「ねえ!セブルス見てみて!子犬拾ったの!」
「・・・・・・・ほう?」
「?どうしたの?」
+犬+
地下牢の研究室で薬の調合しているスネイプは、ニコニコと嬉しそうに戻ってきた
助手でありそして恋人であるのに優しく微笑むと、が抱いている子犬に視線を写し嫌悪感を
押し出した表情に変わった。
そんなスネイプの不機嫌さには不思議そうに首を傾げて、自分が抱いている子犬とスネイプを交互に見比べる。
「セブルス、犬嫌いだった?」
「いや・・・」
動物は嫌いじゃなかったはずよねと思い出しながら聞けば、いまだ子犬を睨みつけている男。
この子犬になにかあるのだろうか・・・そう不思議に思い口を開きかければ
それより先に深く低い声が奏でられた。
「その子犬が気に食わぬ」
「なんでー?かわいいのにー」
キリサが愛し気に抱いている子犬は真っ黒で腹が立つほどにに擦り寄り、目の前に立つスネイプに唸っていた。
スネイプの頭の中にたとえ記憶でも抹消しておきたい人物が横切る。
「その黒さ、態度、尾の振り方、だらしないほどの舌の出し具合。
まさにあの馬鹿犬を思い出させて苛つく」
「あのね・・セブルス・・・」
腕を組みの腕の中にいる子犬を呪い殺すかの勢いで睨みつけているスネイプに
そこまで恨んでいたのかと呆れたように溜息をつくと、はそっと子犬をスネイプに抱かせようとした。
しかし、尻尾の振り方までチェックしているとはさすが教授だと心の中で笑ってみせる。
「シリウスはこんなに小さくないよ?ほら!こんなにかわいいのに!」
「ふん、あの馬鹿犬そっくりだ」
「クルルル」
カプ
「あ;」
「ほおう?」
子犬の頭を撫でようとしたスネイプ手に、子犬が噛み付いている。
に顔が一気に青ざめ、スネイプはピクリと口端が歪んだ。
「この、野良犬無勢が!」
「わー!!セブルスーだめえ!!」
ザッとの手から子犬を奪い取ると、ソファに投げ下ろし杖先を子犬に向けた。
慌ててがその腕を羽交い絞めにする。
「!放せ」
「だめだって!!その子は子犬だよ!シリウスじゃないの!
というか例えシリウスでもそんなことしちゃだめ!!」
はメッとスネイプを睨みつけると、そっと子犬を抱き寄せた。
「怖かったねーもう大丈夫よ」と優しく撫で付ける様にさらに腹が立つ。
子犬はさも怖かったというように「くうーん」と泣きながらの・・・・・
の・・・・・
胸に擦り寄った
その時だ、スネイプと子犬の視線がカッチリと合わさった。
そしてニヤリと子犬が笑ったのだ。
こいつ!やはり奴だ!!
グッと杖を握る力がこもるのを感じ取ったはサッと立ち上がると、
真正面からスネイプを睨みつけた。
「もう!!セブルスったら。この子は何も悪いことしてないのよ!!」
「。それを放しなさい。」
「イヤよ!放したらセブルスこの子になにするかわかったもんじゃないわ!!」
「無論。抹殺する」
「余計ダメよ!!この動物虐待もん!!」
「煩い!それをよこせ!!」
「絶対イヤ!!頑固者!」
声を荒げるスネイプにも声が大きくなる。
どうしてこの人はこうなのか。
「セブルス、この際言わせてもらうわよ。あなた、ちょっと物事に執着しすぎだわ!
シリウスのことを嫌うのはまあしょうがないとして、この子には何の罪もないのに!!」
「ふん、何とでも言え。それをよこせ」
「イヤって言ってるの!!もう〜分からず屋!!」
「やーお取り込み中のところ悪いねー」
「何の用だルーピン」
「あれ?どうしたんですか?お薬ですか?」
キッと睨みあう二人にのんびりとした声がして振り返れば、戸口にルーピンがにっこりと
微笑んで立っていた。さも面倒臭そうに声をかけるスネイプに、は子犬をしっかり抱きかかえ
サッとルーピンの元へ走りよった。
一瞬ルーピンの視線が子犬に走り、またにっこりとを見つめる。
「いや、薬はさっきセブルスからもらったんだ」
「え?じゃあ・・何か他に・・・」
「うん。連れをね、迎えに来たんだ」
「はい?誰もきてませんよ」
「シーリウス」
「え?」
声のトーンが冷たく低くなったルーピンに、はびっくりしてルーピンを見つめた。
シリウスはここに来てないのに・・・
その時だ、の腕の中の子犬がカタカタと震えだし小さく丸まった。
小刻みに震えている様に気づき子犬を見やれば、キュウンキュウウンと情けない声をだしながら
にしがみついている。
ルーピンはサッとの腕かから子犬を奪うと、片手で子犬の首を持ち上げながら
ニッコリと子犬の顔を覗き込んだ。その笑顔から冷気が放たれていることに気づいたは
まさかと思いルーピンととも子犬を覗き込む。
子犬はカタカタと震えながら、ヘッヘッへと舌を出していた。
「あの・・この子犬ってまさか・・・」
「うん。あまりにもうるさいんでミニサイズ呪いをかけておいたんだ。そうしたら
逃げ出しやがってねー」
さらりと呟くルーピンにビックンと子犬が跳ね上がった。
ポカンと口を開けて子犬を見つめているににっこりと笑うと「じゃあ」とルーピンは
子犬をぶら下げたまま地上への階段を登り消えていった。
「で?」
背後からとてつもなく冷たーい空気が流れてきて、今度はの体がビックンと跳ね上がった。
おそるおそる振り返れば、いつの間にかの真後ろに立っているスネイプ。
スネイプは杖を掲げると、スッと扉に一振りをして閉めカチャリと鍵を掛けた。
気まずそうに上目遣いで不機嫌そうな恋人を見上げれば、至極楽しそうに意地悪い笑みを浮かべている。
「頑固者に分からず屋か・・・・・一体誰がだね?」
「う・・・・;あの・・その・・えーとぉ・・・」
「さて、我輩はいま大変なんとも腹立たしい気分なのだが。レディ・は我輩に
労わりの施しをしていただけるのでしょうな?」
「へ?」
ゆっくりとの腰へと腕を回すと、静かにを抱き寄せてさらに意地悪くの顔を覗き込んだ。
たとえ、子犬の姿であろうと恨み募る男に自分の恋人に抱きつかれあまつさえ胸に
擦り寄られたのだ。しかも子犬の正体に気づかない愛しい恋人はにっこりと子犬を抱き寄せる始末。
そんな姿を見せられておとなしく引き下がっていられるものか。
その夜。
地下牢からは何の音も聞こえず、そしてルーピンの部屋からは犬の鳴き声が木霊していた。