悪夢再び
「ミス・は教員席で観戦してもらう。食事が済んだら我輩と競技場へ」
「悪夢再び」
第三試合前の晩餐会での元へスネイプが来て、そう告げた。
はきょとんとして返事をしたが、ハーマイオニーはそっとスネイプの様子を見ていた。
スネイプは無表情でそう言い渡すとサッと教員席に足を向けた。
やがて、大広間にいる全員が試合会場へ向かいはじめた頃、スネイプがのところに来て
ついて来いと素っ気無く言い放った。
第二試合同様、はスネイプの隣に腰をおろした。マクゴナガルが様子をみにのところへ歩いてくる。
マクゴナガルは今回の試合の巡回をするらしい・・いつもと被っている黒い三角帽子ではなく、
赤い帽子を被っている。
マクゴナガルは第二試合での二人の楽しそうなやり取りを思い出しながら、悲しそうな表情で二人を見つめる。
今のとスネイプは何も話さない・・視線すら・・合わせない・・・・・
だが、マクゴナガルはの異変に眉を顰めた。
「ミス・?気分でも悪いの?」
スネイプはマクゴナガルの言葉に顔をしかめ、を見つめる。
は少し顔色が悪くみえた。
「いえ・・・大丈夫です」
そうちょっと辛そうにマクゴナガルに笑ってみせる。
「そう・・でも気分が悪くなったら無理をしてはいけませんよ?」
「はいv」
そうニッコリと笑うにマクゴナガルもニッコリと笑うと
スネイプに「頼みますよ?」と競技場へと踵を返していった。
(なんだろ・・・この胸騒ぎ・・・・)
は先ほどからなんともいえぬ胸騒ぎに襲われていた。
6月だというのになにかとても寒気がする・・・
(何も起こらない・・・わよね?)
最後の試合は巨大な迷路を攻略することだった。
ホイッスルとともに得点の高い順からスタートする。
ハリーはもう一人の代表選手のセドリックと一緒に一番に迷路に入っていった。
観客席の前に特大のスクリーンが垂れ下がり、そこに迷路の中が映し出されている・・・
ハリーが迷路に入った瞬間、はさらに気分が悪くなった・・・
(いったい・・なんなのよ・・・まさか・・ハリーに何か起きるの?)
頭がくらくらして思わず額に手を置く。
その様子にスネイプは心配そうに眉を顰めた。
「ミス・・・・顔色が悪いぞ・・・」
スネイプの声にハッと顔を上げる。
慌てて首を振った。
「だ・・大丈夫ですって!!」
だが顔色が悪く、また俯いたにスネイプはますます眉間に皺を寄せた。
小さく身震いするに気づき
「!!え?・・・・あの・・・」
は驚いてスネイプを見上げた。
スネイプの黒いマントがの肩にかけられている。
「遠慮はいらん」
スネイプはそう素っ気無く呟くと、スクリーンへと視線を移した。
は驚いてしばらく固まっていたがやがて小さな声で「ありがとうございます」と
呟くともスクリーンへと視線を移した・・・
だが、一向に胸騒ぎは止まらない・・・むしろ一層募るばかりで・・
スクリーンがだんだんとぼやけて見えてきた。
(やば・・・これって・・・初めての闇の防衛術の授業や、呪いを受けた時と同じ・・・・)
目はだんだんとぼやけていくのに、なぜかハリーの行動が頭の中に直接入り込んでくる。
巨大なスクリュートと戦っているハリー。スフィンクスのなぞなぞに頭を抱えているハリー・・・
まるで自分もそこにいるようなくらいに頭の中にその映像が流れてくる。
その瞬間、
「きゃあ!!」
は目を見開いて叫んだ。
ガタガタと体が震える。
スネイプは驚いての肩を抱きしめた。
「ミス・!!どうした!!」
の悲鳴にダンブルドアもの所へきた。
「だめ・・・・止めて・・・」
「?何をだね?」
「先生・・お願い・・・ハリーを・・」
「落ち着くんじゃ、」
ダンブルドアが優しくの頭を撫でるがはギュッと目をつぶる。
固く閉じた奥に、思い出したくない赤い目が光る・・・
夢だけでしか見なかった目が・・・頭の中でくっきりと浮ぶ。
「ハリーを止めて!!!」
その瞬間、会場がざわめいた。
スネイプとダンブルドアはスクリーンに目を移す。
そこには優勝杯に引き込まれていくハリーとセドリックの姿があった。
「なっ!!!」
「いかん!セブルス!来てくれ!!!」
「はっ!・・・・・ミス・・・・ここにいなさい・・絶対動くな・・わかったね?」
スネイプはそっとの頭を撫で、顔を覗きこんだ。
真っ青に放心しきっている・・・・抱きしめてやりたい・・そんな衝動に駆られるの抑え、
スネイプはそっとの傍から離れた。
「ハリー・・・」
は焦点の定まらない目で呟いた。
頭の中に浮んできた赤い目・・きっとそれは・・・
その瞬間、ハリーが優勝杯へと引き込まれた。
「まさか・・ヴォルデモートに関係あるの?」
体の震えが止まらない・・・
どれほど時が経ったのだろうか・・
依然と辺りは騒がしい。
誰かがの前に立った。
だが焦点が定まらず誰が立っているのか検討もつかない・・・
「・・・・・・誰なの・・・・?」
「時が来た・・・さあ・・・今こそあの方の元へ・・・陰陽の姫巫女よ・・・・」
「!!!?」
はグッと意識を手繰り寄せ、目の前に立っている人物を見ようとした。
だがその瞬間、は自分の体がフワリと浮いた感覚を覚えた。
周りの景色がぐるぐると回りだす。堪えきれずに目をつぶる。
やがて、耳から聞える音が尋常でないことに気づき、はそっと目を開けた。
目を開けた瞬間、は凍りついた。
これも夢であると願いたい・・・・・
「さあ・・・・。今こそ俺様のものに」
赤い二つの目が不気味に笑いながらを見下ろしていた。