目覚め
「余計な真似をするな・・・殺してやる」
あたり一面真っ暗で自分が今何処にいるのかもわからない・・
どこから聞こえてくる恐ろしい低い声・・・
は真っ暗な闇の中を無我夢中で走っていた。
後ろの方からその声が迫ってくる。
「邪魔者は殺す」
(いやだ・・!死にたくない!)
は必死に走った。一体どれほど走ったのか、この闇はどこまで続くのか・・・
ひたすら闇の中を走る。
(助けて・・!父さん!母さん!お爺ちゃん!!)
声がだんだん迫ってくる。背後に何かが蠢く気配がする・・・怖くて振り向けない・・
必死に走っているのに、なぜか自分の動きはとても遅くて・・
(助けて・・・校長先生・・・助けて・・・・・)
なにかがの腕を掴んだ。
「捕まえた・・・・」
(助けて・・・先生!)
「目覚め」
・・・・!!・・・・・・・・・・・!・・・・・・ミス・!しっかりなさい!?」
「!!??いやあっ!!!!」
ははじけたように叫び声をあげ、何かを恐れるように暴れだした。
「ミス・!落ち着きなさい!!大丈夫ですよ!ここは保健室です!!」
女性の声がしてはその女性にギュッと抱きしめられた。
「・・・・・・・マ・・マダム・ポンフリー?・・・・・・・」
は抱きしめられて我に返った。
保健室のベッドの中。
「・・・夢・・・・・?」
マダム・ポンフリーは「ふー」と溜息をついて、の頭を優しく撫でる。
「だいぶうなされてたわ・・・大丈夫?あなたは一週間も意識がなかったのよ?」
「・・・・!いっ一週間!?」
はすっとんきょな声をあげ、「こうしちゃいられない」と慌ててベッドから出ようとするが
「はう・・」
力が入らない。
「何をしているの!あなたはまだ安静にしてなくてはいけません!
怪我のほうは完治してるけど、あなたわかってるの?一週間も意識を取り戻さなかったのよ?
体力だってかなり落ちてるわ!」
そういって、をベッドに押し戻す。
は自分が意識を失う前のことを、必死に脳の裏側から探し出した。
そうだ・・誰がハリーの名前をゴブレットに入れたか、それを術式で調べようとしたんだっけ?
そして術式で使用する石がいきなり爆発して・・・・
「・・・っつ・・・」
は頭に痛みが走るのを感じ、顔を歪め頭をおさえた。
「ミス・?痛むの?」
マダム・ポンフリーが心配そうにの顔を覗きこんでくる。
は「大丈夫です」と弱々しく微笑むと、「そう」とマダム・ポンフリーはすくっと立ち上がった。
「あなたが意識を取り戻したとダンブルドア校長先生に報告しに行ってきます。
ちゃんと寝ているのですよ?」
そう念を押してマダム・ポンフリーは出て行った。
ぼんやりと天井を眺めながらはもう一度思い出してみる。
「そうだ・・・・石が爆発して、意識を失ったんだ・・・私・・・・」
「術式・・失敗かぁ・・・・」
は深い溜息をつくととてつもない眠気に襲われた。
は静かに目を閉じると、やがて深い眠りへと落ちていった。・・・・夢をみることもなく。
目が覚めたのは翌日の朝だった。
ふと見ると、ダンブルドア校長先生がベッドの横に立っていた。
「ダンブルドア校長先生・・・・・・おっおはようございます」
そう起き上がるに、ダンブルドアは申し訳なさそうな表情をする。
「すまなかったの・・・。お主に怪我をさせてしまった」
は慌てて首を振る。
「謝らないでください!元はといえば私が失敗したのがいけないんです!
先生達に迷惑をかけてしまいました・・・・ハリーにも・・・」
そう俯くの頭をダンブルドアは優しく撫でる。
ダンブルドアは思い出したようにに語りかけた。
「ハリーのことはもう気にしなくてよい・・・先日、第一試合が行われての、ハリーは見事その試合を勝ち抜いたのじゃよ」
そういってにウインクする。
は改めて、自分がそんな長い間意識がなかったのかと実感した。
「そうですか・・・第一試合通過したんですね、ハリー。・・・・・見たかったな・・・」
そう残念がるにダンブルドアはにっこりと微笑む。
「マダム・ポンフリーによれば2・3日ここで静養するようにとのことじゃ。
何・・・暇はせんじゃろ・・・なぜならば−」
「!意識を取り戻したの!!!???」
ダンブルドアの言葉を遮るように声がし、ハリー・ロン・ハーマイオニーが飛び込んできた。
ハーマイオニーがに抱きつく。
「あぁっ!!あなたが意識を取り戻さなくてどんなに不安だったことか・・・・本当によかったわ・・・」
そう目に涙を浮かべて微笑むハーマイオニーに「心配かけてごめんね」と微笑む。
ハリーがの横に立った。
「・・ごめんね、僕のせいでこんな酷い目に・・・・」
そう辛そうな表情のハリーには「気にしないで」と微笑んだ。
ロンがハリーの隣に立ってに「痛む所ない?大丈夫?」と不安げに聞いてくる。
どうやらハリーとロンの仲は元に戻ったらしい。
そんな嬉しさと三人が来てくれた嬉しさでは飛びきりの笑顔をみせた。
そんな四人の様子を、半月眼鏡の奥で優しく見つめダンブルドアは静かに保健室から出て行った。
「なぜならば、お主が目を覚ますのを多くの人間が待っていたのだからのぉ・・」
それからが寮にもどるまで3日間、多くの人がの見舞いにきた。
ハリー達三人は朝・昼・晩と来てくれ、第一試合の内容をきかせてくれたり、出れない授業のノートを取ってきてくれたし、
フレッドとジョージも一日何回も訪れ、を笑わせてくれる。ジニーやネビル、フィネガンや先輩のアンジェリーナなどをはじめ
多くのグリフィンドール生が毎日のように訪れた。だが、見舞いにきたのはグリフィンドール生だけではない。
スリザリン・ハッフルパフ・レイブンクロー・・・驚くことにダームストラングの生徒まで・・・・
ドラコはいろんな色に変色するカラフルなキャンディが入った瓶を差し入れしてくれ、(ハリーたちはものすごい形相でドラコを睨んでいたが)
クラッブとゴイルはホグズミードで買ってきたとお菓子の詰め合わせを持ってきた。
ダームストラングの男子生徒数人が来たのは少し驚いたが、彼らが魔法で保健室を光る花でいっぱいにした時、
あまりに綺麗さには驚きの声を上げた。
生徒だけではない、ゴーストやマクゴナガル先生なぜかフィルチと訪れ
あっという間に三日間が過ぎた。
翌日には寮に戻っていいとマダム・ポンフリーに言われた夜、は皆が来てくれたことに心から感謝した。
それと同時に一つの不安がよぎる
「スネイプ先生は・・・来てくれなかったな・・・って来てくれるわけないか・・・」
そう淋しく笑う。ハッとしてあたりを見回す。マダムポンフリーは保健室の奥で何か棚の整理をしていた。
(よかった聞かれなくて)と胸をなでおろし、はころんとベッドに横になった。
一週間前・・・術式の時にスネイプと顔を合わしたが、はすぐ目を逸らしてしまった。
本当はスネイプに謝りたかった。そしてまたいつものようにスネイプの部屋へ遊びに行きたかった。
「もう・・・・だめかな・・・・」
そうあきらめかけた時、
「ミス・。いいか?」
の中で冷たい物が走った。
そこにはムーディがたっていた。
「ムーディ先生・・・?」
は顔が強張りそうになるのを必死にこらえ、上体を起こした。
コッコッコッと義足の乾いた音がして、ベッドの横のイスに腰をかけるムーディ。
「具合はどうだ?」
そうぶきらぼうに聞いてくるムーディには「だいぶいいです」とおそるおそる答える。
「そうか」と何か考えごとをするムーディ・・・それは普通の目で。もう一つの魔法の目は
真っ直ぐとを見据えている。
「時に・・ミス・。術式でなにかわかったことがあるか?」
は一瞬、なぜムーディが術式のことを知っているのかと疑問に思ったが、
ムーディは教師だ。おそらくマクゴナガル先生に聞いたのだろうとは首を横に振った。
「いえ・・何も・・・何もわかりませんでした・・・・」
「そうか・・・では。ひとつ忠告しておこう」
ムーディの両目が光り、ベッドに手をかけ身を乗り出す。
ギシッとベッドが軋み、は体の中が冷たくなるのを感じた。
「自分の命が惜しかったら、余計なことに首を突っ込まないことだ・・・・
己の力を高く見すぎているんじゃないのか?え?」
普通の目と魔法の目がをぎらぎらと睨む。は震えながらも
少し、ムーディを睨みつけた。
「わっ私は!友だちの・・ハリーの力になりたかっただけです!・・・」
「ふん、自分の非力さを棚にあげてよく吠える。」
「・・・・なっ!」
思わずの目から涙が溢れた。ムーディは傷だらけの顔で意地悪く笑う。
とても気味の悪い笑い方だ。は恐怖に駆られながらもしっかりと布団をつかみ、
まっすぐムーディを睨み返す。それでも涙は止まらない。ぽろぽろと零れていく。
「いいか、良く聞け。まだまともな魔法を使えない未熟者が、偉そうに術式などというくだらん戯言に
教師の手を煩わせるな。ここは魔法使いの学校だ。なにが陰陽師だ・・貴様なぞ−」
「それくらいでやめたらどうかね」
ムーディの声を遮るようにして、聞き覚えのある低い、よくとおる声がした。
「スネイプ・・・」
ムーディは魔法の目をぐるんと回転させ保健室の入り口を見て唸った。
そこにはスネイプが腕を組み不機嫌そうに立っていた。
「ミス・はまだ本調子ではないであろうが。少しはいたわってあげたらどうなのかね」
ムーディは体ごとスネイプに振り返る。しばらく睨みあう二人。
やがてムーディはに振り返って「大事にしろ」とそっけなく言い放ち、保健室から出て行った。
スネイプはムーディが出て行くのをずっと睨みつけていたが、ムーディが完全に出て行くと少し焦った足取りで
の元へ早足で歩みよってきた。
「いやな思いをさせたな・・」
そういって、ぽろぽろとの頬をつたう涙を拭ってやる。
「スネイプせんせえ〜・・・・」
はしゃくりあげながらスネイプのローブをそっと握り締めた。
そんなに目を細め、頭を撫でてやる。
「ミス・・・・その・・・具合の方はどうなのかね・・・」
スネイプは少し躊躇しながら尋ねた。
「もう・・大丈夫です・・・・・・・・・先生・・・・」
「そうか・・・・・よかった・・・・・」
スネイプは自分のローブを掴んで離さないがとても痛々しく思えて、
胸が痛んだ。優しくずっと頭を撫でてやる
いつの間にの表情が険しいいものから穏やかな表情に変わっていた。
もう大丈夫だろうと、頭を撫でるのをやめる。
すると、は何か物言いたそうな表情でスネイプを見上げてきた。
「あ・・あの・・スネイプ先生・・・・」
スネイプはが何を言いたいのか直感した。首を横に振り、の口に人差し指をおいて
の言葉を制す。
「我輩から言わせてくれ・・すまなかった・・君を怒鳴りつけるつもりはなかった・・」
も首を横に振った。
「私のほうこそ・・先生に酷いこといって・・ごめんなさい・・」
そうシュンと俯く。スネイプは「あー」と唸って途切れ途切れに
口を開いた。
「あー・・・ミス・・・・その・・なんだ・・君がよければ・・・・
いや・・・明日からでも処罰を受けに我輩の部屋に来てもらおうか」
そういって、少し意地悪く笑って見せる。
目をぱちくりさせているに追いうちをかけるように
「ここ二週間、君は処罰をさぼっているからな」
は一瞬、呆気に取られた顔をしたが、プッと吹き出して
スネイプににっこりと頷き微笑んだ。
その翌日、
は退院してスネイプの授業に出てきた。
そしてその日の夜、久しぶりにはスネイプの部屋の扉を叩く。
「先生ー!です!」
「入りたまえ」
長い・・・・長すぎ・・・
ひーなんとか仲直り(?)そしてやっとこさムーディと会話。
めっちゃくちゃいやな奴だな、おい!(書いてるの、お前)