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「だが・・・・・忘れなさい・・・我輩を・・・・・」


「どうして・・・・・?やだ・・やめてっ・・・・セブルス・・・・」


「オブリビエイド・・・忘れよ」

































「ずっと・・・・」

















スネイプの杖からまばゆい光が起こり、の額にスッと入り込んだ。
ポスンとスネイプの胸になだれ込む
スネイプは苦しげに微笑み、そっとの頬を撫でた。


「やっと・・・・名前を呼んでくれたな・・・・だが、これが一番いいのだ・・・・・」



一粒の涙がからこぼれ落ちる。


もう、触れることはないであろうその口唇にそっと自分の口唇を重ねた。
目を覚ませばもう何もない。
以前と同じ生徒と教師に・・・それでも・・・・・



「我輩は・・いつまでもお前を・・」



スネイプはギュッとを抱きしめた。




























































時が進むのはとても早いもので・・・



























「ねーハーマイオニー!!ここわからないの!教えて!!」

「あら?どこがわからないの?」

「うーんとね・・・・」






「廊下の道を塞がないでいただきたいものだな・・ミス・にミス・グレンジャー」

「うっわー・・・出た〜・・」

「なんだその言い方は、ミス・・・グリフィンドール2点減点」




はすっかりスネイプのことは忘れ、毎日楽しそうに笑顔だった。
それでも夢でうなされることはなくならず、スネイプはそっとハーマイオニーに夢をみることがないようにと
睡眠薬を手渡す日々が続く。







「わかったら、ささっと行け」

「はーい・・・」


いつも生徒に向ける冷たい視線でを見下ろす。
は頬を膨らまし、ハーマイオニーとスネイプとは逆方向へ歩き出した。


振り返ることのない、今ではただの生徒のをジッと見つめるスネイプ。

記憶を消した今でも・・への想いは変わらない・・・・

だけど、は振り返ることはなかった・・・・・






ただ、ハーマイオニーだけが悲しそうな表情でスネイプにそっと振り返った。











これでいいのだ・・・・所詮・・生徒と教師・・・・・・・・・








「お主にとって・・・一番辛い道を選んだの・・・セブルスよ・・・・」

「校長・・・」


そっとスネイプの方にダンブルドアの手を置かれた。
ダンブルドアは心痛の表情での背中をジッと見つめる。


「いいのです・・これで。には幸せに・・・我輩では彼女を幸せにはできません。」






                 苦しめるだけです






そう、淋しげに笑うスネイプをダンブルドアはジッと見つめた。



「じゃが・・・お主の幸せは・・・お主自身で消してしまったのう・・・」


「・・・ふっ・・いいのです。我輩に幸せなどっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っつ・・失礼します・・・」


スネイプは一瞬顔をしかめるとサッと踵を返して自室へと向かった。
その背中を見つめ、ダンブルドアは深く息を吐く。



「わしは・・お主にも幸せになってほしかった・・・セブルス・・・・・なぜそこまで自分を苦しめる・・・」









の記憶を消すかもしれない・・・
それはあらかじめダンブルドアとハヤトたちに通達はしてあった。
ダンブルドア、ハヤト、ナツキ・・そしての祖父は何もそこまでと反対した。
だが、それ以上にスネイプの決心は強かったのである。


に自分の過去を打ち明けた時、最初こそは驚き声を失っただが
すべてを打ち明けると、は真っ直ぐスネイプを見つめ返してこう言った。


「セブ・・・話してくれてありがとう・・・それでも私の想いはかわらないよ?
過去は消せないけど・・・でもこれからはセブとたくさん楽しい思い出作りたいの・・
だからお願い。ずっと傍にいて・・・?」







嬉しかった・・・・
拒絶されるだけのことを犯してきた自分を受け止め、そのうえ傍にいることを望んでくれ・・













だが・・・スネイプはの中から自分との記憶を消し去った。

















「ありがとう・・・・・だが我輩ではお前を幸せにはできん・・・・・・・・・」




スネイプはの未来を案じ、自分といればは幸せになれない・・そう悟った。
には幸せになってもらいたい・・・・







記憶を消したことをハヤトに伝えると、すぐハヤトから一通の手紙とが届いた。

スネイプのことを心配していること、記憶を消したあとでもを見守ってやってほしいこと・・

それでも・・夏には日本へ来いということ・・・



ハヤトはわかっていたのだ・・・一番辛いのはスネイプであるということに・・












「ほんとに!お前は!バカだ!阿呆だ!間抜けだ!陰険だ!根暗だ!!!
って聞いてんのかよ!!このすっとこどっこい!!」






以前と変わらない、静かで冷たい自分の部屋・・・
が訪れていた頃は彼女がいるだけで明るく暖かく感じた。
今はひんやりとした空気がゆっくりと流れる。
ただ違うことはがたまに訪れるだけで・・・

はレポート採点をするスネイプの横で喚いていた。


「うるさい、黙れ、帰れ、羽毛が」

スネイプはうんざりした顔でを睨みつけた。
一瞬ムカッとするだが―

「ったく・・・本当に・・お前昔っからそうだよなー!自分がこう!と思ったら絶対突き通す!!
今一番苦しいのは・・夢でうなされているじゃない・・・・お前だよ、セブルス!!」

「・・・・・・・・・」

「俺だってなーただの嫌味ないきもんじゃねえよ。こっそりお前達のこと期待してたさ。それをおめー・・」

「ミカエル」


の言葉を制すようにスネイプはジッとを見つめた。
その表情は普段のスネイプと変わらない・・だが内心はひどく荒んでいるに違いない・・
はそっと嘴を閉じた。






























「うひい・・・・やってしまったぁ〜・・・・」


次の授業へと移動の途中、は手に持っていた羊皮紙に束や本をバサバサと落としてしまった。
派手に散乱して、渋々としゃがみこみ拾い上げる。




「何をしている」

「・・う・・・どっどうも・・・スネイプ先生・・お・・落としちゃって・・・」


冷たい声がに降りかかり、顔を引き攣らせて顔をあげる
スネイプはを一瞥すると杖を取り出して一振りした。
散乱していた羊皮紙や教科書がふわりと浮かび上がり、の手の中にすっぽりと収まった。


「え・・・え・・・・・??」


困惑するにスネイプの冷たい声が響く。


「ふん・・・我輩の通行の邪魔だからな」

そう言い放つと、サッとの横を通り過ぎた。
スネイプの長く黒いマントが翻る。

は「あっ・・ありがとうございます」と去っていくスネイプの後姿に小さく呟いたが、
スネイプは振り返ることなく颯爽と廊下へと消えていく・・・















がスネイプとの記憶を忘れて戻ってきた時、ハーマイオニーは思わずを抱きしめ泣いてしまった。
はとても困惑していたが・・・ハリーとロンも複雑な表情で・・・・

いつもはスネイプとの邪魔をしていたのに・・・
なぜ泣いてしまったのか・・ハーマイオニー自身わからなかった・・・

ハリー達はスネイプがいったい何をに打ち明けたのか・・それは最近になってわかった。

ハリーが校長室で触ってしまった水盆でスネイプがデスイーターだったことを知った。
(本当はシリウスと会ったときにそれとなく聞いていたのだが)


「きっとスネイプはそのことをに打ち明けたに違いないよ」

はスネイプのこと拒絶したのかな?」

「わからない・・・の中のスネイプの記憶は・・もう消えているし・・」




何もかも解明することはなかった・・・





ただ、が編入してきた当初の生活が戻って・・・
いつもは笑顔だった。























そして、第三の試験・・最後の試験の日

歯車は回り始める・・・時は戻らない・・・ただ進むだけ・・・・