+メカニックらぶ+
市中の見廻りを終えた土方は、屯所へと足を向けていた。
ちょうど昼時の時間であり空腹を覚え、食堂に寄ってから帰ろうかと考えていると
ふと目に入った一軒の店。
そのショーケースをしばし眺めると、ふらりとそちらへ足を向けた。
「おやじ、それ2こくれ」
「まいどぉっ」
屯所へ戻ると、壁に掛けられた帰屯したことを知らせる自分の札を裏返しにし、そのまま屯所内には上がらずに裏へと足を向ける。
そこは真撰組が所有するパトカーの駐車場が裏門とともに広がっており、その隅に大きな二階建ての倉庫。
地下には射撃場、1〜2階は吹き抜けの車両整備場となっているそこに土方は足を向けた。
倉庫のシャッターは開け放たれ、その中からはそこにふさわしい機械音とともに時折火の粉が散っていて。
と、土方は一旦立ち止まると胸ポケットから携帯灰皿を取り出し、口に咥えていたそれを押し消すと
倉庫内へと足を進める。
広々とした倉庫内壁一面にびっしりと棚が作りつけられ、整備に必要な道具が隙間なく並べられている。
しかし雑然と見えないのは、この倉庫の管理人の性格が表れているためか。
倉庫中央には先日の捕り物で損傷を受けたパトカー。
車体は太い鎖で上がっていて、その下から作業をする音が聞こえる。
そちらへと回り込めば、後部座席の下の方で時折スパナからドライバーへと道具を変えるために伸びる白い腕。
思わず口角を上げ、わざと踵を鳴らして歩み寄る。
一瞬、工具を扱う音が止まったのは気のせいではない。
「、昼飯食ったか?」
ガラッ
ボードに乗った、鼻頭に煤をこびりつけた女がひょこりと顔を出す。
「まだー。あ・・・それ」
の視線が土方の手にしている袋へと注がれる。
自分がよく通っている店のマークが入ったレモンイエローの袋。
の視線に気づいたのか、軽くそれを持ち上げてみせる。
「おう、焼きそばパンだ」
「食べるーvvv」
倉庫の入り口横の壁に寄りかかりながら二人並んで腰を降ろす。
の両手にはコーヒーを淹れたマグカップ。
昼といえども季節は冬。少し肌寒い気もするが二人は気にすることなく外でコーヒーを啜る。
「どうだ。あいつは」
焼きそばパンをに渡しながら、倉庫内のパトカーへと目配りをする。
先日損傷したパトカーは今までとは違いかなりのダメージを受けたもので、
も思わず息を呑んだほどだった。
「ん、ボディは総換えだったけど、エンジン系統は無事だったからね。でも今回はずいぶんと
派手に壊されたねぇ。一番大変だったのはあの子だけど、ほかの子もかなり損傷あったし。
あ、私にもちょっとつけてーvv」
はパトカーのことをこの子・あの子と呼ぶ。
。
唯一の女性真選組関係者。
そして組内唯一の機械整備士である。
パトカーの車両整備はもちろんのこと、隊士が使う銃器の調整とメンテナンスそして
機械と呼ぶものは片っ端から修理・改造なんでもこいの超凄腕整備士だ。
自他共に認めるメカ好きで、近藤と土方も・・いや隊士全員が彼女に一目置いていて。
そしてそんなと土方は別の意味でも互いに一目を置いているわけで。
の話に耳を傾けながら、土方も焼きそばパンを取り出す。
もちろん彼の大好物のマヨネーズも。それを盛大に盛り付ける横でがにこにこと自分の
やきそばパンを指さす。それににやりと笑い、もりもりとマヨネーズを盛り付けてやる。
ちょっと慌てたの顔がなんともいえず、かわいい。
「ちょっ・・・もういいわっボケー!!」
ぷうっとむくれながらも、美味しそうに頬張るその横顔が微笑ましく、土方も自分の焼きそばパンに
かじりつく。
「今さ、過激派テロリストが戦艦や大量の武器を所持してる噂があちこちに流れててよ」
「あー高杉晋助・・だっけ?たしか鬼兵隊っていったけ?
ある星と結託して軍艦を3隻買い取ったって話・・
この間の幕府機関整備士の会合でもそんな話が出たよ。もしかしてあの子その関係で?
あの子のボディ、今裏でも出回っている対戦車用バズーカでも耐えられる特殊合鉄使ってんだ、
そう易々と損傷するはずがないよ。あのボディの焦げ方と捲れ方。
かなりの高温による・・ビームみたいなものか何か・・・・ってまさかその軍艦の?」
「流石は。あぁ、先日俺らは高杉の軍艦に襲われた。
どうやらデモストレーションのつもりだったらしい。しかし、参ったぜ。
俺達真撰組には対空の設備はないだろ?
とっつあんが持っている特殊部隊だけで、それもまだ小規模なものだ。
今回怪我人が出なかったのが奇跡なくらいだぜ」
犯罪者があんな化けモンみたいな軍艦三隻も持っているなんて・・この国も終わりだな
コーヒーを啜り深々と溜息を吐き出す土方の横顔を眺めて、スッと倉庫内の
パトカーへと視線を移す。
「たしかにね・・でも高杉って奴もまだまだv」
「?どういう意味だ?」
「ふふv整備士は整備士でも私はメカ好きの整備士よvほらあの子を良く見て・・」
が捉える視線を辿り、土方もそちらへと首を巡らす。
そこには吊り上げられたパトーカーの外されたボディ。
「いくら無敵の軍艦を手にしたところで使いこなせなかったら、それはただの鉄屑でしかないわ。
軍艦クラスとなれば、それに搭載されているビームもかなりの威力を持っている。
あの子がボディだけで済まされるはずがないのよ。デモストレーションであったのなら、
それこそ軍艦の威力を見せ付けるためにあの子を修復できないくらいに・・ううん
原型さえもとどめないほどに痛めつけるはず」
「奴らは軍艦を使いこなせてない?」
「そうね。もともとこの星には空を翔る軍艦なんてなかった。
それもビーム砲なんて全世界見たってそんな技術なんて未知の域だったのよ?
きっとろくに技術者をつけないで買ったんだよ。
おそらく初期設定のまま情報が更新されてない。ビームの威力は何度か使って
そのたびに情報をアップロードしていくの。経験値を積み重ねることによって
さらに威力は増す。
・・・・・・・・・・高杉の一派にメカが得意な奴いるの?」
一度言葉を区切ったが一瞬うーんと小さく唸る。
首を傾げる土方をチラリと見やると、怪訝そうにそう聞いてきて。
土方も小さく唸ると、頭の中にある高杉に関する情報を探り出す。
たしか武市変平太という男が高杉一派の中でも一番の頭脳であり、
多少は機械に詳しいかもしれないと口を開けば、は「んー」とまた小さく唸った。
「おそらく・・・・そいつもあまり機械は・・・。メインピットのデーターボックスかな?
いやでもそれだけじゃ・・・どこかで連動する接続部があるのかも。
ということは・・バックアップをとってディスクに覚えこませて・・・」
ぶつぶつと独り言呟きながら、の顔がコロコロと変わる。
こんな時のは何を言ったも無駄だ。
そして、その後には必ずなにかを見出す。土方はそれを辛抱強く待った。
「パトカーを一度マニュアル化させて、周波を発する端末を取り付けるの、
同時にボディも二重の強度にして。
今はまだ軍艦を使いこなせていない高杉達だけど、いつそれに気づくかわかならい」
だからまずはパトカーの強度を上げてみたらどうだろうかな?
そう見つめてくるに、土方は一瞬黙り込む。
「やっぱりメカはにだな・・
・・なあ、すべてのパトカーにそれをインプットするるとなるとどんくらいかかる?」
「そうだねぇ・・今までのバックアップも必要だし・・それを一回記号化する必要もあるから・・一週間はかかるよ」
「そう・・っか・・・・じゃあ、四台。なら?」
「今日中に」
挑発するかのような、土方の視線にの口角が上がる。
まっすぐなの即答に土方も口角をあげた。
「上等だ。早速取りかかってくれるか?」
そう腰をあげる土方にこくんと頷いても立ち上がる。
「お安い御用よ。でね、トシ。今度その高杉の船が現れたら私も一緒に連れて行ってほしいの。」
「は?なっ何言ってるんだ。ダメに決まってるだろう!
はあくまで整備士だ、現場はとても危険なんだぞ?もしお前に怪我なんかされた日にゃあ・・俺は」
「ん・・わかってるよ。でも今度の件は私も頭にきてるの。
私が丹精こめて整備したあの子達をあんなに痛めつけて!!
それに一度その軍艦を見ておきたいの・・これでも軍艦のデーターベースは頭の中にあるんだよ?
どこの星のものか一目見ればわかる。そうすればその軍艦の特徴もわかるし、弱点だって見言い出せるはず」
慌てて拒否する土方に、はさきほどまで浮かべていたかわいい笑みを打ち消して
真剣な眼差しで土方を見上げた。
恋人だからじゃない
一人の整備士として真選組の人間として、土方の役に立ちたいのだ。
真っ直ぐなの視線に、さすがの土方も言葉を詰まらせる。
愛しい彼女を現場に連れて行って怪我でもさせてしまったら、自分は発狂するだろう。
連れて行きたくない。
だがの言い分ももっともだ。実際彼女のメカ好きは種類を選ばないし、地球のみでは
飽き足らず数多ある異星の船や機械にまで通じているのも確かだ。
だからこそ彼女は真選組に配属されたのだ。
の観察力とその知識は大いに役に立つ・・だけど・・・
ガシガシと強く頭をかくと、土方は小さく溜息を吐き出した。
「仕方ねぇな・・一度だけだぜ?奴の船がまた出た時、俺たちのバックアップをしてくれ。
だが絶対俺の言うこと聞いて後方に控えてろよ?」
「うんvそれじゃあ今からパトカーのチェック!」
ニパアッと花が咲くがごとく綻ぶの表情に、思わず土方も頬を緩みそうになる。
それを必死に押し隠して、呆れたように溜息をつくとぽんぽんとの頭に手を置いた。
「よし、じゃあ俺は早速近藤さんに話して・・と」
「ん?・・み////」
の顔を覗きこんでいた土方が急に意地の悪い笑みを浮かべ、ペロリと
の口端を舐めあげた。突然のことにボンッと顔を赤くするに
クスリと笑う。
「マヨネーズついてた」
「へへ、ありがとぉ」
マグカップを両手にふわりと微笑むの頬を軽く撫で上げると、土方は屯所へと踵を返した。
近藤にこの件を持ちかけると、近藤はすぐさま各隊の隊長を呼び戻し緊急の会議を開いた。
誰もが高杉の軍艦に焦りを感じていたのだ。
集まった皆の前で、が提案したパトカーに新たな機能を導入すること、
次高杉の軍艦が現れた時の段取りを告げれば、俄かに室内は活気を見せた。
あの沖田でさえも、微かに興奮しているように見え、土方は小さく拳を握り締めた。
次こそは負けねぇ と。
「よしっ!!一番二番隊は俺に続け!船に乗り込むぞ。
原田!!のこと頼むぞっ怪我させたらてめーどうなるか・・・・」
あれから数日後、再び高杉の軍艦が江戸の空に現れた。
殺気立つ隊士達に激を飛ばす土方も、微かに興奮していることを覚え。
駆けつけると同時に放たれた軍艦のビーム。だが、パトカーは以前とは全く違う働きを見せた。
がある映画でヒントを得たと笑っていたバリア機能が設置されており、そのおかげで
パトカーは掠り傷一つも負わなかったのである。
そしては数台のパトカーの上に、改良したバズーカー台を設置。
それで軍艦へと反撃可能になったのである。
は建物の影に止めたパトカーで待機しているはずだ。
土方はここに残る原田へと鋭い視線で見やれば、血相を変えた山崎が
悲鳴にも似た声を上げた。
「大変です!さんがいません!」
「・・・・なんですとぉぉぉ!」
土方はもちろん、原田に沖田そして近藤までもが固まった。
「おかしい、先日はいともかんたんか大破したのに・・それにあれは砲台?」
「どーなってるんスか!先輩っ。まずは犬共から片付けるはずが手古摺ってるじゃないっスか!!」
「ククッ奴らもただ暴れるだけが取り柄じゃないってわけか」
「晋助様どうしましょう」
「そうだなァ・・・」
軍艦の甲板から下界の真選組の様子を伺っていた高杉と来島また子、そして武市変平太は
以前とはまったく違う結果に、驚愕していた。
ボンッ
バキャッ
苦々しく忙しく動き回っている真撰組を睨みつけていると、背後で何かが壊れる音がした。
不思議に思って首を巡らすと同時に固まる高杉ら。
そこにはメイン操縦室へ続くドアをガコンと蹴り破っている一人の女。
どうやら手榴弾かなにかの爆弾を使ったのだろうか?ドアに焦げのような後が煙とともに
できていた。
「貴様あ何しやがってんすかぁぁっ!」
一番最初に覚醒したまた子が、腰の銃を引き抜きながら叫んだ。
また子の声にその女−はきょとんと振り返る。
「へ?あ、なんか鍵がかかって入れなかったから・・・」
「あたりまえだあ!鍵がかけてたんだからよぉ!!って貴様何者っすか!」
「・・どぅもぉと申しますー。会津藩出身で、趣味はメカいじり
大好きな食べ物は焼きそばパン。ちなみに彼とはとっても仲良いですー」
「だれが合コンな自己紹介しろと言ったよ!っつーか彼氏いんスすか!羨ましいんだけどまじ羨ましいんだけど!
私なんかいまだに晋助様に片思いだってーのによぉっ!」
「来島それさり気に告ってる?え。本気にしちゃうよ俺?」
「彼氏がいるんですか。残念ですねあなたなかなか好みなのに」
「はあ・・・すんません。それじゃv」
「それじゃvじゃねーッス!何自分んちに入る勢いでナチュラルにかましてんのお前っ」
チュインッ!
また子の両の手に握られた銃が火を噴いた。
の足元にのめり込んだ銃弾に、ピタリとの動きが止まる。
「・・・リボルバー。ラトネア星産のW&S13モデル。
ダブルアクションの欠点をすべて克服し、なおかつ装弾数も8発から12発に増改良された最新型ね。
命中率もかなり高く、また軽量なことから女の子でも扱いやすい」
スラスラと口を開くに一瞬目を丸くするまた子だが、すぐさま不敵な笑みを浮かべる。
「へぇ・・ただのネズミかと思ったら、あんた随分詳しいじゃないッスか」
再びに標準を合わせるまた子の隣に、高杉がゆらりと立つ。
「来島ァ、どうやらこいつァ真撰組の仲間らしい。
お前さんメカに詳しいのかい、すると連中のパトカーに小細工をしたのは・・」
「うん、私。ちなみにどさまぎでこの船のバックアップデーター掻っ攫うつもりで現在進行中」
「来島殺れ」
「了解ッス」
チュインッ
来島の銃が火花を吹くと同時にシュッとが跳躍する。
それを逃すことなく狙いを定め・・
瞬間、跳躍したから鈍い光が発し、シュンッと空気を切り裂く音かあたりに響いた。
カッ
「っつー。・・あれ・・引き金が引けな・・なっなんだこれ!?ド・・ドライバー?」
「来島ッ前だ」
鈍い光がまた子をめがけて飛んできたと同時に、手に痛みが走る。
けれどもしびれているだけで、怪我はしてないようだ。
怪訝に思ってリボルバーへと視線を下ろせば、回転弾倉にドライバーが刺さっていて。
そのあまりの不自然さに一瞬目を丸くするが、若干焦ったような高杉の声にハッとして
顔を上げると同時に、自分の隙を深く呪った。
いつの間にかが目の前までに迫っていた。
「っつ・・うっ」
ダンッと鈍い音が甲板に響いた。
一瞬の間に甲板の床にうつ伏せに押し倒されている状況に、また子は目を見開くだけ。
その上に圧し掛かるように押さえつけているに、高杉と武市も些か驚いたように目を見開いた。
あっと声をあげたがぽへーと高杉を捉える。
「付け足すの忘れてた。職業は真撰組専属、機械車両整備士ね」
「・・・ククッ一整備士がいっちょまえに歯向かう気かぁ?」
スラリと抜刀しながらゆっくりとへと歩み寄ってくる高杉に、
も腰の工具入れからスパナを二本取り出し両手で構えた。
その様子に、一瞬高杉の笑みが薄らぐ。
こいつ・・・・
キィィン
踏み込むと同時に刀が振り下ろされ、は下半身に力を入れると、
スパナを交差させてそれを受け止めた。
ニヤリと笑う高杉にもニヘラと笑う。サッと一瞬で間合いを取りながら体勢を低くして腰を捻り
高杉の死角、包帯で覆われている左側へと回り込みスパナを振り上げた。
ガッと金属が合さる音が二人の鼓膜を捕らえる。
ギチギチと二人の武器が悲鳴を上げた。
「てめぇ・・ただの整備士じゃねぇな?」
ギラリと高杉の隻眼がを捉える。普通の人間であればこれだけで
恐怖の色を露にするところだが、は一向にケロッとした表情で「むー」と
小さく唸りながら首を傾げた。
「ただの整備士だよ。昔剣をやってたくらい?」
「ククッそういうのをただのとは言わねぇなァ?」
不敵な笑みを浮かべる高杉に、はきょとんとさらに首を傾げる。
だが、高杉が振り下ろしている刀は一向に弱まる気配はない。
が次はどうやって攻め込もうかと考えていると・・・
「高杉ィィィィ!!何やってんだぁぁぁ!!!」
「おぉ。の戦っている姿拝めるなんてラッキーでさァ」
甲板から男の怒鳴り声が響き、高杉はハッとして顔を上げた。
に気を取られすぎていたようで、すっかり真選組の存在を忘れていた。
来島と武市もそうだったようで、真選組が船に上がってきたことに明らかに動揺している。
土方は引き攣りながら口角を上げると、ゆらりと刀を抜いた。
その後ろで、呑気に両手を頭の後ろで組みながら突っ立っている沖田。
「てめぇ・・に刀振り上げるたーわかってんだろうなあ・・・」
「トシーv」
「っっ。おまっ一人て乗り込むなとあれほど・・怪我ないか?!」
土方の姿を見とめると、は満面の笑みを浮かべて土方の元へと走りより
抱きついた。
高杉達の表情がピシリと固まる。
抱きつく女に、めっちゃくちゃ心配そうな表情で抱き寄せる土方。
「なあ来島、あの女の彼氏ってまさかあの鬼か?」
「そう・・みたいッスね・・って何あの副長の嬉しそうな顔!初めて見たんスけど!!」
「俺ァ・・なんか寒気がしてきたぜ。笑っていやがるぜ鬼がよォ」
ポンポンとの頭を撫でながら、怪我はないかと問えばフルフルと首を振る。
「うん、ないない。あ、でもちょっと今刀振り降ろされた時手首ちょっち痛めちゃった。」
「なにぃぃ!高杉ぃぃぃ!なに俺のに怪我させてやがんだあああ」
バッと土方が凄まじい形相で高杉を睨みつけた。
を優しく押しやりながら、高杉へと突っ込んでくる土方に
高杉は一瞬呆気に取られる。
「ちょっ;待てや、普通よぉ?自分のテリトリーに知らねえ奴忍び込んだら「テロリストの分際でガタガタ言い訳すんなあっ」
キィィィィン!!
ガチガチと刀が悲鳴を上げる。
土方の背中から凄まじい殺気が立ちこめ、高杉は微かに焦りを感じた。
「あー腹立つぜ、てめえに刀向けやがってマジ腹立つ。切腹だコラァッ
〜俺が許す思う存分解体していいぞーvv」
「やったああーvvvv」
土方の言葉には満面の笑みを浮かべると、きゃーvvとスパナを振り回しながら
メイン操縦室へと駆け込んでいく。
その後ろ姿を眺め、高杉から間合いを取り胸ポケットから煙草を取り出す。
「っか〜vvやっぱかわいいなあ、おいv」
「やいっテメーもあいつもなんなんすか?!イチャイチャしやがって羨ましいんだよコノヤロー!!」
さも嬉しげに紫煙を吐き出す土方に、来島はドライバーが刺さったままのリボルバーを構えながら
土方をにらみつけた。
が、土方の視線はに注がれたまま。
「どうよ俺の彼女。生き生きしちゃってまあ〜・・かわいいだろ?おい」
「なあに、満ち足りた顔していけしゃあしゃあ煙草吹かしていやがるんッスかぁ!
ただのメカオタクじゃんアレ!」
「何言ってんだテメー、そこがのかわいいところなんだろうが。ーvvもっとやれー」
「っかーなんか腹立つっスー!って羨ましいすぎるッス!また子も晋助様にかわいいとか言われたいッスー!!」
「言ってほしい?言ってほしいかv?なんならあとで俺の部「どーでもいいんですけど、止めてくださいませんかアレ。
ってまじ止めてくんないかなー。船傾いてきてるんですけど。うっ;何この揺れ」
きーっと声を荒げるまた子に、にぱあと表情を明るくする高杉。
さり気なく誘うがその言葉は顔を青くした武市に遮られ。
そんな場面を呑気に傍観していた沖田が哀れむように武市を見やった。
「諦めなせェ。土方さんはと一緒に現場来れてウキウキワクワクなんでさァ」
ガションッ
「見てートシーvvvおもしろいもの見っけたーーvvv」
「おーvvよかったなぁvv」
「あああああー!それはこの船のメインデータボックスー!
っはわあ!晋助顔真っ青!っつか蒼白?!しっかりしてくださいっス!」
「来島あ〜この船のローンまだかなり残ってたよなあ〜。やべーよ俺明日から禁酒?禁煙?
食費も危うくね?ははっv生きてく自信ねーよやべ目が霞んできた」
「ぎゃー晋助様しっかりー!」
へなりと明後日方向を見ながら船尾へと歩いていく高杉を、来島と武市が慌てて追いかけていく。
それをつかつかと落ち着いた歩調で追いかけながら、沖田はガションとバズーカーを構える。
「行ってきやーす」
「おぉ、きっちり仕留めてこー」
「トシー!見て見てぇっ。このバックアップデータの情報すっごいよ!
これコピッてパトカー全台に導入したらいいや!」
「お〜そぉーかぁ。さすが俺のv。っと、そろそろ俺達もずらかろうぜ?この船落ち始めてる」
「んーダーイジョーブ!これわざとだから」
「??」
船から脱出するためにの手を取った土方が不思議そうに首を傾げた。
はニッコリと笑って、手にしているデータボックスを持ち上げてみせる。
「真撰組に空用の見回り船ほしくない?」
にっこりと笑うに土方はニヤリと口角を上げた。
それから数日後、真選組屯所の上空に一隻の軍艦が上げられていた。
無機質な深緑色だった船体は、警察色のホワイトとブラックに塗られ、「真選組」の文字が
金色に光る。
高杉一派から奪取した軍艦は、手柄として真選組の空用の見回り船となった。
今日はその試運転の日。
満足気に船を見上げる土方の横で、もニコニコと船を見上げていうr。
「っかーvvやっぱは最高だぜ!!」
「みゅvvありがとー!!」
キュウッと抱き合う二人の横で、近藤と沖田はシラーッと船を見上げる。
「なあ、総悟。なんか俺すっごい疎外感?」
「仕方ないでさァ。と土方さんのメカニックらぶらぶ〜は誰も理解できねえやィ」
「なあvあの船に俺との部屋作ろうぜ。空の旅とかしたくね?」
「きゃーvv行きたいねーvvじゃあ早速二つ部屋作るよ」
「なんだよ、一つでいいだろうが。別部屋なんて俺が許さねー」
「vvvトシーvvv」
「総悟、なんか俺すっごい体中全体モヤモヤしてるんだけど、これ病気?」
「安心しなせェ、俺ァ今すぐバズーカー構えたい勢いでさァ」
今日も江戸は平和だった。
若干加筆しての再UPです。
すんません思いつきなんです。
ギャグにしようか、シリアスにしようかグラグラ迷いながら
書いてたらこんなどーしょーもないもんが;
整備士ヒロインというのがずっと頭にあって、本当はもっと勝気な
土方でさえも頭が上がらない姉御ヒロインだったんですね。
「お前らー!!またパトパト壊しやがってー!!」みたいな。
もう完璧な不燃焼なんで、また整備士ヒロインで書けたらと思います。
そして、高杉とまた子のやりとりが書きたかっただけかも;
パトレイバーを見た後だったんで、めちゃくちゃ影響受けてる感が・・(単純)
2007年1月29日執筆・・07年7月23日加筆