今は遠い黄泉の国にいらっしゃいますお父様、お母様。

あけましておめでとうございます。

女中として真撰組にお世話になり2年目の年を迎えることができました。

隊士の皆さんと共に年を越せたこと、大変嬉しく思います。

大勢の隊士にさんがいる中に、女中が私一人なんて仕事が山よりも高く険しくて

時々くじけそうになる時もあるけれど、

近藤局長

土方副長

沖田隊長

永倉隊長

斎藤隊長

原田隊長

隊士の皆さん


そして退兄さんに助けられながら


私は今、幸せいっぱいに生きています。











































+おせち料理+







、この煮しめはどう盛るの?」

「あ、えっとそれは・・・・・はわぁっ沖田さん!!!栗きんとんつまみ食いしないでぇ!しかもメインの栗ばっか!!」

殿、皿が足りぬのだが」

「あわわ;斎藤隊長すいません!今持って行きますっ」

ちゃあん!俺も何か手伝うよー?」

「きゃー!!局長がこんなところ来ちゃいけませんー!!」



元旦。
早朝。
真撰組の台所はまさに戦場です。




初めまして、山崎 と申します。真撰組でたった一人で女中をしています。
もともと真撰組は女人禁制。
自分達のことは自分でと掃除洗濯食事まで隊士の皆さんが当番で行っていました。
そう、私がここにお世話になる2年前まで。
なぜ女の私がここにいるかって?
ま・・まあ・・私もいろいろあったんですよ;


今日は毎年恒例の新年会!!
江戸の平和を守るため、完全休業とはならない真撰組。
この時間見回りをしている隊士もいるので、全員揃ってとはいかない。
最初は屯所にいる者だけで行い、あとは帰ってきたらおせち料理を出すという感じ。
それでも大半の隊士が屯所にいるので、その量はもう半端じゃない!!


私がここで働くことができるようになったきっかけの退兄さん、隊士の皆さんが
手伝ってくれるけど、つまみぐいに来る隊士・・いえ沖田隊長が邪魔してきたり、
お皿が足らなくなったりと、けっこうてんてこ舞い。
あぁ・・・・なんか後ろでお皿が割れる音がしたよぉ;。















私はもともと名の通った忍び一家の娘でした。表向きは医者をしておりましたが、
ひとたび声がかかればそれは見事な働きをしたものです。
幕府が天人に権力を握られてから、幕府から仕事をもらっていた私達一族は存続の危機にさらされ、
たった一人の兄様は幕府機関へと身を起き、お父様とお母様と三人で小さい村へと引越し、
そこで開業しながら、畑で野菜を作りそれを売っていた。
私は少し遠出して近くの街の保育所で働いて。それでも忍びの誇りは忘れずいつもお父様に
稽古をつけてもらっていた。
幸せだった日々はあっという間に崩れたんだ。


とてもいやな空気が漂う夜だったの。何かよくないことが起きそうな。
それを察してお父様とお母様と共に忍び装束に身を包み。あたりを伺う。



過激派攘夷志士と天人の戦闘が村の近くで起こった。



平和とうたわれているけど、地方でこんな小競り合いがいまだに続いている。
なんの関係もない村はそれに巻き込まれ犠牲となった。
火を放たれた家。踏みつけられた畑。
攘夷志士と天人から村人を守ろうと四方に散ったお父様・お母様そして私。

気づけば体中ボロボロでたった一人、破壊された村の中央で立ち尽くしていた。
体中がギシギシと軋んでいて、体全体を痛みが断続的に駆け巡る。
誰もいなかった。
私一人だけだった。



ことの顛末はすぐさま幕府機関で働く兄へと伝えられた。
現場検証に訪れた幕府の監察官に連れられ、くぐった真撰組の屯所の門。
勢い良く開けられた玄関から飛び出してきたのは、たった一人の家族になってしまった退兄さん。
兄さんに強く抱きしめられながら、私は声をあげて泣いた。

そして私は兄さんの口添えで真撰組で女中として特別に働くことになったんだ。














「よしっ!あとは運ぶだけだな」


膳に乗せられた料理を眺めながら、退兄さんは嬉しそうに頷く。
女中といえども、隊士全員の食事を一人でこなすのは容易なことじゃないのは一目瞭然で、
料理の準備だけはいつも退兄さんや、それぞれの隊の隊士さんが交代制で手伝ってくれているの。
退兄さんや他の隊士の皆さんと広間に膳を運ぶ。
広間には見回りにあたらなかった隊士全員がすでに揃っていた。
まずは近藤局長と土方副長に膳を出すと、隊長クラスからどんどん膳を出していく。
全員に行き渡ったところで、私は退室するべく頭を下げるとそっと腰を上げた。




「おいどこ行くんだ?」



廊下へと踵を返すと同時に低い声がかかり、振り替れば土方副長が怪訝そうに私を見ていた。
私はきょとんと首を傾げると、ちゃんと土方副長の方へ体を向ける。


「どこって・・・いつものように台所に控えていますので、
何か用がございましたら「あ?何言ってんのお前」


鋭い口調で言葉を遮られて僅かに胸が跳ね上がる。
私何か粗相でも起こしちゃったのかな?オロオロしているのを見かねたように
土方副長は胡坐をかいたままちょいちょいと手招きする。
料理足りなかったのかな・・・そう思って失礼しますと局長の背後を通って土方副長へと腰をおろそうとしたら



「きゃっ」


勢い良く腕を掴まれて土方副長へと倒れこんでしまった;
慌てて体を起こそうとしたら、腰に腕を回され、土方副長と近藤局長の間に座る形に;


「え?ぇえ?!;」


「山崎兄!の膳用意しろ!」


「はい!」


離れた所から不安そうに見ていた退兄さんが土方副長の言葉にどこか嬉しそうに返事して
広間を出て行く。


「えっ私はまだお酒の追加などいろいろやることがありますからっ。それにこの新年会は真新組のですよっ
私なんかがいるべき所じゃありません」


ワタワタと立ち上がろうとするががっしりと土方副長に押さえつけられてしまう、
意図の読めない表情が怖くて、体が強張ってしまう。と、頭を撫でられる感覚が振ってきて
ハッとして顔を上げれば、片隣にいた近藤局長がニコニコと私の頭を撫でていた。


「何言ってんのぉちゃんも真撰組の一員でしょー」


「え・・・」



あまりにも子供をあやすように撫でてくるので、一気に力が抜けてしまう。
ふと、視線を動かせば沖田隊長がニヤニヤと笑って、永倉隊長と原田隊長が「近藤さん
かまいすぎ!」と茶々を入れていて。
退兄さんが私の前に膳を置くと、近藤局長はパンッと膝を叩いて立ち上がった。





「皆!あけましておめでとうだコノヤロー!!今年も真撰組全力で行くぞ!」



オー!と広間いっぱいに歓声が起こる。
そのまま皆お酒を飲むかと思ったら、皆私の方へと視線を向けている。
不思議に思ってまだ立っている近藤局長へと視線を向けたらニコニコと私を見ていた。



「そして、こんなむさ苦しい俺達のために毎日頑張ってくれている俺達のちゃんにありがとうと
今年もよろしくを!」


ありがとうーーよろしくー!!


また広間いっぱいにおこる大歓声。
目を丸くしている私に土方副長がそっと耳打ちする。


「去年元旦早々、テロ騒ぎで祝いどころじゃなかったろ。年末も爆弾騒ぎで借り出されたからな
近藤さん、皆の前でお前に礼が言いたいってずっと言ってたんだよ」


そんな言葉におもわず胸がキュウッと締め付けられるようだった。
もう一度顔を上げれば近藤さんの笑顔。
前を見れば皆の笑顔。

パッと立ち上がって皆に満面の笑みを浮かべる。なぜか皆真っ赤になって広間が騒然となったけど
そんなことにかまってなんていられなかった。


だってだって・・・とっても嬉しいんだもの!!



「皆さん、今年もよろしくお願いします!!」


よろしくー!あたりまえだー!!嫁に来いー!誰だぁ!今どさまぎに妹口説いた奴ー!!


「よーし!!皆食うぞ飲むぞー!!!」




おー!!









「はわっ!!土方副長お願いですから元旦早々マヨネーズはやめてください!」

はわかってねぇーなぁ。あれだよ?マヨネーズは何にでも合うんだぜ?」

「うー;あっでも・・ほらっ土方副長の数の子ちょっと多めでしょ?
特別にマヨネーズ和えにしたんです!」

「マジで?・・・・うめぇ!!はいい嫁さんになるぜホント俺が保障する」

「何いけしゃあしゃあ抜かしてさり気なくかつ堂々との肩に腕回してるんすか」

「ぁあ?なんだ山崎。あーそうだな今から俺のこと兄さんて呼んでいいぜ?許してやる」

「呼ばねーよ!!かわいい妹まだ誰にもやれるかよ。ってその場合俺が兄だろぉぉぉ!」

「そうでさァ、は黄ばんだ男は御免被るって言ってますぜィ。は俺のハニーになるんでさァ」

「いやあんたにも俺の妹やれねーよ。サドに渡ったら最後一生檻の中だよ」

は俺のためだけに栗きんとん作るんでさァ」

「あんた聞いてる?聞いてんの?」

「まままっトシも総悟も山崎も新年早々盛り上がるなって!!ちゃん伊達巻きまだ残ってない?できれば一生分」


「「「おめーが一番やべーよ!ストーカー野郎!!」」」


賑やかな広間に笑い声や時折怒鳴り声が響く。
四人で口論し始めた輪からそっとはずれると賑わっている隊士の皆さんへとお酒を注ぎに回る。


!この黒豆すっげえふっくらしててうめーよ!」

「わvありがとうございます永倉隊長v」

「かー!新七よぉおまっ豆ばっかくってんから背伸びねーんだよ!!」

「うっせえよ!!能無しデカブツに言われたくねーよ!」

「んだとぉ!!」

「あわわ;原田さん落ち着いて;」


デコボココンビでは有名な永倉隊長と原田隊長のコントに近いやりとりにクスリと笑えば、
原田隊長の隣で静かにお酒を飲んでいた斎藤隊長がジッと私を見ていた。
なんだろう?


「斎藤隊長?お酒がなくなったのですか?」

「いや・・・・・。殿」

「はい?」

「・・・・・お主の両親。幸せそうな殿の姿に喜んでおられる。兄妹いつまでも元気でと」

「・・・・ありがとうございます」


そうだ・・たしか斎藤隊長は霊感が強い方だったよね。
なんだかとても温かい気分になって、心の奥底から斎藤さんにお礼を言ったら
小さく微笑み返しをしてくれた。
それから広間を回って、空になった酒瓶を一回台所へと戻すと、新しい酒瓶を二本持って広間へと向かう。
廊下から庭を見やると、自然に歩調が緩んだ。


広間の方からは賑やかな声が流れてくる。
少し肌寒いけど澄み切った青空に思わず胸が清々しくなった。





?」

「あ・・お兄様」


ふと声がしたほうにパッと振り返れば、探しにきたのかな?
どこか慌てたように退兄さんがこちらにやってくる。



「広間にいないから・・・っと、新しいの?」

「うんvごめんちょっとボーっとしちゃって;」

「大丈夫か?朝早くから忙しかったもんな。・・・・・あ・・空」

「うん?」


私の手から酒瓶を取ると、退兄さんは何気なく空を見上げた。
どこか意表疲れたような顔に私もつられて空をもう一度見上げる


「すげーや。天人の船が一隻も飛んでないよ」

「あ・・そういえば元旦だけはターミナルも運転休止ってニュースでやってたね」

「へー・・・天人が来る前ってこんな空が毎日あったんだろうなぁ・・きっれーな空だなぁ」

「なんか得した気分だね」

「そうだな」








ー!!




広間の方から土方副長が呼んでいる声が聞こえて、私と退兄さんはハッとして顔を見合わせた。




「戻ろうか」

「うん。あ・・お兄様!!」

「ん?」

「今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ・・・今年もそしてこれからもずっとよろしくお願いします。かわいい妹君」

「/////。あ、あとでミントンやりましょうよ!!」

「いいねぇ。あ、ミントン版羽子板で負けたら顔に落書きね」

「ぇぇ;」

「さあいい加減戻ろうか、俺まだが作った煮しめ食べてないよ。沖田隊長にとられたら大変だ」




そう溜息混じりに歩き出す退兄さんの後をついて行く。
他の隊士の皆さんから比べたらとても華奢な背中だけど、私はずっとこの背中が大好き。
私に生きる道と場所を与えてくれた兄さん。もし私が誰かのお嫁さんなっても
ずっとずっと・・・その背中を追いかけて生きたい。







「よぉし来たな!!お前は誰がいいんだ?!俺か!?俺だよな?!」

「何言ってるんでさァ。ふざけるのも大概にしやがれよ土方コノヤロー。俺に決まっているじゃないですかィ。なあ?

ちゃあん?!今度さ夫婦茶碗買いにデートしようデート!」

「何言ってんのゴリラ。テメェ砂糖漬けにしてやろうかコラ。ちゃんは銀さんとスウィートランドで一生暮らすんだよ」


広間に戻った瞬間囲まれてなにやらすごい剣幕で問い詰められちゃった;
あれ?銀さんいつの間に?
助けを求めるように退兄さんへと振り返ったら、なんだか口を引くつかせながら怖い表情で笑って
肩を震わせてる・・・・





「てめえらだけには絶対妹やらねえよぉぉ!!クズ共がぁぁぁ!!」


四人に降りかかるクナイの雨に、屯所いっぱいに絶叫が木霊した。















お父様、お母様


私はとても幸せです。




















いや。確かにおせちネタだったのよ;
ただの逆ハーに摩り替わってないこれ?
しかも退のキャラ壊れてないこれ?
いやいやかわいい妹のためなら副長に余裕でガンくれてやるんですよ、これ。

実は「山崎妹設定、逆ハー土方落ち」っつー5話ぐらいのミニ連載を考えていたのを
それを無理やりこんな短編にしちまったもんなのよ、これ。あはv。

途中、永倉・原田・斎藤出てきますが、めっちゃくちゃ某新撰組漫画のキャラです。すいません!
ごめんなさい!!だから早く斎藤さんや原田達出してよー!!(心の叫び)

(2007年1月4日執筆)