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「陰陽の姫巫女」




























体を震わせはただウ゛ォルデモートを見つめた。
視線を反らしたいのに、逃げ出したいのに体がいうことをきかない。



・・」






背後で弱々しい声がしてどうにか首だけ振り返る。



「ハッハリー!?」



そこにはぐったりと倒れているハリーの姿があった。
震える体をぐっと奮い起こしてハリーの側へ寄ろうとするが、何かに腕を掴まれ、それは叶わなかった。
景色が反転し目の前に赤い目が迫る。






「我が配下よ、紹介しよう。俺様の妻になる娘だ。無論俺様への忠義同様、我が妻へ忠誠を誓へ」




ウ゛ォルデモートはを後ろから抱き締めながら、自分を囲んでいる黒いローブに仮面をつけている数人の魔法使いに言った。
はそこではじめて自分がいるところがどこかの墓地であると認識する。
だんだん意識がはっきりしてきたが力はまだうまく入らない。
取り囲んでいた魔法使いが一人ずつ歩み寄り、のローブの裾にキスをする。



様・・・・我が名はルシウス・マルフォイ。お見知りおきを・・・・」

様・・・我が主の奥様・・・・・」




は震えながら仮面をつけた死喰い人達を見つめた。
ヴォルデモートは死喰い人がのローブにキスをする間、ずっとの髪や頬を撫でている。
やがてすべての死喰い人が元の円に戻ると、を自分へと向きなおさせた。






「さあ・・・今こそ俺様のものに・・・・古の女王の力を持つ者よ」




そう呟くとの口唇に自分の口唇を重ねた。必死に抵抗をするがうまく力が入らない。
赤い目がしっかりとを捕らえて離さない。



(いやだ・・・・!!!助けて・・・・)


突然、何かが走る音がして、爆発音がすると同時にヴォルデモートの顔が醜く歪んだ。
は力を振り絞って、ヴォルデモートを突き放す。
何が起きたのかと辺りを見渡すと、ヴォルデモートの少し後ろでハリーが杖を構えていた。
おそらくハリーの杖がヴォルデモートを攻撃したのだろう・・・杖先から薄っすらと煙がでていた。
ヴォルデモートが一瞬ひるんだすきにの手を引き自分の後ろに隠す。
死喰い人が一斉に杖をかまえる。


「やめろ!俺様の妻に怪我させる気か!」


そう怒鳴り、ねっとりとした笑みを浮かべ二人・・いやハリーを見据えた。


「やってくれるではないか、ハリー。おいで」


「いやっ!」


はお前のものにさせない!!は・・認めたくないけど・・
はあいつじゃなきゃダメなんだ!!」


ハリーは少し苦々しそうに(あいつ)と叫んだ。
それは間違いなくスネイプで・・・・ハリーはキッとヴォルデモートを睨みつけた。
だが、ヴォルデモートはまだ不気味な笑みを浮かべている。




「くくっ我が忠実な僕から聞いているぞ。スネイプはの中から自分の記憶を消したとな・・」

「つっ・・」


「あいつは自分の非力さに逃げだし、の記憶を消した。なんとも勝手でずるい奴よ・・・。
だが俺様にとっては好都合だな・・・さあ、話は終りだハリー・・・クルーシオ!」





ヴォルデモートは一瞬目を見開くとサッと杖を取り出し、その杖先をハリーに向けた。


「ああああああ!!!」


ガクンと膝が崩れ、地面にのたれうち回るハリー。
死喰い人から嘲笑の声が漏れてくる。
ヴォルデモートは口端を上げ、笑っている。





「だめ!!やめてっ!式神お願い!!!!」



は懐から白い紙束を取りだし空中にバサッとばらまいた。
白い紙はふんわりと浮いたが、やがて鳥のような形になり、ものすごいスピードで
ヴォルデモートにめがけて飛んでいく。ヴォルデモートは顔を歪ませ鳥を振り払おうとした。
そのおかげで杖先がハリーからはずれ、はらりとハリーの体が緩む。

「ハリー!!しっかりして!!!」

「うぅ・・・・・」

「ハリー!!!っきゃあ!!!」


ハリーへと駆け寄り、体を起こそうとするの腕をヴォルデモートが捻り上げた。





「くくくっ・・夫に式を放つなど悪い子だ。どうやらお前には躾が必要らしいな」



「あ・・・・」





そう赤い目か怪しく光る。後退りをするを自分のローブへと引き込み、顔を除き込んだ。
(怖い!)そう震えそうになるのを必死にこらえ睨みつける。



「ほぉ?お前は夫に反発するのか」


「誰があんたのものになるもんか」


ヴォルデモートの顔が一瞬引き攣る。はギュッと手を握った。











「私は・・・・忘れてなんかいない・・・・・」










「・・・・?何のことだ・・・・」











「セブルスは非力じゃない!勝手でもずるい奴でもない!!
セブルスは気づいてないけど・・・私は忘れてなんかいない・・・忘れるものか・・・
私は帰るんだ・・・・セブルスのところに!!!!・・・・・っつ!くぅっ・・いた・・・はなせ・・・」




ヴォルデモートの顔が怒りにひどく歪み、の顎を掴み上げた。


「ならば俺様が忘れさせてやろう!なにもかもな!!!お前は闇の帝王の花嫁となるのだ!
親も友も・・・すべて忘れさせてやろう!!!スネイプのところへ誰が行かせるか!!」


怒り狂った声をあげ、ヴォルデモートはに杖を向けた。
顔を強張らせる




(いやだ!!!もう・・離れたくない!!!皆を・・・・セブルスを忘れたくない!!)





「オブリ・・・・・何!!」


呪文を唱えていたヴォルデモートが驚きに目を見開いた。


ギュッと目を瞑った、の体中から光を放ったれている。
だんだん眩しさを増すそれにヴォルデモートは思わず目を細めた。
ハリーも何とか上体を起こし、地面に片手をつきもう片方の手を顔の前にかざしながら
目を細めを見つめる。





光に包まれながらそっと開かれるその瞳・・











「この娘の記憶全て消そうものなら貴様を滅ぼさん」






の口からの声で紡がられる音・・・だけど・・なにか違う・・








「愚か者めが!」








そうは声を上げると、手をヴォルデモートへとかざした。
その瞬間、金色の光が手から溢れ出し、ヴォルデモートを弾き飛ばす。

はゆっくりとハリーへと歩み寄った。
の顔なのに、声なのに・・・ではない・・ハリーは疑わしそうにを見上げた。



「ハリーポッター・・・そなたも戦いなさい・・・そして戻るのです・・ホグワーツに・・
は・・・大丈夫・・私が必ず送り届けます・・・いいですね?ハリー・・・さあ・・・杖を・・・」



ハリーは戸惑いながらもしっかりと頷いた。ギュッと杖を握り締める。

ヴォルデモートがバッと立ち上がり、杖をに向けた。



「お前は何者だ!!ではないな!!!」



はヴォルデモートを見据えた。



「さあ!ハリー・・・戦いなさい!!運命に打ち勝ちなさい!」

ハリーは立ち上がってヴォルデモートを睨みつけた。怒りの表情をむき出しにするヴォルデモート。

「小僧がっいい気になるなよ!!」

お互いの杖が振り上げられ、お互いを攻撃した。
その瞬間二つの杖から金色の光が飛び出し、二つの杖をつないだのだ。
まるで幾重にも重なった金色の糸・・・ 驚きに目を見開くハリーとヴォルデモート・・・・・・


「さあ・・・ハリー・・その金色の糸を切らないで・・・そなたを助けてくれるから・・・」

の声が頭の中に直接響いて聞えたようだった。
ハリーは不思議と落ち着いてそれを感じ取る。




「わかりました・・・」



はにっこりと微笑むとスッと姿を消した。























































ふと目を覚ました。
そこは・・・以前見た光景・・・・


一面に広がる新緑の草原・・・・




自分の精神世界で見た景色・・・














は立ち上がって辺りを見渡した。
背後には大きな石碑が立っていた。そこはスネイプと想いを交わした場所だった。



「私・・・また精神の世界へ?・・・」




そう呟くと、石碑に書かれた文字が金色に光りはじめた。
まばゆい光を放ち思わず目を覆ってしまう。固く閉じてもその光はの脳に
直接流れ込んでくるようで・・やがて、光が弱くなるのを感じて、
そっと目を開けてみる。



「あ・・・あなたは・・・・・」













「我は古の女王なり。我が名は卑弥呼」