「この通りを抜ければ、港に出るんだ。こっちは主に漁業港だね」
「倉庫群があるのはこっち?」
「そう、第三セクター工業用港ってやつ」
「ふーん・・・漁業港では主になにが取れるの?」
「んと・・・・」
+Princess more than Princess 3+
山崎とともに町へと出てきたは、山崎の言葉に小さく頷きながら、時折メモをする。
そんな様子に山崎は感心したように声を上げた。
「それって、今度開催されるシンポジウムに関すること?」
「まあねー。資料は前もって渡されてはいるけど、やっぱり自分の目で確かめてから行きたいのよ。
・・・・・って、姫がvでも一国の皇女がそうホイホイ出歩くのもあれでしょ?
だから私や源慈之介が極秘で調査するのよ」
「へぇ・・」
(やっば;今うっかり話すところだったよ;よしっばれてないね。
・・・・・漁業関連の港はどこも賑わっているから、怪しいのはこっちの倉庫郡がある港か・・・。
明日一人で来てみる必要があるな)
そう一人ごちてメモを胸ポケットにしまいながら、は隣の山崎に悟られぬように小さく息を吐いた。
漁港付近を通り過ぎると、二人はかぶき町へと入っていく。
なんでも犯罪が一番多発してる区域であり、また反政府の攘夷志士も多く潜伏しているところだという。
黒の真撰組隊服の山崎に、もアクエリア皇族側近制服の黒のロングコート。
そして二人が携えているのは一般市民では持つことは許されていない、刀。
道行く人はどこか不安そうに、山崎とを遠くから見つめている。
(そういえば、真撰組ってめちゃくちゃな捕り物をするのでも有名だったけ?)
そうぼんやり思い出しながら、ちらりと山崎を見やる。
忍びだから不振感露の視線にはとうに気づいているだろう。だが、山崎は涼しい顔で足を進めている。
なるほど、びくびくしながら歩いていては、組全体の信用にも関わるということか。
「っと・・・ここらへん?葛餅餅が美味しいって評判のお店って」
「うん。それってお姫様へのお土産?けっこう趣向渋いよね。ふつうお団子とかにいくと思うけど」
「あ、これは源慈之介がね。好きらしいのよ葛餅」
「いいねぇ葛餅。たっぷりかけた甘〜い黒蜜に餅が隠れるほどかけたきな粉、それをいい塩梅で絡ませながら
零さぬようにかつ、きな粉が喉に突っかからないように口へと運ぶドキドキ感と満足感・・・・・
お姉ちゃん、葛餅っつったらやっぱりこの先の久寿庵よ。でも銀さんはパフェの方が好きだけどな」
「・・・・・・・・・どちら様?」
「旦那!!」
あまりに自然に混ざってきた第三者の声に、も自然に関心の相槌を打ちそうになった。
ハッとして声のした方を見やれば、の右隣。
に歩調を合わせるようにして歩く銀髪の侍。腰には木刀がさしてありは一瞬眉を潜めるが、
左隣にいた山崎が若干驚いた声をあげるもその表情に警戒心はなく、は小さく首をかしげた。
銀髪の侍はやる気のなさそうな表情で、山崎を見やるとそのままちらりとを見やる。
「何々?今度の新しい真撰組隊士は女の子なの?
君ぃ、若いのにあんなむさ苦しいところよく選んだねー。ゴリラにストーカー行為されないようにね。
あと、多串君の瞳孔開孔殺人ビームとかにもね。あれくらったらしばらくパフェ食えなくなるよ?」
そうポンポンと子供に諭すようにの頭を軽めに叩きながら、しみじみと頷く銀髪の侍。
やる気のない口調でペラペラと零れる内容に、はをきょとんとするだけで。
山崎は盛大に溜息を吐き出した。
「旦那。さんは隊士じゃないっすよ。
ほら旦那もニュースや新聞で見てませんか?アクエリア星の皇女が来日しているという。
さんは皇女様の側近です。」
「ぁあ。たしか元会津藩の隠密一行が渡星して開拓したっていう星だっけ?。
黒い服装だからてっきり真撰組かと思ったよ。え?ちゃんて言うの?
俺銀時っていうのね、銀ちゃんて呼んで?。はいこれ名刺ね」
ダラダラとした口調と動作で銀時と名乗った男は、懐から名刺ケースを取り出すと一枚取り出して
へと差し出した。
突然のことに驚きながらも丁寧に両手で受け取る。
「万事屋銀ちゃん?万事?」
「そ。よーするに何でも屋ってやつ。何かあったら声かけて?姫さんがおいしいもの食べたーいvとか
かわいいお土産がほしーいvって時とかさ」
きょとんと銀時を見上げれば二カッと返される笑みに、もにっこりと笑う。
「うん、ありがとう銀ちゃん」
いつの間にか山崎・・銀時の三人は並んで葛餅屋へと向かっていた。
一つをお土産用として買い、せっかくだからと三人は店先のベンチに並んで腰をおろしながら
葛餅を食する。山崎と銀時の間に腰を降ろして、ニコニコと幸せそうに葛餅を頬張るに
思わず山崎と銀時はに釘付けになった。
「さん・・嬉しそうですね////」
「何お前、葛餅初めてなの?かわいい顔しちゃってまあー。」
「うんv私も地球生まれだけど姫と同じでほとんどここでの記憶ないんだ。
アクエリアには葛餅やお団子ないものvvおーいひv」
湯呑み茶碗を両手で大事そうに持ちながらにっこりと微笑む姿に、
山崎はほのかに頬を染めて、銀時は思わずから視線を外せなくなった。
((やべぇ・・・ストライクかも))
「銀チャァァァァン!!ホアッチャァ!!!」
のんびりお茶を啜っていると、遠くのほうから3つの物体がこちらへと全力疾走してきた。
傘を差し、ピンク色の髪をお団子にしたかわいらしい女の子と眼鏡をかけた黒髪の少年。
そして
巨大な・・・・あれは犬?!
先頭きって走ってきた少女が突然、銀時に蹴りを入れた。
続いて黒髪の少年が
「テメェェェ!!」
と木刀を振り下ろす。そして締めに犬が突っ込んできて。
と山崎は持ち前の身軽さで回避したが、逃げ遅れた銀時は
少女と少年の攻撃そして巨大犬の追突を食らってボロボロになっていた。
そして
カプッ
巨大犬に頭をかじられた。
「酷いネ銀チャン!!!一人でシコシコ葛餅なんて、和菓子の風上にも置けないアルネ!!」
「今月ピンチだっつーのに、買い食いする余裕なんてないんですよアンタ!!しかもまた甘いもの!!!
いい加減にしろよ糖尿が!!」
「バウバウッ」
「ウルセーよ!!糖が足りネーんだよ!この3日間糖無しだったんだよ!やばやば糖分貧困危機だったんだよ!
それをオメーやっとのことで摂取できたんだコノヤロー!!それにこれはのおごりだ!!」
カプッ
「おぶ;」
「へーさんはアクレシア皇女の側近なんだー」
「アクエリアって聞いたことあるヨ、たしか水の惑星って呼ばれているネ!」
「バウッ」
銀時をベンチから引き摺り下ろすと、神楽という少女と新八という少年は
奢りの葛餅を頬張りながら、に笑顔を向けた。
なんでも万事屋は大金欠でこの一週間、まともに食事してないらしい。
凄まじい勢いで葛餅を頬張る二人に呆気に取られながらも
定春という名の巨大犬に抱きつきながら、ニッコリと二人に答える。
「で、ジミーはなんでいるネ?」
「何ジミーって、君達俺のことよくそうやって呼ぶよね?それ俺のあだ名?それ決定なのねえ?」
神楽の言葉にひくりと山崎の口端が引き攣る。
神楽と山崎の睨み合いに新八が慌てて口を挟んだ。
たしか皇女の警護に真撰組があたっているんですよね?と問えば、神楽から視線を外した
山崎がコクリと頷く。
「真撰組で大丈夫アルか?、今からでも遅くないアル、万事屋に依頼するヨロシ」
「いや、君たちの方がもっと危険だから。忘れてないよ?アイドル一日局長事件」
「ジミーのくせにネチネチと。お前はオクラを混ぜ込んだ納豆アルか?」
「わけわかんねーよ!あ、いやでもわかりやすっ」
「あははーvおもしろい子だね神楽ちゃんは。名刺も銀ちゃんからもらったし何かあったら
依頼させてもらうよv」
「やったぁアル!!」
「皇族側近ということはかなりの額が期待できるっわぁ!ぜひお願いしますねさんv!」
「新八君は超現実的かつ媚び売りだねv」
葛餅を平らげたところで、と山崎は万事屋一行と別れた。
粗方目星をつけていたところは回ったので、二人はホテルへと踵を返す。
銀時からもらった名刺はコートの胸ポケットに大事にしまった。
帰星するまで必ず何か依頼をしようと心に決めながら。
ホテルへと到着すると、山崎がスチャッとミントンのラケットを二本取り出してに振り返った。
そんな山崎の表情に、パアッと表情を明るくする。
「という具合に、真撰組は幕府機関に組み込まれているんですよ」
「ほぅ。では見廻り組みとは違う組織なんですな」
離れへと向かうホテルの廊下を歩きながら、近藤と源慈乃介は警察機関の話に華を咲かせていた。
その二人の後ろを数歩空けながら土方も後に続く。
警察機関が存在しないアクエリアにとって、真撰組は非常に珍しいもので源慈之介の興味を大いに引いたのだ。
聞き上手でもある源慈之介に、近藤も嬉しそうに自慢の真撰組の話をする。
そんな近藤の姿に、土方は小さく笑った。
正直、
土方は先ほどのアクエリア軍隊との衝突もあり、今回来日した国とも打ち解けられないものを
感じ取っていた。
しかし側近の、そして目の前で近藤と話をする同じく側近の源慈之介の相手を理解しようとする
姿勢に驚く反面、嬉しくも思えた。
今まで多くの星の大使や皇族の警護をしてきたが、自分達のことを理解しようとして声をかけてきて者などなかった。
大半は護衛という名の駒として見られていたのだ。
確かに警護が仕事なのだから、そういった目で見られるのは当然であろう。
「猿が」「天人に負けた部族が」そう辛辣な言葉を受けることもしばしばあった。
だから今回もまたそんな奴らの警護だと土方は思っていたのだ。
しかしそんな彼らに掛けられた声は労いの言葉。最初こそは軍隊との衝突で側近に窘められたが
今よくよく考えてみれば、皇女自ら真撰組の警護を命じたということは、真撰組を信用しているいや、
信頼するに値するものだったからなのかもしれない。
側近のと源慈之介だけではなかった。さきほどが山崎へと町出かけた直後、
離れから皇女(相変わらずフードで顔を覆っていたが)がひょっこりと出てきて、少し不安そうな声色に警護はちゃんと
当番制になっているのかと聞いてきた。
[そんなこと、わざわざ皇女が気にすることじゃあるめぇしよ]
そう思っている土方の横で近藤が礼儀正しく答える姿に、皇女はどこかホッとしたように頭を動かしていた。
それだけではない。最初こそは睨み合っていたアクエリアの兵隊達も話をしてみれば通じるようで、
さきほど休憩時間に入っていた三番隊隊長の原田とアクエリアの兵士が楽しげに話をしていた。
[もともと地球人が作った星だからか]
こうやって話ができるのは。いやきっと皇帝やその家族の人柄が星に影響をされているのかもしれないと
考えながら、再度目の前を歩く近藤と源慈之介に視線をやる。
話はいつの間にか真撰組の話題から
「名前はねお妙さんって言うんですけどね、これがもうっえっらい美人なんですよぉvv」
「ほほうvそれはぜひそのスナックに行ってみたいものじゃv」
近藤のノロケになっていた;
離れの玄関前に来るとシュッパコンッシュッパコッという音が三人の鼓膜に響いた。
不思議そうに当たりを見渡す近藤と源慈之介に、ピキッと小さく青筋を立てる土方。
この音の元はわかっている、何度も聞いたことのある音だ。
舌打ちひとつ吐き出すと、土方は音がする庭園の方へと足を速めた。それに近藤と源慈之介も続く。
シュッパコンッシュシュッパーンッ
聞き慣れている音にしてはずいぶんと長引いている音だが、この音、絶対間違えるはずがない。
シュッ
「山崎ィィィィ!!てめえミントン大概にしやが・・・・・あれ?;」
「ひっ;ふっ副長っ;」
「あ、トシただいまーvおらー退すきありーvv」
パコンッ
「えっうわっわっ・・・・あーあ・・・ずるいよ(T^T)」
「ふっふっふー。忍びたるもの常に注意を怠るなかれv」
「ややっ!先ほどの側近の・・様!!」
「おー。戻られたか殿。して、それは何ですかな?」
「ミントンだよミントン!すーっごいおもしろいの!!
横転返しに宙返り返し!、ラケットの打ち方もクナイ打ちや千本構えとかあって、鍛錬にすっごいいいよ!!」
「お前らどんなミントンやってんのぉぉ!!」
「すげーでさァ。まさに忍びのミントンでしたぜィ?」
「お前は何またさぼってんのぉ?」
傍らで観戦していた沖田が、楽しげにニヤリと笑う。その様子にさらにピクッと青筋を立てる土方。
「お前、ホテル入り口の警護にあたってたよなあ?」と鯉口を斬りながら唸れば、よっと腰をあげる沖田。
「山崎貸せ、次は俺の番でィ」
「人の話聞けぇぇえ!そして働けぇぇぇ!!」
抜刀した土方が沖田を追い回して遥か彼方へ去って行くのを楽しげに見やると、は近藤へと振り返った。
「ね、局長さん」
「へ?」
ラケットを手にしながら珍しげに眺めていた源慈之介がピクリと眉を潜めたが、
は気にすることなく近藤へと笑う。
「様だなんて、こそばゆいわ。だから気軽にと呼んで。ね?」
トシも総悟も退もそう呼んでるからさv
そう笑顔で答えるに近藤は、一瞬困ったように目を泳がせた。
氏が語れないのは先ほど源慈之介との会話で承知済みだ。
だから近藤は源慈之介のことを「源慈之介殿」と敬意を持って呼んでいた。
自分達のことを理解してくれた始めての、同じ地球出身だが異星の人間。
それが近藤にとってどんなに嬉しかったことか。
そういうことを含めて源慈之介に敬意を込めていた。
それはに対しても同じ事で、先ほど軍隊との衝突を回避してくれた人物。
姫の言葉といえども、側近も同じ心情でなければあんなに胸に響かなかっただろう。
近藤はどこか心の奥で滅多に姿を現さない顔を見せない皇女と、を同等のものと重ね
「様」と源慈之介との会話でそう呼んでいたのだ。
それは畏怖ではなく、心の底から純粋に敬意だけを込めて。
しかし、そう相手に声をかければどうだ、「様」はよせ気軽に呼べと。
まして自分の部下達はすでに気軽に呼んでいると。
「いや・・しかし。それは;」
「えー・・・じゃあ、近藤さんのこと警察庁特別部隊武装警察真撰組局長と長ったらしく呼ぶよ?
警察庁特別部隊武装警察真撰組局長さん?」
「じゃ・・じゃあ・・・さんで;」
「うんvありがとv近藤さん」
にっこりと肩書きで呼んでくるの表情は、顔立ちが整っていてとても綺麗だが
どこか恐怖じみたものを感じて、近藤は従わざる得なくなり、
せめて「さん」を付けることで了承を得た。
ほんの少し青白くなっている近藤に、源慈之介は同情するように小さく溜息をついたのであった。
「まったく・・・いくら正体を隠しているとはいえ、警護の者に呼び捨てさせる一国の皇女が
どこにいらっしゃいますかッ。それにあの土方という男、姫に対して「お前」などと・・・」
「主の前で堂々と胡坐をかき、葛餅口いっぱいに頬張っている奴に言われたくないと思うよ源慈之介」
憤慨しながら葛餅を頬張る源慈之介にはケラケラと笑う。
ちょっと口調を強くしすぎたか?罰が悪そうに顔を顰めた源慈之介に手をヒラヒラさせて
「冗談冗談」と笑えば、ヘルガも葛餅を口に運びながらも少し顔を顰めていた。
「ですが姫?正体を隠しているとはいえ、皇族側近という高位クラスの重鎮であることは間違いないのです。
彼らのことを軽視しているわけではございませんが、警護の者達にそう呼ばせるのは「嬉しいんだ」
ヘルガの言葉をはっきりした口調で遮えぎる。
「嬉しい?」怪訝そうに見つめてくるヘルガと源慈之介ににっこりと笑うと、壁に寄りかかりながらこくんと頷く。
「アクエリアで年が近い友だちといえばヘルガだけでしょ?。私が馬鹿言ったりふざけたりすると
答えてくれたり同意してくれたり・・・・他の者は私が皇女側近ということを恐れてか、
ただ笑うだけだ。源慈之介も突っ込んでくれるけど、やっぱり私にとって源慈之介は育ての親っていう観念が強いから
気軽に友だちだなんて呼べないし?」
「私ごときが友だちだなんて;・・・いいのですか?」
「何言ってんのヘルガちゃんvアクエリアに来たときからの仲じゃないv」
ほのかに頬を染めながらおどおどとの顔を伺うヘルガににっこりと笑う。
ヘルガはがアクエリアに着いた時、世話係りの一人としてについたのだが
と年が同じ年だったため、世話係というより友だちという概念がにとっては強かった。
ヘルガにとっては一国の皇女がまさか自分のことを友だちと見てくれていたとは、夢にも思っていなく、
それを自身から伝えられ、少し涙目になって微笑んだ。
そんなヘルガの手を取りながら「泣くな〜v」と笑う。そして続ける
「だから年が近い真撰組と一緒にいるとなんだか楽しくてvびっくりたよぉトシなんて容赦なく突っ込みいれるし、
総悟なんか平気でバズーカ吹っ飛ばすしね、あ、私にじゃないよ?退にミントン教えてもらったし!
なんだか友だちが急に増えたみたいでさ、よかった堅苦しい奴らじゃなくてv」
「ほう、それではあの中から婿殿を」
「話飛躍しすぎだボケ」
「くすん・・姫は反抗期」
「それに町でもおもしろい奴らと出会えたしさv」
「「外でも呼び捨てで呼ばせたんですか!!」」
「おうよv」
呆れるヘルガと源慈之介に万事屋の話をする。
帰星するまでに何か依頼したいな〜と笑顔になるに二人は顔を見合わせて小さく息を吐き出した。
「まったく・・姫の好奇心旺盛も困ったものだ」
そう呟く源慈之介にはケラケラと笑った。
そして、一瞬で真顔になりコートの胸ポケットからメモを取り出す。
「手がかりだった港。
漁業港はどこも賑やかで隣接されいてる建物も大きく開放されていた。
その中でたった一つ、倉庫が立ち並ぶ港があった。明日偵察に行く。」
の言葉にヘルガと源慈之介がスッと背筋を伸ばす。
ヘルガはパソコンから打ち出した幾枚かの紙を取り上げると、それをに差し出した。
「一つ。ある組織が港の倉庫を所持しています。おそらく姫が調べてきた港の倉庫かと。
異星の組織かと思ったら反政府の人間による組織でした。
組織名は「獄楽園」。
攘夷志士と思ったのですが、最近噂されるようになった、ただ純粋に破壊と殺戮をする組織。
反政府とうたっているのは攘夷志士と関連性を持たせるカモフラージュのようです。
この国には二つ、政府を脅かす攘夷志士の派閥があるようですが、この二つの派閥も
「獄楽園」に対して強い反感を持っているようですね。なんせ攘夷志士を騙られているのですから、
彼らにとってはとんだとばっちりみたいです。」
ヘルガの言葉に耳を傾けながら、は手渡されたレポートの文字を追っていく。
「二つの派閥・・・攘夷党と鬼兵隊ね。で?この派閥同士は仲良い訳?」
「最悪です」
「あ、そう」
「桂小太郎率いる攘夷党は、以前はかなり過激に活動していたようですが、最近は講義や
新聞の文面などを使って正統な反政をうたっております。
一方、高杉晋助率いる鬼兵隊は最近になってその全貌が明らかになり、
かなり過激にテロ活動を行っているようです。高杉自身はもちろん、それにつく者達もかなり
手練れとのこと。
この鬼兵隊もかなり過激な破壊活動を行っているので、「獄楽園」と似通ったものがあるかと
さらに調べたのですが、攘夷を唱え、目的が確立している点では高杉の方がまだわかり良いですね。
桂と高杉は幼少の頃から共に寺子屋で学び、刀をとって戦に出ていたようですが、
現在は志の違いか、袂を分かち時折衝突しているようです。
ついでに申し上げておきますが、桂と高杉は険悪の仲でございますが、
それ以上に反政府をうたっております。双方とも警護にあたっている真撰組と幾度か
刀を交えているようですので、真撰組に守られている我々に協力はまず有得ないでしょう。
むしろその逆で、他の星へ渡り、多くの星と貿易をしているVIP対応の我々の命を狙っている可能性が高いです。
桂と高杉の顔写真を入れておきましたので、姫、くれぐれもこやつらに近づかぬよう
お願いします。」
「うおう;
まあ、今回は実力行使じゃあ済まされない部分が高いからね。
協力してくれるなんてはなっから期待してないけど。
決定的な証拠とルートを掴まないと、あいつを追い込めない。
うーん;やっぱり父上に頼んで忍びを導入するべきだったかな;でもそれやったら
奴が感づくだろうし。ま・・・やるしかないんだけど」
「真撰組を使うというのはどうですかな?」
源慈之介の硬い声がの鼓膜を刺激する。顔を上げたをまっすぐに見つめる源慈之介と
しばし視線を合わせるも、はフルフルと首を振る。
「それはできない源。信頼していないわけではない。だが彼らはあくまで護衛。
国の事情に彼らを巻き込むことは私が許さん。」
はっきりした口調に、源慈之介は詫びるように頭を下げる。
が、はニヤリと口角を上げた。
「だが、我々の姿隠しにはさせてもらうけどな」
「姫も達が悪い」
「なんとでも。たしかに気持ちのいい奴らで利用するのは気が引ける。
だが、私が背負っているもののために彼らは必要なんだ。」
そう、星の危機を回避するためには。
そう心の中で呟きながら、は再びレポートへと視線を落とす。
捲られたページにはヘルガが示した、桂小太郎と高杉晋助の写真がコピーされていた。
書ききれなかった後半を別けたせいで、連載伸びたよ(回し蹴り)
万事屋難しいです;もっと絡ませたかった(T^T)もっと和んでいただかないと次に響くっつーの!
ということで、万事屋はまだ出ます!!(告知しちゃったよこの子)
あれね、全体的にアニメ口調で読んでください?
なんだかこの時点で、話の全容が容易に把握されたのでは;と内心ヒヤヒヤでさァ。
(2007年1月8日執筆)