「・・・・む。・・んと、えーっとぉ・・・・・・・・・・





どかたさんだっけ?」





「・・・・・・・ひじかたです








うっわ空気悪ぅ・・・怒ってるっ怒ってる!今さらに瞳孔開いたよこの人っ!!






































+Princess more than Princess 2+








真撰組の先導で訪れた滞在するホテルは、旧日本家屋作りの庭園が美しいホテルだった。

今まで訪れた他の星での滞在先は、完全VIP用の高層ホテルがほとんどで、
とにかくやたら高級感だけが漂い、慣れない土地に上乗せしてさらに気が滅入るだけであったが、
今回案内されたホテルはおそらく地球−日本での記憶がほとんどないアクレシア皇女のために幕府が選んだのであろう、
綺麗に整備された庭園に囲まれた離れ宿に荷をおろしたはすがすがしい伸びをひとつした。
源慈之介はどこか懐かしそうに庭を眺め、初めて地球にきたヘルガは物珍しげに部屋の装飾品を
眺め、畳をなぞっている。





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「アクレシア皇女が滞在されるこの離れは防犯カメラ・赤外線監視に加えまして、
真撰組が当番制で警護に当たらせていただきます」


部屋に入る前、離れの玄関で近藤という真撰組局長が源慈之介にそう伝えていた。
離れの玄関の前には真撰組が使用する簡易のテントが数棟設けられている。
アクエリアから連れてきた軍は、10人1部隊で構成されている隊を5隊連れてきている。つまり50人。
二隊は船に残し船の警備。残りの3隊は達が滞在するホテルそして離れの警護。
礼儀正しく敬礼をする局長には少し眉を潜めた。
真撰組が警護してくれることは大変ありがたい。シンポジウムや貿易対象面以外でも江戸とは友好を
深めたいと思っているにとっては大変嬉しい存在でもあった。
しかし


「その役目は我らアクエリア軍人の務め!、真撰組はホテル周辺を警護していただきたい!」


近藤の前に立ちはだかった、アクエリア軍を率いるカザギ将軍。
「幕府の者などに姫は任せられぬ!!」そう余計な一言を発したため、案の定近藤は不服そうな表情をし、
副長と呼ばれていた男と数名の真撰組隊士、カザギとアクエリア軍人数名との間に睨み合いが生じた。
「やめぬか」と声を荒げる源慈之介に、腕を組んでいた右手だけを解きそれに額を乗せて深々と息を吐き出す
アクレシア(ヘルガ)はすでに離れの中に入っていたため、といってもが事を察して押し込めたので
事態を知らない。


(こうなると思ったよ。ったく・・・)



カザギは根っからの軍人だ。責任感も人一倍強い上に、アクエリア軍を誇りに思っている。
そんな奴が真撰組とともに手を取り合い・・など鼻から期待などしてはいなかった。
さらに深い溜息を吐き出し、顔を上げればカザギと副長が激しい口論をしている。


「地球出身といえども姫はアクエリアの要!!そう易々と貴様らのような奴らにまかせられるか!!」


「だから二重三重の警備が必要なんだろーが!!」



「いい加減にしろ!!」


互いの部下達も言い争いしそうな気配に、は組んでいた腕を解きカザギと副長の間に割って入り
二人を睨みつけた。
鋭く睨み付けられ真撰組の面々が一瞬たじろく、局長と副長も例に漏れずに。
アクエリアの兵隊達も姫側近の怒りに恐れを持ったようで深く頭を下げる。
しかし、カザギだけは嫌なものでもみるかのようにを睨みつけた。
それを気にせずカザギと副長を交互に見やる。


「カザギ。今回の真撰組の警護は姫自ら希望したものだ。よって彼らへの暴言は姫への暴言だと肝に命じとけ。
真撰組。我々は地球について無知な面が多い。姫もそれを考慮して貴方達に警護をお願いしのだ。争うためではない」


それぞれの反応を待つことなく、は軍そして真撰組の配置を取り決めた。



真撰組は変更なく離れおよびホテル内の警護を。アクエリアは1隊を真撰組とともに離れの警護、
残り2隊はホテル周辺の警備にあたれ。




それに反論するものはいなかった。
ただ、カザギだけは不満そうに踵を返して行ったが。それに続いてに最敬礼して配置先へと向かう兵士達。
真撰組の局長と副長も我に帰ったように、それぞれ命令を出しはじめる。



「さすがですな」

「んあ?・・・まあ・・あらかた予想していたことだったし。さ、中に入って茶でも飲もうよ」



忙しくなく動く真撰組の面々を見やりながら、だけにしか聞こえないように源慈之介が口を開く。
それにヘラヘラと笑って答えると中へと促した。−と・・・・



「あの!!」


「んあ?」



玄関へと足を踏み入れた瞬間に背中にかかる声に、頭だけ振り返る。
そこには真撰組局長が背筋を伸ばして立っていた。その一歩後ろには副長の姿もみえる。



「皇女様の期待を裏切るような真似、大変失礼しました!!」



深々と頭を下げる局長と副長に一瞬を目を丸くすると源慈乃介。



「今この時より、我々真撰組!!命を懸けて皇女様の警護にあたらせていただきます!!」













ぷっ・・・くくく・・・あははははは!!






突然笑い出したにギョッとする源慈乃介に、腰を曲げたままの状態でそっと顔を上げる局長。
は腹を抱えながら頭を下げたままの局長へと踵を返すと、局長と副長の頭を無理やり上げさせる。
困惑した二人の表情に、さらに笑いが込み上げてきて。




「本当に死んじまったら姫の警護ができないってーの!まあ仲良くしてやってっ、ねv」





パンッと威勢よく局長の肩をはたくと手をヒラヒラとさせて、源慈之介とともに離れの中へと入って行った。














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「あーあぁ早くも衝突ですか。困ったものですね」


ついさっき起こったことをヘルガに話しながら、ごろんと畳の上に寝そべる。
その横でちんまり座っているヘルガが眉を潜め「姫、行儀が悪いです」と嗜めるが、「♪〜」と
鼻歌交じりに手を頭の後ろで組んで聞いてない振りをする。


「しかし、これで我々も動きやすくはなったというもの」

「そうそう」


ヘルガの横で胡坐をかきながらどこか楽しそうな源慈之介にクツクツと笑う
それを咎めるように交互に見やると、サッと立ち上がって持ってきたアタッシュケースを開く。



「さて、わたくしは早々に作業に入らせていただきますわ。シンポジウム開催は5日後。
それまでになんとしてでもあやつが関わった組織を焙り出さなくてはなりません」

「頼んだよヘルガちゃん。それじゃあ私もちょっくら出かけてくるわ」



アタッシュケースからパソコンを取り出すヘルガを横目に、むくりと上体を起こす。
それを源慈之介が些か硬い表情で見やった。


様。何度もしつこいようですが、くれぐれも無茶はなさいませぬよう」

「ああ。まあ今日は下調べだからね夕方までには戻る」

「ぁ、様。一つお願いしてもよろしいですかな?」

「んあ?」




愛刀二本を腰の後ろで交差するように装備すると、玄関でブーツを履く。
ガラガラと引き戸を開ければ、目の前には真撰組の臨時テント。
その一つの前で神経質そうに煙草を吸っている黒髪の男に目を留めると、そちらへと足を向ける。
男の方もに気づいたようで、若干緊張したように慌てて煙草を携帯灰皿に押し当てた。
近くにいた数人の真撰組も気になるようにを見ている。
源慈之介がくれたファイルでもしっかりと覚えたし、そしてさきほどの一件でこの男が副長だとすぐにわかった。
たしか「鬼の副長」とも呼ばれて畏怖されている男だったか。



「・・・む。・・んと、えーっとぉ・・・・・・・・・・
どかたさんだっけ?」


「・・・・・・・ひじかたです




「「・・・・・・・・・・」」



うっわ空気悪ぅ・・・怒ってるっ怒ってる!今なんか瞳孔開かなかった?この人っ!!
クワッていったよクワッって!!

土方の後方にいた数人の隊士たちが「プッ」と噴出し、声を殺すように堪え笑いをしているが、
思いっきり声が漏れそれをギロリッと睨みつける土方。後で覚えておけ!と言わんばかりな殺気を突き刺すと
再びへと視線を戻す。


「そうだ土方さんだ;。ごめっさっきも間違えてたんだわ。覚えたつもりで間違えたほう覚えてた;」

「・・・・・・・何か不都合でもありましたか」


思いっきり反論したい衝動に駆られるも、土方はグッと堪えて続きを促す。
相手は皇族の側近で、しかも先刻の件を難なく解消した人物だ。
相手が高い身分であろうと容赦ない土方ではあるが、なんとなくここは
堪えたほうがいいと小さく拳を握る。


「いやそんなことはない。姫もとても寛いでいる。
私は姫個人言いつけで街へと出かけなくてはならないのだが、
市内地図が欲しい。観光用ではなく、できれば広範囲に詳細部まで載ったものだ。」


「あぁそれならたしかパトカーに・・・おい!山崎!!」

「はい!!」


庭園の方でなにやら不思議な動きで警備をしていた男(離れの窓から見えてヘルガと源慈之介の3人で首を傾げていた)が
こちらへと走ってくる。あれが山崎という男か。手には刀ではなく何か棒状の先端にネットを張ったものを
持って土方の前に立つ。
その瞬間。


「山崎きゃあぁぁぁぁ!!またミントンかぁ!!てめぇっ仕事をなんだと思っていやがんだぁ!!」

「はわぁっ。しまったぁ!!ぎゃあああぁぁぁ」


突然怒鳴り散らすともに、繰り出されるアッパー。地面へと沈んだ山崎の腹に鈍い音を立てながら
蹴りを入れる土方の姿に、あと数回蹴ったら絶対にあの世に行きそうな顔で助けを呼ぶ山崎。
突然起こった光景には目を丸くする。しかし周りの隊士達は大して気にした様子もなく
遠めに眺めていて。



「おいおい;止めた方がいいんじゃないの?」


「大丈夫でさァ」



ガチャ



がちゃ?
なんだかあまり芳しくなさそうな金属音が隣で響き、パッとそちらへと視線を走らせる。


(そのガチャってさぁ・・なんか銃器関連の音とかじゃない?って・・・こいつバズーカー構えてるよぉ!)


の隣には茶色の髪をした真撰組隊士がバズーカーを構えて立っていた。
その構えるバズーカーの狙い定める標的を目で追うと同時に、ヒクリとの口が軽く痙攣する。


「ちょっあんたなに「グッバイ、副長ォ」







ズドォォン!!









「・・・・・あーあー。君、庭園破壊はやばいんでないの?」


「側近さんもそう思いますかィ。やべーなまた始末書かよ」



「総悟テメェェェェ!!」



「わ、すっげ生きてら」


「だから大丈夫って言ったろィ?。あ、これ地図でさァ」


「お。サンキュv」



「何勝手に話し進めてんだぁぁぁ!!!総悟ぉ!今何するときかわかってんのか!!
って、あんたも何冷静こいてんのぉぉぉぉ!!」


「今何するとき?もちろん土方さん抹殺する時でさァ」


「よぉーし、刀抜けぇ」


ブスブスと焦げ臭い匂いと煤で汚れた土方がチャキリと鯉口を切ると同時に、一緒に巻き添えになった山崎が
慌てて土方を羽交い絞めして取り押さえる。



「副長!!落ち着いてください!!」


「うるせぇぇぇ!!今この場で総悟の首を叩っ斬ってやる!!」


「ぎゃー!!副長こそ今職務中ー!!!!すいませんっ側近の方!お願いですから
この二人静めてくださいー!!」


「え?手段選ばない?」


「はい!!命さえ無事なら何も問いませんっ!後生ですからもうマジで!」


「オッケー。じゃあ山崎君、ちょいと離れてな」


「はい?・・わっ」



そう口開くと同時に、土方の懐へと飛び込む。その素早さに反応したのは山崎だけだった。
土方の胸倉を掴むと同時に、サッと山崎が離れる。

(あぁ、たしかこいつ監察で忍びとしても心得ている隊士だったっけ?)

そうさきほどのファイルを思い出しながら、土方に背中を密着させる形をとり、
そのまま背負い投げる。ズンッと鈍い音ともに土方を地面に伏せさせると、
またバズーカを構えた茶髪の隊士へと一足で間合いに飛び込んで、回し蹴りでバズーカーを弾き飛ばした。
その反動で茶髪の隊士は小さく呻き声を上げて蹲る。
バズーカに足をかけたまま、ふうっと息を一つ吐き出して肩にかかった結わえた髪束を背へと払いのけた。




「これでいい?山崎君?」


「す・・・げ・・・・」




瞬きの間にというのはまさにこのことだと山崎は思わずにはいられなかった。
自分も忍びとして心得ているが、目の前のこの側近には足元にも及ばないと思い知らされる。
呆気にとられていると、にっこりと笑う目の前の側近。そんな笑顔に思わず顔が赤くなる。



「土方さんもそこの君も落ち着いたかい?」


「っつててて・・・・あぁ。・・・ってあんたも忍びか?」


「まあね」



手を摩っている茶髪の隊士へと屈みこみながら、肩を押さえて上体を起こす土方にニッと笑う。



「さすがお姫さんの側近さんですねィ」





「はィ?」


目を丸くした隊士と目が合う。



(こいつは確か・・・そうだ一番隊長だ)



「側近は側近でも私にはという名前がある。氏は隠密規定のため語ることはできないが
こちらいる間は気兼ねなくと呼んでほしい。ねv沖田君」


そうニッコリ笑って立ち上がり、手を伸ばせばさらに見開かれる沖田の瞳。
そして沖田に浮かべられた微かな笑みとともに重ねられる手。
そのまま沖田の手を引き上げれば、「よっ」と立ち上がり視線が合う。


「じゃあ、俺も気軽に総悟と呼んでくだせェ」


「うん、そーするv。ほらほら!土方さんもいつまでも座ってないで立った立った!!」


「っ!!いでっでで。いてーよ!!てめーはよ!!」



グイッと腕を引っ張り立たせれば、痛みに顔を歪めて睨みつけてくる土方。
そんな土方にケラケラと笑う。



「まったくこんなもんで痛がってるなんてガキですか」

「すんません、なんかどっかの凶暴女にやられました」

「え?何もう一回沈む?」

「冗談だ」



カチリ


そんな音が聞こえてきそうな感覚でと土方の目が合う。
瞬間、吹き出す二人。いつの間にか四人で大きな声で笑い合っていた。





































「で?はどこに行くんだィ?」


「地図持って行っても、江戸の町はかなり複雑だぜ?山崎お前案内してやれ」


「はい。さん案内しますよ!」


「え?そうなの?トシ。地図見た限りではけっこう簡単そうだけど・・・じゃあお願いしていい退?」



いつの間にか下の名前で呼び合っていて、総悟もトシも呼び捨てで呼んでくるのに、
山崎だけはどうしても呼び捨てで呼ぶことを拒んだ。まあ本人がそれでいいのなら別いいけど・・。



何軒かの目的の店と、場所を告げれば山崎が「うーん」と地図を覗き込む。
ふと、は山崎が手にしているものへと視線を走らせた。


「ねえ、それさっきトシが言ってたミントンってやつ?」

「え?あ・・・あぁ、うん」

「山崎ぃ・・まあだ持っていたのぉ?」

「う;」


山崎から先ほどの先端にネットがついた棒を受け取るとしげしげと見つめる。
その隣では、凄まじいオーラを醸し出しながら山崎を睨み付ける土方と、顔を真っ青にさせてじりじりと後ずさる山崎。



「ねえ、ミントンって何?」


「え?」「は?」「あ?」



真剣な表情のに、山崎・沖田・土方はぴしりと固まった。


















すんません、予定では万時屋まで出すはずだったんですが、いろいろ詰め込みすぎて
次に引き継がせていただきました!
早くも土方・沖田・山崎と打ち解けてます。そしてまさかさんが皇女様だと微塵にも気づいてません。
次回は山崎君と町に出て万事屋と会ってみましょう!定春〜vvvv

(2007年1月3日執筆)