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ドリーム小説















+The PHANTOM of the HALLOWEEN ~ハロウィーンの怪人~+















































「特命係の不知火~!」



今日ものんびりした生活安全課。
ぽけーと茶をすする角田係長の鼓膜に嫌というほど、聴きなれた声が飛び込んできた。
またかと溜息をつきつつも、今日もおもしろい光景が拝めると嬉々した表情で、
現場の方へと素早く視線を走らせれば、やはり思っていたとおりの男の背中が見え。
部下にいたずらな笑みで目配りをし、湯呑み茶碗を手にしたままその現場へと近づいていけば、
これまたおなじみの張り上げ声が返ってくる。




「ま~たあんたなの?!このデパート!」



「はあ?訳わかんねぇ!?」



現場-特命係では男と女が睨み合っていた。



「はんっ伊勢丹って言ったのよ!」

「!?んだとこらぁっ一文字多いんだよ!」


「ぷっ。くくくっ」

「っつ、笑うなっこの亀!」


男は刑事課の伊丹憲一、女は特命係の不知火咲夜である。
長身の伊丹と彼よりやや背の低い咲夜はこれでもかと睨み合っていた。
デスクにつきながらこらえ笑いをしている亀山薫に、伊丹の怒鳴り声がさらに大きくなる。
そしてこの特命係の係長である杉下右京は、うっすらと笑みを浮かべながらのんびりと、そして優雅に紅茶を堪能していた。





              これが日常茶飯事の光景




咲夜はさも疲れたように盛大に溜息をつき、肩にかかった長い髪を振り払うと、腕を組み伊丹を見据えた。




「で?その伊勢丹刑事が何用かしら?」

「うっせぇ!・・・ちっこれを見ろ」


さらに声を張り上げ苦々しく睨みつけると、伊丹はA4サイズの半透明色のファイルを咲夜に叩きつけた。
怪訝そうな顔で受け取る咲夜に「今多発している連続強盗殺人事件のだ。・・あー、ふざけた変装する」と付け加えれば、
杉下と亀山も立ち上がり咲夜が手にしているファイルをのぞきこんだ。
杉下の表情には些か納得いかない色が浮かんでいる。


「女性ばかり狙う強盗ですね。ハロウィーンシーズンに紛れてドラキュラ伯爵の仮装に
ジャック・オ・ランタンのマスクを被り、ナイフで脅す手口。
しかし、僕の記憶では襲われた被害者は5名、内負傷した被害者三名いらっしゃいますが、
死者はでていないはずです」

「さすが警部殿。相変わらず目敏い。
えぇ、負傷した三名のうち、後頭部を現場付近に落ちていた煉瓦で強打された女性がいたのですが、
今朝方息を引き取ったと」

「そうですか・・」


辛辣そうに呟く伊丹に杉下の表情にも陰りが差した。
咲夜と亀山もいたたまれない表情のまま、ファイルに視線を落としている。






「で?この事件がどうしたの?」


思い出したように顔をあげた咲夜に伊丹は「あぁ」と頷くと、咲夜からファイルを取り上げパラパラとページをめくった。



「強盗の手口を分析した結果、三日に一度の間隔で犯行に及んでいる。
被害者に共通点はない。よってこれは通り魔と断定、犯行現場もかなり集中しているから・・」

「囮捜査ね!」


険しい表情の伊丹に咲夜がパンッと手を叩けば、微かに伊丹は頷いてみせた。
しかし、あまり浮かない表情に咲夜は首を傾げる。


「どったの?」

「いや・・その囮なんだが。誰もやりたがらなくて・・お前はどうかと聞きにきたんだ。」


通り魔強盗犯は女相手でも容赦なく煉瓦で殴りつける奴だ、被害者の年齢も高校生から
高齢の女性と無差別である。そんな危ない犯人の囮になるのは皆ごめんだろう。
また、女性刑事の人数も少ない。伊丹は気を揉まれつつ最後の望みである咲夜のところへ訪れたのだ。
だが、伊丹の冴えない表情はそれだけには見えなかった。だが咲夜はケロリとして頷いた。


「あっうん。いいよ協力するよ」

「いや、お前もう少し悩めよ;」


「皆嫌がったんだぞ!」と付け加えれば、亀山も少し慌てたように咲夜の肩を掴んだ。


「そうだぞ咲夜。こいつが女装するってもあるんだからよ」

「てめぇは黙ってろ、亀っ」

「ううん!私やるよ!女性ばかり狙うなんて許せないもん!ね、捜査はいつなの?」

「あ・・・っあぁ・・じつは今夜なんだ。」


「今夜奴は現れる」と続ければ咲夜はよ~しと袖を捲くりあげる。


「今日こそが奴の終焉!あっ、刑事課に言いに行った方がいい?」

「あ・・・あぁ、そうだな。捜査行程も知る必要があるからな」


そう連れだって踵を返した伊丹の両肩を、亀山と杉下ががっしりと掴んだ。
不思議そうに首を傾げている咲夜に杉下が先に行っているように促すと、小さく頷いて生活安全課の出入口へと足早に向かう。
咲夜の姿が完全に見えなくなると、伊丹を羽交い締めしたままその耳に囁いた。


「いいですか?伊丹さん。咲夜さんは特命係の大切な人間です。
もちろん、貴方にとってもそうでしょう。十二分の承知しているとは思いますが、
くれぐれも大切な咲夜さんに怪我をさせないように」

「もっもちろんです!彼女に怪我なんて!」

「おーおー伊丹~頼んだぜぇ?」

「もちろん僕たちも、捜査に同行しますがね」


































「おいっ周りに不審者はいないか?つけられてないか?」



「あーもー・・・しつこいよー!」




耳に仕込まれたイヤホンから聞こえてくる伊丹の声に、咲夜はうんざり顔で溜息を付いた。
囮捜査を開始してからというもの、10分置きに伊丹の声が鼓膜に響いているのだ。



「もう~集中できないよぉっ」

「う・・すまん・・」



咲夜のコートに仕込まれたマイクから返ってくる声に「ぐう」と唸れば、
後部座席に座っていた亀山が「はっ」と笑った。
彼らは車での待機で、マイクを通しての咲夜からの情報に頼るのみ。
けれども姿が見えない咲夜に伊丹は落ちつかない。


「おめぇ・・・まだ片思いか?こら」

「っせえっ。お前と違って硬派なんだよ!」

「ぁあ?」

「しかし、伊丹刑事が咲夜さんに夢中になってから早二年。
そろそろ行動を起こしてもよろしいのでは?」

「け・・警部殿まで・・」



伊丹が毎日のように特命係に訪れるのは、咲夜がいるから。
けれどもどうアプローチしていいかわからず、亀山に接するようにしか口が開かない。
当然咲夜になかなか想いが伝わらない上に、一番知られたくない杉下と亀山に知られてしまったというこの現状。
苦虫を潰したような顔で溜息をつく伊丹に、杉下がさらに身を乗り出す。


「この手に関しては咲夜さんも相当鈍いですからねぇ・・。
せっかく両想いなのですから、貴方から行動を起こさなければ。
下手をすればこのまま自然消滅という事態も免れませんよ」

「はあ・・・は?・・・・両想い?」

「うわっ。こいつも相当鈍感かよ?!」





























                「来た」










「「「!?」」」




伊丹が手にしていたイヤホンから聞こえてくる咲夜の押し殺した声に、
さらに口を挟もうとしていた亀山は息を呑んだ。杉下と伊丹にも緊張の色が素早く走る。
三人は素早く車から降りると、咲夜の姿を探した。








「公園よ。つけて来てる・・・・・・・え・・・・・きゃあっ」



「!?不知火!?」





全身に衝撃が走った瞬間、伊丹は公園へと疾走していた。
杉下と亀山も血相を変えて伊丹の後に続く。近くに待機していた捜査員達も傍受した咲夜の悲鳴に
静かに、だが素早く降りてきて公園と向った。



「こんのぉ!!女の敵ぃ!?」


公園にへと辿りついた伊丹が見たものは、ジャック・オ・ランタンのマスクを被り
ドラキュラの格好をした強盗犯を地面にねじ伏せている咲夜の姿。
駆けつけてきた捜査員に差し押さえられ、強盗犯は呆気なく逮捕された。
カランと力なく強盗が手にしていたナイフが落ちる。咲夜は歯を食いしばり強盗のマスクを
剥ぎ取った。




「・・・・お・・女!?」



咲夜達は驚きの表情で固まった。男だと思っていた強盗犯は30代前半であろう女だった。
爛々と目を輝かせて咲夜に身を乗り出し何やらぶつぶつと呟いていている。



「そうさっこの世からみーんな女が消えちまえば、あの人はあたいの所に帰ってくるんだ!?
それまであたいはたんと蓄えておくんだ!」


どうやら、男に振られて錯乱したらしい。いまだ咲夜に身を乗出し「金をよこせ」と唸っている
女に、伊丹と亀山そして取り押さえている捜査員達はの表情が凍りついた。


「ふざけんじゃないわよ!!」


ぱあん!と乾いた音が公園内に響き渡り、伊丹と亀山は驚きに目を見開いて咲夜を見つめた。
勢いよく頬を咲夜に叩かれた女は一瞬にして、静かになる。


「ふられて悔しかったら!そいつを見返すくらいの勢いで働いて、男作ってやんなさいよ!
他に八つ当たりするなんて最低だわ!!」


「・・・・・・・・・・ふぇ・・」


咲夜の嗜めに女から湧き水のように涙が溢れた。力なく連行される女を見送ると伊丹は
深い溜息を吐き出す咲夜へと歩み寄る。



「大丈夫だったか?」


「うん!へっへー♪」


にっこりと笑い返えされたそのかわいらしい笑みに伊丹もつられて笑いそうになるが、
髪の乱れを直す咲夜の手に表情を固めた。



咲夜!」

「え?・・・あ・・うーわ・・・」


慌てて咲夜の右手を掴めば、驚きに目を見開いた咲夜がきょとんと伊丹を見つめた。
伊丹が自分の手の甲を凝視していることに気づき、自分の甲を見やれば、強盗犯と揉み合っているときに
負傷したのだろうナイフの切り傷が、くっきりとできている。
「つー」痛みで顔を歪める咲夜に、慌ててハンカチを取り出し力強く甲を縛りつけ、
病院にいくように促せば、にへらと首を振る咲夜。


「あー大丈夫よ。これくら・・」

「馬鹿野郎!?」

「!?」


声を張り上げた伊丹に、咲夜の肩がびくりと震えた。
おそるおそる伊丹の顔を見やれば、きっと咲夜を見据えている。


「おい亀!!咲夜を病院に連れて行け。俺はまだ後始末が残っているからな」

「了解ー」

「あ・・ちょっと!!」

「はいはーい。病院に行きましょうねー咲夜ちゃーん」

「全く。貴女の鈍感さにも呆れますよ。咲夜さん」

「??」

サッと踵を返していく伊丹を慌てて追いかけようとするが、両脇からがっしりと亀山と杉下に
ホールドかまされてしまった。?マークをめいいっぱい飛ばしている咲夜に
杉下と亀山はにやりと無言で笑いあっていた。

































「捜査一課の伊丹ぃ~!!」


翌朝、捜査一課に珍しい声が響いた。デスクについていた三浦が首を伸ばし声が聞こえた
入り口を見やれば、昨晩大活躍した咲夜がニコニコと立っている。
ふと右手を見やればちゃんと病院に行ったのだろう、包帯が巻かれていた。
そして両手にはなにか白い箱が収まっている。



「おー不知火。昨晩はご苦労だったな」

「おっ三浦刑事!昨日はどうも!ねっ伊丹刑事は?」

「お前の後ろだ、特命係の不知火」


のほほんと笑う咲夜の背後で、低い声が耳を掠め振り返ればやはり伊丹で。
「出入り口塞いでんじゃねえよ」とさらに唸れば、「おぉそうか」と脇に避ける。
自分のデスクに書類を置くと、後をついてきた咲夜を怪訝そうに見やった。


「?何だよ」

「うん?昨日はどうもって」

「・・・・それだけのためにわざわざここに来たのかよ」


二人の様子を伺っていた三浦と芹沢が、伊丹の言葉に呆れたように溜息を付いた。


(あぁもうっ!先輩そんな言い方っ)

(ったく。そこで不知火の手を心配するんだってーんだよ!)

 
伊丹の相変わらずの言い草ににへらと笑うと、手にしてた箱を伊丹の机に置き、
ポケットからハンカチを取り出して伊丹に差出した。
それは昨晩怪我をした咲夜に包帯代わりに巻いてやったもの。綺麗に洗濯されきっちりとアイロンまでかけられている。
「あぁ」と受け取りながら、ハッとしたように咲夜の右手を見やった。



「お前っ手大丈夫か?」

「あ・・うん。応急処置が早かったから縫わなくてすんだのー。伊丹刑事のおかげだよ」

「そうか・・よかった」

「へへー。そうそう、それでお疲れ様ってことで、昨夜帰ってすぐにお菓子作ったの。
Halloweenにちなんで、パンプキンパイ!皆で食べてよ」

「おーーーー!!いいんすかー!?」

「いやー不知火の作る菓子はうまいからなー」

「ってお前ら何開けてんだよっ・・・って食ってるし?!」

脇から伸びてきた手の主の芹沢と三浦を睨みつけると、思い出したように咲夜を見やった。


「お前っ、そんな怪我で作ってたのか?」


そう焦ったように問えば、うんっ元気よく返される返事。
そのかわいらしい笑みに、怒鳴る気も失せて芹沢と三浦の手にある箱の中を覗き込めば
パンプキンの風味が鼻を掠めて食欲をそそり、自然と険しかった表情が緩んでいく。
そんな伊丹の横顔を見つめながら咲夜はにっこりとその耳に小さく呟いた。




「!?・・・不知火!?」


「へへーvじゃあにぃー」




バッと咲夜へと振り向けば、すでに咲夜は捜査一課の出口でニコニコと手を振り出て行ってしまった。




「ちょっ待て!・・・おい!俺の分も残しておけよ!」


しっかりと芹沢と三浦に釘を刺し、廊下へと走り出ればすでに咲夜の姿はなく。
呆然と立ち尽くす伊丹だったが、その表情はどこか赤みが差していたのは誰も知る由はなかった。

















昨晩、病院で手当てを受け一安心している咲夜を待ち受けていたのは、
上司と先輩の「恋愛レクチャー」だった。


「全く。このままではいつまでたっても進展がないので、
微力ながら僕達が助言をさせていただきます。」

「いいか。咲夜よーく聞けよ」

「う・・・うん」

「まず再度確かめますが、咲夜さん?伊丹刑事が好きなんですよね?」

「はいっ」

「俺にはなぜあいつがいいのか、理解できねえけどねぇ・・」

「むうっ。先輩酷ーい!確かに口は悪いかもしれないけど根はいい奴だよ!?
私が前に風邪で寝込んだときなんかわざわざお見舞いに来てくれたんだから!?
書類を運んでいるとき手伝ってくれたしっそれに笑うととても優しい顔なんだから!
さっきだって・・怒られたけどっとても心配そうな表情で私の名前っ・・・・・」

拳を握り締め、力説する咲夜の声がフッと弱まった。
何か思い出したような表情に杉下は小さく微笑み、ニヤッと亀山が笑う。


「そうです。伊丹刑事がいつも貴女のことをファミリーネームで呼んでいました。
そう・・「不知火」と。ですがさきほど貴女が負傷したとき、伊丹刑事は「咲夜」とファーストネームで呼んだのです。
咄嗟に出たことでしょう。しかし、それは貴女のことを気にしているからこそ出た名前・・・・・・
さて、もうお分かりですね?」



































「にしても、右京さん随分咲夜の応援するんすねぇ」

のんびりとコーヒーをすすりながら、いたずら的な笑みで窓際の右京を見やれば
小さい笑みを称えた右京がゆっくりと振り返った。


「はい?」

咲夜とあの伊丹のことですよ。てっきり邪魔するもんだと思ってましたよ。
俺だったら徹底的に邪魔しまっすけどねぇ!」


ゆっくりとティーポットを温めながら、くすりと右京が笑った。


「えぇ。これからも何かと捜査一課・・・伊丹刑事にお世話になりますからねぇ」

「右京さんっそれって・・・」

「はい?何でしょう亀山君」



「おっはようございますー!!」




何か黒いオーラが漂っている杉下に、亀山はなぜか寒気を感じずにはいられなかった。
明るい声が特命係に響き振り返れば、元気そうな咲夜の姿。
その晴れ晴れとした笑顔から察すると、捜査一課に寄って来たのだろう。
その証拠に、生活安全課から慌てた表情で足早に向かってくる伊丹の姿が見えた。
そんな伊丹に亀山はなぜか同情の意を拭いきれなかったなど咲夜や伊丹はもちろん、杉下も知る由は
なかったであろう。






















                  今度からは名前で呼んでねv




















今日も今日とて賑やかな特命係。
咲夜のデスクには小さなジャック・オ・ランタンが小さく笑っていた。



























初相棒ドリーーーーーーーーーーーーームッ!しかものっけから伊丹刑事夢ってどうなんよ。
いや、むしろ伊丹刑事夢!!万歳!!Halloweenだし、それにちなんだ話にしたいなと思い、
仮装した強盗の事件を・・刑事ドラマはやっぱり事件がなくちゃ!?ということで
事件設定をかなり練りこんでいたのですよ。推理的な要素を入れようと思って、
Halloweenにちなんだカボチャや黒猫などを犯行現場に置いて・・とかけっこううまい具合の設定に
仕上がったのですが!!


一話じゃ到底終わらねぇ・・・;;

そして、かなり割き捲くってこんな感じに;
基本的にオリジナルのキャラクターを壊さないように書いてみたのですがどうだろう・・