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「不安」


























「・・・・・・・・・・・・土曜日の午後二時にそこにいること。あと、とヌイも来るように伝えてくれ」


ハリー達は驚いて顔を見合わせた。



「シリウスはのこと知っているの?」


チラッと横目でを盗み見る。はかわいい笑顔でジニーと仲良く朝食をとっていた。























「ね、・・これ見て・・」

「ん〜?」


魔法薬学の教室へと向かう途中、ハリーはにシリウスからの手紙をそっと見せた。
はその手紙を読むとにっこり笑って「うん、わかったよ」とハリーに手紙を返す。
ハリーは声を落としながら

、シリウス知ってるの?」

と耳に囁いた。ロンとハーマイオニーも回りを気にしながらの返答に耳を傾ける。

が口を開いた瞬間


「あ!来た来た〜!」

ちょうど魔法薬学教室に着いたところだった。
スリザリンの生徒がこちらを見てにやにやとうすら笑いを浮かべている。


「ほうらっ!あんたの事が載っているわよ?グレンジャー!」


パンジー・パーキソンが週刊魔女雑誌を投げてよこした。
受け取ると同時に教室の扉が開き、スネイプが入れと顎で合図する。
いつもならは一人、一番前のスネイプの机の前に陣取るのだが
新聞が気になったのでハリー達と一緒に後ろの方へ席についた。
スネイプが黒板を書くのに後ろをむいたのを見計らって、雑誌を取り出す。




[他の少年とは違う。だがやはり普通の少年だ。
ハリーポッターにはハーマイオニー・グレンジャーというガールフレンドを得て、
安らぎを得ていた。だが、このミス・グレンジャーは有名な魔法使いがお好みの・・・]




「何これ!偽りだらけもいいところじゃない!!」

は声を殺し拳を震わせ囁いた。
ロンは「だから言ったじゃないか!!」と声を殺す。
「あいつ!ホグズミードでハーマイオニーに絡んだんだ!!」
ハーマイオニーはクスリと笑って雑誌を放り投げ、実験で使う材料を広げはじめた。






「でも・・おかしいわね・・・」

10分後、ハーマイオニーは調合中の手を止めて顎に手をおいた。


「なんでこう・・・すべて知っているのかしら?」

「雑誌の内容のこと?」

「うん・・・だってあの時はあの女いなかったもの・・・」












「私語は謹んでもらいたいものですな。グリフィンドール10点減点」



冷たい声が背後で響いた。ザッと雑誌を取り上げ記事をみる。

「ほおう・・ポッターは自分の記事を読むのに忙しいらしいな」


スネイプの目がギラリと怪しく光る。は慌てて


「すいません!先生っそれ私が持ち込んだんです!?
だから・・ハリーは悪くないんです!!」

その発言にハリーは驚いて目を丸くした。


「ミス・・・・以後気を付けなさい」


スネイプはに優しく声をかけ、意地の悪い笑みでハリー見据えた。
教室中に聞こえるように雑誌を読み、一文ごと区切って間を空け、スリザリン生がさんざん笑えるようにした。
ははらはらしながらスネイプを見上げる。ハリーは顔を真っ赤にさせ、拳を震わせていた。
スネイプは新聞丸めると、ハリー達を嘲るように見下ろした。


「さて、君達をバラバラに座らせた方がよさそうだ。ウィーズリーここに残れ。グレンジャーはあっちだ・・ミス・は・・」

「先生!ここ空いてます!」


真ん中あたりに座っていたドラコが自分の隣の空席を指差して声をあげた。



「・・・・・ミス・は一番前の右端、ポッターも同様一番前の左端、我輩の前だ。さあ、さっさと移動しろ!」



スネイプはドラコの言葉を無視して、早く移動するように追い立てた。


(誰が貴様の横に座らせるかったわけがっ)


なにやら教授、第二試合の朝の出来事を根に持っている様子。
ハリーとの後からついてきて二人、いやハリーを睨みつけていた。
は不安そうな表情でスネイプを見るが、ちらっとを見ただけで視線を合わせようとしなかった。

(あぁ・・またハリーいじめる気満々ね・・)

スネイプがこういう態度の時は決ってハリーをいびる対象にする。
は横目で二人の様子を監視しながら作業をした。
やがて、スネイプがひそひそとハリーに脅しをかけているようだった。
はムッとしてスネイプを見るがあえてを見ないつもりらしい。


「そうくるなら・・・」


が小さく呪文を唱えると、の耳にスネイプとハリーの会話が聞えてくる。
どうやらよく聞える魔法を使ったようだ。



「・・・・と鰓昆布はどちらも我輩個人の保管庫のものだ。だれが盗んだかわかっておる!」


(あぁ・・たしか第二試合でハリーが使ったものだったけ?あっだからあの時セブ顔をしかめたんだ)


「なんのことだか僕にはわかりません」


(うっし!ハリーがんばれ!!)

2人のやり取りがしばらく続いたころ、地下牢教室の戸をノックする音がした。
スネイプが「入れ」と声をあげる。
入ってきたのはダームストラング校長のカルカロフだった。
カルカロフはなにやら落ち着かない様子でスネイプの机に向かった。
口を動かさぬよう周りを気にしながら耳打ちする。

「話がある」
「授業が終わってから―」
「ダメだ!いま話したい。セブルス、君が逃げられない時に君は私を避けている」
「・・・・・・・・授業のあとだ」

はずっと実験をしながら聞いていたが、チラッとスネイプをみた。
たいへん怒っているような表情で・・ハリーも気になるようで、軽量カップを持ち上げながら
横目で2人の様子を伺っている。
二時限続きの授業中、カルカロフはスネイプの後ろでウロウロしていた。

終業ベルが鳴る少し前。ハリーが瓶をひっくり返した。
たぶんわざとだとは直感し、ハリーと一緒に床を拭いた。
2人の視線はカルカロフとスネイプに向けられて。



「これを見てくれ・・こんなにはっきりと・・あれ以来・・・」
「しまえ!!」
「気づいているはずだ・・」
「あとで話そうカルカロフ・・・ポッター!ミス・何をしているのかね!?」

スネイプがとハリーが大鍋の影にかがんでいるのを見つけて声を上げた。
サッと立ち上がり、ハリーは雑巾をスネイプに見せる。

「瓶をひっくり返してしまったので、拭いていました!!」

カルカロフは不機嫌そうに地下牢から出て行った。
スネイプも怒り心頭でもたもたしていたら何をされるかわかったもんじゃない!!
ハリーはそう確信し、急いで道具をしまいの手を引っ張ってその場を離れた。




























はその日の夜もスネイプの部屋に訪れた―



「セブ〜・・・・ってわぁ!!」



彼の部屋に入るや否やいきなり抱きしめられ、目を見開く。
気のせいだろうか?
スネイプの肩が少し震えているように見えた。



「・・・・・セブ?」
「すまん・・・しばらくこのままで」
「・・・・うん」


きっと彼にとって辛いことがあるのだろう・・それを打ち明けてほしい。
でもきっとそれは・・まだ話せるものじゃないのだろうとは思った。
こんなにひどく辛そうな表情の恋人が、何を言わずに抱きしめてきて・・・
本当は授業のことを聞きたかったのだが、はその好奇心を飲み込んで
そっとスネイプの背中に腕を回した。










(いつかは・・話してくれるよね?)








スネイプはの体温を感じてひどく落ち着いた気分になった。
いつかは話さなければならないこと・・
だけど、今は話せるものでないこと・・
左腕が焼けるように痛む・・だけど・・・・・・



「つかまえていたいのだ」

「うん?」



「ん?」

「ずっとそばに」

「うんv」























寮に戻って自分のベッドに入ってからもはなかなか寝付けなかった。
きっとカルカロフのことなんだとぼんやりと思う。そしてきっとそれは・・・


「ヴォルデモートとつながりのあること・・・・」


は自分の精神のなかで会ったヴォルデモートを思い出した。
すべてを滅ぼすような赤い目・・・すべてを嘲るような笑い・・
小さく身震いをするとカポッと毛布を頭でかぶる。

「それでも信じているんだ・・いつかは話してくれるよね?セブ?」

毛布の中にの声が小さく反響する。
その問いに返事はなく。だけど、いつかは話してくれるような気がして
そっとは眠りへと落ちていった。


(明日・・シリウスおじさんに聞けばなんかわかるかな?)

































(セブ?・・・・・セブって誰よ!!)



のベッドを見つめながらハーマイオニーは心の中で叫んでいた。








スランプ期間に入ったかも・・・(滝汗)