好きな色のリボンを一ヶ月間、月夜の雫にさらしては乾かし、
夜光草の香水をつけてまた月夜の雫にさらして乾かす。


その工程を一ヶ月間。

とても気の遠くなりそうなおまじない。
だけど・・・私が縋れるものはこれしかなかったの。
最後の香水を付けたら、次の日からそれを髪に編みこむの。
毎日毎日。そうすれば・・きっと・・・






「やったー!できたー」


グリフィンドール寮。
自室のベッドの上では晴れ晴れとした溜息を付き声をあげた。
こげ茶色の長い髪。右サイドの髪をひと房、リボンを編みこんだ三つ編み。
優しいラベンダー色のリボンにニッコリと微笑むと、足取り軽やかに今日の授業へと向かった。
が1歩、歩けば、微かに漂う甘い香り。
ニコニコと嬉しそうに微笑む様に、隣を歩くハーマイオニーは
「何がそんなに嬉しいのよ」と苦笑いをした。



「ミス・。何かねその飾りは」


低くそして冷たく降ってきた言葉にはビクリと肩を震わせた。
魔法薬学の授業。調合実験で生徒達のテーブルを周っていたスネイプは
の髪を見て不機嫌そうに口を開いた。





1つ  決して人に知られてはならない





いつもは何も飾りをつけない。髪だって実験には邪魔になるからと一つにまとめている。
三つ編み以外の髪はまとめてあるが、そのせいで三つ編みが妙に強調されてしまっていた。
は、気まずそうに「寝グセ直しです」と呟いてみるが、三つ編みで寝グセ直しのはずがない。
スネイプはますます不機嫌そうに眉間の皺を寄せると、「取りなさい」と素っ気なく言い放った。



2つ、  陽が高いうちに外したら効果はなくなる




「嫌・・・です」フルフルと小さく首を振るに、スネイプの片眉がピクリと上がり。





「実験の邪魔だ。外しなさい」


「嫌ですっ」



消え入りそうな、でもはっきりと言い切る否定の返事。
スネイプは苦々しくを睨みつけながら舌打ちをすると
サッとの三つ編みへと手を伸ばした。




「だめぇ!!」







3つ  人に触れさせてはならない






教室中にの悲鳴めいた声が響き渡る。
静まり返る教室。
スネイプの手を勢いよく払いのけ、ハッと手で口を押さえるも後の祭り。
恐る恐る見上げれば怒りに睨みつける教師。その教師の背後でくすくすと嘲り笑う銀と緑の生徒達。


「ごっごめんなさいっ」


「グリフィンドール20点減点。はこの後残れ」



慌てて謝るも振ってきたのは減点と居残りの冷たい言葉。
シュンと俯く少女の耳元に、掠れた音が走る。ふわりと舞う解かれた三つ編み。
ハッとして顔を上げれば、冷たく不機嫌そうな表情の男の手にはラベンダー色のリボン。
鼻先を掠めた甘い香りには、目を僅かに見開きスネイプの手に収まるリボンを見つめた。
まるでスローモーションに舞うリボンに今までの苦労がサーッと頭の中を駆け巡る。
カクリと項垂れて歯を食いしばっても、こみ上げてくるものは次期に止められなくなるだろう。
幸か不幸か終了のベルが鳴り響き、あっという間に教室にはとスネイプだけになった。
じわりじわりとこみ上げてくる涙を堰き止められなくなったように少女は泣きじゃくった。
その涙に少しばかり、驚きに目を見開くスネイプだが、冷たくを突き放す。



「色づく余裕があったら、少しは実験能力を向上させてほしいものだ」


「・・・・・ひっ・・・えっ・・・一ヶ月かかったのにっ・・・ふえっ」


一向に泣き止まぬ生徒をめんどくさそうに睨みつけるも、「一ヶ月」という言葉に
僅かばかりだがスネイプの興味を引いた。「何が一ヶ月だ」とぶっきらぼうに問えば、
涙まみれになりながらも、キッと少しばかりスネイプを睨み上げる。



「おまじないっ・・」


「くだらん」


吐き捨てるように答えれば、即返される言葉。
その言葉にまたこみ上げてくる涙。悔しくて言葉がぽろぽろと突いて出てくる。




「子供の遊びごととでも先生は仰りたいのでしょう?!でもっ・・」


勢いづいた言葉が徐々に弱々しくなっていく様に、スネイプは眉間の皺をさらに色濃くさせ
馬鹿みたいに泣きじゃくる少女を黙って見据えた。



「こんなことでしか・・頼れないんです・・。だって・・とても年が離れているしっ
すっごい気が難しくて。私のことっ・・これっぽちも気にかけてくれてはもらえないものっ」






恋事か・・ますますもってくだらん




そう、さも呆れたように少女を見下ろすがそれを口に出すことはしなかった。
項垂れる少女の表情になぜか、言葉がでてこなかったのだ。
面倒くさそうに溜息と吐き出し、ポスッと少女の頭に手を乗せれば
瞳いっぱいに涙を浮かべたが僅かに顔を上げる。


「まじないというものは一種の気休めにしかならんものだ。
願いそのものをまじないに依存しても何も生み出さん。己自身が直接事を起こさぬ限り
何も起こらぬし、君の想い人とやらにも伝わぬだろう」


「でも・・・」


微かに涙の層が和らいだ少女。けれども紡がれた言葉はまだ不安に駆られる声色に
また、深く項垂れる。その様に二度目の溜息を零せば、微かに少女の肩は震えていて。
「面倒この上ない」そう込み上げてくる苛々感を抑えつつ、そっと少女の頭を撫でてやる。


「少しは自信を持ったらどうかね。その・・なんだ・・君はまあ・・・
成績も悪くないし、君を慕う友人も多い。容姿もそこそこだ。
君に想いと伝えられて悪い気はしないだろうに」


そう、さも面倒くさそうにの頭を撫で、「戻りなさい」と促し踵を返す。
そのスネイプの表情はとても複雑な表情をしていたが。
くいっとローブを軽く引っ張られる感覚を覚え、怪訝そうに振り返れば
俯いたままが、スネイプのローブを握っている。握っている手が微かに震えている。
「何だ」と不機嫌さを押し出した声で言い渡せば、真剣な表情のと真っ直ぐに視線が重なった。


「本当に・・そう思ってくれますか?」


「?」


「先生はそう思ってくれているんですか?」


「何を言って・・・・・・!?・・・ミス・っ・・」


少し驚きに目を見開き僅かに頬を染めたスネイプに、
も頬をピンクに染めてにこっりと微笑んだ。



















おまじない・・というものをほとんど知りません;(書く資格なし)
なので勝手に作り上げたおまじないごと、魔法界らしいおまじないごとを考えてみやした。
なので効能は定かではございません。よってこれを実行して効果が出なくても
責任は負いませんのでよ〜ろ〜しぃ〜く〜。(山に帰れお前;)