと続いている。
スネイプは周りの景色に心奪われながらゆっくりと歩き出した。
ホグワーツではいつも漆黒のマントに漆黒の服・・・・見るからにとても暗そうな雰囲気を纏っていたスネイプだが、
今の彼の服装は濃紺のパンツに黒のTシャツ。そして風通しのよい麻布だろうか?
灰色の半袖のシャツを羽織っていた。学校では見られないラフな服装にいつもの暗く重たい気配がスネイプから感じられない。
だが、彼の左腕には黒い包帯のような物で暑そうに巻かれていた。
彼の左腕には許されることのない過去の過ち・・・決して消すことの出来ない・・・
容赦なく照りつける太陽に薄っすらと汗をかきながら山へと続く道を歩いていく。
どれくらい歩いただろうか?やがて小さな道は草原に別れを告げ、深い森へと続いていた。
森の入り口に小さな男の子が立っている。スネイプを見上げてにこにこと笑いながら。
「セブルス・スネイプ様ですね?」
「あぁ・・そうだが・・・」
スネイプはその男の子を見つめ、息をのんだ。
見慣れない着物を着てはいるが一見普通の幼い子供。
だが、その男の子の頭には小さな角らしきものがちょこんと顔をだしていた。
そしてもう一つ驚いたのはその瞳。
深い緑色だと思ったらゆっくりとエメラルドグリーンに変わり、黄金色になり次は蒼色に変わったのだ。
驚きに言葉を失ったスネイプにニッコリと微笑むと、荷物をお持ちしますとトランクを受け取った。
男の子が前を歩き、スネイプは辺りを見渡しながらその後に続いた。
とても深い深い森。だけど暗いとは全く感じさせない・・空を仰げば木々の間からゆっくりと日の光が差し込んでいる。
道は一本しかなく、小道の脇にはところどころに見たことのない石像が姿を現していた。
「涼しいな・・草原を歩いていた時とはまるで違う・・・・」
「ここはもうの聖域でございます、聖域全体に結界を張って温度を調節しているのです。
そしてまた、外敵から身を守りまもるのです。私はその守番の一人の小鬼です。」
小鬼は前を向きながらスネイプに説明した。
スネイプはこんなにの家が大きいのかと驚きに目を見開いた。
学生時代、ハヤトの家は日本ではかなり大きな家であることはそれとなく聞いてはいたが
ハヤトもあまり自分の家のことを話さなかったので大まかなことしか知らない。
辺りを見渡しながらスネイプは小鬼に尋ねた。
森はとても静かで、とおくから聞こえてくる鳥のさえずりがとても耳に心地良い。
「守番は何人もいるのかね?」
「えぇ・・・108います。ほら・・・・」
「・・・?石像?」
小鬼は足を止め、小道にわきに立っている石像を指差した。
そこには狐の石像が置かれていた。怪訝そうに石像を見つめるスネイプをにっこりと見上げると、
小鬼は石像に向かって話しかけた。
「白狐。お客様だよ?挨拶」
すると石像がにわかに光りだして、白い狐と変わりスネイプの前に恭しく座ってお辞儀をした。
「ようこそ・・・我は守番のひとつ、白狐でございます。どうぞごゆっくりしてらしてくださいませ・・」
驚きに目を見開くスネイプ。
「こっこれは・・・っ!!」
「小道に置かれている石像ひとつひとつが守番なのでございます。セブルス・スネイプ様。
は我ら108の守番で守られている聖域なのでございます。我らは御当主により、
力を授かり、のために外敵と戦うのでございます。その姿は様々。
私のような小鬼、白狐、釜井達、猫又、大蛇等・・」
「・・・すごいな・・・」
「だからダンブルドア様は、様を家に帰すことを許された。ここは幾重にも結果が施されています。
ヴォルデモートといえどもそう簡単に様に手を出せません。」
スネイプは小鬼の声のトーンがわずかに下がったのを聞き取り、白狐から小鬼に視線を戻した。
小鬼は少し険しい表情で再び歩き出す。白狐は再びスネイプにお辞儀をするとまた石像に戻った。
「様はの中でも特別な力を持って生まれ出ました。
これは様がお帰りになられた時にわかったことなのですが、様は古の女王の力を持った
巫女様なのでございます。ヴォルデモートはそんな様に目をつけた。」
「あぁ・・・・そのことは我輩もから聞いた・・なんでも遥か昔国を治めていた女王の血だとか・・・」
「だから・・セブルス・スネイプ様。様をよろしくお願いします」
くるっとスネイプに振り返り小鬼はニッコリと笑った。
「ようこそ、の家・・陰陽大社へ」
いつの間にか森が終わり、スネイプの目の前に大きな社が立ちはだかった。
いくつかの文献でその写真を幾度か見たことはあるが、今目の前にそびえたっている社は
それらの比ではない。一番大きな木造の建物が目の前に迫り、それらに隣接するように
いくつかの社が建っている。
社の前には何か不思議な形の造形物が悠々と立っていた。
(たしか・・鳥居・・・トリイと言ったか・・・)そうぼんやり思いながら鳥居を見上げた。
青空にくっきりと浮んだ真っ赤な鳥居。
「うわあ!!セブ〜!!!」
聞きなれた声がした。
大きな社から一人の少女がこちらに向かって走ってくる。
「いらっしゃい!!セブ!待ってたよぉ!!」
「ッ・・久しぶりだな」
思いっきり抱きついてくるを優しく抱きしめ、スネイプはそっとの頬を撫でた。
「へへ・・・でも1週間しかたってないよ・・」
そう自分の頬を撫でるスネイプの手に自分の手を重ね、嬉しそうに目を細める。
「我輩は1週間もなのだが・・・」
そうお互いクスリと笑うと、は小鬼にニッコリと微笑んだ。
「ありがとうvご苦労様。ゆっくり休んでねv」
「有難うございます様」
そう小鬼は2人にお辞儀をすると小道の脇にたち石像へと変わった。
「。その服はひょっとして巫女の服かね?」
鳥居をくぐりながらスネイプはの着ている着物をみつめ、ほのかに頬を染めながら口を開いた。
は白いところどころに赤い装飾が施されている着物に、ワイドパンツというのだろうか?赤いスカートのような
ものをはいていた。は少し頬を染めてニッコリと微笑んだ。
「うん・・そうなの。この時期近くの村がお祭りで、その祭事を仕切るのが家なんだ。
だからそのお祭りが終わるまでこの着物なの・・・歩きづらくって・・・」
そうはむうと軽く頬を膨らまして、袖を軽く持ち上げた。
「そうか・・だが・・・・」
「きゃっ・・////」
スネイプはを引き寄せ、そっと額に口付けを落とした。
ポケーと顔を赤くするの耳元にそっと囁く。
「たいへん似合っておる・・・・おしとやかにみえるな」
「へへ・・・・・・・・・・?おしとやか・・っていつもはおしとやかじゃないってことぉ!?」
そう軽くスネイプを睨むとスネイプは少し意地悪く笑って見せ、の頬をつついた。
「ホグワーツではおしとやかではあるまい?」
「むぅ・・・あっねぇ!!セブもお祭り行こう?今度初めて私が祀事やるんだよ!
セブに見てほしいなvvあとねっ花火とか!ねっいいでしょう!?」
「あぁ。もちろんだ、楽しみにしー」
「セブルスー!!!!」
バキィ!!!
ハヤトが社から猛スピードで走ってきて、思いっきりスネイプに殴りかかった。
あまりにも突然の出来事に、は目を見開いた。
殴られたスネイプは倒れそうになるのをグッと押さえ、やっとのことで踏みとどまった。
「っくっ・・・ハッハヤト・・・貴様、何をすー」
「くおらぁ!!莫迦セブルスー!!!!」
ガスッ!!!
次はナツキがいきなりスネイプに後ろから回し蹴りをお見舞いした。
だが、スネイプはまたもや踏みとどまる。
キッとナツキを睨みつけた。
「っつ・・・ナツキ・・貴様も一体何を―」
「このあほんだらぐわあぁっ!!!」
ボコォッ!!!
そしてその次はの祖父の杖がスネイプの頭に直撃した。
そしてとうとうドサッと倒れたスネイプ。
は血相を変えてスネイプを揺り起こす。
「セッセブ!!ねえ!!何するのよ!!!皆!!!セブ!しっかりして!!!」
だが、ハヤト達はスカッとした表情で社へと踵を返していった。
「さあっ!これでよし!!そこで伸びている客人を案内しなさい」
なにがこれでよしなの!!!!
は呆然としたまま社へ向かっていく両親達を見つめていた。
はい!オリジナル部分に突入です。
オリジナル序章ということでなにやら説明物が多くなってしまいましたが、
しばらくはセブルスさん、ヒロインのお家に居候します。