攘夷志士だった私が


今や真撰組幹部よ?


普通ないだろその設定



なんだかなー











































+昔の戦友(友は)今日の下僕なのよ女王様で悪いかしら?+



























夕焼けに染まった空を屯所の縁側に座りながら見上げれば、煩ったい天人の船が
珍しく感傷に浸る私のこのムードを見事に玉砕してくれる。


「くそう、あれ亞羅猪熊星の船だよね。今度ミミズのビン詰め送ってやる」


「いきなり何言ってんのお!!それ嫌がらせえぇ?!しかも何その低レベルで悪質な嫌がらせ!!」


「低レベルとはなんだトシ。私の貴重なまったり思い出に耽り眺めているビジョンにあんな
悪趣味な船が入り込むたあ切腹ものを通り越して打ち首ものだ」


「打ち取るなあぁぁぁ!!個人の感傷で国を危機にさらさないで!お願いだから!!」


「・・・・ちっ」


「!ち?!今ちって言ったか?!頼むぜマジで!!お前この前、羅玖駄星の大使に
「ノロノロ歩くな私に歩調合せろ」って回し蹴り食らわした前科持ちなんだからあぁぁ!!」



目を据わらせのそのそとミミズを探し始めるに、隣に腰をかけていた土方が
真っ青になりながら背後からを羽交い絞めにして必死に立たせようとする。
必死の形相の土方に、は涼しい顔ではっはっはと乾いた声で笑うが、目はめっちゃくちゃ怖い。



「冗談だートシー。落ち着けー」


「いやっ!その目はマジだ!しかも感情こもってねぇよ!!」


「はっはっはー。お、そろそろドラマの再放送が始ま・・「副長!!隊長!!」


























感傷に浸る夕焼けが終わり、星々が空を埋め尽くす頃。
土方をはじめとする真撰組はある長屋集落を囲むように、家屋や廃材などの影に隠れていた。
夕方縁側でほんのひと時の・・・休息とは少し言い難いがひと時の休息に煙草を取り出すも、
それは緊迫した山崎の声で崩される。




高杉が何か企てているようです



その報告に土方とはスッと目を細め、座敷に置いていた刀を手に取り、
隊を編成し高杉の一味が頻繁に出入りしているという長屋を取り囲む。
空家に身を潜めた土方と沖田、そしてと山崎は息を殺しながら狙いの長屋の様子を伺う。
明らかに不振な動きの男が数人、数分感覚で周囲を見渡しながら入っていく。



「こらあ・・当たりみたいだな。あいつ高杉の側近の一人じゃねえか」


土方の視線が長屋から沖田と山崎に向けられる。二人は無言で頷くとサッといつでも
抜刀できるように整えた。


「って、おい・・・・は?」


「何言ってるんですかィ、ならそこに居まさァ・・・・・・アレ?」


「あ・・・天板が外れてる・・・・・」













「「「・・・・・・・・・」」」






「なあ・・やばくね?;」


「やばいですねィ」


「俺、今のうちに救急車20台ほど手配しときます」
























「・・・・おい、てめえ。嗅ぎ付けられたな」


「へ?」



ぴくりと高杉の眉が動き、場所を手配した男睨み付けた。
男が間抜けな声を上げた同時に、戸が乱暴に押し倒される。





「真撰組だ!!高杉ィ!!神妙にしろぉ!」


なだれ込む黒い集団に、高杉の前に男たちが立ちはだかり怯むことなく刀を抜く。


金属がぶつかり合う音に、鈍い肉を切る音を背後に聞きながら高杉は窓から逃亡した。
しかしそれに気づく者はない。


「ほんと!お前ら頼むからおとなしく捕まって!!カツ丼奢るから俺スペシャルで!!」


なんか妙に切羽詰ったしかもお願いしてるかのような叫び声に、一瞬ハ?となるも
はいそうですかと捕まるわけもいかない。
おそらく上から成果がないと重圧でも受けているのだろう。



「はっ所詮幕府の飼い狗か」



しかし、それは全く違う意味であったのだと、高杉はだいぶ後に気づくのである。
そう・・・今日の捕り物に参加しているある人物が彼らを慌てさせていたということに。









「た〜か〜す〜ぎ〜い」



低音と黒い殺気にサッと視線を前に戻すと同時に高杉から血の気が一気にひいた。



「げ」


「げ。じゃあねえよぉ高杉ィ。てめえあれだよなあ?あれだよ。一ヶ月と30日前
お前私に何って言った?ぁあ?」


「二ヶ月前って言えよ、おい」


「口答えすんなあっ!!」



ザシュッとの方が振り下ろされ、寸前のところでかわす。
しかし、それはに読まれていたようで刀を持っていないもう片方の手が高杉の胸倉を掴んだ。
鼻先が微かにつくほどに迫った、の整った顔に思わず息をのむ。
にっこりと微笑む笑顔は惹かれるものがある。しかし高杉の背中にぞぞぞと冷たいものが駆け巡るのは気のせいではない。



「かわゆ〜く涙を滲ませながら私のつま先に平伏して誓ったあの言葉は嘘偽りだったのかしら?晋助v」


「ッ・・・・」










「木曜日はね、見たいドラマの再放送がある日なのv
だから間違っても木曜日にテロなんて起こそうとすんなよコラ。誓え俺様に誓い立てろや




「はい;誓います 様」












「今日は木曜日だろーがぁ!!また奥歯ガタガタ言わせて泣かせてやろうか、くぉらぁ!!!!」



ドッガッシャアアアア



高杉の体がふわりと浮いたと思ったらそのまま瓦の屋根の上に叩きつけられる。


「ぐはっ」


背中から体全体に響く激痛に、高杉は意識が遠のいていった。








!!高杉はどうだ?!」


「悪りい!!逃げられた!!捜索していくから先帰っててー」


「わかった!」







屋根の下から土方の声がする。
屋根の淵までいって見下ろせば、見事な奇襲が効したのか一人も逃さなかったらしい。
高杉一人を抜いて。
両手を合わせながら「ホントごめん!!」と謝るに、土方は気にすることなく怪我はと問う。
無傷無傷と手のひらをヒラヒラさせると納得したように頷くと、報告はしろよーと声をかけ
土方をはじめ真撰組隊士達はパトカーの赤色灯を光らせながら帰っていった。




「晋助、起きろ。皆帰ったからさ」

「汚職警官かよお前は」

「何、もういっぺん寝る?」

「嘘デス。ドーモスイマセン」


口を引き攣らせる高杉にケラケラと笑うと、目線を合わせるように屈みこみポケットから
ハンカチを取り出して、それを高杉の口元へと軽く押し当ててやる。


「切れたか」

「うん。ごめんね。学習能力ないだろうなと思っていた晋助が、本当に学習能力なくて
私のささやかな楽しみを踏みにじってくれたからちょっとプチッてキレちゃったv」


「テヘとかいうなよ、真顔でテヘとか」


「デヘv」



(怖ぇっ!真顔でしかも目据わらせながらデヘとか抜かしやがった!)



血をふき取り終えるとハンカチをしまい、慣れた手つきで高杉の左目に巻かれた包帯をゆっくりと外す。
巻き取る度に頬や頭に触れるの手の感触に、高杉は身を任せるように目を閉じた。




「ちゃんと毎日包帯替えてるの?」


「面倒くせえ」


ほっほう。晋助ったらそんなに左目に細菌養殖したいんですか。どれ私もひとっ走りDNA研究所から
正体不明の細菌を盗んできて晋助に移植してあげようかしら。テロリスト・細菌培養兵器高杉ってかっこよくね?」


「替える、一時間置きに替える・・・・・・あ?何見てっ・・!!」


包帯を取り終えたがジッと見つめていて、なんとなくそれが居心地が悪く睨み付ければ、
今では視界はおろか感覚すらない左目に、ゆっくりとの口唇が降ってきた。
驚きに一瞬右目が見開かれる。まるでまじないをかけるように何度も降り注ぐ口付けに、
高杉は押しのけるでもなく嫌がることもなく、おとなしくされるがままにした。




「なあ」


「ん?」






「幕吏なんざやめっちまえ、俺と来い」

































なんで真撰組なんだよ




























なんで幕府に屈するんだよ


































なんで
































あの時俺と来なかったんだよ





































微かにの動きが止まった。
それを逃すことなくの腕を掴み引き寄せ自分の胸の中に落とし入れる。
きゅっと抱きしめれば、そっと回される腕に目を閉じた。



「ばーか晋助」



弾かれるようにして視線を落とせば、自分の腕の中で嬉しそうに目を細めていた
が悪戯じみた笑みを浮かべながら見上げている。



「私が上に脅されて幕府に屈してると思ってんなら大間違いよ。
真撰組だってそう。殺ろうと思えばいつでもできるの。でも近藤さんやトシ、総悟は
大切な仲間だからそんなことしない。私は自分の意志であそこにいるんだ」



「・・・・悔しくないのか」


「あれ?ほんとに何か勘違いしてるの晋助?」







クスリと笑って高杉の胸から体を起こすと、隊服の内ポケットから新しい包帯を取り出す。
優しい眼差しで高杉の頬をそっと撫でると、静かに包帯を巻き始める。
































攘夷志士だった私が幕府のしかも



主に対攘夷志士に結成された真撰組に属するのか。



























たくさんの仲間が無残に転がっていた

体に纏わりつく血が自分の者なのか、他者のものなのかもわからない痛覚。

あの地獄を生き延びてなお今も牙を研ぎ澄ます者に、権力に溺れた高官共の薄汚れた手を触れさせたくなかった。


仲間が望んだ思想をその薄っぺらな権力で踏みにじるな

仲間の想いを己は力のないくせに簡単に命じるだけで踏みつけるな



憎い
悔しい
許せない




だから私は昔の仲間に立ちはだかる。
奴らの軽薄な手で始末されるのなら、私のこの手で終わらせてやる。



それが彼らへの償いであり餞。



















「だったらサッサと俺を殺れよ」


「んー?だって今日は何にも被害ないし、実行前だったし。
それにヅラもいいんだけど、やっぱり晋助の方がからかい甲斐があるしかわいいしぃ」


「なんか殺られるまえに殺してやりてえんだけど」


「涙目になった時なんかめっちゃ萌え!だし、意外とかわいいもの好きだし
あんたこの前くまのヌイグルミ抱きしめて寝てたんだって?また子ちゃんが言ってたわv
相変わらず物抱きしめて寝るとよく寝られるのね」


「マジ殺していいか?殺っていいよな?っつーか来島もグルかよ!」


ばらしやがってあいつ絶対殺す!と舌打ちをするが、そんな気がさらさらないことは一目瞭然だ。
いや、きっと私にしかわからない高杉の表情。



「それに・・・・・」


「なんだよ」























高杉の包帯替えるのけっこう好きなんだよねぇ




































「なあ」


「ん?」







頬が妙に熱くなるのを感じて、それを悟られないように膝立ちになっているを抱き寄せた。
の胸にちょうど顔を埋める形になっちまったけど、こいつは何も言わず抱きしめてくれた。














「少し寝かしてくれや」



「私は抱き枕ですかーコノヤロー」










さらりと髪を梳かれる感触に、ゆっくりと目を閉じた。



















「ってちょっ待て!!私屯所戻らなきゃやばっあと15分で戻らないと門閉まっちゃう!!」


「くー」


「!寝てるのか!?マジで寝てるのか高杉!!ちょっお前それはないだろう。
つか、なんか今抱きしめる力強めただろう?!帰るなってか?帰さねえってか?」























なあ




やっぱり俺と来いよ




















どっちが女王様

















でへvとうとうやっちゃったでへv
拍手コメントに続く銀魂夢!すいません私の中での高杉はクールだけどヘタレです。
かわいいものが好きだと疑いません。そんな高杉が大好きです(妄想走ってますよお前さん)
じつは昔攘夷志士、現在真撰組幹部というコノ設定は、もっと複雑で最初は連載に持っていこうかと
思っていたんですが、なんか最近連載に偏りがちだよなあと頑張って短編。頑張ったの!頑張ったの!!
そんなわけでこれからも思いつきでGO!!

2006/12/14執筆