近藤局長のストーカーがごっさかわいいものだと
しみじみ思う日が来るなんて一生ないと思ってたのね?
お妙ちゃんだってすっごい迷惑してるし。
でも
でも
そんな局長がかわいく思えてしまった。


いや、もうほんっと!
近藤局長がいかにかわいいか思い知ったの!!










私に纏わりつくストーカーは

抜け目なくて、

人が油断している隙をついて狙ってくる計算高い奴。





そう


あいつの名前は













指名手配人・過激派攘夷志士−高杉晋助































+好きと嫌いも紙一重+



























「高杉ぃ!!今日という今日こそはしょっぴいてやらあ!!」


「あーうっせぇ」




白昼堂々の捕り物騒ぎに、道行くものは慌てて端のほうへ逃れる。
追われるは派手な女物の着物を身に纏い、左目を包帯で覆った男。
それを追うは良くも悪くも・・いやどちらかというと悪評の方が断然高い武装警察真撰組。
追われている男−高杉は大して慌てた素振りもなく、淡々と軽やかに走っている。
ちらりと肩越しに背後を見やれば、逃すまいと追いかけてくる真撰組。
その先頭をきっている黒髪の瞳孔がいつもより開いている男に小さく笑う。


高杉はある目的のために真撰組屯所へと潜り込んだ。
屯所内の地理を把握するのは朝飯前のこと。高杉はまっすぐに目当てのものがある部屋へと
向かうがそこには何もなく、仕方ないと踵を返したところちょうど廊下を歩いていた
土方と鉢合わせして今に至っているというわけで。
背後で土方の怒鳴り声が聞こえる。



「てめえ!!第一級テロリストが屯所に忍び込むたぁ、いい度胸してんじゃねぇか!!」


「土方さーん、まかせてくだせェ」



ガチャリと鈍い機械音が土方の横を掠める。
バズーカーを持った沖田が標準を高杉に合わせたその時だった。




「あ、やべぇでさァ」


「あん?・・げぇ、おいおい;」


「!・・よぉ。


「へ?・・っ!!たった・・・高杉ぃ?!!」



高杉の前方の路地からひょっこりと一人の隊士が出てきた。
たしかある調査に当たらせていて、それがちょうどこの地域だったと土方の脳裏を掠める。
なんという間の悪さだ。
高杉はニヤリと口端をあげると、走るスピードを速めた。


「おいおい、名前で呼べって言ってんだろぉ?
なんだ屯所にいねえと思ったら見廻りしてたのかよ。
まあいい。このまま掻っ攫ってやるぜぇ?」


「っ・・・く・・・来るなぁー!!!!」



ギラリと光る高杉の右目に、は弾かれたように走り出す。




「ちょっ何敵前逃亡しちゃってくれてんのぉぉぉぉ!!戦え!!立ち向かえ!!!」


「無理無理無理無理無理無理むーりーでーすー副長ぉぉぉぉぉぉ!!むしろ助けろぉぉぉ!!」


「土方さん。そらあ酷な話でさァ」


「ちぃっ!・・おい山崎!先回りしてを回収しろ!!」


「はいっ」




「ククッ逃げるこたあねえだろぉ?傷つくぜ」


「っ〜もうっほんと何なのあんたはぁっ!!」



「だから言ってんだろ?お前が気に入ってんだよ。
あんなムサイところなんてやめて俺と来いよ。
毎晩いい声で鳴かせてや「だまれっ!この色ボケ露出狂が」





うえーっもう何なのよほんとっ!!
真撰組女隊士が全速力で駆け抜けていく。そしてそれを追うテロリスト、そしてそしてそれをさらに追いかける真撰組。
ふと、の横からさっと銀色の物体が視界に入った。スクーターの音ともに。




「あれぇ?ちゃんじゃないの?何ジョギング?相変わらず真撰組は本当元気だねぇ」


「この状況を見て爽やかなジョギングに見えるのかこの糖尿パーマメント」


「ひでっ!銀さんまだ糖尿ってないからね?まだ予備軍だから。というか
糖尿パーマメントってちょっとだいぶ心身的にダメージでかいよ?銀さん泣いちゃうよ?啜り泣くよ?」


ヨヨヨと泣きまねをしてみせるスクーターの男−坂田銀時。だが、の視線はまっすぐ
前に向けられたまま、銀時以上に泣きそうな顔をしている。
ちらりと後ろを見やれば、昔の戦友の嬉しそうな顔。しかもちょいとアクドイ笑み。
こんなに嬉しそうな高杉君の顔は見たことないね、銀さんは。


「えーひょっとしてお困りってやつ?何銀さんちゃんのために一肌脱ぐよ?
今なら後ろの席タダ乗り歓迎だよ?」


「ワーv銀さん大好き!もうパフェどどん!と奢っちゃう!」


銀時の手がに伸びたその時だ。





「銀時ぃ」


「んあ?」



ドス低い声が聞こえ肩越しに振り返る。
そこには目を見開き影を濃くしたまま笑みを浮かべる高杉。



「うぜぇよ」


地を這うかのような声に、銀時の背中に冷たいものが駆け巡る。




「;;;じゃっちゃんvファイトッ」


「えええええー!!うそぉぉぉぉ!!!」





方向転換して去っていく銀時のスクーターには真っ青になって叫んだ。
かれこれ30分は全速力で走っている、体力的にもそろそろ限界だし膝の感覚が鈍くなってきている。
かといって、ここで高杉に捕まれば一生屯所に戻ってこれないような気がする。うん絶対戻れない。
こうなったら応戦するしか・・・



「きゃっ」




ちょっと何よー!!小石に躓くってベタすぎな展開ー!!転ぶ!!













全力疾走×躓く=最大級の痛みとともに地面とご対面♪




そんな公式を頭にエンドレスで流しつつ、はぎゅっと目を瞑った。





「あれ?」




激しい痛みを覚悟していたのにに訪れたのは浮遊感。
ハッとして顔を上げれば、地面どころかは家屋の上にいた。
そして自分を抱き上げる者を仰ぎ、は心底安堵のため息を吐き出す。



さん大丈夫?」

「ふぇ〜山崎ぃ。ありがとぉぉぉ〜」


ぎゅうっと山崎にしがみつくに、バランスを崩しそうになるが
心の底からホッとしているの顔に思わず笑みがこぼれる。






「おい、てめぇ」



下からすっごいドス低い声が山崎の鼓膜を震わせ、そちらへ視線を向ければ
これでもかと目を見開き顔の半分(いや包帯巻いてるからさらに恐いんだけど)に影を落としている
高杉が山崎を睨みあげていた。


「覚えてやがれ」


「う;」


結局高杉を捕らえることは叶わず、真撰組の面々は疲労の色を濃くして屯所へと踵を返した。









「おい。お前いい加減に高杉のヤローどうにかしろって」


「どうにかなるんですか!あれ!どうにかなるものなの?!ねえ!!」



疲労感露にどっかりと屯所の座敷に胡坐をかき、を見やる土方にが半泣きで食って掛かる。
そもそもどうして真撰組隊士であるを高杉が執拗に追いかけることになったのか。





それはとある捕り物の時だった。
高杉一派が潜伏しているとの情報で乗り込んだ土方、沖田、を筆頭にした真撰組。
そこで一派と戦闘になり、は高杉と対峙した。
鼓膜を突き刺すような刀が交わる音が二人に振り注ぐ。
は気づかなかった。
そのしなやかなで華奢な体で華麗に宙を舞い、舞っているかのような刀さばき、
そして相手を射抜く鋭い視線が高杉を魅了していたことに。
やがて、勝敗は真撰組へと傾き一派は散り散りになり始めた。引き上げようとする高杉の退路を塞ぎ構える
土方と沖田も回りこむように高杉に刀を向ける。
の平突きが高杉へと襲い掛かったその瞬間、高杉の手がの腕を捕らえる。
不敵な笑みをたたえる右目と視線が合わさった瞬間、の全身を駆け巡る結末


斬られる!


ぎゅっと目を閉じるを襲ったのは、斬られた衝撃や痛みではなく



口唇にあたたかな感触



高杉に抱きしめられキスをされたことにはもちろん、土方と沖田までも真っ白になって固まってしまったのであった。





それからである。




高杉の方からノコノコと姿を現すようになったのは。
最初こそはキスされた恨みもあり、抜刀して応戦していただったのだが、それを難なく交わして
さらにキスをされる日々。




見回り先で待ち伏せしてるのは序の口。
(真撰組の当番表が筒抜け!と土方が何重にも変えるがすべて徒労に終わる)


非番時
を付けまわすどころか、堂々と「俺と来い」と無理やり抱き上げる。
(暴れるが成果なし。おかげで非番時は屯所から出れなくなる)


屯所の台所で夕食の準備をしていると、背後からを抱きしめ肩に顎を乗せながら
「俺、湯豆腐がいい」とさもここは俺様の家だと言わんばかりに献立に口出し。
(首筋を舐められ、喚きながら包丁を投げつけたらちょうど台所に訪れた山崎の
顔すれすれの柱に刺さった)


またまた屯所で入浴している所に、いけしゃあしゃあと入ってきてに迫る。
(助けに来た近藤と土方も鉄拳の犠牲になった)


そしてどこで嗅ぎつけた!と思わず突っ込んだのサイズにピッタリに
仕立てられた外国製のドレスを「これを着て俺のところに嫁いで来い」という
メモとともに送ってくる。
(無論メモはびりびり。ドレスは高価なもので切り裂くにはあまりにも気が引けたので
何重にも封をして押入れの奥深くに封印)







「こんなことが続けば敵前逃亡したくもなるわぁぁぁぁ!!!」


今までの高杉ストーカー状況を律儀にもグラフ表示した紙を示しながら、土方の両肩を掴みユッサユッサと揺らす。



「一昨日なんかあれだよ?!いつの間にか私の携帯に奴のメルアドが登録されてんの!!
しかもお揃いの高杉&マスコットストラップ付きとかいってぇぇぇ!!
なんか無駄にかわいいしさぁぁ!!何これアイツのお手製?!ひょっとして器用!?
着ている着物も自分で仕立ててんのか?!
気味悪くなる前に、それよかいつの間にって感心したっつーの!!それから分刻みでメール攻撃?!
しかも件名が「//xxx{*#&%k"$&#)s"」って薄く恐いっつーのぉぉぉぉ!!」




ガックガックと土方の首がヘッドバッキングする。
どんどんと青ざめていく土方の顔色に傍観していた沖田がしみじみと見つめている。


「よーし、もう少しで俺が副長でさァ、ーもっと揺すれーィ」



結局打開策は見つからぬまま、は山崎に風呂を勧められて入浴しそのままへなへなと
布団に潜り込んだのであった。
















翌朝。
障子を透かして差し込む太陽の光に、は布団の中で思いっきり伸びをする。


「ん〜よく寝たぁ」


「よぉ」



「むにぃ・・・おふぁよぉぅ・・・・・・・・・ってはあぁ?!



ここって私の部屋だよね?
っつかここ屯所!!なんでこいつがいんのー!!
しかもちゃっかり布団に入ってないこれー!?



「おまっ・・・高杉っ・・なっなんで」

「安心しろや、ヤルのはこれか「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



屯所いっぱいに響きわたるの悲鳴。
その数秒後到るとこから障子が開く音や、「なんだなんだ」と声が聞こえる。
途端、
ドタドタドタと騒がしくなる廊下。スパーンとの部屋の障子が開かれた。



っどうしたぁ!!」


真っ先に現れたのは土方。その後ろには近藤や沖田達も現れ、そして彼らの動きは完全に固まった。
そこには布団の上に押し倒されながらも必死で刀を抜こうとしているに、
その腕をがっしりと押さえながらの上に跨り、その胸に顔を埋めている高杉。
視線だけを土方達へと動かすとニヤリと口角をあげる。



「何だぁ?今楽しみの最中なんだよ」



「ちょっ高杉君?!何朝っぱらから頑張ってるのー?!」

「っつーかまた忍び込みやがったぁ!!」

「こらぁ、いい金になりまさァ。オイ、山崎ビデオカメラ持ってこィ」

「ぇええ?!」



「クククッ見ての通りだろぉ?とセッ「うらあぁぁ!!」


鯉口を切る音ともに、白い光が高杉をめがける。
が、高杉はヒラリとそれを交わすと何事もなかったように着物を整えた。
抜刀したがユラリと立ち上がる。その後ろには凄まじい殺気。



「ぶっ殺ース!!」




壊れた!壊れたよ!!とうとうプッツンいっちゃったよちゃん!!

近藤たちの顔にダラダラと冷や汗が流れる、高杉は涼しい表情で口端をあげると
サッと体を翻し軽々と屯所の塀を越えていった。
その後乱心したを取り押さえるのに、約二十数名の隊士がボコされる犠牲となった。




















「はあ・・・今日も絶対厄日・・もうほんと勘弁してほしいわ」


日が傾き始めた夕方。は見廻りのためもう一人の隊士ともに市内を廻っていた。
そこで不振な動きをする男を発見。それを追うもそれが真撰組をおびき寄せるための罠だと気づいたのは
隊士と二手に別れ十数人の浪人に囲まれてからだった。

狭い路地裏
陽が沈み視界が悪い
刀・槍・小刀・鎖分銅等様々な武器を持った浪人
その数は圧倒的



「ちょーとやばいかも」


焦る心を表面出さぬように歯を食いしばり、するりと抜刀する。
浪人の一人が卑下た笑みを浮かべた。




「こいつぁ上玉あ。雑魚かと思いきや噂の女隊士さんじゃねえか」


「ヒヒッ、ぉおい。こらあ別のおもてなしが必要だなあ」





男達の視線がに集中する。先ほどの殺気とは打って違う好色の視線に
の体中がゾゾゾと粟立つ。


「くっ」



は地を蹴ると刀を下段に構えた。
斬ることはできない、どこかの一派かもしれないので峰打ちで捕らえる必要がある。
そしてこの狭い路地裏では刀を振り回すなんて大立ち回りはできない。
あっという間に4〜5人の浪士を叩き伏せる。
逆上した小刀の男がへと目掛けてくるのを見やると、サッと体を捻り一瞬で背後をとり
手刀で気絶させる。
しかし一人に十数人。やばい。
バッと跳躍して体制を整える。降下すると同時に二人。後何人だ?
途端、足に絡まる鈍い音ともにはガクンと体制を崩した。

「しまっ・・」

たしか鎖分銅を持った奴がいた。油断した。
倒れこむのをグッとこらえ体制を整えるが、浪士たちの方が素早かった。
ガッと刀を持つ手を蹴られ、衝撃で刀を落としてしまう。
ドンッと力任せに壁に叩きつけられ、一瞬呼吸が途絶えた。

「っつぅ・・・」

「このアマァッ!梃子摺らせやがってよぉっ!!ぐはっ」



地面に押し倒されると同時に、跨ってきた男が拳を振り上げた。
が、それよりも素早くの膝が男の腹部へとのめり込む。
バッと上体を起こし体制を整えるも、いまだに足首に絡まった鎖で思うように身動きが取れない。
チッ鋭く舌打ちをすると、辺りを睨みつけた。
まだ5人は残っている。刀は から遠く離れたところだ。
男達は不気味な笑みを浮かべながらそれぞれ手にしている武器を構える。
体制を僅かに低くすると、スッと体術の構えをとった。



「ぎゃああああ」




突然、五人のうちの一人が苦渋に顔を顰めて蹲り、周りいた男達が驚いたようにその男へと振り返った。
も 何もしてないのに突然起こった絶叫に、驚きに目を見開く。
男の後ろから鮮やかな色が現れた。あれは・・・着物?



「俺の女に手ぇ出すたぁ、いい度胸してんじゃねえか」


「てってめぇはっ!!ぎゃっ」


鈍い音が続き、近くにいた男の短い悲鳴が一瞬で掻き消える。

高杉だった。


ひくりと息を呑むに男達は慌ててその場から逃げ出していった。
刀を収めるとゆっくりとその隻眼がへと注がれる。
クッと肩を揺らすと、咲夜は地面に転がっている自分の刀へと走りとると
高杉へと構えた。鋭い双眸で見据えてくるに高杉はわざとらしく肩を窄める。


「おいおいよぉ、亭主に向かって刀ァ向けるとはあんまりじゃねえか?」


「だあれが、亭主ぅ?!アンタほんとに頭おっかしいんじゃないのぉ?!」


不敵な笑みを浮かべてジャリっと地を摺り近づいてくる高杉にはビクッと肩を揺らす。



「こっ来ないでっ・・・!?」









煙管の香りが鼻腔を掠め反射的に刀を持つ腕を振り上げようとするが、それよりも早くその腕を高杉が押さえ込んだ。
目を見開くと同時に、視界がふいに暗くなる。それが高杉の腕の中だということに気づくまで少し時間を要した。
自分が置かれている状況を把握していくと同時に、の顔も徐々に赤くなっていく。

「はっ・・・離せっ!!///」


「無事でよかった・・・」


「!?・・・た・・・かすぎ?・・・」



いつもの大胆不敵な、ふてぶてしい態度とは全く違う、ひどく心底安心したような高杉の表情に
思わず除けようとしていた腕の力を緩めた。



パトカーのサイレンが近づく。
大通りからあの鬼副長の声が聞こえ、俺は軽々とを抱き上げゆっくりと大通りへと足を向けた。
ククッここで出て行ったらあいつらどんな顔するだろうなあ?
案の定、土方は俺と俺に抱き上げられているを心底馬鹿みたいな顔で見比べていた。
顔を真っ赤にさせながら俯いているを見て、抜刀するあいつ。


「高杉っ貴様!!」


「ちょっ副長!?違うの!!今回はその・・・助けられちゃった?」


なんだその不本意そうな言い回しと疑問系は。
くそっやっぱこのまま拉致してやるか。
「もう大丈夫だからおろして?」そう上目遣いで見られたらおろしてやるほかなく、
はいまだ俺を睨みつけている土方へと走り寄ると
おそらく同じ見廻りをしていたのだろう隊士と説明をしている。
それでも土方の視線は俺を捉えて離さねえ。
男に熱い視線向けられても虫唾が走るだけなんだよ、瞳孔開いてんぞてめえ。
路地口の壁に寄りかかりながら、余裕の笑みで煙管を吹かしてやったら
気にくわなそうな顔しやがった。ククッざまあねえ。

話がついたのだろう。土方に命じられて平隊士が数人、昏倒して伸びている浪士達がいる
路地へと駆けていく。

が戻ってくる。
なんだ俺と来る決心がやっとついたか?


「高す・・・・あ・・・・んと・・・・本当にありがとう晋助」


は?おいおい今俺の名前呼んだか?



「そうか、ようやく名前で呼んだということは俺のところに嫁ぐ気「左目つっつくぞ」


なんだよ、喜ばせやがって。






高杉はつまらなそうに小さく溜息を吐き出すと、ポスンとの頭を撫でた。
珍しくされるがままになっている姿に僅かに驚きを覚えながら。
後方でまだ土方が高杉を睨みつけていた。その手はいつでも抜刀できるように
柄に手をかけている。なるほど、このまま自分も捕らえるつもりか。





「8時の方向」


「あ?」


急に声のトーンを落としたに怪訝そうに顔を顰めるが、土方に悟られぬように
すばやく視線を走らせ、再びを見据える。
そこにはぽっかりと空いた空間
なるほどあそこは死角になる、パトーカーや警備が手薄だ。
チャキリとが鯉口を切る。
ゆっくりと煙管を吹かし煙を吐き出す高杉。



「今回だけだからね、今回だけ。特別。VIP対応。次は絶対ないから」


「ククッやっぱりお前が欲しいぜ」





キィィィン!!!




の刀が高杉へと振り下ろされる、それを余裕の笑みで押さえる高杉の刀。
グイッ
の腕を掴み引き寄せる高杉。触れる口唇と口唇。



あぁ、確か初めてこいつと会ったときもそうやったか



体制を崩したを軽く押しやると、高杉はひらり宙を舞いが指し示した方へと姿を消した。
地面にへたれ込むに、土方らが血相を変えて駆け寄ってくる。



「大丈夫か!!」


「すいません副長・・;やっぱまだ力がう「いや・・怪我はないな?てめーら!!奴はまだそう遠くに行ってねえはずだ探せ!!」












ごめんなさい、副長。
許してください。今回だけ・・・・


それから数日が過ぎた、副長の計らいで休みを押し付けられた私は久々に隊服に腕を通す。
いつもは毎日のように現れた高杉はあの日から姿を現さない。
まあ;静かで安心してるのよ?でもちょっと寂しい・・・かな?なんて。
違うの!!、無事逃げられたかっていうことよ!!
だって人がせっかく逃がしてやったんだから、どこかでのたれ死んでたら私の苦労が台無しでしょ?

しばらくは昼の見廻り中心。
相棒の総悟はまたサボってどこか行っちゃった;
銀ちゃん、新八君、神楽ちゃんの万事屋一行とばったり会ったので
一緒に昼食をとった。その後別れると、ゆっくりと見廻りを再開する。
うんっ今日も平和だv
あ、向こうから来るのはお妙ちゃん。お妙ちゃんも私に気づいたようでにっこりと手を振ってくる。


「あれ?お妙ちゃん今日はお仕事お休み?」

「えぇ。今夜は奮発しようと思って卵2パック買って来ちゃった」

「ふ・・ふーん;」

「ところで、さんも大丈夫?そのテロリストからストーカー受けてるって銀ちゃん言ってたから・・」


急に不安そうな顔を向けられて、思わず目が丸くなった。
あ、銀ちゃんが話したのね。



「あーうんうんっ大丈夫!!最近出なくなっ「よぉ・・じゃねえか」



私とお妙ちゃんが立ち話をしていたのは、ちょうど細い路地裏の前で。
そこから現れた隻眼の派手な着物姿の男に私は一瞬息が止まった。
高杉はお妙ちゃんには目をくれずに、私の前に立つとそっと頬を撫で上げる。くすぐったいんですけどぉ;




「高杉てめぇー!!!また屯所に忍び込みやがったなあぁぁぁぁ!!!」


凄まじい土埃をあげて、副長先頭に真撰組がこちらへと向かってくる。
高杉は一瞬面倒くさそうに舌打ちすると、掠めるようにの口唇を舐めあげた。



「あとでな」


「あ・・うん///」




「こらあぁぁ!!!!そいつをとっ捕まえろぉぉぉぉ!!」



「あぁ;そうだった;」




一瞬、真撰組隊士という肩書きを忘れてマシタ;お妙ちゃんに手を振ると私も高杉を追跡するために
走り出す。




「晋助ぇ!!神妙に捕まれー!!」


「お?も参戦か?嬉しいぜぇやっぱ愛されてんな俺」


「うんvまずはその腐った頭洗濯してやるよ、漂白剤一本使ってな」


「なんだよ俺の心はまっさらお前にゾッコンだぜぇ?いっそのこと二人で漂泊しようぜ」



ガシッ



いやいや私はあんたを追いかけているんですけど?
なんか腕掴まれて肩に担がれてんですけど?!




「ちょっ何?!なんでこんな展開?!」


「心配すんな、辞表は郵送でかまいやしねえよ」


「すんませんうちは寿、諸事情おろか定年すらないんで!!切腹オンリーなんでって助けてぇぇ!!


「おまっ何拉致られてんのぉぉぉぉぉ!!」















私に纏わりついたストーカーは

抜け目なくて、

優しくて

人が油断している隙をついて狙ってくる計算高い

笑顔がたまらなく素敵な奴。





そう


あいつの名前は













指名手配人・過激派攘夷志士−高杉晋助















私と晋介の関係はまだまだこのまま。

進展なんて考えたこともないけど、こんな関係も良いと思う。




















思いつきな、エロリスト高杉ストーカー。
土方さん出張りすぎ(笑)妹みたいな存在なんでそらあもう心配なんです。
(2006/12/25)