42








そなたは我の生まれ変わり・・・・・




そなたの力は我から受け継がれたもの



でも・・・・・・そなただけはどうか・・・悲しむことのないように・・・


































「輪廻」

























は大きく目を見開いた。
目の前にいるこの女性は今・・なんて言った?



「卑弥呼・・・・・?・・・まさか・・・」



卑弥呼は優しく微笑み、の両頬を優しく包む。








「そう・・・我は遥か昔の陰陽の姫巫女・・・・我こそ全ての陰陽の起源・・・・
そしてそなたは我の生まれ変わり・・・そして我の力を受け継ぐ者・・・
まだ・・・その力、全て手にしてないが・・・」


そう卑弥呼は石碑にもたれかかるように腰をおろした。
自分の隣を軽く叩き、にも腰をおろすとように促す。
は卑弥呼に見惚れながら、隣に腰をおろした。


腰よりも長く伸びた黒い髪、真っ白な着物・・・
表情はとても優雅で、手の仕草一つだけでも引き込まれてしまう。


卑弥呼


はその名前に聞き覚えがあった。
日本にいた頃通っていた学校の授業で習ったことがあった気がする・・・
たしか遥か昔、国を治めていた女王で、不思議な力を持っていたと・・・
だけど、詳しいことは何一つ残されていなくて・・・
どんな力を持っていたのか、その生活は・・・

そして卑弥呼は死んだあと、どこに葬られたのか・・・

また学校だけではなく、家でも卑弥呼のことを祖父から聞いたことがあった。
陰陽道の元になった人物・・祀り事を行い、未来を予言し、式神を使った・・

まさに陰陽の起源

は卑弥呼に憧れていた。
歴史に残る陰陽師はほとんど男性が多かったし、多くの謎に包まれていたことに
魅力を感じたのかもしれない。

(きっと、とても綺麗な人だったのだろうな・・・)






隣に腰をおろした女性はの想像していた以上に、輝くほど綺麗で少し伏せた顔から覗く長いまつげが
さらに美しさを強調する。それでもどこか凛とした強さが感じ取られて・・
頬をほのかに赤く染めながら自分をジッと見つめてくるに、卑弥呼はクスリと笑った。


「どうした?」

「あ・・いいっいえ!・・すいません・・」



は顔を真っ赤にさせ俯いてしまった。
ずっと憧れだった人が・・隣にいて落ち着けるはずがない・・

卑弥呼はそっとを抱き寄せた。
ふんわりと甘い匂いがの鼻を掠める。はそろそろと卑弥呼の肩にもたれかかった。

(なんだろう・・・なんか懐かしい気分・・・・・)




「さあ・・


少し声を固くさせ、卑弥呼はの顔を覗きこんだ。


「はい」

も何かを感じ取りしっかりと答える。



「そなたもあの子と同様帰らなければなりません・・・わかりますね?」

「はい。ホグワーツに・・・」


卑弥呼は優しく微笑んだ。


「えぇ・・・そう・・・だが、そなたが一番帰りたいことろはもう一つあるはず」


その瞬間、の目から大粒の涙が零れ落ちた。
止められない・・・止まらない・・・
一番帰りたい場所・・・ホグワーツ・・・確かにそうで。でも、その中でも一番・・・帰りたい場所・・・








「セ・・・セブルス・・・」



小さくでもはっきりと呟くに、卑弥呼はコクンと頷く。









「あの時、あの男はそなたからあの男の記憶だけ消し去ろうとした。だが、そなたの記憶は消えなかった・・・
なぜか・・・わかるか?」


「・・・・私の・・セブルスへの想い・・・?」


「そうだ」


卑弥呼はの手をとった。ゆっくりと空を見上げる横顔がなぜか儚げに見える・・・


「普通の・・魔法使いや陰陽師なら・・・・・あの男の力は優れている・・すぐ消えてしまっていただろう・・
だが、・・そなたの力は我の力を受け継いでいる・・他の者よりも深く強い・・。
そして・・・そなたのあの男への想いもまた深く強かった。だからあの男の術は効かなかった。
ましてや、一部の記憶だけ消し去るというのはかなり高度なもの・・そなたの深い強さに
かなわなかったのだろう・・それら全てが合わさった結果、そなたの記憶は消えなかった・・・・・」


も空を見上げた。


「もしあの男がヴォルデモート同様、全ての記憶を消そうものなら我があの男を痛めつけていただろう・・
もちろん全ての記憶を消すということは、親も親友も何もかも忘れてしまうこと・・・・・・
あの男はそんなことはできなかったのだろう・・自分だけ忘れさせようとした」


「セブルスは優しいですから・・・」


「そのようだな。だが・・・脆い」


「うん・・・・そうですね・・・優しくて、強い魔法使いです。だけど・・心はとても弱くて・・
だからこそっ私傍にいたいの・・・一時は私が傍にいるからセブルスを弱くしているのだと思った。
だけどそれは違う・・違ったの・・・何となくでしかわからないけど。」


そうまた俯くを卑弥呼はジッと見つめていた。



「そこまで想い人のことを気遣っているのなら・・大丈夫ね・・・」


「え?」


「いや・・・・・・・さあっ

卑弥呼はサッと立ち上がり、に手を差し伸べた。
も卑弥呼の手をとり立ち上がった。



手をつなぎ、緑の草原をゆっくりと歩く。
吹いてくる風がとても心地良い・・・・




「はい?」

「幸せになるのですよ?」

「はい!」


2人はニッコリと微笑みあった。







やがて、2人は小さな泉にやってきた。
水面には競技場が映し出されている。ハリーがぐったりと倒れていて、多くの人が取り囲んでいる。
不安な表情を浮かべるの頬を卑弥呼はそっと撫でた。
卑弥呼を見上げる



「さあ・・戻りなさい・・・・・最後に一つの試練をそなたに課す・・」






この先、そなたの歩む道はひどく険しい茨の道。それでもそなたはあの男と歩いて行けるか?










は曇りのない瞳で真っ直ぐに卑弥呼を見つめ返した。






「はい。セブルスと一緒ならどんな道でも乗り越えてみせます」



「その言葉、その意志を忘れてはなりませんよ。さあ、戻りなさい。
我はもうそなたの前に現われることはない。自分の意志を強く持つのです・・・
そなたにこれを・・・・・」


卑弥呼は自分がしていた首飾りをはずし、にそっとつけた。
エメラルドグリーンの勾玉の首飾り、草原の緑に重なって見える。


「ありがとうございます。卑弥呼様」


はニッコリと微笑むと泉の中に入っていった。
その瞬間、泉から光があふれる。光が消えると、の姿はそこにはもうなかった。










・・・私の運命を受け継いだ姫巫女・・でもあなただけはどうか・・・幸せに・・・」










クイ













儚げに微笑む卑弥呼の裾を誰かが引っ張った。








お母様・・・行ったの?」



そこには狐の面の被った少女が卑弥呼を見上げていた。
卑弥呼は少女の前にかがみ、そっと面をはずす。
かわいらしい目が卑弥呼と合う。



「えぇ・・でも大丈夫。あのこは・・あの2人はもう想いが離れることはない」


「よかった・・」


「昔・・私が愛した人・・少しあの男に似てた・・・戦で死んでいったあの人に・・・あの2人は私のように悲しまないでほしいのよ・・」


「卑弥呼様・・・」


「力は受け継いでも・・同じ道を辿ってほしくない・・・」


「大丈夫・・・お母様とお父様は絶対・・・もう、離れないよ・・・・・」


少女はそっと卑弥呼の手をとった。
にっこりと微笑む姿に卑弥呼もつられて微笑む。


「そうだな・・・さあ・・・では我らも行きましょう・・・さあ・・ヒミコ」

卑弥呼は立ち上がって、少女に手を差し伸べた。
ヒミコの手が卑弥呼の手と重なった。










さようなら    我の力を受け継ぐ者

またね      お母さん













新緑の草原に一つの風が吹き抜けた









えっと・・・なんか自分でもどえらい展開になってきたと・・
焦ってたり・・(汗)ここで卑弥呼について補足!!
この話のためにかなり人物設定をかなり脚色しています。
卑弥呼は生涯独身となっています。昔読んだ卑弥呼伝(歴史漫画)に
修行の途中に恋に落ちる場面があったのを思い出して書いてみました。
卑弥呼は修行の身でそのうえ神に使える巫女。相手は村を守る兵士で・・
禁忌の恋と泣く泣く諦めるのですが、それでも心の中でいつも想っていて。
だけどその彼は戦で戦死していまうという・・
幼いながらに泣いた記憶があります。実際の卑弥呼はどんな人物でどんな生活を送って
いたのか・・詳しくはわかりません。卑弥呼にまつわる本はたくさん出ていますが、そのほとんどが作者
によって脚色されていっても過言ではないと思います。この話では、ヒロインは卑弥呼の生まれ変わりということで
また日本の陰陽の起源として(自分でもそう思ってたりするので)描いてみました。
なので!間違ってもこの話で「あぁ、卑弥呼ってこんな人物だったんだ〜」と思わないでくださいね!!