地球渡来2日目。
シンポジウムまであと3日。
それまでになんとしてでもあいつの陰謀を阻止しなければ、
アクエリアは確実に滅ぶだろう。
+Princess more than Princess 4+
「くっはー!!いい天気〜散歩日和だねぇvvv」
「あ、さん!おはようございます!!」
早朝、今日も町へと出かけるため準備を整え、離れの玄関から出たところで思いっきり伸びをするに、
ホテルの方から歩いてきた近藤がを見とめると、少し歩調を早めてやってきた。
もそんな近藤にニッコリと手を振る。
「おはよっv近藤さん!」
「おでかけですか?」
「うん、ターミナルに停泊させてる船に残ってる兵士達のことも気になるし、
また町も見に行きたいしね」
そう答えるに、近藤は感心したように頷きながらも思い出したように顔をあげた。
「そうそう、山崎から聞きましたよ!シンポジウムのために皇女様自ら現状を把握しておきたいと、
それでさんを通して視察させていると。とても熱心な方ですね!我々とすれば
ありのままの現状を知ってもらえるということはとても嬉しいことです」
そうニッカリと笑う近藤に、もつられて笑う。
そして刀を腰の後ろに帯刀するに、近藤はハッとして案内をつけようと周りを見渡す。
それには丁寧に断りを入れた。
「しかし」と渋る近藤には静かに口を開く。
地図は粗方把握していること、今日はターミナルに寄る用も入れて、あちこちへと
足を運ぶことになるだろうから、一人の方が動きやすいこと。
それに近藤も頷くしかなく。
「町は平和といえどもまだまだ危険ですので、くれぐれもお気をつけて」
「うんvありがとう!!」
そう近藤へと再び手を振るとはホテルを後にした。
まずはターミナルへと向かう。
停泊倉庫へ赴くと、そこで待機していたアクエリア軍の兵士達が驚いたようにに最敬礼をした。
まさか皇女側近が訪れるとは思いもよらず、兵士達は驚くばかりだ。
船の整備状況や兵士達の体調を確認すると同時に、兵士達と談笑する。
アクエリアの兵士達はアクエリアの者もいれば、地球から来たものまた異星から来た者など
人種も広く話のネタは尽きない。
そろそろ行かなきゃと腰を上げると、兵士達は気をつけてとを見送った。
ターミナルを出るとそのままふらふら街へと向かう。
見るものすべてが新鮮で、は思わず小さく笑みを漏らした。
「嬉しそうですねィ」
「つーか一人ニヤニヤしてんの怖ぇよ」
と、背後から聞き覚えのある声がして、「ほえ?」と間抜けな声をあげて振り返れば、
そこにはと同じようにニヤニヤした沖田と、呆れた表情の土方がの後ろに立っていた。
「あれ?トシに総悟。見廻り?」
「いーやー。俺達の仕事は今皇女の警護だけで手一杯でさァ」
「といっても雑用がちまちまあってな。ちょっくら警察庁に顔出してきたんだよ」
「ふーん」と頷くに、沖田は軽く首を傾げた。
どうやら一人だけのようだ、昨日は山崎を案内につけていた。昨日の今日で
もう一人で出歩いているのかそう問えば、は小さく笑う。
さきほど近藤にも言ったように再度口開けば、感心したように声を上げる沖田。
「ってあれな、仲間思いですねィ」
「?そう・・見える?」
「丸見えさァ。側近クラスとなれば兵士はただの部下のそのまた部下だろィ?
俺が今まで見てきた星の奴らは、そこまで下のことを気にかけてなかった
は変人でさァ」
ニヤニヤ笑う沖田に、はちょっとムッとした表情を浮かべると「変人で悪かったわね」と
チロッと舌を出してみせる。
「側近だからこそ、星を守護する兵士達と意見を交わすべきじゃない?
まあ・・アクエリアは他の星に比べて、まだまだできたての国家だからね。
だから余計にそうなっているのかも」
そう口を尖らせて呟けば、土方は感心したような表情をした。
と、何か思い出し方のように小さく声をあげる。
「そういや気になっていたんだがよ、なんで国王のガキ共は顔見せねえんだ?国王もその后も新聞やテレビで
報道されてるのに、ガキ共は皆ローブですっぽり隠してるじゃねえか」
ガキ共という言葉に、は小さく苦笑いする。
(こいつ、私が皇女だといったら絶対きょどるなv)
沖田も気になっていたようで、の言葉を待っている。
小さく息をつくと、脳裏にアクエリアの習慣を思い出しながら静かに口を開いた。
「もともとアクエリア先住民に習わしがあってね、結婚前の女は人前に出る時は薄いヴェールを被って
顔を見えにくくするというね。で、それを国王が取り入れたわけ。
もっともほかにも理由があって、主に国務に関すること。となるとここからはトップシークレットというわけ
なのよトシv」
「ほー・・・俺だったら顔も知らねえ女と一緒になるなんてごめんだがな」
「あー、わかるわかる」
「じゃあ、とあのじーさんは皇女さんの顔知ってるんですかィ?」
沖田がキョトンと首を傾げた、土方も「そうだそうだ」と思い出したようにを見やる。
「お前は皇女の素顔知ってるんだろ?側近だしよ」
(うんv鏡毎日見てるもんーvvなあんて言わないけどねv)
「まあ・・ね」
「なっ皇女さんってどんな顔でィ?メス豚?」
「おまっ何言ってんだよ!!声はかわいいよな・・どうなんだ?」
興味津々な沖田と土方の表情がに注がれる。
は「ううーん;」と引き攣った笑みを浮かべると、ぽりぽりと人差し指で頬をかいた。
ポンっと脳裏にヘルガのかわいらしい笑顔を思い浮かべる。
アクエリア人特有のマリンブルーの瞳がとても綺麗なヘルガ。
それを思い浮かべると同時に満面の笑みを浮かべる。
「うん、姫はとてもかわいい方よv寝顔なんかもうっ抱きしめたいくらい!!
間違っても姫の素顔見ようと思うなよ、国際問題だからな?おい」
「「はい;」」
ほわんと夢見心地そうに想像している沖田と土方に、声を1トーン低くして
冷気を伴った笑みを向ければ、二人は引き攣った表情で頷く。
それに満足したように頷くと、はあっと声を上げた。
「ねえーお腹すかない?」
「そろそろ昼時ですねィ」
「どっかで食って行くか、何食いたい?」
「おいしいもの!」
「お前、それ答えになってねえよ」
「カツ丼土方スペシャルだ」
「わーvv・・・・この乗っているのは何?」
「何ってお前、マヨネーズに決まってんだろ?」
「マヨネーズ?あ、これがマヨネーズっていうんだ。食べ物なんだねv」
「何おまっ、マヨネーズ知らねえのかよ!」
「ー!!いけねェいけねェヨォォォ!!そんなもん一口でも口に入れたら土方に犯されちまうー!!
皆ー聞いてくれィィ!!土方さんがー土方さんがを手篭めにしようとっ俺はもうどうしたら」
「どう聞いたらそっちに話が行くんだぁあ!!!そうかお前も土方スペシャルが食いたくて
拗ねてんだな!そうなんだな!!よぉしありがたく思え、奢ってやる!」
「んな、ミジンコでも食わねぇ汚物を誰が食うかってんだィ、土方コノヤロー死ね滅べ」
「お前が滅べぇぇぇ!!何お前何様のつもりぃぃぃ?!」
「俺様」
「マジでムカつく。お前ちょっと外出ろほんっと」
「ほらほらっトシも総悟もご飯中に騒ぐんじゃないって。せっかく美味しいものなのにっ」
「ってお前何一人でサクサク食べちゃってんのぉ!って・・・あれお前それ・・・」
「うげ;なんてもん食ってんだィ?黄色くなりやすぜィ?」
「なんねーよ!!ってお前それ平気で食ってる?」
「へ?何言ってんのよ。トシがおいしいって進めてくれたんでしょこれ?
あ、ちょっとマヨネーズ取ったけど、美味しいよこれ!!」
ちょっとかけ過ぎだからと漬物が乗っていた小皿に移したマヨネーズをてへvと
笑いながら持ち上げてみせる。
それでも美味しそうに箸を進めるに、土方は目が放せないでいた。
(確かに俺スペシャルは美味い。これは確かだ。)
しかし、彼の嗜好はどうも周りには酷評であり、マヨネーズがてんこもりに
乗ったそれをみるだけで皆卒倒するのだが、
目の前のは僅かに頬を紅潮させて、もくもくと食べている。
「私さーマヨネーズって何かなってずっと気になってたのよー」
香物をつまみながらしみじみと口を開くに、土方はハッと我に返って
些か動揺したようにを改めて見やった。
「アクエリアにはないのか」
「うんvもう初めてのことばっかだよ?マヨネーズも葛餅も、食事に出た
肉じゃがも納豆もみーんな向こうにはないの。
あ、パフェってのも。そーいえば銀ちゃんとこいつ行こう・・・」
「「ちょっと待て」」
昨日別れ際に「今度葛餅よりも美味しいパフェを食わせてやるから、いつでも来い」って
言ってくれてたんだよねぇ・・としみじみ口開くに、ぴしりと土方と沖田が固まった。
ん?と首を傾げるの目に映るのは、訝しげに自分を見つめる土方と沖田。
「え・・何?パフェって食べ物じゃないの?」
「。お前今銀ちゃんって言ったか?」
「うん?・・うん銀ちゃん言ったよ」
「万事屋の?」
「うん、万事屋銀ちゃんの坂田の銀ちゃん。あれ?二人とも知り合い?そういえば退も
銀ちゃんのこと旦那って親しそうだったっけ?」
にっこりと「うん、銀ちゃんだよ」と微笑むに、土方と沖田は密かにここにはいない
銀時に殺意が沸いたとか沸かなかったとか。
平静そうに見える土方と沖田であるが、実は街中でを見かけた時から二人の
心拍数は1.5倍加速していた。
昨日の真選組とアクエリア将軍との対立そして、近藤や源慈之介を交えての談笑で
土方と沖田は密かにに好意を抱いていたのである。
もちろん、そんなことは表に出すことはしない。あくまで職務なのだから。
それでも顔を見るだけで、話をするだけで心が弾んでしまう。
だからそんなの口から、見知ったも何も事あるごとに顔を突き合わせ職務の邪魔を
してくれる男の名前が紡がれたときは驚きを通り越して、殺意が沸いたのは当然かもしれない。
「二人とも知り合い?」
「まあな」
「互いに血を流し合った仲でさァ」
「顔引き攣ってるよ?」
「「気にするな、くしゃみが出そうなんだ」」
「手で押さえてね」
食事を終えホテルへと足を向けながら、他愛の話しで盛り上がる。
は地球のことを聞きたがり、土方と沖田はアクエリアの話を聞きたがった。
冗談を交えた話が三人に笑いを与える。
と、瞬間は小さく「あ」と声を上げて立ち止まった。
それに合わせて土方と沖田も足を止める。
「どうしたんでぃ?」
「?」
むーむーと腕を組んで唸り始めたに、土方と沖田は顔を見合わせると
の顔を覗き込んだ。
「ーどーしたんでぃ?」
「あ、ごめっもう一つ用事あったの忘れてた;」
「んだよ、忘れてたのか?間抜けだな」
ポンッと手を打って顔を上げるに、土方は呆れたように煙草を吹かす。
そんな彼にへへへと笑うと、あとでと別れを告げて来た道へと踵を返した。
土方と沖田も気にすることなく再び足を進める。
踵を返したの表情が一瞬で硬質なものへと変わったなど知りもせずに。
数歩足を進め肩越しに土方達を見やれば、彼らは穏やかな足取りで往来を歩いていた。
はすぐさま近くの小道に足を進めると、ある程度奥に入ったところで跳躍し、
家屋の屋根へと躍り出た。
「とうとう動きだしたな」
さきほど3人で歩いている時、は視界の隅であるものを捉えた。
反逆の疑いがかけられている、ある者が人目を拒むように小道へと入っていくのを。
それはが地球に来る前から、穏便に、気づかれぬように調査してきた人物。
高い地位にいながら、富と名声を持っていながら、多星の者と手を組みアクエリアを
滅亡させようと企むあの者を。
慎重な調査の結果、この地球訪問で姫をかどわかし自分の有利なるよう動き出すということ。
となれば、この星でなんとしてでも奴の所業を暴き、捕らえるしかない。
屋根の上から足早に歩く男の姿を捉える。
体格の良い、ローブを着て顔を覆ってはいるが明らかにそれが男性であるとわかるがっしりとした長身。
微かに見えるエメラルドの瞳は、どこか残忍さんを漂わせている。
の口角が僅かに上がった。
「お前の野望。潰してくれるぞ、カザギよ」
カザギはまっすぐに港へと向かっていた。
昨日、山崎が教えてくれた倉庫郡が立ち並ぶ第三セクター港。ヘルガの調査でも
ここにいくつかの不穏分子が隠れていると情報があった。
カザギの動きから目を離さずに屋根の上から後をつける。
やがて、港に出るとカザギは辺りを伺いながら、一つの古びた倉庫へと滑り込んで入った。
それに目を細め、注意深くその倉庫を見やる。
三階建ての古いとても古い倉庫だ。海に面した部分は船のドッグになっているようで
大きく開かれている。
屋根には明りとりの窓がいくつかあり、何枚かはガラスが割れてたのかなくなっていた。
は音を立てずに屋根へと飛び移ると、割れた明りとり窓からそっと中の様子を伺った。
三階建ての倉庫は吹き抜けとなっていて、二階・三階部には壁伝いの鉄製の錆びた回廊があり、
螺旋階段がところどころに存在している。
やはり船の修理を主に行う倉庫のようで、一隻の大きな船が納まっていた。
船体の鉄板が何枚か剥がされ修理を待っているようだ。
そしてその船の陰に見知った男をとらえた。カザギだ。
何人かの人も見受けられる。周りに見張りがないことを確認すると、するりと窓をくぐり
足音を立てずに、カザギ達とは反対の船の影へと降り立つ。
体制を低くしながら、そろりそろりと近づく。
一つのコンテナに背中を預けると、ちらりと角からカザギを伺った。
「これで獄楽園と手を結べばアクエリアも赤子同然!!」
「けけっカザギの旦那も人が悪いですなぁ!!」
カザギが手を組んだのは天人だと思っていただったが、今の目の前で
カザギと固く握手を交わしたのは、地球人、つまりはと同じ人間であった。
髭面のどっしりとした卑下びた薄笑いを浮かべる男はカザギから手を放すと、近くにあった
木箱を開ける。
「こいつさえあれば、アクエリアも京都も木っ端微塵だぜぇ」
「ふんっ何言ってるんだ。アクエリアそのものを消してしまっては意味がない。
アクエリアの中枢、皇族と軍隊そして行政機関を潰すだけでいいのだ。
わかっているのかね?」
「へっ、わかってますぜぇ?。で?お姫様の方はどうなんですかい?」
「案ずるな。アクレシア皇女が星に不在のこの時を狙って仕掛けるのはなんのためだ。
悲しみにくれる皇女を慰め遣わせば、もはや手に落ちたも同然。そして私が星を握ったのも同然だ」
「けけっ旦那も相当悪いお人だ。さて、この兵器は投下された半径500キロ内に
細菌が霧散される、アクエリアのセントラル機関もそんなもんだ。
出航は明日早朝。アクエリア直行の便だ、それじゃないとシンポジウムに間にあわねぇ」
「いいだろう。そして京都殲滅の件だが・・・」
もはやカザギの言葉など耳に入らなかった。
震える体を何とか堪えながら、は今聞いたことが嘘であると必死に願った。
反逆の疑いがあったカザギ。まさかここまで大掛かりなことを仕掛けているとは思わず、
は一気に思考が麻痺した。
せいぜい反乱分子を集めクーデターを起こす程度にしか考えてなかったのだ。
細菌兵器を使い、アクエリアを保持する要である皇族・軍機関を潰すだと?
しかも決行が明日の早朝!!
は思わず唇を噛んだ。どうしたらいいっ!!悠長に構えすぎた。
この地球訪問で何かしら動くだろうと思っていたが、まさか最終段階だったとは。
は気づかなかった、脳をぐるぐる駆け巡る思考に、焦る心拍数に、
コンテナ上から忍びよる陰に気づけなかった。
「ひゃはっ!!鼠がいるぜぇ!!」
「っ!!」
気づくと同時に体が動いたのは正解だった。
が隠れていた場所にはコンテナ上から降下してきた男と、のめり込んだ刀。
しかし、
「これはこれは・・・皇女側近の様ではないですか?
このような場所にどうされた」
吐き気がするほどの薄笑いを浮かべたカザギがを見据えていて。
小さく舌打すると、素早く忍刀を抜き構える。
「カザギ。どういうことだ」
僅かに体制を低くし、鋭い視線はカザギをとらえながらも周りを囲む男達への気を放つ。
「どうもこうも。見たまんまですよ・・・・どぶ鼠」
「っ・・・そうか。それが貴様の本性というわけか」
「くくっ安心して冥界に召されよ。皇女のめんどうはこのカザギが見る」
の周りを囲んでいた男達が一斉に武器を構えた。
あぁと思い出したように、カザギが指を鳴らす。
「あの老いぼれジジイもすぐに後を追わせてやろう。寂しがることはない」
消せ
カザギの低く冷酷な言葉が妙に倉庫内に響いた。
それを合図に狂ったように声を上げながら飛び掛ってくる男達に、はスッと目を閉じた。
両手に構えた刀に力を込めて、跳躍する。跳躍するときに3人、着地と同時に4人一気に斬り倒す。
カザギと握手を交わしていた男が焦ったように声を荒げた。
「何をしている!!女一人に梃子摺るな!!」
男の声に、尻込みしていた男達が再び飛び掛ってくる。
一気に体制を低くするその反動で男達の懐へと飛び掛っていく。
ごろつきの男達と、忍びとして厳しい鍛錬をしてきたの力の差は歴然で、
次々と山になっていく男達にカザギは苦々しく舌打をして、腰のホルダーから
獲物を抜き出す。
「ちっ使えん駒だ」
ドォン
倉庫内に銃声音が響き渡る。
次の瞬間腹部に走る鈍い痛みに、は思わず顔を顰めた。
斬りかかってくる男を斬りつけ蹴りどかすと、揺れる視界、カザギがこちらに銃口を向け
その銃で腹部を撃たれたと気づくまでしばしかかった。
腹部を押さえて蹲るに、男達はじりじりと詰め寄る。
揺れる視界の先に不敵み笑うカザギの姿が妙に鮮明に見え。
(こんなところで死ぬわけにはいかない!!)
腹部を押さえながらふらりと立ち上がる。片手で刀を構えながら、
近寄る男達を睨みつけた。
「カザギ、アクエリアに牙を向けたこと、死ぬまで後悔させてやる」
「あぁ、せいぜい呪ってみるがいい。そのたびに消してくれる。殺せ。・・・・っ!!」
余裕の笑みでを見据えていたカザギの目が見開かれた。
男達が飛び掛る瞬間、は刀を収めると、海に面した方へと跳躍しそのまま海に飛び込んでいった。
「っ!!追え!!そして確実に殺せ!!」
どれくらい時間がたったのだろうか。
すでに人気がなくなった倉庫、海に面したところで小さな気泡が上がった。
「ぷはっ・・はあ・・・っつ」
すでに倉庫がもぬけの殻だと見渡すと、ゆっくりと海から這い上がる。
アクエリアを滅ぼすという細菌兵器もすでになく。
「くっ」と歯を食いしばると、はこのことを源慈之介達に伝えるべく素早く踵を返した。
「っ!!」
「お前さん、どこまで話を聞いていた?」
海中を泳いで遠くへ逃げなかったのは、撃たれた腹部から血を出さないようにするためと
カザギ達の目を眩ますことだ。
まさか逃げずにその場に留まるとは誰も思わないであろうと思っていたのに、
踵を返したは、そこに佇む人影に息を呑み、瞬間で抜刀し構える。
派手な赤紫色に蝶をあしらった着流し、笠を目深に被り表情は伺えないが、
発せられた声が男であると認識させる。
僅かに覗く口がゆっくりと弧を描き、は背中にさきほどまでは感じなかった寒気を感じた。
さっき大人数の男達に囲まれても感じなかった悪寒、恐れ。
獄楽園の用心棒か。
は体制を低くさせると同時に、駆け出した。
「アクエリアには手出しさせん!!京という都も同様だっ逆賊めがっ!!!」
ふわりと穏やかな風が吹くように男が横へとそれる。合さる視線にハッとする。
不敵な笑みを称えた隻眼がを捉えていた。この男・・・どこかで・・・。
バッと体制を整えようとするだが、急に腹部に激痛が走って蹲ってしまった。
影が落ちてハッと顔を上げれば、派手な着物が視界を埋める。
「ちっと寝てろや」
「っ・・・」
首の後ろに手刀を入りは力なく倒れこんだ。
閉じられる視界に男の不敵な笑みだけが妙にこびりついて。
ああ・・早くこのことを爺とヘルガに・・・・
父上にお伝えしなければ・・・
そして意識が途絶えた。
やっとやっと書けた続編。下書きはあるものの、なかなか
文章にするのは難しいです。とりあえず後半の人物は高杉な!!
2007年5月1日執筆