鼻腔を突き刺すかのような薬品の匂いに、が意識を取り戻したのは、
事件から一週間過ぎてからのことだった。
そしてその数日後退院、職場に復帰したのである。
+相棒連鎖+(最終話)
「もう・・大丈夫なの?」
「うんv仕事に戻ってるよ」
「よかった・・・・本当にごめんなさい」
「あーもうっ気にしないでっ」
ガラス越しの由香里はひどく痩せたものの、に穏やかな微笑を向けた。
「もうバリバリ仕事してるんだから」と握りこぶしを作って笑うにさらに笑みを深めると
そっと顔を伏せ声のトーンをやや落とす。
「私、ちゃんと罪を受け止める」
「うん」
「坂下は今でも許せない」
「うん」
「でも人を殺したことは許されない」
「うん・・」
長い睫毛がやや濡れているように見えるのは気のせいではないであろう。
「あの子の・・・里美のために私・・・」
「うん。頑張るのよ」
「・・・・・うん・・・ありがとう」
見事に咲き誇る公園の桜並木をぼんやりと歩きながら、そっと桜を仰ぎ見た。
穏やかな風が吹き抜けるたびにひらひらと舞う無数の花びら。
その光景になぜかひどく泣きたい気分になって、そのまま目を閉じた。
ぼすっ
「あぅ;」
「ぉおい〜。目ぇ閉じながら上向きに歩いてんじゃねえよぉっ
鑑識課のさんよぉ〜」
「・・・・・・・・」
「んだよ、歯向かってこねーのかい。気味悪りいな」
「うっさいトーテムポール」
「っ、てめっ・・・・」
自分にぶつかったままの体勢でぴくりとも動かないに、伊丹は小さく溜息をつくと
ぶっきらぼうにの頭をかき撫でた。
きつく閉じられたの目尻から、うっすらと光る雫。それを見ないように桜を仰ぎ見る。
「なんだ。まだ傷痛むのか」
「違うもんバカー」
「そうか」
しかし、どんなに食い止めようとしてもその雫は筋を作っていく。
伊丹に見られまいと両手で顔を覆うが、肩の震えさえも止めることはできなくなっていた。
いまだ頭をかき撫でている伊丹に慌ててごまかす言葉を紡ぎだす。
「っ・・・目に・・・ゴミが入っただけっだかんねっ」
「へいへい」
また風が吹き桜の花びらが舞い散るのを見やると、伊丹は呆れたように小さく溜息をつくと
ポンポンと軽くの頭をたたいた。
「もっと早く気づいていれば止められたのにね」
「そうかもな。だけどお前は友だちを救ってやれただろ」
「?」
不思議そうに顔を上げるの目は赤くなっている。
そんな間抜けな顔に鼻で笑うと、サッと踵を返し歩き始めた。
「自殺っつー逃げ道から救ってやっただろ。滝乃さんは生きて罪を償う道を選んだ。
険しい道だけどな、生きてりゃいいこともあるだろ」
足早に遠ざかっていく背中に桜の花びらが舞い落ちる。
吐き捨てるような言い草だが、伊丹の顔がやや赤い。そんな姿をに見られまいと
ますます足が速くなっていく。
「本庁に戻るぞ。もたもたすんなっ」
「うん。てか、命令すんなv」
「うっせ、迎えに来てやったんだありがたく思え」
伊丹を追いかけるように歩き出すが、小さく後ろを振り返った。
咲き誇る桜の間から見える、冷たい鉄筋コンクリートの壁には小さくも強く頷く。
「待ってるからね由香里」
の言葉に答えるように、また風が桜の花を舞い上げた。
「こら、。待たせんな」
「おう、待っていたまえ運転手君」
「てめ;」
苛立ち気に時計を気にしている伊丹に駆け寄ると、「あ」とは伊丹に微笑んだ。
「ありがとねv」
「んあ?・・・・・あ・・まーいいだろ///////」
「うわ、えっらそう」
「うっせ//」
明日からまた事件に追われる日が続くだろう、束の間の安らぎを惜しむように
伊丹とは桜を仰ぎ見た。
えっれー短い最終話ー(爆)
初めて事件ものの連載を書いたのだけど、いやー難しいですばい。(誰)
もう、何これ。
でもまた懲りずに書くかもです。できたらこのヒロインで続けてみたいなーと。
最終話はもっと合コンのその後や特命係との絡みも入れたかったのだけど、
なんかまとまらない。友だちが逮捕されるわけだからここは伊丹はんにと(笑)
季節的に桜で締める。そしておいらの首も絞める。
そして読んでくださりありがとうございましたー!