使い獣


















「先生!この調合の3番目の手順なんですけど・・・・」



「あぁ・・・それはだな、ミス・・・・・・」



「おい・・・に近づきすぎだ。アホンダラ」

















































「ミカエル・ネルファイズ〜陰陽少女番外編〜」



















夕食を終えて、はスネイプの実験室で好きな実験をやらせてもらっていた。

本来ならば、処罰という名目で来ているはずなのだが・・・当の本人達はすっかり忘れているのか、

は、今では毎日のように訪れていた。

一度、毎日来てはスネイプの仕事の邪魔になる・・迷惑かけるからと、魔法薬学の教室の私用許可を願い出た。

許可が下りれば、一人で実験している時誰かに見られても咎められ事はないし、なによりスネイプの負担をかけさせたくない。

だが、スネイプは「気にすることはない」と言って、教室の使用許可を出さなかった。

「自分も再確認したいから」とスネイプは言うが、それでもは「先生のお仕事が長引いてしまう」と表情を曇らせた。



(だけど、スネイプ先生が隣にいてくれると、実験がはかどるんだよな・・・)



はそうぼんやり考え、まあ・・先生がそういうならいいかと頷いた。

一方、スネイプはというと「毎日といたいのに、どうして一人、実験なぞさせられるか」である。

もっといえば、片時も離れず傍にいたい。無論、そんなことはできないが(授業あるし・・)

だから、せめて、この就寝までの時間をと一緒に過ごしたい。







なのに・・・・



例の如くあの

忌々しい凶暴鳥のについてきて、

2人・・いやスネイプを見張っていた。


















スネイプは「近づくな」と唸るをチラッと睨むと、何事もなかったようにに説明をはじめた。

















































「先生!今日もどうもありがとうございました!!」





そう、元気良くお辞儀するにスネイプは頬が緩みそうになるのを感じた。





「あぁ・・・しかし・・本当に寮まで送らなくていいのかね?」



「おうよ・・・俺様がついてるからな!安心だぜ!」





「・・・・・・・・・・ミス・気をつけて戻るように」



「んだと、てめー!」に押さえつけられながら、はぎらぎらとスネイプを睨んだ

スネイプは「はっ」とを嘲るように笑うと、もう一度に「気をつけて戻りなさい」と優しく呼びかけた。



の姿が見えなくなると、スネイプは扉を閉めソファにドサッと座った。

チラッと机を見やると、採点しなくてはならないレポートが三つほどの山になり置かれている。

それを見ると深い溜息とともに、どっと疲れが押し寄せてくる。

スネイプは珍しく、机には向かわずそのままソファへ横になった。





「少し・・休んでから見るとしよう」





そんな行動にスネイプ自身が驚いていた。普段の自分なら多少疲れていてもレポートに目を通し、

注意深くミスを探し出して高得点者がでないように努めているはずだ。

特にグリフィンドール生のレポートは。今回もグリフィンドール(とスリザリン)のレポートだ。

もっというと、ハリーがいる学年のレポートだ。真っ先に目を通し、できる限り点数を減らしてやる。

スネイプにとってハリーの学年・・四年生のグリフィンドール生は全くもって不愉快な連中の集まりだった。



ハリー・ポッターのことは言うまでもなく、でしゃばりでじゃじゃ馬なハーマイオニー・グレンジャー、

いつもいつも余計なことをいうロナルド・ウイズリー、くだらん色気ばかりに気を使い、

実験の内容を把握しないパーバティ・パチルとラベンダー・ブラウン・・・・



そして・・・ネビル・ロングボトムのこともハリーポッター同様言うまでもなく。





は・・・違うがな・・・」






スネイプは少しずつ遠のく意識の中で、の顔を思い浮かべた。

の魔法薬学への授業態度は・・スリザリンよりも・・いや、全校生徒の中で一番いいかもしれない。

ほとんどの生徒がスネイプを恐れているせいもあるのだろうが・・・・

ますます、意識が遠のいてきてスネイプはの顔を思い浮かべたまま意識を手放した。





























































夢を見た・・・・・・・それは昔の記憶・・・・・暗黒に覆われた日々の









































「おい!セブルス!これ苦いぞ!!!」





「五月蝿い、黙れ、早く飲め、そして帰れ」





「・・・・・・やろう・・・・今度の魔法薬学の新任教師はろくでもねえな・・」





ホグワーツの自分の部屋でイスに腰掛けていた一人の男がゴブレットを手にしながら唸った。

短めの髪型に茶色の髪、そして茶色の瞳。左耳に2〜3個のピアスをつけて・・・・

年は20歳ぐらいで・・・



スネイプはその男をじろっと睨んでさっさと飲めと威嚇する。そんな自分も今とは違う・・若い頃だった。





「はは・・・僕の気持ちわかるでしょ?ミカエル・・・ね、この苦さなんとかなんない?セブルス?」





「ならん。ルーピン、貴様もさっさと飲んで帰れ」





スネイプはソファに深く座るルーピンを睨んだ。

スネイプとルーピンそしてミカエル・ネルファイズは寮は違ったが同じホグワーツの卒業生であった。

今年からスネイプは魔法薬学の教科担任となる・・・





「我輩は研究の最中なのだ。用が済んだらさっさと出て行ってもらおう。大体、なぜ我輩が

貴様らに薬を調合せねばならんのだ」





「やかましいわ、ボケ。まともな薬作れるのはお前だけなんだから仕方ねえだろ!

くそまじくても飲んでやってんだ、ありがたくおもえ!」





ミカエルはそう吐き捨てると、自分の鼻をつまみ薬を流し込んだ。飲み込むとミカエルは

「う・・・やっぱりまじい・・」と顔を歪める。ルーピンも鼻をつまんで薬を飲み干す。


ルーピンは人狼だった。、スネイプが作った脱狼薬で狼と化するのを抑える必要があったのだ。



ミカエルは・・・・・ただの風邪である。





スネイプは深々と溜息をつき、飲んだらさっさと出て行けと二人を睨む。

だが、2人は薬を飲んだ後ものほほんとソファで寛いでいた。しまいには



「おい!セブルス!茶ぁ出ないぞこら」



「あ・お茶うけもないねぇ・・セブルスー」



とスネイプにたかる始末・・・・・・・・・





























































バタン!









「セブルス!ミカエル!リーマス!いるか!!」





一人の男が荒々しく入ってきた。







「おー!ハヤト、どうした?」



「何かあったの?」





「・・・・・・・・・・・・(またうるさいのが・・・・)」



































































































「・・・・・・・・ジェームズとリリーが殺された・・・・・・・・・」



















































急に視界がぐるりと歪み、場面は自室から小高い丘の教会に移った。







彼らの葬儀には多くの人間が参列した。

話を聞くと守り人であったシリウス・ブラックがヴォルデモートに寝返り、2人を売ったという・・・

リーマス・ハヤト・ミカエルは断固としてそれを否定した。我輩は・・・・・







そう・・あの日自分がどう思ったのか、思い起こそうとしようとした瞬間、場面は再びホグワーツの自室になっていた。

ポッター夫妻が殺されてどれくらいたったのだろうか・・・定ではないが、我輩は一人実験をしていた。







コンコン・・・・





?・・・今誰か扉を叩いたか?





コンコン・・





耳をこらしていると小さいノックがした。眉間に皺を寄せながら「誰だ」と扉を開けると・・・









「!?ネルファイズ!!貴様!一体・・・!!」





「あー・・・うっせ・・・響くんだよ・・・う・・・」





そこには全身怪我だらけのミカエルがやっとの思いで立っていた・・・・・

スネイプは慌ててミカエルを部屋にいれ、ソファへ横にさせる。

怪我の手当てをしようとローブを脱がした瞬間・・・・・・





「!!??・・・・・ネルファイズ・・・・貴様・・・腕が・・・・」







扉を開けたときはローブで隠れて見えなかったが・・ミカエルの右腕は肩からなくなっていた。

赤い血が床に滴り落ちる・・・ミカエルは「へへ」と薄く笑うだけ。スネイプは焦り、ミカエルのへらへら笑う態度にイライラしながら







「何があった!」



と問うがミカエルは「うっせ・・・」と弱々しく悪態つくだけ。

とにかく止血をしなければと杖と大量のガーゼ・包帯を用意し、ミカエルの肩に杖を向け止血呪文を施す。







一瞬、血が止まったかのように思えた・・・・が、グシャッと鈍い音とともに再び血があふれ出す。







「ぐわあっ!!」



ミカエルが苦痛の悲鳴をあげる。





「ネルファイズ・・・・貴様・・・まさか!」









「ヴォルデモートじゃ・・・・」





「校長!」





背後で声がしバッと振り向くと、心痛の表情でダンブルドアとマクゴナガルが立っていた。





「ミカエル・・貴様・・・」







いまや土気色だったスネイプの顔は真っ青になっていた。ミカエルはヴォルデモートに立ち向かったのだ。

いや・・・・正しくはヴォルデモートの配下・「死喰い人」達に・・・ヴォルデモートはポッター夫妻の子供・ハリーにかけた呪文が跳ね返り、

姿を消した。死んだのか・・定かではないが・・・おそらくまだ・・・生きているだろう・・・

ミカエルは「闇払い」として死喰い人を捕らえる役職についていた。

ミカエルは優秀な「闇払い」で今まで負傷して帰ってくることはなかった。それがなぜ・・・・













「へっ・・・奴らの幹部をようやく追い詰めたのによ・・・・それに気をとられて・・背後から近づく奴らに気づかなかったなんて・・

だせえ・・・・・俺一人・・のこのこと生き逃げ帰ってきやがって・・・この腕は呪いだ・・・止血できねえ・・・

止血呪文を施すたびに何度も切り落とされてる気分だぜ・・・・」







そう自嘲笑いを浮かべるミカエルにスネイプは例えようのない胸騒ぎが起こる。





「・・・呪いを消す・・・方法は・・・・・?」





そう呟くスネイプに、ダンブルドア校長は首を横に振り、スネイプの肩に手をおいた。



「残念ながら・・・セブルス・・・死の呪文同様・・反対呪文は存在しない・・・・

お主が得意とする魔法薬をもってしても・・・無理じゃろう・・・・・」





ダンブルドアの言葉にスネイプの中に何か重い物がドサリと落ちた。それでも視線はミカエルに向けられて。

















それでは・・・・その先を意味するものは・・・・・・・・



















「あぁ・・・・俺は死ぬな・・・・」







スネイプの表情を読み取り、ミカエルは微笑した。









「何故・・・・・貴様は笑っていられる・・・・」







スネイプの声が微かに震えていた。







「死したらその先には何もないのだぞ・・・」















スネイプはいつの間にかギュウッと拳を握っていた。

ミカエルはフッと目を閉じて何か思い出すように再びゆっくりと目を開いた。

その表情はとても穏やかで・・・全身血だらけでそのうえ腕がもがれていることを忘れているように。





















「・・・やりたいこと・・・・まだたくさんあったんだけどな・・・・」



「だったら、しっかり意志を強く持て・・・」



「あ?無理だってーの。あほだろ?お前」



「最期の最後まで・・口の減らぬ奴だな・・・」



「・・・ってか、お前最期くらい優しいこと言えよ」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまん・・・・浮ばぬ・・」



「まー・・・・優しい言葉を口にするセブルス・・・・怖すぎだけどな・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・阿呆が」



「・・・へっ・・・・ハリー・・・・・見守ってやれよ・・・・・」



「・・・・・・・・考えておく」





そう言うスネイプにミカエルは一瞬眉を潜めるが・・・・スネイプの真剣な眼差しに

ヘッと笑う。「任せておけ」か・・・・ミカエルは安心したように目を閉じた。









「ま・・・・・ひとまず先にジェームズ達の所へ行くぜ?おまえ・・・うっとしいからまだ来んなよ?

そうだな・・・・よぼよぼのジジイになったら来ていいぜ・・・・
そん時はてめえの白髪姿見て・・・・・笑って・・・・やる・・・・か・・・らよ・・・・・」

















そしてミカエルはそれ以上何も言わず、動くこともなかった。









「何故・・・・」





「セブルス・・・」





フルフルと肩を揺らすスネイプにダンブルドアはスネイプを優しく抱きしめた。





「セブルスよ・・・決して「自分が替わりになれば」などと思うのではないぞ?お主は生きなければならん・・

自分のためにも・・・ハリーのためにもな・・・・」









ダンブルドアのその言葉にスネイプは多くの意味を悟った。



今までの自分

今の自分

これからの自分











やがて、これから進むべき自分の道を見据えたようにスネイプはダンブルドアの目を見つめ、頷いた。















































































































































「・・・・・・・・・・朝か・・・・・・・・・・今頃こんな夢を見るとは・・・」





どうやら仮眠を取るつもりが、朝まで寝てしまったようだ。

スネイプはゆっくりと体を起こし、ソファの背もたれに深々と寄りかかる。







今さっきまで見てた夢は・・・昔現実に起こった出来事・・・・夢ではない・・・



スネイプは深い溜息をついて額に手を置いた。



夢ではない。目を閉じればあの日の光景が昨日のように浮んでくる。







あの日、ミカエル・ネルファイズという人物は死んだ。

そして、その数ヵ月後。ハヤト・がスネイプの元を訪れた。





一羽の鷹を連れて・・・・・・・・





































































































































「先生!?そろそろ片付けていいですか?」



「あぁ・・・そうしてくれ。ミス・







その日の夜もはスネイプの所に来ていた。

が手を洗いに洗面室に入っていくのを確認すると、

スネイプの目の前にとまっていたに小さく呟いた。




「今朝・・・夢を見た・・・」



「あ?」



「昔のな・・・・お前が人間辞めた時の夢だ」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好きで辞めたんじゃないけどな・・・」



そうは珍しくスネイプの肩に飛び乗った。

そんなの頭をスネイプは軽く撫でる。





「だが・・・・その数ヵ月後・・鷹になってきたのには驚かされたがな」







ミカエル・ネルファイズは確かにあの日、スネイプの部屋で息を引き取った。

だが、魔法使いであり陰陽師でもあったハヤト・に鷹として転生させられたのである。





「あぁ・・・俺も目が覚めた時はそりゃ驚いたぜ!死んだつもりが思いっきり現世だし、しかも鳥になってるしな」





そう笑うにスネイプも苦笑いをする。

ハヤトは自分の得た転生術式の修行成果を試したくてミカエルの魂を使ったのであった。

よくよく考えてみれば、死者を冒涜しているとしか思えないその行為。

有無を問われることなく転生させられたミカエルは最初こそ怒り狂ってハヤトを攻撃したが、

時が経つにつれ、家の守護獣としてその役目を担うことにしたようだ。

そして、家の宝であるを守るために・・・・・







「貴様はずっとその姿のままなのか?」



スネイプは今まで聞いてみたかった言葉を言った。ミカエルはこのまま鷹として、

家の守護獣としてその命の灯を消してゆくのだろうか?

ミカエル・・・はスネイプの肩から飛び降りながら言った。





「まあな。俺の体もうねえし・・・ただ・・・一応寿命ってもんもある・・・

ハヤトが死ぬ時、俺も死ぬ。

俺はハヤトの術によって転生させられたんだ。ハヤトが死ぬ時、俺に掛けられた術も効果を失う。

そう、必然的に俺の魂は抜けてこの体は普通の鷹となる」







「・・・・・では・・・・まだ相当しつこく、のうのうと生きてそうだな」





「てめえ・・・・・突付くぞ・・・・・・」





を嘲るように笑うスネイプにはケラケラ笑いながら言った。

















































「先生、片付いたのでそろそろ寮に戻ります!!帰ろう!?」





そうにこやかに笑うにスネイプは立ち上がって廊下まで見送る。





「気をつけて戻りなさい、ミス・。・・・・・・・・・お前もな・・・・・・







「おうよ!」







いつもなら悪態ばかりつく2人の大いなる変化には「明日雨かな?」と首を傾げたが、

まあいいかと軽い足取りで寮へと戻っていった。





























昨晩見た夢は、現実に起こったもので夢ではない。

だが、これから歩いていく未来に今の自分がどう写るのか・・・・





そのためには・・・先へ進まなければ・・・・・

今の幸せを・・微笑んでみれるように・・・・・・・・・
















「陰陽少女」初の番外編!!

ひとまずこれで、が何者か・・・・ようやく明らかに(笑)

そしてこれからガンガン!進みましょう!!いい加減本編に入れや自分!