術式
「それでは変身術の教室をお使いなさい」
「ありがとうございます!マクゴナガル先生!」
「術式」
夕食の途中、が教員席に来て寮監であるマクゴナガルに、就寝時間までの間教室の使用許可を求めていた。
なにか授業で疑問があったのだろうかと、横目で彼女をの様子を伺うがどうやらそうではないらしい。
マクゴナルは中央に座っているダンブルドアの横に座っていて、我輩は教員席の一番外れに座っているので
話の内容は聞こえない。
気になる・・・・非常に気になる・・・
彼女の表情が心なしか強張って見える・・何かあったのか?
ん?許可がおりたのか・・
マクゴナガル先生に一礼をして大広間から出て行くを見つめながら、スネイプは彼女が何をするのかとても気になった。
(まっまさか!?他の男と一緒じゃないだろうな!?)
ハッとして彼女の後に出て行こうとする生徒(特に男子生徒)がいないかと目をこらすスネイプ。
あースネイプ先生?目がすんごい怖いです。(怯)
どうやら彼女以外に出て行った生徒はいないようだ・・・とハーマイオニーがカバンを抱え出て行ったが、
の後を追っているわけではなさそうだ・・。スネイプはホッとしながらものことが気になってしょうがない。
先生、重症ですねv
一方のはというと、男子生徒・・というより・・人間の男というより・・・獣の男(解釈の仕方によってはたいへん恐ろしい表現です)
・・もといオスといた。
「珍しいな。が術式の練習をしたいというなんて」
術式の準備を整えるを眺めながら、使い獣のは言った。
[あまり好きではないだろう?術式は]と付け足すに苦笑いしながらは答える。
「うん・・・苦手だけどね。こっちにきてから陰陽の技式やってないから、感覚を忘れないようにって」
[いい心がけだな]と頷くににっこり微笑む。・・・が本当はあることが気になって術式をやる。
そう・・ム−ディのことだ。
一度は気にせず学校生活を楽しもうと思ったが、食事の時や廊下ですれ違う度に体中に冷たいものが走る。
スネイプにいびられる恐怖感ではなく、もっと重いような・・なんともいえない恐怖感・・
「よし・・・準備はできたわね・・・・下がっていてね?」
机と椅子を壁に寄せ、中央にできた広い空間に作られた小さな簡易の祭壇。
四方の隅には白い塩の小山が置かれ、が調合した香がほのかに漂う。
中央には大きめの盆が置かれていて、そこに静かに聖水を満たしていく。
[久々の技式だからな・・・少し感覚とりもどさなきゃ・・]とは心の中で呟き、
両手で印を結び、日本語で呪文を唱えた。が呪文を唱えると同時に盆の中の聖水が静かに波立ってくる。
「・・解・写・念・・・”ハリーポッター”・・・・」
が呪文の最後にそう唱えると同時に、懐から人型の白い紙を取り出し念をこめ盆に浸す。
すると白い人型の紙はみるみるとオレンジ色に変わった。
「ほう・・・ポッター・ジュニアもオレンジ色か・・・友好と温かさ・・そして何をも恐れない勇気を持ち合わせた人物か」
教壇にとまりながら盆を覗き込んでいたが言葉を漏らした。
「ハリーのお父さんもオレンジ色だったの?」
そう振り返るにニッコリと頷く。
は鉄箸で人型の紙をすくうと、再び懐から人型の紙を取り出す。
「ロナルド・ウイズリー」
それから何人もの名を人型に念じてみた。ロンもすこし蛍光色のようなオレンジ色。
ハーマイオニーは冷静さを持ったアクアブルー。
フレッドとジョージは賑やかなマーブル色だし・・・ドラコは傲慢な銀と赤のマーブル。
おもしろ半分でやってみたスネイプは以外にも薄いオレンジだった。
「・・・・・・・?温かいか?・・・・・」
思わず口に出たその言葉には声を出して笑った。
そして、は最後の一枚に念じた・・・
「マッドアイ・ムーディ」
「・・・・な・・・なにこれ・・・」
は盆をただ呆然と見つめていた。
夕食を終え、スネイプは変身術の教室へと向かう廊下を行ったりきたりしていた。
彼女が何をやっているのか、一人なのか誰かといるのか・・・それが男なのか・・・
いつもより一層に深い皺を眉間に作り、どことなく焦った表情のスネイプ。
彼がまさかのことで悩んでいるとは誰も想像できないだろう。
彼の傍を通る生徒はまたなにかの減点だろうと、足早にその場を通り過ぎて行く。
そんな心境だったのはスネイプだけではなかった。
実はが大広間から出て行くとき、何人かの生徒が彼女のことを目で追っていたのである。
「彼女は何しにいくんだ?」
皆、の後を追って行きたかったのだ・・・・が!
その後、図書室へ向かうハーマイオニーが大広間から出る際にくるりと振り返り・・・・・
ドス黒い微笑みを大広間に向けたのである。(スネイプは見てなかった)
そう・・・
「私のに手ェ出したらどうなるのか分かってるの?」
の微笑み。
実をいうと、がホグワーツに来てから何人もの生徒が彼女の気を引こうと近付いてきたのである。
(始まって三日間で男子生徒47人・女子生徒・29人。ほとんどが毎日声掛けにくる。[ハーマイオニー極秘書から抜粋])
恋愛方面にはすんごいうといはご丁寧に寄ってくる生徒に微笑み返す始末・・・。
その微笑でノックアウトされさらに言い寄ってくる輩。だがは全然気づかない。
ここまできたらさんはかなりのボケ人間・・・でも仕方ない、はほとんど陰陽師の修行、修行で
こちら方面はまったくの未熟者なのだから・・
そんなの姿に、ハーマイオニーは絶句した
「大変!変なのに引っかかってしまうわ!とくにマルフォイ!!」
というか彼女自身、のことを気に入っているので他の生徒となんら変わりないのだが・・・・
とにかくに近づく者は全て黒い微笑み呪いをかけているハーマイオニー・・・
姐さん、怖すぎです。
いまだ躊躇しているスネイプの耳に、彼の機嫌をさらに損ねる会話が飛び込んできた。
「なーの所行ってみようぜ?」
と意気揚々と話す、レイブンクローの男子生徒。
(・・などと慣れなれしく呼びおって!)
「うん・・でも彼女、なにかの予習でもしているんじゃない?邪魔したら悪いよ・・」
と返す、同僚の男子生徒。
(全くだ、彼女が勤勉に励んでいたら邪魔であろう)
「だったら俺達が教えてやればいいじゃないか!?」
(・・む・・)
「それもそうだな!」
と男子生徒2人が、何やら意味ありげにアイコンタクトをしているのをスネイプは見逃さなかった。
バッとその生徒の前に立ちはだかり、ギロリと睨みつける。生徒はヒッと一瞬悲鳴をあげ、固まった。
「何をしている・・もうじき就寝時間だ。寮に戻れ」
そう極寒地並のオーラを漂わせ、言い放つ。
2人はガタガタと震えながら勇敢にもスネイプに反論した。
「あっあの・・僕達、ミス・を呼びに行くところで・・・」
その勇敢なる反論はスネイプをさらに逆上させる。
「ミス・は寮監の許可を取っており、じきに寮監が自ら迎えに来ることになっておる。
貴様ら・・・さてはミス・を迎えに行く口実をたて、何か企てる気だな」
必死に「ちっ違います!」と首を振る二人にスネイプは問答無用、一人50点計100点の減点をし、
寮に戻るように指示した。哀れレイブンクロー・・そして職権乱用!スネイプ教授!!
己の恋路のためなら手段を選ばない狡猾さ!さっすが!スリザリンのドン!
逃げ帰るレイブンクローの生徒を一瞥し、スネイプはのいる教室へ行こうか迷ったが
レポート採点の仕事がまだ残っていたことを思い出し、自室へと踵を返していった。
「ミス・?顔色が良くありませんね・・」
やがて迎えに来た、マクゴナガル先生がの顔を心配そうに覗きこんだ。
は「えっ」と顔をあげ、
「大丈夫です!しばらくやっていなかったのでちょっと疲れただけです・・・」
そう、にっこりするにマクゴガナル先生もにっこり微笑み「では、寮に戻りましょう」と
2人(+一匹)と教室を出た。何事もなかったような笑顔でマクゴガナル先生と話すを
は怪訝そうに見つめていた。